2008年9月アーカイブ

2008年9月30日

ムーラン・ナ・ヴァンの加藤浩一、優秀賞受賞

 

さる9月17日、東京・日本菓子専門学校において、

クリームチーズを使用したケーキ・コンテストが開催され、

大地を守る会のグループ企業である (株)フルーツバスケットが運営する

「ムーラン・ナ・ヴァン」 (フランス語で 「風車」 の意味/静岡県三島市)

のパティシエ・加藤浩一君が、最終審査の結果、

みごとに優秀賞を受賞した、との一報が入りました。

めでたい話なので、ここでも紹介します。

 

主催は、BUKOアーラフーズジャパン。

BUKOは高級ナチュラル・クリームチーズで業界では良く知られているブランドで、

アーラフーズ社はEUでは最大の乳製品メーカーだそうです。

 

加藤君の作品は、ベースこそデンマーク産のクリームチーズですが、

お店本来のコンセプトである地元産の果物や、できるだけ安全性にこだわった素材を

使ったもので、そのことも高く評価されたようで、嬉しい話ですね。

 

このコンテストにはスカンジナビア航空とロイヤルコペンハーゲン・ジャパンが協賛していて、

加藤君は、輝かしいトロフィーと副賞にデンマークまでの往復旅券をゲットした模様。

コンテストの内容や受賞者及び作品についての詳しい紹介は、

近く柴田書店発行の専門誌 『カフェ・スィーツ』 などで紹介される予定とのこと。

詳細は、ムーランのHPおよびBUKOのHPを、ぜひご覧ください。

BUKOのHPでは、審査の動画や審査員評もアップされています。

 

ではHPからお借りして、加藤君の作品を-

 「mangue fromage au poivre noire」 

 

おめでとう、加藤君。 

初挑戦で受賞とは、我々も嬉しいです。

 

皆さま。 三島にお越しの節はぜひムーランにもお立ち寄りください。

 



2008年9月28日

ぼくにとっての 『東京集会』

 

9月26日の夜から昨日 (9/27) のお昼まで、

年2回 (春・秋) 恒例の職員合宿が幕張で行なわれる。

今回のテーマは、毎年2~3月に開催している 『大地を守る東京集会』 について。

年に一度、生産者と消費者が一堂に会して行なわれる、

大地を守る会にとって最も大切なイベント。

もちろん生産者と消費者の交流はいろんな場所で活発に行なわれているのだが、

『東京集会』 は、いわばその年の集約のような、"みんな集まれ~" の場として、

30年以上続いてきた。

 

すでに来年に向けての準備がスタートしていて、

今回の合宿は、職員みんなで東京集会を振り返り、

来年に向けて様々な思いやアイディアを出し合ってみよう、という企画で行なわれた。

これ自体が、職員にとってのトレーニングでもあるし、

東京集会の成功に向けて、気持ちをひとつにまとめていく仕掛けかと理解した。

 

そこでなんと、東京集会の思い出を3分で語れ、という宿題を仰せつかった。

あなたにとっての 『大地を守る東京集会』 とは- 


自分にとっての東京集会・・・・・振り返れば、もう26回経験している。

思い出を数え始めたらきりがないよ、とか思案しながら、

いつの間にか振り返ってしまっている。

 

大地に入って3ヵ月後の、初めての東京集会は、前会長・藤本敏夫さんの退任挨拶だった。

千葉の鴨川に、夢のような王国を建設するとか言ってる。

そうか、国王になって圧制を・・・・・と思った職員は僕一人ではない。

そしていきなり小グループに分かれての討論会の司会をやらされた。

テーマは、「余剰と欠品を考える」。 我々にとっての永遠の課題である。

怖そうな消費者と生産者に囲まれ、入社して3ヶ月の事務局員は汗だくになっていた。

2年目には、二日間ぶっ通しての司会を任される。

いきなり若手に振る、という伝統は、すでにこの頃からあったんだね。

3年目は、初の実行委員会形式での運営をすることになって、自分で手を挙げた。

消費者会員にも集まってもらって喧々囂々やりながら、

実現したのが、1日を地区に分かれて交流する 「地区集会」 だった。

これは今でも続いている。 1985年のことだ。

 

以来、いろんな役回りを、まあ逃げずにこなしてきたと思う。

パネルディスカッションの司会もやった。 パネラーを受けたこともある。

壇上で泣いたこともある。

 

1994年には、晴海の見本市会場を使って 『 森と海と大地のDEVANDA (出番だ!) 展 』

というのをやった。 これは他団体も一緒になって  " 第一次産業の復権 "  を掲げた

一大イベントになった。 大臣や国会議員もやってきた。

僕は主催者としての仕事に加えて、大地を守る会のブースの仕事もあって、

10個くらいのファイルを同時に進行させていた。

どこにも逃げられない、あの緊張感は今でも覚えている。

僕の人生にとっても、かなり大きなメモリアル・ワークだった。

  「無理を言い 無理をするなと無理を言う」 -会場のトイレにあった落書きである。

  社長さんだろうか。返歌も- 「そんな社長は 日本一!」

  飾られた会場の裏で、ドラマは展開されている。

 

地区集会を、エビの思うように使っていい、とか言われたこともあった。

かなり気合い入れて考えたが、ふたを開ければ、時は狂牛病の真っただ中にあり、

思い描いた構想が空回りしたことも、苦い思い出として残っている。

 

思い出の一つ一つに何がしかの教訓が残っているが、

まとめて言えば、こういうことになる。

年に1回、同じ時期に同じイベントが連綿と続いて、そこで何がしかの仕事があてがわれる。

伝統の重みも感じながら、新しい風も吹かせたいとか考える機会。

そんな場があるということは、大地を守る会の職員にとって、

いろんな意味で自分の力を測ることができる、とてもシアワセなことである。

同じ仕事をしても、去年より上手に仕上げられる。

同じ質問を会員から受けても、今年はもうちょっと責任感を持って答えられる。

参加者への対応も、心に余裕を持ってできる。

この一年で自分がどこまで成長したかを見つめられる、

そんな場があることは、本当にシアワセなことなんだよ。

 

時間をすっかりオーバーしてしまって、言い忘れたことがある。

集会が成功するかどうかは、実はかなり我々事務局員の心 (気持ち) にかかっている。

どんなにシャレた集会をやっても、我々の立ち居振る舞いが悪ければオジャンである。

どんなにダサい集会であっても、我々の心でカバーできれば、

それは時に感動につながることもある。 それを僕は経験で知っている。

だから続いてこれたんだと、古株に数えられるようになって、僕はそう考えている。

心して取り掛かろう。

 

今年も若手中心で、しかも入ったばかりの新人を抜擢するという

今までにもない斬新な構成での実行委員会が始動した。

今回の合宿では、ワールドカフェ方式とかいう、

テーブルを回りながら意見をまとめていくという手法が用意されていて、

それはそれで楽しませてもらいました。

さあ、どんな 『東京集会』 が出来上がることだろうか。

 

