2008年3月 4日

波村さんのかんきつ思い

 

東京集会が終わって、その余韻を引きずりながらレポートを書いていた先週、

少し疲れた心身 をさりげなく癒してくれたものがあった。

私の部署の窓際の一角、テーブル一台分の共有スペースに、何げに並べられていた柑橘類。

見ればアンケート用紙がついている。

『波村さんの 「とくたろう」 候補のかんきつ類です。 率直なご意見をお願いします。』

波村さんとは、大地にみかんを出荷してくれている波村郁夫さん (熊本県三角町/現宇城市) のこと。

 

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6種類の柑橘が並べられている。

「九年母(くねんぼ)」(写真手前の右)、「三宝柑(さんぽうかん)」、「絹皮(きぬかわ)」

「金柑子(きんこうじ)」、「蓬莱柑(ほうらいかん)」、

そして 「黄金柑(おうごんかん)」(手前の左の小さいやつ)。

 

「黄金柑」 は近年の交配種なので、在来種にこだわる 「とくたろう」 のコンセプトとしては別物となるが、

その他の5種は、波村さんが九州の山々を歩いて見つけては育ててきた、古い品種たちらしい。

話には聞いていたけど、こんなに探したのか、と感心する。

今の種々のかんきつ類のどこかに、彼らのDNAがつながっているかもしれない。

もちろん元はすべて南方から伝来されたものではあるが、

そこで住み着いて定着してくれた先祖たちということで、 「とくたろう」 候補なのだ。

波村さんがあちこち歩きながら見つけては残してきた、というのがなんか響いてくるものがある。

 

「九年母」 ・・・インドシナ原産。 室町時代に伝来し、紀州みかんや柚子と並び、江戸時代までの

 日本の主流品種で、宮廷の貴族や公家などが食し、江戸の将軍家にも献上されたという話がある。

 温州みかんの先祖とも推定されている。 ジューシーで酸味強く、独特の香りがある。 

 これが温州の原種かと思うと、この香りもトロピカルな・・・・という言葉が浮かんでくる。 

「金柑子」 ・・・江戸時代からあったとか。 さっぱりした甘夏って感じ。 酸味に多少の苦味が残る。

 あちこちに色んな呼び名で残っているらしい。

「絹皮」 ・・・・・これも江戸時代から記録がある。 文字通り剥きやすく、食べやすい、さっぱりした味。

「三宝柑」 ・・・柚子の遠縁らしい。 デコポンに似た果実。 三宝 (三方のこと) に載せられて

 献上されたことから名づけられたと解説にある。 果肉は上品で爽やかな甘みがある。

 皮が厚いので、今でも中をくり抜いて料理に使われている。

「蓬莱柑」 ・・・三宝柑とほぼ同じ系統のようだ。 剥きやすくジューシー。 味はこちらも淡白。

 袋ごと食べると独特の渋みがかった苦味が残った。

 

「黄金柑」 は、今や "ゴールデンオレンジ" の異名もある、知る人ぞ知る柑橘。

小さな果実だが、甘み酸味ともに強く、爽やかな芳香がある。

これは別ものとして、

古来からの5種は、ともに全般的に淡白な味わいである。 でも、食べてみて思う。

今の甘い品種に慣れた者には味気なくも感じられるだろうが、これが原種の味であり力なのだ。

昔の人は、他の果実にない香りと酸味と甘みに異国情緒や季節感を感じて楽しんだのだろう。

種の多さから見ても、強い生命力を感じさせる。

農薬・肥料なしでもしっかりと生きてきたんだよね。

こういった忘れられた品種を探しては自園に残してきた波村郁夫は、

本当にかんきつ思いの柑橘農家なんだと思う。

 

もしかして、いつか波村農園から、まったく新しいミカンが生まれるかもしれない。

どっかのお店で独占契約して、 " 波村さんの未来みかんコーナー " というのはいかがか。

 



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