2008年7月 4日

第12回 全国米生産者会議

 

7月3日(木)、千葉県は佐原市に全国から米の生産者が集まってくる。

大地を守る会の 「第12回全国米生産者会議」 開催。 今年の参加者は73名。

 

全国に散らばる大地を守る会の米の生産者が年に一回集まって、

栽培技術やら各地の最新情報やら農政やらを語り合って、

普段見れない他地域の仲間のほ場から何かを学ぶ、という貴重な機会になっている。

「この会議だけは外せない。 オレにとって一年分の活力を貰う場だから」

なんて言ってくれる生産者もいる。

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今回のゲストは、日本不耕起栽培普及会会長・岩澤信夫さん。 76歳。

耕すことが当たり前の作業体系にある日本の水田稲作の世界にあって、

あえて 「耕さない」 栽培技術の普及に努めてきた。

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不耕起栽培の詳細を解説するのは、ちょっと私の手に余るので省きたい。

安易に説明すると、かえって疑問が湧いてきたりするんじゃないかとも思うし。

とか言いながら、簡単に言ってしまうと......

あえて田んぼを耕さないことによって、作業 (コスト) の省力化をはかる。

耕さないので土が固くなるが、前年の切り株なんかが残っている上に田植えをすると、

苗は根を張ろうとして、固い土を突き進み、強い根と茎をつくるようになる。

耕さないために、その根穴の構造が残り、酸素も残り、

保水性も排水性もよくなる。 干ばつにも長雨にも強くなる。

前作の稲ワラや残渣を残すことで、土壌表面を覆い、風雨による土壌流出を防ぐ。

また、そのまま水を張ることで、ワラや残渣は土中ではなく水中で分解が進み、

プランクトンが大発生して生物が豊富になる。

害虫と天敵 (益虫) のバランスがとれると、害虫も悪者ではなくなる。

耕さないことで、メタンガスの発生が抑えられる。

-などなどの効果が語られている。

 

10年ほど前に岩澤さんの著書を読んだ時は、除草剤の使用が前提になっていて、

しかも具体的な商品・ラウンドアップが推奨されていたりして、疑問を感じたものだが、

その後、岩澤さんは冬に水を張る 「冬期湛水」 を取り入れることによって

乗り越えたようである。

冬期湛水によって、イトミミズが増えて、土の表面がトロトロになって、

雑草の種は沈んで発芽できなくなる、という仕組み。

 

なかなかいいことづくめのような話であるが、

実際には、そう簡単にどこでも誰でもうまくいくとは限らないようだ。

冬期湛水だって、どこでも勝手に水を引けるわけではない。

それにどうも、他の有機栽培の技術を全否定するような語り口は、気になるところだ。

たとえば-「畜産由来の堆肥には動物薬が含まれているので危険である。

       そんな堆肥を使った有機栽培の米は食べられない」

十把ひとからげ、である。

有機栽培の技術のなかには、繁殖牛の厩肥を使うという考え方がある。

肉として仕上げる肥育牛と違って、子牛を育てる繁殖牛は、

粗飼料 (牧草やワラなど) 中心で育てられ、それを五つの胃袋で反芻して

乳酸菌を増やしている。 当然糞には乳酸菌が多く含まれている。

これに米ぬかを混ぜると乳酸菌はますます増える。

乳酸菌は雑草の繁殖を抑える効果があると言われている。

 

しかし耳学問でしかない私などは子供のようで、そこはプロの生産者たち。

「まあ参考になるところは取り入れさせていただく、ということかな」

冷静に読み取ろうとしている。

毎回こんなふうに、いろんな講師を招いては、各自各様に研鑽を深めてくれている。

 

今回の受け入れ産地となった佐原自然農法研究会の面々。

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代表の篠塚守さん (左端) も冬期湛水に取り組んだが、

野鳥が増えたと同時に猟師までも集まってきて、

危険だといわれて止めざるを得なかった、とのこと。

こういう生々しいゲンバ的な話題で盛り上がるのも、生産者会議ならではである。

 

米会議の夜は、「日本酒」 である。

しかし、良い酒は悪酔いはしない。

 

翌日は、ほ場視察。

不耕起・冬期湛水を実践する藤崎芳秀さんの田んぼを見学する。 

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アカガエルがたくさんいる。

イチョウウキゴケの姿もある (左上のV字型の浮き草) 。

ともに千葉県レッドリストでの最重要保護生物 (絶滅危惧種1類) に指定されている。

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びっしり繁茂しているのは、アゾラ (アカウキクサ) 。

窒素を供給してくれる 「水田の大豆」 とも言われている。 

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一般栽培の田のイネを抜いて、比較する岩澤さん。

たしかに力強い。

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みんなが何を持ち帰ったのかは、これから産地を回りながら確かめることになる。

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最後は、香取神宮を参拝。 豊作を祈願して、解散。

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来年は、福島での開催となる。

再会を約束して別れる。 「負けねぇぞ」 の競争心を秘めてね-

 

そして実は、今回は解散後にもうひとつの仕掛けがあって、

僕は20名くらいの生産者を連れて、今度は東京・霞ヶ関へと向かったのであった。

 



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