来年の 『大地を守る東京集会』 は、2月28日(土) ~ 3月1日(日) 。

1977年の第1回- 『地球は泣いている 東京集会』 から、数えて33回目。

地球は泣いている・・・・・か。

このコピーを超えない限り、東京集会は終わらないんだろうな、きっと。

 



2008年9月26日

有機JAS検討会、終了

 

おとといは農水省を追及したと思ったら、今日は省内での会議に参加する。

「有機JAS規格の格付方法に関する検討会」 -最終回の審議である。

 

2月から始まって、今回まで6回。 

各2時間、述べにして12時間強の会議で、有機JAS制度の改善の方向性をまとめる。

前回も書いたけど、1回の会議で発言できる機会も少なく、

もう 「とりまとめ」 か、というもどかしさがついに抜けないまま来てしまった。

力不足の点を反省しつつ、でも少しは意見を反映させることができたようにも思うし、

複雑な心境、便秘気味の 「検討委員会」 体験だった。


検討会で出された意見は幅広く、ともすれば拡散する傾向があった。

特に、有機JAS制度の正確な運用のための見直しという観点と、

「有機農業の発展のために」 語られる視点との微妙なズレが印象に残った。

流れとしては、検討会のそもそもの開催目的が、認定機関や認定事業者

(認証を受ける生産者・製造者等) に違反が後を絶たないことに端を発していることから、

 " 制度をどう信頼されるものにするか " の観点での見直しに絞られていった。

 

時間をかけて論議されたテーマには、次のようなものがあった。

1)登録認定機関 (第三者認証団体) の判定のバラつきをどうするか。

2)生産者にとって有機JAS規格が求める規程や文書管理は煩雑で、負担が大きく、

  このままでは有機JAS生産者 (=有機農産物) は増えない、という懸念について。

3)様々な農業資材が有機JAS適合品とか称されて販売される現象があり、

  生産者にその適否を判断させるのは困難な面もあり、対策が必要ではないか。

 

1)については、検討会の途中で、認定機関の委員より

『登録認定機関の業務運営に標準をつくるために』 という

いくつかの認定機関が共同で作成したマニュアル文書が出されたことによって、

これを各認定機関も参考にしながら、意見交換を進めて改訂・発展させ、

認定業務のバラつきを解消していくことを望む、という方向で整理された。

 

2)については、さすがに検討会で具体的な手法までは討議できず、

「効率的な記録の取り方を認定事業者自ら工夫するのはもとより、登録認定機関においても

認定機関同士の情報交換を行なうことなどにより、認定事業者のミスを防止したり、

合理的な記録方法を工夫し、認定事業者へ情報提供することを期待したい。」

というような表現でまとめられた。

何も書いてないに等しい、と感じる向きもあるかもしれない。

ただ少なくとも、認定機関にも、生産者の負担を軽減するための情報交換・情報提供を求める、

との認識が示されたわけだ。

認定機関に禁止されているコンサル業務との兼ね合いが気になるところだけれど、

このテーマは国に期待することではなく、我々自身の手で

(認定事業者と認定機関の日々の創意工夫で) 進めることとして、僕は了解した。

 

3)については、誰もが容易に資材の適否を判断できるような表示方法や制度を求める

声も強かったが、とりまとめでは、

「有機JAS適合培地など資材メーカーが、曖昧な根拠で表示をすることについての

表示ルールについて、何らかの規制を行なうべき」 の文言にとどまった。

個人的には農業用資材も農産物と同様に 『有機JAS』 の対象にすれば事足りるのでは、

と思うところであるが・・・。

 

「検査員のレベルアップのための研修システムの構築」 も盛り込まれた。

" (検査業務だけでは) 食べられない " 現状が委員から強く訴えられた経過もあったが、

「その状況が改善されることが優秀な検査員を生む土壌として必要」

という指摘までで終わらざるを得なかった。

 

総じて、生産者・メーカー、消費者、流通、研究者という各立場から出された様々な意見を

上手にまとめてくるあたりは、さすが官僚の方々、と感じ入るところだが、

やることはと言えば、すべてこれからである。

生産者と話し合い、認定機関ともやり取りしながら、改善を重ね、

信頼を確保するとともに、どう 「有機農業の発展」 につなげてゆくか (つなげられるか)

にかかっている。

 

半年強で6回の審議、という限界を感じつつ、農林水産省の会議室をあとにする。

鹿児島から毎回参加された生産者、

今村君雄さん (姶良町有機農法研究会会長、大地を守る会会員でもある) と、

別れ際に交わした、何ともいえない複雑な苦笑いが、残像として残った。

 

今村さんは、最後の最後に手を挙げ、こう言ったのだ。

「食べものを大切にすることが、すべての根幹ではないですか!」

 

「とりまとめ」 の文章は、保田茂座長 (兵庫農漁村社会研究所代表、元神戸大学教授)

が最終調整し、各委員との確認後、農林水産省消費・安全局長に答申として提出され、

すべての認定機関に配布されることになる。

パブリックコメントにもかける、とのことである。

 



2008年9月24日

汚染米緊急集会

 

久しぶりに爽やかな秋晴れの朝を迎えたのに、

気分はブルーグレーのような雲のなかにあって、

午後、永田町の衆議院議員会館に向かう。

 

『汚染米 農水省追及緊急集会』 というのが開かれたのだ。

全国43の団体が呼びかけ人になって、100人近い人が集まっている。

議員会館の会議室もいっぱいで、座ったが最後、席を立つのも息苦しいような雰囲気で、

この事件に関する農水省とのやり取りが始まる。

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現場では気づかなかったけど、追及の及の字が違ってるね。

ま、そんなことは許容範囲として、

許し難い事態となってしまった責任を農林水産省がどのように受け止めておられるのか、

確かめたくて参加したのだが、

結果はさらに虚しく、喩えようのない複雑な怒りを抑えながらの帰途となってしまった。

 


農水省へのこちらからの質問は事前に提出してあって、

回答は文書で出して欲しい旨伝えてあったのだが、紙は一枚も用意されず、

すべて口頭での回答となった。

 

質問は多岐にわたった。

以下、いくつかピックアップしてご紹介する。 ( )内は私の解説。

ちなみに、会場の人たちは 「汚染米」 と言い、農水省は 「事故米」 と言う。 

前提から、認識というか視点の違いが存在する。

 

★汚染米の転用や処理については、どのような法律に基づいて、どのような基準で、

 どのような用途・方法がとられるのか?

  -物品管理法に基づき国が管理。 事故米は食用不適と判断し、用途を決定して

   指名競争入札にかける (少量の場合は相対で売買契約もある)。

   用途を決めるのは農政事務所の判断 (要するに人による現場判断か)。

   「事故米」とは、水に濡れたり、カビたり、袋が破けたり、基準値以上の残留農薬が

   あったもの、など (数字から見ても、とても杜撰な管理体制のように思える。

   政府米倉庫ってちゃんとしたものだったと記憶しているのだが・・・)。

★ミニマムアクセス米 (MA米:最低限の輸入義務量-正確には「輸入機会を与える」量-)

 の輸入開始以来の年ごとに、輸入量、購入総額、事故米発生数量、事故の内訳、

 処分方法、処分先の業者名を明らかにされたい。

  - (ばあ~っと直近5年間の数字が報告される。

    処分先の業者については、この間公表された企業名が列挙されたのみ。

    「事故米」の数量と残留基準を超えた米の数量の計算が合わず、質問したところ

    「2年後、3年後に再検査して発見されたものが追加されているので、

    年度ごとでの数字は合わない部分もある」 との事。 これまた釈然としない。) 

★汚染米の輸出国への積み戻しはどうしてできなかったのか?

