2008年3月 5日

波村さんのポンカンと酸性雨

 

昨日に続いて波村郁夫さんの話を。

 

実は、東京集会 (だいちのわ2008) での 「身近な環境セミナー」 で、

マエキタミヤコさんのお話の終了後、LESSON 2へのスタンバイをしているときに、

波村さんがポンカンを手に持ってみんなの前に出た。

そのポンカンは、セミナー参加者へのお土産用にと送ってくれたものだったが、

そのワケを波村さんが伝えてくれたのだ。 ちょっとショッキングな内容だった。

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このポンカンは何と、酸性雨にやられたものだという。

ポンカンは長く木に実をつけたまま持たせるもので、当然その間に雨にも当たるが、

あるときの雨のあと、近隣の園地も含めて、水滴がついていたあたりから

赤茶色のサビのような斑点ができて、腐っていったらしい。

周囲では、全滅してボタボタと落ちていった木がたくさん見られたとのこと。

 

公的機関は酸性雨の被害だとは認めてくれないが、その雨のあとに被害が発生したのは、

酸性雨としか考えられない、と波村さんは考えている。

 

「売り物にならないので、自分も放っておこうかと考えたが、ちょうど東京集会があったので、

 皆さんで食べてもらって、少しでも環境のことなども考えてもらえたらと思って、

 比較的きれいに残ったものを摘んで、送らせてもらいました。 どうぞ食べてください。」

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今回の被害の原因が本当に酸性雨のせいなのかどうかは、私には分からない。

しかし、波村さんがそう確信するのにも、それなりの理由はある。

 

この時期になると南からの風に乗って黄砂がやってくるが、

中国では今、化学肥料の大量投入や地下水の富栄養化などで農業環境の汚染が進んでいる。

その影響で、土壌の劣化や塩類集積、そして生産力の低下を招き、

結果的に、放棄された土壌は黄砂の発生源になる。

さらには黄砂に含まれる酸化硫黄は、雨の酸性化をも招いているだろう。

もちろん人間の健康への影響も懸念される。

 

環境の悪化は、誰にとってもいいことはない。

その影響はだいたいが上流 (風上) から下流 (川下) へと進む。

そういう意味で、安全性 (土壌や環境の健全性) に気を配ってくれる生産者は、

我々消費者にとっては、大切なアンテナの役割も果たしてくれている。

彼のミカン経営が長く続くよう、たくさんの人に支えていただけると嬉しい。

 

・・・・・なんて言いながら、少し恥ずかしい思い出が蘇る。

僕が初めて波村さんとじっくり話をしたのは、16,7年位前の東京集会の夜だった。

ウマが合ってたはずの農業談義が、気がつけば、口論に発展していた。

その年、集会で講演をしてもらったのが作家の井上ひさしさんで、

畑も耕しとらん小説家に何が分かるか、という彼の感想に、

農民の狭い了見だ、とかなんとか、肥後もっこすの火に油を注いでしまったのだ。

そのうち、なんでか......

「あんたに農業が分かると? 分からんもんに何も言われたかなかよ。」

「ああ分かった。 あんたのミカンなんか、売りたくない!」

「ああ、よか! あんたなんかに売ってもらいとうない!」

 ・・・・・あ~あ、アホだね、ほんと。 (前にも似たような話を書いたような...)

 

今はなき市川塩浜のセンターで、飲んだなぁ、とことん。

最後は一緒に寝たんだっけか。

あれから毎年、会うたびに、僕らはまず照れたようなはにかみを交わしてから握手をする。

飲めば、「俺たちは同志だから」 と周囲に自慢する。

やっぱりアホは変わってない。

 



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