2007年7月23日

全国から、農業後継者が埼玉・小川町に集合!

 

7月19日(木)~20日(金)

『第5回全国農業後継者会議』が、埼玉県小川町で開催される。

青森から長崎までの各地から、36名の農業後継者たちが集まった。

年齢は20歳から43歳(平均年齢30.6歳)。

農業経歴は-半年(脱サラして家に戻って始めたばかり)から14年まで。

ここでは、年齢と農業経歴は相関しない。

 

今回、この集まりを受け入れてくれたのは、

有機農業暦36年のキャリアを持つ金子美登(よしのり)さん。

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経営する農園の名は「霜里農場」。

金子さんは、若い頃からの日本有機農業研究会の幹事であり、

今やこの世界での'カリスマ'と言っていい。

 

また昨年成立した「有機農業推進法」を牽引してきたネットワーク組織、

現在の「日本有機農業団体協議会」の代表も務める。

というか、こちらからたって代表就任をお願いした方である。

 

漫画家・尾瀬あきらさんの名作『夏子の酒』を読まれた方には、

夏子に有機農業での米作りを教える「豪田」なる農民を覚えていることと思う。

その男のモデルこそ、実は金子さんである。

尾瀬さんは、かなり足しげくし金子さんを取材し、その後有機農業研究会の会員になった。

 

まずは金子さんに霜里農場を案内していただく。

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住居も含む農園全体が、'自給'と'環境'でこだわり抜かれている。


金子さんの基本思想は、無農薬無化学肥料で安全な野菜を作る、だけではない。

まず、消費者との直接提携を基本に据える。

現在、40戸の消費者に年間通して野菜や卵、牛乳などを届ける。

そのため常時20~60品目の野菜がつくられている。

 

金子さんはまた、有機農業によって学んだ'循環'を大切にする。

家畜の糞や野菜屑は畑に循環させるだけでなく、エネルギーの自給にも貢献する。

敷地内にバイオガス生成装置を埋め込み、住居の屋根には太陽光パネルがある。

ガラスハウスの骨組みは地元の木で建てられている。

 

しかも金子さんは、この循環システムを、自身の農場だけでなく、

小川町全体に着実に広げている。

企業も巻き込んで、500軒の生ごみを処理できる新しいバイオガス・プラントが

実験段階まで進んでいる。

しかもガスを電力化して電力会社に売るという戦略なのだ。

 

金子さんは牛の乳も搾る。

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家畜の人なつこさは、育てる人の優しさを伝えてくれる。

 

金子さんとは古くからのお付き合いだけど、大地に野菜を出荷する生産者ではない。

でも、金子さんが切り拓いてきた有機農業の姿、そして思想を、

当たり前のように、あるいは意を決して'農業を継ぐ'と決めた若者たちに一度は見せておきたい。

 

これが今回の霜里農場見学を企画した長谷川満(大地を守る会生産者会議担当理事)の

思いだったんだね。

 

金子さんのような複合的な農業経営は簡単に取り入れられるものではない。

でも若者たちには、誇りを持って'俺の農業'を語れるようになってほしいから、

今日はここで、ひとつの実践例として何かをつかんで帰ってほしい。

 

夜は、金子さんの米で酒を仕込む地元の酒蔵・晴雲酒造でのYaeさんのライブ。

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Yaeさんも農業後継者の一人である。

しかも両親のDNAを受け継いで、酒蔵でのライブが実によく似合う。

 

二日目の会議の様子。

IPMとかバンカープランツとか、けっこう真面目な質問が飛ぶ。

それを同じ世代の者が応える。

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嬉しかったのは、こういう発言があったことだ。

「俺たちは最初から農業できる環境があったけど、

霜里農場の研修生たちは、これから先、どこで農業をやるかとか考えている。

出発点から違う人がいる。この人たちともっと話をしたい」

 

そう。金子さんにはすでに100人の門下生がいて、各地で有機農業を実践している。


6月28日に紹介した徳弘君も、金子さんから学んだ一人だ。

 

ここで学んだ研修生は36カ国におよぶ。

こういう国際貢献を、何の報酬も求めずやっているのが有機農業者だ。

 

研修生ともっと話がしたいという希望は、時間がなくてセッティングできなかったけれど、

やってよかったという手応えを感じるのは、こういう瞬間だ。

彼らは、オチャラケているようで、しっかり見るものを見ている。

俺たちの心配なんてご無用!なのかもしれない。

 

来年の開催に手を挙げたのは、山形は庄内地方の若者たち。

月山パイロットファーム、みずほ有機生産組合、庄内協同ファーム、コープスター会の面々。

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実に明るく、頼もしい。

今年の『トンボと田んぼの庄内ツアー』に続いて、

来年は若手が主役の『全国後継者会議in庄内』となるわけだ。

 

息子たちの報告に、あの庄内の理屈っぽい親父たちはどんな顔をしていることだろう。

 

今から楽しみである。

 






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from "とくたろうさん" at 2007年10月16日 09:34

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