  -相手国の港を出た時点で契約は成立するため、返却は困難。

★こちらの検疫検査で引っかかって積み戻す事例はたくさんあるはずだが?

  -MA米については現地で (委託された商社による) 検査・確認がされ、

   現地で契約となっている。

★アフラトキシン汚染米の動物飼料への転用はあったか?

  -それはない。 焼酎に使われた2.8トン以外はすべて在庫を確認している。

    (検査で発見された数量に関しては、ということで、見つけられなかった汚染米

     も相当あるのではないか、との疑問も出されたが、

     さすがに、見つかってないものを 「ある」 とは言えず、ここまで。)

★汚染米を海外援助にまわしたことはないか?

  -ない。

★(MA米でない) 国内産の事故米の実績と処分方法を明らかにされたい。

  -(年度ごとの数字が読み上げられ、処分方法についてはMA米での回答と同様。

    ということは、国内産の事故米についても疑惑が残る。)

★カドミウム検査で基準を超えたものはどのように処理されているか?

  -ゴミ処分場で出た焼却灰といっしょに固めて人工骨材になるものと、

   合板用の糊の増量剤として使われている。

   米は粉砕し、(転用されないよう) 着色した上で、

       国が直接、合板用糊の加工業者に販売するので、トレースもできている。

   (カドミウム米と事故米を処理する部署は同じ 「総合食料局」 内にあるのだが、

    連携はもちろん、情報交換もまったくされていない。 我々には理解不能。)

★非食用とした米の入札に、なぜその用途先の専門業者に限定せず、

 穀物業者を参加させていたのか?

  -そういった加工用の販売先を持っている業者なので・・・・・

★そもそも業者に対してどんな検査をしていたのか? 96回も行って、なぜ見抜けなかったのか?

  -検査はしていた。 していたが見抜けなかったということ。

   (具体的にどんな検査方法をとっていたのかは結局不明のまま。

    これでは 「ただお茶飲んで出された饅頭でも食ってたのか」 と罵られても仕方ない。)

★汚染米を工業用糊に回したというが、具体的に何に使われたか?

 使ったメーカーまで確認しているか?

  -糊といっても普通の一般的に使われている糊ではなく、合板用の接着剤である。

   販売先については、現在調査中である。

     (絶句! 調査中なのに何故用途先が明言できるのか。

     そもそも最初の発表からもう20日も経ってしまっている・・・イライラが募る。)

   調査の結果はお渡しする (ことをしぶしぶ約束)。

 ★汚染米はトレース可能な処理方法が必要だ。農水省の対応策を明らかにされたい。

   -これまではちゃんとした検査のマニュアルがなかったので、早急にマニュアルを

    作成するとともに、検査にも専門知識を持った者をあてるなどの対策をとりたい。

 

!!! ついに怒り爆発。 ぶち切れ状態で質問する。

それはいったいどんな専門知識のことを言っているのか?

では過去96回も出向いた職員は、なんの知識を持って出かけていたのか?

そもそもこの問題は、特別な専門知識やマニュアルを必要とするレベルではない。

売った先を確かめ、そこでの処理と内容を作業記録等で確認しながら

末端まで辿ってゆく、という真面目な人なら誰でもできる作業である。

それをしていたのではなかったのか。

私の団体は、農水省から監査を受ける立場にある有機農産物の認定事業者であるが、

もうやってられない!

 

ここでようやく 「申し訳なく思っています」 の発言を引き出す。

 

目の前の個人を責めているのではないのだが、あまりにも情けない公僕の姿ではないか。

トレサビリティの問題ではなく、国民に対する責任感の問題である。

リスク・コミュニケーションの問題ではなく、正直であろうとする姿勢の問題である。

 

誇り高き和菓子職人が頭を抱え、

事故米の食品転用に手を染めてしまった仲介業者の経営者が自殺し、

数多くの食品会社が経営の危機に瀕するような事態を、誰がつくってしまったのか。

そこで働く従業員やその家族らがどんな思いで日々を過ごしているのか、

思うことはないのだろうか。

これは 「事業者か、消費者か」 というような二者択一の問題では決してない。

食のサプライチェーンをしっかり見ることで、

事業者と食べる人の間に信頼を確保し、ともに守ること、それが国の責任だろう。

 

出口が見えない。

 



2008年9月22日

ブナでも植えて、気分を変えましょうか。

 

「事故米」 とか 「汚染米」 とか、泣けてくるような文字に振り回されていたら、

今度は 「メラミン食器」 ならぬ 「メラミン食品」(朝日新聞のタイトルによる)  が登場した。

これも中国で問題になってから、最初は 「輸入はされてない」 から始まって、

やっぱり使われていたことが分かって、大量の回収へと至る。

これまでいったいどれだけの怪しげな食べ物が人の体に入り、

そして差し止められ、捨てられていったんだろう。 

その都度、「食べても健康危害は起きません」 と説明を受けながら・・・

そのへんは、リスク・コミュニケーションの専門家と、ちょっと突っ込んで議論したいところ

ではあるが、いま自分のパトスは別な充電が必要な状態になってしまっている。

 

思考も進まないところで、ちょっと気分を変えて、ご案内をひとつ。

 

11月3日、

秋田の山で、一緒にブナの木を植えてみませんか。

 

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  (ブナの森を育てて15年。「ライスロッヂ大潟」代表の黒瀬正さん)

 


去年もレポートした、恒例の 「秋田・ブナを植えるつどい」 です。

こちらは今年で16回目となりました。

以下、大潟村の生産者たちが中心になってつくった主催団体

『馬場目川上流部にブナを植える会』 からのメッセージです。

 

  近年の気候変動により、猛暑の夏、暖かい冬など、さまざまな現象が起こっています。

  暴風や集中豪雨も激しさを増すなど、地球温暖化の影響を身近に感じるようになってきました。

  森林は、酸素を供給し、地球の気温も調節してくれます。

  水田や畑の土をつくり、海の生物を養い、

  山くずれや水害から守ってくれているのも森林なのです。

  ところが今、日本のブナをはじめとする広葉樹の森はほとんど失われつつあり、

  私たちの住む馬場目川の上流部もその例外ではありません。

  その結果、目に見えて河川の水量が減少し、

  動植物はもちろん、私たちの生活にも大きな影響を及ぼしています。

 

