2008年6月 9日

福島-田植え後の様子

 

<昨日に続いて、先週の報告を>

翌5日から6日は、福島に出張。

田植えが終わってほぼ半月。 日照不足のまま梅雨に入った田んぼの様子を見て回る。

下の写真は、大地の備蓄米 『大地恵穂 (だいちけいすい) 』 でお馴染みの、

須賀川市・稲田稲作研究会メンバー、常松義彰さんの田んぼ。

紙マルチを使っての有機栽培ほ場の様子である。

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真ん中に、緑一色になった場所がある。 

田植え直後の強風で紙が剥がれ、ヒエなどの雑草が繁茂してきている。

一面に紙が敷いてあるので、田に入って取るワケにはいかない。

手前や右手奥には苗がなくなっている場所もある。 剥がれた紙で苗がやられたようだ。

何もしないと (草が) こうなる、というか、逆に紙マルチの威力を示している絵になっている。

生産者は、思い切って入る (取る) しかないか、と思案の中にいた。

 

稲田稲作研究会メンバーは、紙マルチ以外にも、米ヌカの利用に独自の工夫を凝らしたり、

栽培の研究に余念がない。

それどころか、自分たちでつくった販売会社、(株) ジェイラップ内にキッチン設備をこしらえ、

米の多様な活用策を模索して、いろんな研究や試作を繰り返している。

内容はまだ企業秘密段階なのだが、なかなか侮れない。

いや、そこら辺の食品企業など青ざめるほどの、恐るべし探求精神なのだ。

いずれ結果をお披露目できる日を期待したいと思う。

 

夕方には、会津・喜多方から大和川酒造店の佐藤工場長もやってきて、

今年産の原料米での 「種蒔人」 の仕様や、種蒔人基金の活用策などで話し込む。

稲田 (原料米生産者) -大和川 (加工者) -大地 (販売者) 、

このつながりは93年の冷害の年からだ。

いくつかの苦節を越えてきた15年は、人に言えないドラマもあって、

私の自負を構成している。

 

 

続いて、こちらは須賀川からさらに北に向かって、福島市を中心とする生産者団体

 「やまろく米出荷協議会」、岩井清さんの田んぼ。

昨年の全国米食味鑑定大会 「有機栽培コシヒカリの部」 で金賞を受賞した方だ。

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岩井さんは、米ぬか・大豆カスの施用と、手押しの除草機で草とたたかう。

しかも仲間の菅沢さんと一緒に、独自に除草機の改良に取り組んでいる。

機械を見ると自分流に改良したくなるのは、農民の本能なのだろうか。 

企業が開発したメカを、いつの間にか等身大の技術に作り変えてゆく彼らは、

もしかしたら、未来技術の開拓者だと言えないだろうか。

 

米ぬかも効いていて、水面が濁っている。 

これはイトミミズや小動物が活発に動いていることにもよる。

「できれば (草とりを) 1回ですませたいけども......まあ、2,3回は入ることになるかね」

と、こちらも思案中。 

畦に沿って張られた波板は、イネミズゾウムシの侵入を防ぐために設置したもの。

3人がかりで張ったのだそうだ。

でも田んぼの中にも、もうすでにたくさんいて、イネの葉を吸っているのだが、

それでも効果はあるという。

これがイネミズゾウムシ。 判別できるでしょうか。

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カリフォルニアから小麦かなんかと一緒にやってきた外来昆虫。

食料のグローバリズムは、栽培そのものをすら、しんどくさせている。

水系や環境の維持も含めて、ということにもなるけど。

一般の農家は殺虫剤を使用するが、

有機の米農家は、イネミズとは我慢比べだということを覚えている。

葉脈が吸われて白くなっても、青い部分さえ残っていれば、

「オレの稲は持ちこたえる」 という。

イネミズゾウムシの害は、ここ日本では、梅雨が明ける頃までの辛抱なのだ。

 

岩井さんの有機ほ場には、屋根つきの立派な看板が立っている。

それは彼の自慢でもあり、意地の表現でもあるようだ。

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左から二人目が岩井清さん。 その看板の前で一枚いただく。

この有機の田んぼで 「7俵は獲りたいなぁ、何としても」 と本音が漏れる。

1俵は玄米換算で60kg (白米にすると約1割、外皮を削ります) 。

一般的な栽培だと、8俵~10俵の収穫になるが、岩井さんの有機田んぼは例年5俵くらいだ。

米の生産者としては、悔しくてしょうがないだろう。

何としても実現したいのだ、7俵を。

獲れたら、もしかしたら金賞より嬉しいかもしれない。

 

いやゴメン。 岩井さんにとっては、ただ "獲れる" だけじゃダメなんだよね。

 

田植えから半月あまり。

この時期、米の生産者たちは皆、あの手この手で草や虫との格闘中である。

今年は加えて、天気が悪い。

やまろくさんのところも、田植え後の低温と強風に遭っていて、

苗が枯れて植え直したりしたようだ。

この日も雨が降ったりやんだりで、生育はいずれも遅れ気味に見える。

西暦2008年の米作りは、不安含みのスタートである。

 

夏らしい夏が、どうか来てほしい。

 


Comment:

お米の生産者のご苦労を読むと、涙が出そうになりました。慣行農法の半分の収量で、手は倍かかっていて、通常なら、4倍の値段がついてもよさそうなお米を、あの値段で提供していただいて本当に頭が下がります。
消費者として、もっと本当にきちんとした対価を支払えたらいいのですが、こちらの生活もかなりアップアップです。働けど働けどです。本当にわずかですが、大地で買い支えていくこと位しかできないのが悔しいです。

from "てん" at 2008年6月15日 22:04

てん様

いつも有り難うございます。「買い支えていく」ことこそ、最大の支援です。生産者にとって、こんな嬉しい便りはありません。大地のお米もけっして安くありませんので(他が安すぎる、と言いたいところですが)、悔しいなんて言わずに、胸を張って自慢してくださいよ。
働いて得た大事なお金を何に使う(返す)か、こそ今問われている哲学のような気がします。

from "戎谷徹也" at 2008年6月16日 23:31

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