2008年5月18日

稲作体験2008-田植え

 

ありきたりの、なんてことはない里の田園風景だが-

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ぼくはこの風景がとても好きで、美しいとさえ思っている。

何度眺めても、気持ちがいい。 19年変わらない佇まいである。

前にも言ったかしら。 この風景は、生き物で構成されている。

そして、荒れ地がない。

 

さて今日は、楽しい田植えの日。

天気もすっかり回復して、暑くなりそうな朝だ。

早苗も気持よさそうに待っている。 

手植え用に大きめに育てた苗。 というより苗をしっかりつくるのは、無農薬の最初の鍵である。

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田植えが楽しいのは、

ここから実りに向かってスタートするというワクワク感のようなものがあるからだろうか。

米づくり自体はすでに1ヶ月以上前から始まっているのだが、

改めてスタートラインに立った、新学期の初登校日の少年のような気分になる。

かたや稲刈りは、楽しいというより、喜びだね。


聞けば、早くに植えた田んぼは、初旬の低温で枯れたところもあるらしい。

北のほうだけでなく、関東も影響は受けていたのだ。

今日は、ちょうどよいタイミングになってくれた。

 

田植えの線引きをしてくれる綿貫直樹さん。 さんぶ野菜ネットワークのメンバー。

線引きは一昨年までお父さんの栄一さんがやってくれてたのだが、代替わりとなった。

でも線引きの道具はずっと受け継がれている。

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10時半。着替えもすませて、全員集合。

さんぶ野菜ネットワーク代表の雲地康夫さんや田んぼの持ち主・佐藤秀雄さんに挨拶いただき、

 

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植え方の手ほどきをして、

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(さりげなくお手本を見せる佐藤秀雄)

 

いざ、開始。

13アールの田んぼに150人。 作業はどんどん進む。 

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今回は200人を超す応募があって、「稲作体験」19年にして初めての抽選となった。

選に漏れてしまった方々には、本当に申し訳ありません。

もう一枚田んぼを増やすとかできればいいんですが、職員のボランティアでの運営では、

これが限界なんです。

 

これは紙マルチ試験区。

紙を敷きながら、指で穴を開けて植えていく。

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これで雑草が生えてくるのを物理的に抑える。

紙は2ヵ月もすればパルプに分解されて土になるという寸法。

まあここの場合は、試験というより、草取りの労力軽減の意味合いの方が強いのだが・・・

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無農薬での試験ということでは、もうひとつ区切りをして、田植え後に米ヌカを撒いた。

米ヌカから発生する乳酸などの有機酸で草の発芽を抑える、

という効果を期待して撒いているのだが、

量やタイミング、温度との関係など、メカニズムはけっこう微妙で、

過去3年、あまりうまくいった試しがない。

僕らは何年やっても、素人の耳学問の域を出ない。

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これが米ヌカ区。 その向こうが紙マルチ区。

 

楽しい作業というのは、なぜか早く終わる。

いや何たって150人だもんね。 一撃である。

 

終わった後の交流会風景。

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昨日の三番瀬での磯の生物観察会に続いて、陶 (すえ) センセー登場。

今日は、田んぼの生きものの話。

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アマガエルとシュレーゲルアオガエルの違いって、分かるかな?

 

地主・佐藤秀雄さんからは、田植えまでにやってきた作業の解説。

ここまでくるのにひと仕事もふた仕事もあったんです。

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私もちょっと、有機・無農薬での栽培技術について、偉そうに解説させていただく。

全国各地で有機稲作を実践する農民たちの手で、いろんな工夫や技術が編み出されてきている。

でも根本は-

生きものがたくさんいて、バランスよく (食ったり食われたりしながら) 共存する、

そんな田んぼをつくることが、実は有機稲作の根幹技術なのです。

ただ 「農薬を使わない」 ではなく、「農薬を不要とする」 田んぼ。

「害虫」 と呼ばれる虫も、そこでは天敵である益虫の餌として存在する 「大切な虫」 となる。

この世に無用な生命などないのです。

僕はいつも 「有機稲作は、世界に冠たる平和の思想と技術なんです」 と言うことにしている。

この思想と技術を、僕らはフツーにご飯を食べることによって支えている。

 

こどもって本当にカエルが好きだね。

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虫かごから出しては手に乗せ、また虫かごにしまい......

そして最後は田んぼに返してくれる。 また合えるからね。 みんなイイ子たちだ。

 

帰る前に、恒例となった感さえある、看板への記念の手形押し。 

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手にベットリと絵の具 (自然素材です) を塗って、ベタッと押す。

これがけっこう楽しいようなのだ。

 

掃除をして、最後に残った実行委員で一枚。

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実行委員はほかにも10人ばかりいて、

別なところで仕事をしてくれていたことを、彼らのために付記しておきます。 

土日返上でのボランティアに手を挙げてくれたみんな。 ありがとう。

今年もたのんます。

 



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