  会では、源流部の国有林スギ伐採跡地に

  ブナを中心とする広葉樹の植林を行なっています。

  また、春先の雪起こしや真夏の下刈りなど、

  ブナが無事生長するまでの保育作業も続けています。

  これまで、皆さまのご支援・ご協力により、

  ブナやミズナラ、トチなど12,600本の苗木を植林することができました。

  おかげ様にて、15年前に植えた苗木は、年々たくましく成長し、

  幹周り50~60センチ、樹高7~8メートルの若木となっています。

  若木の森では、野鳥がさえずり、木陰にはカモシカが訪れ、

  野ウサギの子どもや沢カニなども観察されています。

 

  今年も馬場目川源流部と、みんなの心にブナの森をよみがえらせるために

  植林を行ないます。

 

●日程は、11月3日(月:文化の日)。 

  午前9時半、秋田県五城目町役場前出発 ⇒ 植栽時間は10時半~11時半 (雨天決行)

  ⇒ 昼食交流会 (餅つきやミニコンサートなど) ⇒ 午後2時頃解散。

●植栽場所は、五城目町馬場目沢国有林糸沢。

●持参するものは、昼食と雨天対策 (雨合羽等) 程度。 鍬は事務局で用意します。

●参加費は、ブナ券 (1口=1,000円、1口以上) の購入のみ。

   ※ ブナ券は、ブナの森をつくる資金として使われます。

 

なお私たちは、前日にお米の生産者である黒瀬正さん宅に合流し、楽しい前夜祭を行ない、

「ライスロッヂ大潟」 (黒瀬さん宅を改造した宿泊施設) に宿泊します。

(宿泊者多数の場合は大潟村内の宿も利用します)

参加希望者は、11月2日のうちに、JR奥羽本線八郎潟駅までお越しください。

列車の時間はご都合に合わせていただいて結構です。 駅までお迎えに参上します。

ライスロッヂ利用者には、一泊1,000円の維持費を頂戴いたします。

植栽当日も、その後も、ロッヂの利用は可能です (長期滞在も可)。

 

お申し込み・お問い合わせは、本ブログのコメントをご利用ください。

個別に対応させていただきます。

 

楽しくて、未来への希望を感じさせる一日になることを、お約束します。

 



2008年9月20日

底なしの汚染米

 

いったいどこまで落ちていってしまうのか......底なし沼の汚染米問題。

「農水省に責任はない」 とか開き直っているうちに、

とうとう仲介業者の経営者に自殺者が出て、

コンビニおにぎりが10万個、学校給食45万食......もはや言葉が見つからず、

何も書けずに嘆息ばかりしてたら、何と!大臣&次官の同時辞任ときた。

 

一週間前に、この大臣には退陣願いたい、と書いたけど、

今度は、ホンマに辞めてどないすんねん! の心境である。

もう一度書くけど、

「私の責任にかけて、問題を切開し、徹底的に改善措置をとる」

 と、どうして言えないのだろうか。

これじゃ、敵前ならぬ国民からの逃亡ではないか。

就任したのはつい先月のこと。

「私を選んだのは正解です」 と胸を張ったのは、あんたですよね。

こうなったら言い放ちついでに、

どうせならその胸のバッジも外すべきじゃないか、くらいは言わせてもらおうか。

 

その間にも、米国産豚肉に中国産松茸と、国産に化けていた話が

ちっちゃく報道されてたり、かたやウナギ業界にも自殺者が出たり、

報道の裏で相当な数の食品会社が潰れていってるんじゃないか、

なんて考えこんでしまう。

 

・・・・・・・・・・だめだ。 何も書けない。 頭の中が、まだ整理できないでいる。

「劇場政治」 の舞台裏は、堕落と絶望で渦巻いているようだ。

 

   現実が信じ難いものである一方、

   偽善と妄想はいちばんしっかりした真実として重視される。

    ( ヘンリー・ソロー 『WALDEN:森の生活』/真崎義博訳  より)

 

一世紀半も前の言葉である。

 



2008年9月16日

ケント・ロックからの手紙

 

『 Dear Daichi ; 

 大地を守る会の皆さま

 

 家畜の品評会や展示会は、アメリカの農業関係者にとって、

 自分の仕事を同業者や消費者に見せる素晴らしい場所となります。

 消費者や農業に携わる者の両方にとってもです。

 私の気持ちも、消費者や私と同じ仕事をしている人々と意見交換をすることで

 リフレッシュされます。 』

 

そんな語り口調で、ケント・ロックからの手紙が届いた。

カーギル・ジャパンの方が、ちゃんと翻訳して届けてくれた。

以下、こんなふうに綴られている。

 


食品のことを考えている人と会った忘れがたい機会は、

7月にアイオワ州デモインで行なわれた、若手のための全米アンガス牛品評会でのことです。

一人の女性と彼女の娘が、展示会場の近くで、卵を勧める展示をしていました。

" 牛だけ " のショーで卵の展示とは・・・・・

ケントは調べに行かなければなりませんでした。

 

私は卵の展示をしている女性のことを知りませんが、

おそらく農家の人で (牛の出品者であるバッチをつけていましたから)

鶏と牛を飼っているのでしょう。

展示されている卵は4-Hプロジェクトに関係していました。

( 4-Hは、政府も資金を出している組織で、農村地帯の若者、子どもたちに

 活動を通して農業を学んでもらうものです。 )

 

その展示は、実際は味覚テストで、

スクランブルエッグにしたスーパーで買った白い卵と、

おそらく彼らの農場で育てられた桜色の卵の味を比べるものでした。

 

これはすばらしい機会です!

大松さんや下河辺さんのようなすばらしい家畜生産者が育てた鶏や卵の効能を

日本で見聞きしていたので、私はこのような比較をしてみたかったのです。

このテストでは割る前/割った後の見た目やサイズ、色、卵の殻などの比較もありました。

また、料理の見た目や香りのテストもありました。

味覚のテストは私がやりたかったものですが、

普通のスーパーの卵を選んでしまうのではないかという不安もあって、

本当はやるのは怖かったです。

分別流通 (飼料を使用している) 農場の卵から作られたスクランブルエッグを

選ぼうとするのではなく、どちらの卵だと思おうが、

私の好みにあった卵を選ぼうとしたことを憶えています。

 

驚いたことに、味に違いがありました。

(私は東京でゲテモノバーを探していた男だということを頭に入れておいてください)

私は分別流通された桜色の卵を選びました。

その女性は、私が選んだほうが多数派だと言いました。

多くの人が普通のスーパーの卵と比べると、彼女の方を好んだのです。

このテストは、塩などで味付けせずに行なわれました。

この展示はとても良く、女性たちは消費者が彼女たちの製品をどのように理解し、

評価するのかを学ぶのに、純粋に興味があるようでした。

味覚テスト前の私は、卵の選択は気持ちの問題で、

味覚の問題ではないのではないかと思っていましたが、間違っていました。

良く世話され、良い飼料を与えられた鶏からの卵の味は、より良いのです。

 

今までレポートするのを控えていた理由は、

テストがどうなったか、女性から結果をもらうのを待っていたのです。

彼女は結果を送ると言っていましたが、まだ送ってきません。

もう最終結果をもらうつもりもないので、大多数の反応は私と同じだと報告します。

(直後にテストの結果も送られてきたので、別紙に記載しました。) 

