2007年12月21日

だいちロード

 

......という名前の 「道」 が完成した。

e07121001.JPG

 

場所は、パレスチナ自治区-ヨルダン川西岸地区の北部にある

コフォ・ジャマールという村。

 

オリーブの畑に道路が引かれたのだ。


 

それまでこの畑、といっても岩山にオリーブの樹が点在する土地だが、

そこには道がなかった。

 

なにしろデコボコの岩山。

車は入れず、収穫する時も、肥料をやる時も、

すべて岩場を登ったり降りたりしながらの人力作業だった。

 

ここに道をつくろう。

 

昨年、取り扱いを始めたオリーブオイルの現地を訪問した際に、

オイルという商品の流通にとどまらない支援策が話し合われ、

「パレスチナ平和の道プロジェクト」 が立ち上がった。

 

これをきっかけに、大地を守る会の国際支援基金制度として

「DAFDAF(ダフダフ)基金」 が正式に設立され、

「道」 は最初の支援プロジェクトとして位置づけられた。

 

DAFDAFとは、

The Development Assistance Fund of Daichi for Asian Families の略。

「交流先の農民や家族の生活向上や農業の技術向上などのために支援を行なう基金」

というような意味合い。

20年くらい前から進めてきたアジアを中心とした海外の農民たちとの交流を

もう一歩進めて、

交流先の有機農業の発展を具体的に支援するプロジェクトを進めようというものだ。

 

「パレスチナ平和の道プロジェクト」基金の呼びかけが行なわれ、

応じてくれた会員数は1,487名。 集まった基金が1,449,000円。

 

そして、道が完成した。 全長1.3km。

 

もちろん大地からの基金だけでなく、

現地の人々も、ある人は土地を提供し、ある人はお金を出し、あるいは労働力を出して、

みんなの手でつくられたものだ。

 

道路の入口に立てられた看板。

「DAICHI WO MAMORU KAI」 の文字が、何だか面映い感じ。

e07121002.JPG

 

現地のオリーブ生産者やその家族にとって道ができたことは、

我々の想像したより遥かに嬉しい出来事だったようだ。

11月に現地を訪れ、道路を確認した大地のツアー一行は大歓迎され、

その道を歩くのに大勢の人がついてきたという。

 

畑まで、足元を気にせず行ける。収穫した実を車で運べる。

彼らにとって 「道」 は悲願だったのだ。

 

道の中腹で、関係者と記念撮影。

e07121003.JPG

 

生産者の代表から、感謝状ならぬ、

オリーブの「感謝切り株」 が藤田会長に手渡される。

e07121005.JPG

 

「道ができて、みんな喜んでいる。

 道ができてから、みんな元気が出て、村が活性化している。」

村長さんからは、そんな話もいただいたようである。

 

オリーブの収穫は、家族みんなでの作業となる。

子どもたちも手伝うのだそうだ。こんなふうに。

e07121004.JPG

 

ここではパレスチナの歴史や政治はあまりに重たすぎて触れられないが、

彼らはただ昔からこの地にいて、したがっていつまでもこの地で、

平和にオリーブとともに暮らしたいのだ。

 

私たちはテロリストなんかではありません。

そのことを日本の人たちに伝えて欲しい......

 

これが視察ツアー一行に託されたメッセージである。

 

ツアー一行は帰る前に、イスラエルの人たちとも会っている。

皆とてもいい人たちで、大地の取り組みにも理解を示したという。

日本人ということでの配慮も多少はあったかもしれないが、

憎しみや偏見や予断のないところでは、

人と人は自然に分かり合えるものだと思いたい。

 

問題は根が深く、あまりにねじれ過ぎてしまっているので、

これ以上、軽々しいコメントはできない。

しかし、平和はけっして政治だけで築かれるものではない。

その前に、人と人が分かり合い、助け合う 「道」 が作られなければならない。

 

ツアーに同行した職員から報告を聞いて、写真も借りられたので、

この場でもお伝えしたく、書いてみた。

いいお手伝いができたんじゃないか、と思う。

僭越ながら、ご協力いただいた皆さんに、改めて心から感謝したい。

おそらくは機関誌 「だいちMAGAZINE」 でもレポートされるはずなので、

その際はぜひご一読を。

 

報告を聞いたその日、

「パレスチナ子どものキャンペーン」 という教育や福祉面での支援をしている団体からの、

パレスチナ刺繍製品の審査を通過させた。

パレスチナを支援するNGO同士の横のつながりがないのが気になるところではあるが、

我々は我々のできる範囲で 'つながり' を深めていきたいと思う。

 

ちなみに、DAFDAF基金では、ふたつ目の支援プロジェクトが進んでいる。

ミャンマーでの有機農業の農場を支援する計画だ。

こちらにはすでに1,576,500円の基金が寄せられている。

 

いずれも複雑な国情をもつ場所だけど、

だからこそ民衆レベルでの元気が出る物語を編み出したいものだ。

 



大地を守る会のホームページへ
とくたろうさんブログへ