2008年7月18日

農業後継者、庄内に集まる

 

大地を守る会の生産者たちが、地域ごとに、あるいはいろんなテーマで

集まって技術交流したり、親睦を深める 「生産者ブロック会議」 。

始めてからもうかれこれ20年になろうかと思うが、

この会議は特に内発的というか、内側から湧き上がるように発生した

未来志向型の会議である。

 

今年で6回めとなる 「全国後継者会議」。

次代を担う若者たちが、年に一回、各地の生産現場を回る格好で集まる。

7月17日、今年は山形・庄内での開催となる。

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今回の幹事団体は、月山パイロットファーム、庄内協同ファーム、

みずほ有機生産者グループ、コープスター会、の4団体 -の後継者たちである。

大地を守る会事務局の担当者も若手職員をあて、

ほとんどすべてを彼らに切り盛りしてもらう。

 


今回集まってきたのは、青森から長崎までの若手生産者たちを中心に、約90名。

「後継者」 とひと括りにしてしまっているが、顔ぶれを見れば、

学校を出てからそのまま実家の農業を継いだ者、

脱サラして戻ってきたUターン組、

農地を取得して一から農業を始めた 「新規就農者」

あるいはその予備軍のような 「研修生」、

農家の後継者と一緒になった、いわゆる嫁や婿どの、

親の農作業は手伝ったりはするが本業はまだ学生という若者、などなど。

年齢も二十歳 (はたち) から40代までの幅がある。

共通しているのは、有機農業の次の時代の担い手である、ということだ。

 

東北だからと、少し甘く見て来てしまったが、

この日の庄内は猛暑の中にあった。 暑い。

集合したと思ったら、早速、農場へ。 挨拶はそれからだと。

やるね、若者。

 

今回の講師は、この間あちこちで講演をお願いしている、能登のご老公こと、

西出隆一師、71歳。

 

畑に到着するや否や、土の診断に取り掛かる。

ここは月山パイロットファームのだだちゃ豆のほ場。

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批評はストレートである。 歯に衣着せない。

-ダメなものはダメ、とはっきり言うてやらんと失礼やし、だいたい本気になれんやろ。

 

ここから先は専門的な話になるし、生産者の沽券にも関わるので、

割愛させていただく (というより、私の力量が足りない) 。

 

続いて、庄内地方にしかない漬物用の民田ナス畑。

案内するのは月山パイロットファーム・相馬大さん (下写真の左から二人目)。

お父さんの一広さんからすでに代表を受け継いだ、若き経営者である。

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皮に含まれるポリフェノールの多さゆえに、畑の赤ワインとも称される小丸ナス。

名作 『蝉しぐれ』 や 『たそがれ清兵衛』 などでファンも多い庄内出身の作家、

故・藤沢周平が愛した茄子だ。

 

地元では 「もってのほか」 と呼ばれてきた食用菊の畑で、

やはり診断する師。

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土壌診断で出された数値からの判断だけでなく、

葉や根や樹盛などの状態から、どういう要素が足りないか、あるいは多すぎるか、

の指摘が続く。 しかもいちいち、ハッキリしている。

「あっちの列は出んが、こっちは出る。 100%出る。」

害虫の発生を予測しているのだ。

 

畑回りの後は、座学。

ここでも師は、土壌診断の必要性と、見方・読み方・活用の仕方を解説する。

意外と、つまらないと思えるような質問でも、

素直に聞いた若者には、けっこう丁寧に対応していたりする。

本当に 「教えたい」 人なんだ。

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東京大の農学部を出てから、ひたすら実践で 「土と植物と人為の関係」 を

極めてきた。 西出さんをカリスマのように師事する農民が、今増えている。

師に言わせれば、「農薬を使うな、というより、いらん!」 となる。

農薬というのは、安全か否かの前に、

いい野菜を作る上で目を曇らせる存在のようなものらしい。

有機農業は科学の時代に入っている。 しかも農学の最先端として。

 

若者たちよ。 極められるか。

大地を守る会では、西出隆一師を、とことん使い倒したいと思っている。

それは西出さんの希望でもある。

冷静に、吸収し切ろうではないか。

 

庄内協同ファームの若者たち。

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いいね。 農民運動から始まった暑苦しい親父たちは親父たちの世界として、

自らの意思で農業を選んだ、明るい連中である。

しかも、次の世代が生まれている。

 

夜は延々と飲み続け、朝の4時を過ぎたところまでは記憶している。

二日目 (今日) は朝からどしゃ降りだったらしく、

私のあずかり知らないところで、現地回りは中止され、

座学の継続となった。 私はフラフラしながら途中から合流する。

内容は・・・・・レポートできない。

 

最後に、庄内協同ファーム、高橋直之・紀子夫妻のラズベリー農園を訪ねる。

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ラズベリーの摘み取り体験もできる農場。 ジャム加工にも挑戦している。

僕にしてみれば、生産者のお嬢さんが彼氏と始めた農園という感覚で、

お母さんと談笑する。

「前にのォ、私たちがエビさんにヘチマ水を強引に売り込んだようなことがのォ。

 今度はラズベリーのジャムを娘が売り込むと思うんで、よろしくお願いしま~す。」

・・・・・ウ~ン。 嫌な予感がしてきた。

とか思いながら、いざという時のために、ツーショットを撮っておく。

撮っておく、ということ自体が、すでに誘導されているような気もするのだが・・

 

高橋夫妻 -僕には富樫英治・裕子さんの娘さんと彼氏- が始めた

はらぺこファーム」。

ブログがあります。 よかったら覗いてみてください。

新米農家のスローな一日だって。 いいなぁ。 親父たちは走り過ぎたのかな。

 

 



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