                  ≪ 別紙は割愛します。ケントの想像通りなので。 ≫

 

もしこれが、アイオワの牛の品評会でのシンプルな味覚テストでなかったら、

食物の味が、どのように育てられ、取り扱われるかによって変わるということに

気づくことはなかったでしょう。

 

最高の食物は、最高の生産者と取り扱い業者から生まれます。

大地を守る会が食物を提供する人たちの中で最高の人々だということを見て学びました。

私の農業技術と私の農場も  " 最高 "  のカテゴリーにしたいと思っています。

私は大地の食材から作られた様々な料理をともに楽しんだ時、

私は世界最高品質の食物を味わったということです。

 

お客さんのために、良い品質の食物を生産してくれて、感謝しています。

ケント ロック

 

 

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                             (2008年6月19日: 『山藤』 西麻布店にて)

 

つねに探究心を怠らず、自身の経営と栽培技術を高めようとしている

アメリカ農民からの、ウィットも含ませたエールでした。 

彼のセンチュリーコーン (非遺伝子組み換えトウモロコシの品種) は、

今年も順調に育っている、とのことです。

 



2008年9月15日

収穫の歓び-体験田の稲刈り

 

今日だけは、病んだ世の中の事象は忘れて、楽しみたい。

大地を守る会の 「稲作体験2008」 最終ラウンド-稲刈り編。

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 5月の田植えから約4ヵ月。

か弱かった苗も、風雨や干ばつや低温や酷暑に耐え、立派に育ちました。

参加者も、待ちに待ったって感じで続々と集まり、

思いっきり稲作農耕民族のDNAを炸裂させてくれる。

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私が植えたイネが、実った! 

楽しいね、ホント。

 


助っ人兼指導者としてやって来てくれた、さんぶ野菜ネットワークの生産者たち。

すみませんね、出荷日に。

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稲刈り作業の手ほどきは、綿貫直樹さん。

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今日は鎌を使います。 聞く方もさすがに集中する。

 

いざ稲刈り開始。 子どもたちも活躍、です。

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よし! 上手。 成長の一瞬。

 

いても立ってもいられず、カメラなんか置いて、自分も作業に入る。

 

1時間強くらいで、13アールの田んぼの稲刈りを終える。

今年は、天日干しのはざ架けの竿が去年より一本分多い。

8俵 (480kg) はいきそうだ。 何とか面目立ったかな。

 

刈った束を全部竿にかけて、作業終了。

さあ、みんなで記念撮影しましょう。 この写真が、米袋に貼られることになります。

 

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ジャーン!って、君ねえ。 早く並んでっつってるでしょ。

 

ハイ、皆さま。 お疲れ様でした。 パチリ。

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作業のあとは昼食と交流会。

さんぶ野菜ネットの奥さんたちが、いろいろとおかずを用意してくれる。

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出荷からはじいた小さな里芋を使った 「おっぺし芋」 が美味い。

料理屋では 「衣かつぎ」 として出される立派な料理である。

 

毎回、田んぼの生き物の解説をしてくれた陶武利さん。

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生き物調査の結果をグラフにまとめ、

僕らが除草対策で失敗したと思っていた米ヌカ区で

イトミミズが増えていることを実証した。

来年の課題が見えてくる。

 

我らが地主、佐藤秀雄。 

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参加された会員から、「秀雄さんの顔が見たくって来ています」 なんて、

泣けてくるような落とし文句が出たりする。

こいつのどこがいいんだよ、とちょっと嫉妬したりして・・・

ま、「さんぶのゴローちゃん」 (※) に、ここは譲らざるを得ない。

     (※)倉本聡さんのドラマ 『北の国から』 の、田中邦衛が演じた主人公の名前。

 

帰る前に、子どもの記念写真を撮るお母さん。 「楽しかったね、田んぼ」 。

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来年もぜひ、来てください。

子どもの成長を見るバロメーターにもなる稲作体験です。

 

最後に、今年の実行委員の面々に感謝。

みんな休日返上のボランティアです。 

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ありがとう。 君たちのお陰で、もう僕の出番はほとんどなくなっちゃいました。

一人でガイドしてた19年前を振り返ると、ホント、よくここまで来たと思う。

来年は 「稲作体験20周年」 だからね。 ヨロシク!

 



2008年9月13日

ああ、怒り収まらず・・・・・

 

事故米(汚染米と言いたいが) をめぐって次から次へと出てくる事実は、

これまでの自分の知識なんか関係なく世の中が流れていたのかと思い知らされているようで、

もういっぺん頭をニュートラルに戻して、この問題を俯瞰し直す必要がある。

この国は相当な病いに侵されているか、

ちょっとしたカラクリに振り回されて泥沼に陥ったか、見極めもつかないまま、

誰も彼もテキトーな論評でお茶を濁していて、どれも納得ゆかない。

 

少し冷静になろう、と思っている自分がいるんだけど、

それでもやっぱり、沈黙に入らせてくれないのが、つまらない政治家ってヤツだ。

すみません、政治に立ち入ってしまいますが、

太田農水大臣には退陣願いたい、というのが今の私の切なる願いです。

 


「体に影響ないことは自信を持って申し上げられる。 じたばた騒いでいない。」

おそらくは国民を落ち着かせようとしての発言なんだろうが、

決定的にポイントを外している。 たまたま見ていた報道番組でのインタビューでも、

「消費者の立場だけじゃなくてね、たくさんの事業者の立場もありますから。」

-これはダメよ、あんた。 すべての被害は消費者に行き着くんだから。

" (消費者も事業者も含めた) すべての人のために、

  問題を切開して、制度をつくりかえる " 

と断固表明してほしいものだ。

「やかましい消費者」 には笑ったけど (つまり、当座は許そうと思ったんだ)、

ここまでくると、もう君の寄って立っている位置が透けて見えてしまっている。

 

いっとくけど、

1.メタミドホスもアセタミプリドも、残留数値からいって、すぐに健康被害が起きる

  ということはないだろう。 

  しかし、それが学校給食や老人ホームのお赤飯 (-というのが哀しい) にも、

  和菓子や米菓子にも、色んなルートに広く流れる構造が出来上がっていることに

   (私の想像では、レトルト・惣菜・外食・・・となるが) 危機感を抱かない者に、

  食の監督長は任せられない。 

   「すぐに健康危害はなく」 っても、 基準値を超えて食用に回さないと決めたものが、

  今日食べた食材の何品に入っていたのか分からない、という生活は

  君だって耐えられないでしょうが。

2.カビ毒のアフラトキシンB1。 これはダメです、ということがどうもお分かりでないようだ。

  これは遺伝毒性のある発がん物質であり、

  許容値も定められてない 「検出されてはならない」 ものだということを。

  しかもこの物質は、日本国内には存在しなかったものであるゆえに、

  検疫の検査でもきっちり食い止める必要がある、と認識されていたものだ。

  この汚染がこれからどこまで広がるのか、あまり危険を煽りたくはないが、

  検疫チェックに携わる方々の苦労は、この大臣のお陰で報われなくなるかもしれない。

  焼酎だけなら恐れることはないかもしれないが、

  それで済ませられると思っているなら、その椅子に座る資格はないです。

 

今日はせっかく、能天気で、でもほのぼのとして、かつ嬉しい

ケント・ロック (米国・ノンGMコーンの生産者) からの手紙が届いたので、

紹介したいと思ったのに、

これだけは言っておかないと気がすまない状態になってしまった。

で、もう疲れました。 明日は稲刈りだし。

 

汚染米の問題は、ちょっと頭を冷やして、

脳みそか胸の奥に引っかかっているものをつきとめたく思ってます。

 



2008年9月12日

糊(のり) に米は使われてないって?

