2008年1月21日

水の世紀と日本文明

 

先週の1月17日(木)夜、久しぶりに大手町カフェでの 『地球大学』 に参加する。

毎週々々、環境に関連していろんな面白いテーマが採り上げられ、

ついに80回を数えた。

 

今回のテーマは、「水の世紀と日本文明-100年を見通して-」。

講師は、立命館大学客員教授で日本水フォーラム事務局長の竹村公太郎さん。

 

今回もなかなか刺激的な話が聴けた。

数日経ってしまったが、聴きっ放しで済ませてはもったいないと思い直して、

以下、ざっくりとメモを辿ってみたい。


今から6000年ほど前の縄文前期。

最終氷河期が終わって、世界は温暖化のピークを迎えていた。

平均気温は今より2℃ほど高く、海面水準は5メートル上にあった。

いわゆる縄文海進というやつ。

日本で真っ平の所(平野部) はほとんど海の底だったのだ。

 

つまり日本の沖積平野というのは、水はけの悪い元海底であり、

東京もまた途方もない湿地帯だった。

そこでの昔の稲作というのは(実は半世紀くらい前まで)、

胸まで水に浸かったりしながらの作業だったが、

しかし日本人はそこから膨大な富を得てきた。

 

有史以来、日本にとってもっとも重要なエネルギー資源は森林だった。

権力者は建造物を建てるのに材木を伐り集め、

すでに戦国時代には近畿地方一帯は禿げ山と化していた。

秀吉は日本中から木を集めた。

家康は崩壊した関西の森を目の当たりにして、

江戸に拠点を築く決意をしたのだ (これは講師の推論)。

1600年のころの江戸は100戸くらいしかなく (ホント?)、

周囲はエネルギーの宝庫だった。

 

ちなみに近畿地方の山並みは、明治以降の植林によるものである。

 

幕府が江戸に移って心血を注いだのが、治水である。

生活用水を確保するために虎ノ門辺りにダムを造り水を貯めた。

(現在の「溜池」という地名が、その名残りだそう。)

そして東京湾に注いでいた利根川の大改修をやって、

言ってみれば洪水(のリスク) の70%を銚子に流したのだ。

 

その国土の10%しかない沖積平野に、

50%の人口と75%の国家資産が集中している。

温暖化で5メートル(2℃分) 海面が上昇すると、そのかなりが水没する。

しかし、森林を中心とした90%の国土は残る。

日本列島の土地利用を見直すべき時に来ている。

 

温暖化で、日本の降水量は年々バラつきが激しくなってきている。

干ばつと集中豪雨が繰り返される(=落差が激しくなる)。

そのときに必要なのが、雨を集める装置=森である。

ピーク時に水を抱える力は限られるが、森があることによって土の崩壊が防げる。

森が崩れるとすべてが崩れる。

 

このまま温暖化が進むと、100年後には、

北海道は関東の気候に、関東は台湾の気候に、九州が亜熱帯地方になる。

これは極めて劇的な変化である。

冬の雨は一気に海に流れ、'春の雪解け水' はなくなる。

春から水不足の不安が生まれ、水田稲作はこれまでのような形では維持できない。

 

エネルギー源では、石油はあと43年とか言われているが、

石油はたくさんの製品の原料としても使われている。

その需要と供給のバランスで価格が暴騰してゆけば、

もっと早くに(エネルギー源として)「燃やす」ことができなくなるかもしれない。

 

水は太陽エネルギーそのものなのだ。

各地に自給型の水車を提案したい。

太陽光や風力、水力などによる分散型のエネルギー政策が必要。

そして次に期待できるのは、水素だ。

日本列島を、「水と水素の国」 にしよう。

 

そのためにも、日本は大急ぎで山のメンテナンスをはからなければならない。

すでに熱帯林の値段が上がってきている。

日本の山村を 「限界集落」 とか言って嘆いているうちに、

中国資本が買い占め始めている (これも本当だろうか?)。

地方とどうタイアップするかは、都市の問題なのだ。

 

食料自給率はカロリーベースで40%を切ったが、金額ベースでみれば70%である。

肉さえ諦めれば自給できる。 日本型食生活を見直しませんか。

またリン鉱石が今世紀中に枯渇する。これは化学肥料がなくなるということだ。

いまアメリカが買い漁っている。

リン鉱石の大もとは、鳥のフンである。

糞のリサイクルを考えないと、食料生産はおぼつかなくなる。

 (つまりは有機農業ってことね。しかも糞のリサイクルを考えるなら、実は


  自給型畜産=肉も重要な位置になる。そこは分かって欲しいところだ。)

 

また海が荒れている。

近海資源(=沿岸の保全) を早急に立て直さなければならない。

どこでも獲れていたアサリまで輸入されているが、

近海の魚介類資源を維持・再生させなければならない (アサリは海の浄化者だしね)。

 

最後に、日本本来の特徴は、Small is Beautiful だ。

地域の多様性を守り、文化の多様性を守る、新しい社会モデルをつくろう。

それをつくれるのが日本だと思う。

 

......と、そんな話でした。

 

日本には資源がある。

日本に生まれてつくづくよかった、と思えるようにしたいものですね。

 


Comment:

興味深く読ませてもらいました。
講義の内容もそうですが、
「糞のリサイクル、実は自給型畜産=肉も重要な位置になる」という点、知識も考えもまだかなり乏しい私にはちょっと忘れがちです。読んでよかった。。

日本ほど豊かな四季がある国は他に例をみない気がします。少なからずできること、、は、その恵みを本気で大切にし楽しんでいくことかな。。「日本に生まれてよかった。。」という気持ちで生きていきたいものです。

from "tomoquita" at 2008年1月26日 13:37

tomoquita 様

コメント有り難うございます。糞のリサイクルに「自給型畜産」という言葉をいきなりくっつけたのは分かりにくかったかもしれないと思ってましたので、こういう感想を頂けると、とても嬉しいです。
例えば、インドの牛を食べない人々にとっても、牛は資源の循環に欠かせない、たくさんの恵みをもたらす(その地域にとって生産性の高い)動物として位置づけられています。そんな持続可能なサイクルのなかに「お肉」も位置づけられるなら、肉を食べることをマイナス面として考える必要はないと思うのです。そんな意味合いで書いたつもりでした。
読んで頂いて、有り難うございました。

from "エビ" at 2008年1月28日 15:24

コメントを投稿



大地を守る会のホームページへ
とくたろうさんブログへ