2008年8月 5日
有機JAS制度の検討委員会 ‐第5回
今日は、5回目となった有機JAS制度の検討委員会。
正式名称は 「有機JAS規格の格付方法に関する検討会」 という。
霞ヶ関・農林水産省第2特別会議室。
開会前なら撮影OK、ということで一枚撮らせていただく。
12名の委員が、アイウエオ順に座らされる。 私は写真右端から切れた手前の席。
正面の傍聴席は、認証団体や生産者、関係業界の方などでいつも一杯になっていて、
それだけ関心の高さが窺える。
この検討会も2月から始まって5回目となり、全体の意見集約の段階へと進んできた。
しかし、たった5回×2時間程度の審議で、もう 「とりまとめ」 である。
毎回ペーパーの説明時間などもあり、発言できる機会は1~2回程度で、
この点はあとで言わせてもらおうなんて考えようものなら、
ついに機会を逸してしまったりして、相当にストレスの溜まる会議ではある。
民間から委員を集めて開かれる検討会というのも色々あるが、みなこういうものなんだろうか。
ここでは審議の詳細な説明は省かせていただくが、
感想をひと言で述べよと言われたら、
どうも原則論 (あるいは理想論) と現実論のキャッチボールで推移してきている、
という印象になろうか。
たとえばこんなふうに。
① 生産者の文書管理や記帳などの負荷が重過ぎる。 これでは有機の (認証を取得する)
生産者は増えない。 もっと作業やコストを軽減できる手法を考えるべきだ。
→ ハードルを低くすると制度の厳正さが失われ、社会的評価が得られなくなる。
また認証機関や検査員が生産者に管理手法の改善をアドバイスするのは
「コンサル」 業務にあたり、公正さが保たれなくなるので許されない。
② 認証機関の判定や判断にバラつきがありすぎる。 たとえばある資材について、
有機に使っていいものかどうかを判断する際に、認証機関の見解がまちまちでは、
生産者は混乱する。
→ 資材の調査と判断は、あくまでも生産者の自己責任で行なわれるべきものである。
また同じ資材なら、どこでも誰でも無条件に許容されるものではない。
あくまでも、それを使わざるを得ない個別事情を勘案する必要があり、
そこから下される判定は一律なものではない。
→ 「やむを得ない事情」 を判断できるのは生産者であって、
待ったなしの状況で、認証機関が本当にそんな事情を判定できるのか。
その資材の 「原材料と製造工程」 から、その資材が 「有機性を損なうものではない」
という、有機JAS規格に対する客観的な適否判定をすればよいことではないか。
③ 有機農業を広げてゆくためにこの制度があるはずだが、その視点なく、
ただ制度の細かい見直しをしても意味がない。
→ 有機認証制度とは、あくまでも公正で客観的な審査・認証の仕組みであって、
有機農業の推進は 「有機農業推進法」 の枠でやるべきことだ。
あるいは、これは生産者のためにあるのか、消費者保護のためにあるべきなのか・・・
そもそもが、2000年から始まった認証制度で、
監査 (検査) および認証 (判定) は民間機関に委ねられたため、
いろんな立場から認証機関が林立する状況が生まれ、
認証する方もされる方 (生産者・メーカー) も、認識やスタンスに誤差があって、
「意図せざる規格違反」 や 「業務改善命令」 が後を絶たない。
そこで今回の制度運用上での見直しとなったわけなのだが、
委員それぞれの 「立ち位置」 によって、改革の視点も異なれば、
「正論」 も微妙に温度差のようなものがある。
誰が 「原則」 派で、誰が 「現実」 派などと簡単な色分けもできず、
譲れない原則と見つめなければならない現実を、それぞれが抱えているような
「もどかしさ」 が続いている。
一方、であるがゆえに、ただ理想論を偉そうにぶつだけの意見は、
逆に鼻白むだけであったりする。
会議の途中から雷が鳴り始めた。
( この局所的集中豪雨によって、下水道工事現場で作業員の方が亡くなられたと
知ったのは夜のニュースだった。 )
問題の根っこを探らないと有効な解決策は見い出せない。
幸い、認証機関側から相当に練った 「改善のためのプラン」 が示されてきて、
まあ何とか落としどころが見えてきた感がある。
あと一回で、この検討会としての意見の 「取りまとめ」 に入る。
これまで出されたいろんな視点に対しての意見や 「まとめ」 への見解は、
自分なりにちゃんと整理して提出しなければならない。 ただ口で言うだけでなく。
「もどかしい」 とかなんとか不満を言うヤツには、その義務があるんだよ。
というのが自分のスタンスだったしね。
生産者の不満やストレスは一向に解消されないかもしれない。
ただこの委員会で、何かひとつは、前進したものがあったと言わせなければと、
焦り始めている。