 

書けば書くほど腹が立ってくる事故米の話なんかはやめて、

西オーストラリアのGMOの続編をお伝えしなければ、と思ったりしてたところ、

この問題はさらに恐ろしい扉を開いたようで、

もはや論評だけではすまなくなってしまった。

 

今朝、提携米研究会 (以前の 「提携米ネットワーク」 ) 事務局の

牧下圭貴さんから緊急メールが届き、驚愕する。

 -とんでもないニュースがネットで配信されている。

おとといの驚愕とは比較にならない驚愕である。 なんて言えばいいんだ。

 

工業用糊に米は使われていない!!! -農水省は知っていた?

 


え? ええ? ・・・・・・・絶句する。

 

J-CASTニュースというネット専門のサイトで、昨日流れた情報。

農薬やカビ毒に汚染された「事故米」が食用として出回っている事件で、

農林水産省は 「糊など工業用に限定して販売を許可している」 と説明していたが、

実は国内では、接着剤などの原料に米を使用することはほとんどないことが判った。

くだんの三笠フーズの場合も、「工業用糊加工品」 に用途を限定して販売したとされているが、

J-CASTニュースが取材したところ、糊メーカーの大手3社 (ヤマト、不易糊工業、

住友3M) は、いずれも 「米を原料にしている製品はない」 という回答だったという。

また

「米を原料に糊を作っているメーカーがあるという話は聞いたことがない」 と。

澱粉糊の原料は米ではなく、タピオカやコーンスターチだと。

また同ニュースは森林総合研究所にも取材をしており、

合板をつくる際や修正材に使う接着剤の原料も、

小麦を使う例はあるものの、米を使ったものは見たことがない、とのこと。

 

これが本当なら、農水省の説明の大前提が崩れることになる。

使い道のない米を、穀物業者に引き取らせていた・・・・・

もう少し調査の経過や報道を待つ必要があるが、

色んな疑問に、それぞれうがった推測が可能になってくる。

農政事務所の検査で販売先までの追跡 (トレース) をしなかったのは、

裏の事実を知っていたからか。

なぜ汚染や事故米を輸出元に返さず、国内で処理しようとしてきたのか。

なぜ 「工業用原料に限定」 された米の入札に

(食用の)穀物業者だけしか参加していなかったのか。

なぜ糊加工のメーカーや業界は、国の誤った説明や、

みんなが鵜呑みにしていた"  常識とされていた非常識  "  に対して、

今までコメントを出さなかったんだろうか。

そして、同様に説明されていた過去のカドミウム汚染米は、どこへ行ったんだろうか。

 

事故米は、販売過程で相当広範に混ぜられて流通されていたことも判明してきている。

給食にまで流れていたとか。 

毒は長~い流れのなかで薄まりながら、広く行き渡っていったみたいだ・・・・・

家畜の飼料にまで。

 

想定範囲以上に、知らずに混ぜられた原料を購入している可能性まで出てきた以上、

こっちはこっちで、足元からその先まで見直す作業を

改めてやらなければならなくなってしまった。

今までの確認でOKだと認識している、では済ませられないだろうから。

 このエネルギーは、どこにも転嫁できない。

 

食に関わるあらゆる企業がとばっちりを受けている。

もう農林水産省なんて解体してもらっても構わない、という心境である。

 



2008年9月10日

汚染米転売-これもグローバリズムが生んだ悲劇か・・・

 

本ブログの画面を開いて、オオーッ!と声を上げる。

先週お詫びしたばかりのカレンダー機能が、さりげなく顔を見せているではないか。

内心ではもう諦めていたのだが、ちゃんと気をつけてくれてたのね、管理人さん。

ありがとうございます。

お怒りのメールを頂戴したTさん、いかがでしょうか。

 

管理人さんへのお礼に、幕張界隈で見つけた秋の訪れを感じさせる画像を。

 

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なにこれ? すみません。 石榴 (ザクロ) を見つけたんですよ。 

熟したら生で食えますよ。 どうぞ。

よかったら柿もあります。 こちらもまだ早いですが。

 

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彼らも必死で、自然の摂理を読み取りながら都会の中で生きてます。

 

ゲリラ豪雨の波状攻撃が去って、蝉の声も消えたと思ったら、

夜はいっせいに鈴虫が鳴き始めていて、だんだんと秋の風情ですねぇ・・・

しかしそんな爽やかさも束の間のようで、台風と熱帯低気圧がやってきてます。

日曜日の稲刈りが心配。

 

さてと。 実をいうと、私の気分は全然爽やかでなく、

先週末からの怒りが、収まるどころか、さらにヒートアップしてきているのであります。

三笠フーズによる輸入汚染米の食用転売事件について。

 


おとといの日記で、農水省はいったいどんな調査をしたのだろうか、と書いたけど、

今日の新聞では、さらに驚愕の事実が明らかにされている。

調査は2回の立ち入り調査だけではなかった。

過去5年間で計96回、粉にする加工の立ち合いをやっていたというのだ。

 

昨年1月の 「告発」 を受けての調査では、

『 -700トンが未開封のまま在庫としてあるのを確認しただけ。

 担当者は 「二重帳簿になっていて不正を見抜けなかった」 と釈明。』 

加工の立ち会いでは、

『偽の帳簿を疑わず、出荷先に本当に納品されているのか、裏付けをとることは一度もなかった。』

三笠フーズの社員は、

『現物は確認されないし、粉にした後に 「すぐに出荷して、物はありません」 と言えば済んだ 』

と語っている。

 

要するに、現物も作業現場も確認せず、

トレース (追跡) もまったく取らなかったわけね。 サイテーじゃない?

これでは何もしなかったどころか、

結果からみれば、完全な行政の業務怠慢による犯罪幇助ではないだろうか。

彼らの 「立ち会い」 とは、事務所でお茶を飲むことか。 迷惑千万な話である。

不祥事は企業だけでなく、国の監督省にまで及んでいた、ということだ。

これまでの数々の違反事例とは様相を異にするものとして、

"  食の安全を脅かした事件史  "  を堂々と塗り替えたと言えるだろう。 

 

また新聞記事によれば、農水省幹部が、

「疑ってかからないと検査にはならない」 などと偉そうに語っている。

まるで他人事のような発言もしゃくにさわるが、

その姿勢そのものが、決定的に間違っていると思う。

疑う前に、適切なトレースを怠った足元を見よ、と言いたい。

 

トレーサビリティの意味は、「疑って調べる」 ではなくて、「信頼の補完」 である。

まずは、伝票や作業記録をたどって、モノの流れがきちんと追える体制ができていることを

確認する。 管理体制に不備があれば改善をうながす。

その上で、処理や作業が適正になされたこと (不正がないこと) を確かめる。

裏付けのトレースも含めて。

この作業をていねいに進めることで、企業への信頼を守ってあげることなのだ。

企業からすれば、検査があることで自分たちの管理状況のチェックができ、

信頼が担保されることにつながる。

その関係があってこそ、あるがままを見せようという姿勢も生まれる。

疑う者と疑われる者の関係では、お互いの手口が巧妙になっていくだけだ。

そんなことに税金をかけないでもらいたい!

商道徳を守る健全な企業を育ててほしいのです!

 

農政事務所の立ち会いと調査・確認行為が適切になされていたら、

ここまで傷を深めることなく、立ち直りの可能性もあったかもしれない。

『 農水省とは共存共栄でやってきた... 』 と語る三笠フーズの

社員の方々は全員解雇されたらしい。 哀しい話だ。

ここで農水省はどんな内部治療をしてくれるのか、注視したい。

 

この一件によって、輸入汚染米を工業用途として引き取る業者もいなくなるように思われる。

保管料が1トンにつき年間1万円。 焼却処分にも1万円。 プラス運搬費。

糊に活用されることもなく、膨大な税金とエネルギーだけが無駄に消費されることになる。

 

そして、思えばこれも、ミニマムアクセス (輸入義務) というグローバリズムの裏で

翻弄されている現場の悲劇、と言えなくもないような気がしてくる。

みんなで損をしながら義務米をお金に換えようとして、そこに

マネー・ロンダリングのような悪魔の技が見事にはまってしまったような。

 

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これも幕張周辺で拾った一枚ですが、花の名前が分かりません。

どなたか教えていただけますでしょうか。

 

街路樹のマテバシイ。 どんぐりも、いつの間にか成長している。

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みんなたくましいね。

 



2008年9月 8日

落ちのない日記

 

日本列島に居座った前線のせいで登山を断念させられ、

帰ってきてから一週間あまり。

上空の大気は不安定なままだとかで、ゲリラ豪雨はその後も断続的に発生して、

ようやっと落ち着いてきた感じで、少し息をつく。

 

大地を守る会の産地では幸い豪雨による一撃的な被害はなかったものの、

水浸しになった畑だと、これから病気が出たり、最悪の場合は 「全滅」 など、

恐ろしい連絡がきたりするのは、これからである。

またこの時期は、関東では秋冬作への準備が進む時でもあり、

作業の遅れはこれからの出荷計画を狂わせてゆく。

 

春の低温・日照不足、空梅雨ときて、7月は一転して高温となって、

「ベジタ (大地を守る会の野菜セット) もひと息」 とか言ってたのも束の間、

秋もまた不安先行、ビビリ気味の季節の変わり目となった。

今日の藤田社長との打ち合わせで、つい弱音を吐いている自分がいた。

「野菜の仕事って、ホントに泣けてきますね」

特に僕らの仕事は特定の生産者との契約だから、

いわば 「その畑とつき合っている」 わけで、結果はストレートに台所に届いたりする。 

だから 「その畑」 からの情報が大事になる。

 

それにしても・・・・・社長の励ましの台詞が、俺なんかと違う。

「それでも百姓は死なないからね」

 


さすが筋金入りの東北農民の血統というか出自である。

南四国の海で育った者とは根性の質が違うような気がする。

僕には絶対に吐けない言葉だ。

いや、もしかして、それ以上に、

飢えの記憶と競争をトラウマとしてきた団塊世代と、

彼らの祭り (学園紛争のこと) に遅れてきたシラケ世代の違いだろうか。

星野仙一と江川卓 (私の場合、掛布くんを採用したいが) の違い、と言うと

何とのう雰囲気が伝わるような気がしたりして。 

え? 面白い? もっといってみますか。

ガッツ石松と具志堅用高。 先代貴乃花と千代の富士。 北野たけしと明石家さんま。 

西郷輝彦に郷ひろみ。 立松和平に田中康夫。 鈴木宗男に安倍晋三さん・・・・・

このへんでやめとこうか、あとが怖い。

 

まあそんなことはともかくとして、

自然の猛威では倒されなくても、おカネで殺されるのが現代である。

とどまるところを知らない食の不祥事も、

すべては経営維持という名でのモラルの圧殺、のように思える。

ここまできたか、と何度嘆いたことだろうか。

確信犯も、とうとう事故米の食用転用というところまできてしまった。

消費者をだます前に、業界内で詐欺同様の流通がまかり通って、

鹿児島の焼酎メーカーも、関西の和菓子屋さんも、怒りが収まらないことだろう。

ただ僕の立場から納得ゆかないのは、農水省の調査である。

複数回の内部告発があったにもかかわらず、

昨年1月の調査でも見抜けず、今年8月の調査でも確認できなかったという。

どんな調査をしたのだろうか、いやそもそも 「調査」 レベルの仕事をしたのか

・・・・・分からない。

その間、汚染米が食用米として格上げされて人々の胃袋に消費された。

 

先週の金曜日 (9月5日)、千葉の農政事務所の職員の方が二人見えられ、

今年1~4月に某都内自然食品店に卸した野菜の栽培内容を確認したいという。

聞けば店頭に 「栽培期間中農薬不使用」 (無農薬栽培のこと) の表示があり、

その確かさを調べているのだと。

当社の栽培確認の履歴やデータなどをお見せして説明したところ、

納得して帰られたが、納得できないのはこっちである。

お店を回っては、有機や無農薬の表示チェックをしている職員が全国に100人近くいると聞く。

フツーに出回っている国内産の●●●は、内部告発がない限り動かないくせに。

いや、告発があってもろくな調査もできてないくせして・・・

何か、おかしくないか、ホント。

ああ、いやだ。 こっちの精神まで、ギスギスと棘が立ってくる気分である。

こういう時に、海育ちはすぐに喧嘩モードになる。

そこは、人間ができてないとか言われても、血統が違うのだ。

 

生産者の皆さん。 しんどいけど、失敗もあるけど、僕らには嘘はない。

胸だけは張って生きましょう。 

 

天候と野菜の話をしていたはずなのに......何かヘンな、オチもない話になってしまった。

そんな一日だったということで。

 



2008年9月 5日

ブログ画面上のお詫び

 

3日前の日記の文中で、過去の日記を参照と書いた箇所があって、

しかしその部分に該当日のものをリンクさせるのを失敗していて、

アップしてしばらくたってから気がついて、慌てて貼り付けました。

そこで改めてバックナンバーをいろいろと見てみたのですが、

当初アップした状態と画面の状態がかなり違ってしまっています。

写真と文章の空き具合とか文字の詰まり具合とか・・・。

7月にバージョンアップした際に、ズレが生じたものに違いありません。

 

まあ、古い日記をひも解いていただくほど大したものでもないのですが、

過去のレポートとか経過とかを振り返ってもらおう、なんて思ったときには、

少なからず気になる状態ではあります。

今から全部を手直しすることはちょっとできそうにないので、

バックナンバーでお見苦しいところがありますこと、ここでお詫びさせていただきます。

 

もうひとつ。

バージョンアップした際に、トップ画面にあったカレンダーがなくなりました。

管理人に言わせると、このバージョンにはその機能がなくて、

フリーのものを入れても、動作が保証できない、とのことです。

わたし的には、あの日付数字が白いままだと、それだけでプレッシャーになり、

逆に色が変わって(更新されて) いる日付が多いと、なんか満足感を抱いたりして、

あれだけで一喜一憂させる力を持った機能でした。

しかし今あらためてバックナンバーを検索してみると、

あの機能は実に使い勝手のイイもんだったと思うところです。

今の画面だと、月別のアーカイブをクリックして、

ズ~~っとスクロールしなければなりません。

長々とまあ書きやがって、とか思ってしまったりして。

実際に、これは相当なストレスだ、カレンダーを復活しろ、との厳しいご指摘も

メールで頂戴しました。 まったくですね、と自分でやってみて思います。

 

しかし、私の力ではどうすることもできず、スミマセンと謝るしかありません。

管理人がこのバージョンに合う機能を見つけてきてくれるのを待つばかり、なのです。

ということで、今さらながらの、

自分のブログの状態についての恥ずかしいお詫びでした。

 



2008年9月 2日

「チャルジョウ農場」 と若者たち

 

飯豊山登山をやめて、麓や低山の小屋でただ酒盛りばかりやっていた、

という噂が何処からともなく流れたものだから (全否定できないところが悔しい)、

言い訳だけはしておきたいと思う。 ちゃんと仕事もしたんです。

 

喜多方市山都 (旧・耶麻郡山都町) は、飯豊山の登山口がある山間地で、

毎年5月に行なわれる堰 (棚田を守る水路) の補修作業には、

「種蒔人基金」 による応援という形で、昨年からボランティアとして参加している。

その経過は、これまでも報告してきた (5月6日付昨年12月8日付 参照)。

 

この地で都会から研修生を受け入れ、新規就農者を育てている方がいる。

小川光さん。

元東北農業試験場の研究者で、自らの理論で有機農業を実践し、

かつ農業者を育てるために、ここ山都に移り住んだ。

下の写真前列中央の人。

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小川さんは、西アジアの国トリクメニスタンの農業科学研究所で、

乾燥地帯での無かん水 (水をやらない) 農業技術の開発研究に携わった

という経歴の持ち主。

そのトリクメニスタンのチャルジョウという、ウズベキスタンとの国境にある町が好きで、

自らの農場を 「チャルジョウ農場」 と名づけている。 よほど惚れたんだね。

実際にトリクメニスタンのメロンの原種や、日本のウリと掛け合わせた

小川光オリジナルのメロン品種を無農薬で育てているのだから、

名乗るだけのことはやっている。

 

また小川さんは都会から研修生を積極的に受け入れ、育てている。

定住希望者には住まいの斡旋までする。

小川さんの世話で山都に定住した家族がこれまでで40世帯、約100名。

ここで生まれた子どもが14人、だとか。

この村の空き家情報は小川さんが一番よく知っている、とも人から聞いた。

山間地でも有機農業で暮らしてゆけることを、彼は粘り強く実証してきたのだ。

 

上の写真で小川さんを囲んでいる若者たちが、今年の研修生。

一人一人の取材まではできてないけど、

それぞれにしっかりした意思と誠実さを感じさせてくれる若者たちだった。

そして後列右端が、堰の清掃ボランティアを仕掛けた浅見彰宏さん。

彼も小川さんの世話でこの地に根づいた。 14人の子どものうち2人は浅見家なのかな。

 

さて話を急ぐと、昨年の5月、堰の清掃ボランティアに参加した翌日、

僕は浅見さんに連れられて小川光さんの農場を訪ねた。

小川さんは日本有機農業研究会メンバーで、僕も名前だけは知っていたし。

その時は、いわばただの見学で終わったのだが、

今年5月の作業あたりから、研修生の自立のための受け皿づくりという話が

具体的なものとして動き始めたのだった。

こういうのって、何かのサインとかタイミングを感じるときがある。

東京に出てきた小川さんと大手町で会い、

次に取締役・長谷川を山都まで案内し、小川さんと会って栽培方法も見てもらい、

「進めていいんじゃないか」 とのアドバイスで下地をつくり、

そして先週の28日、山に登る前にチャルジョウ農場を訪ね、

研修生たちも集まってもらって、

彼らが作った野菜を大地を守る会の会員に届ける企画のイメージを話し合った。

これはただの野菜の売り買いではない。

山間地で農業を学んでいる彼らのメッセージを、

野菜に託して届けられる仕組みをつくっていく作業。

それは棚田やそれを囲む水路や森の環境を守る作業につながっている・・・・・

 

29日、大雨・洪水・雷注意報を聞きながら、待機中の間に企画書第1稿を書き上げる。

そして今日 (9月2日)、部署内の会議に提出。概ね了承される。

来週の火曜日が最終関門の会議である。

何とか今年のうちに、彼らに希望の道筋を提供できるかもしれない。

 

有機農業のひとつの技術を確立させ、次の担い手を育てようとする小川光さん。

山間地の農業基盤 (インフラ) を守ろうとする浅見彰宏さん。

そしてチャルジョウ農場で、農業での自立を目指す若者たち。

そんな彼らが持ち寄って、一個一個思いを詰めた野菜セットを完成させたい。

企画そのモノは簡単シンプルなのものだけど、

うまく流れるためのシステムづくりは結構細かい調整が求められる。

何とか間に合わせたい。 今年の収穫物で、来年につながる一箱でも。

 

山から降りれば下界は騒然となっていて、

産地担当諸君は、週の頭から畑の被害状況の確認作業である。

幸い全滅というような話はなかったが、水浸しになるとこれからの品質に影響が出る。

また全般的に作業が遅れつつあり、これは後々の出荷のずれにつながる。

だいたい時間雨量が80ミリとか100ミリって、とても尋常じゃない。

これじゃ 「ゲリラ」 じゃなくて、「大空襲」 豪雨だ。

田んぼが湖のようになってしまった映像も流れている。 収穫前に・・・なんと切ない。

 

異常気象に油や餌や資材の高騰と、生産現場は火の車状態だ。

畜産現場では、離脱する生産者が増えていると聞く。

一触即発ならぬ 「一食即発」 状態だ。

本気こいて、資材依存ではない、資源の地域循環 (自給) をベースにした

有機農業社会を打ち立てる必要があるように思う。

その意味でも、地域資源を基本とする山間地有機農業は、キーワードだと思っている。

 

で・・・これで言い訳になったんだろうか。

 



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