2008年9月24日
汚染米緊急集会
久しぶりに爽やかな秋晴れの朝を迎えたのに、
気分はブルーグレーのような雲のなかにあって、
午後、永田町の衆議院議員会館に向かう。
『汚染米 農水省追及緊急集会』 というのが開かれたのだ。
全国43の団体が呼びかけ人になって、100人近い人が集まっている。
議員会館の会議室もいっぱいで、座ったが最後、席を立つのも息苦しいような雰囲気で、
この事件に関する農水省とのやり取りが始まる。
現場では気づかなかったけど、追及の及の字が違ってるね。
ま、そんなことは許容範囲として、
許し難い事態となってしまった責任を農林水産省がどのように受け止めておられるのか、
確かめたくて参加したのだが、
結果はさらに虚しく、喩えようのない複雑な怒りを抑えながらの帰途となってしまった。
農水省へのこちらからの質問は事前に提出してあって、
回答は文書で出して欲しい旨伝えてあったのだが、紙は一枚も用意されず、
すべて口頭での回答となった。
質問は多岐にわたった。
以下、いくつかピックアップしてご紹介する。 ( )内は私の解説。
ちなみに、会場の人たちは 「汚染米」 と言い、農水省は 「事故米」 と言う。
前提から、認識というか視点の違いが存在する。
★汚染米の転用や処理については、どのような法律に基づいて、どのような基準で、
どのような用途・方法がとられるのか?
-物品管理法に基づき国が管理。 事故米は食用不適と判断し、用途を決定して
指名競争入札にかける (少量の場合は相対で売買契約もある)。
用途を決めるのは農政事務所の判断 (要するに人による現場判断か)。
「事故米」とは、水に濡れたり、カビたり、袋が破けたり、基準値以上の残留農薬が
あったもの、など (数字から見ても、とても杜撰な管理体制のように思える。
政府米倉庫ってちゃんとしたものだったと記憶しているのだが・・・)。
★ミニマムアクセス米 (MA米:最低限の輸入義務量-正確には「輸入機会を与える」量-)
の輸入開始以来の年ごとに、輸入量、購入総額、事故米発生数量、事故の内訳、
処分方法、処分先の業者名を明らかにされたい。
- (ばあ~っと直近5年間の数字が報告される。
処分先の業者については、この間公表された企業名が列挙されたのみ。
「事故米」の数量と残留基準を超えた米の数量の計算が合わず、質問したところ
「2年後、3年後に再検査して発見されたものが追加されているので、
年度ごとでの数字は合わない部分もある」 との事。 これまた釈然としない。)
★汚染米の輸出国への積み戻しはどうしてできなかったのか?
-相手国の港を出た時点で契約は成立するため、返却は困難。
★こちらの検疫検査で引っかかって積み戻す事例はたくさんあるはずだが?
-MA米については現地で (委託された商社による) 検査・確認がされ、
現地で契約となっている。
★アフラトキシン汚染米の動物飼料への転用はあったか?
-それはない。 焼酎に使われた2.8トン以外はすべて在庫を確認している。
(検査で発見された数量に関しては、ということで、見つけられなかった汚染米
も相当あるのではないか、との疑問も出されたが、
さすがに、見つかってないものを 「ある」 とは言えず、ここまで。)
★汚染米を海外援助にまわしたことはないか?
-ない。
★(MA米でない) 国内産の事故米の実績と処分方法を明らかにされたい。
-(年度ごとの数字が読み上げられ、処分方法についてはMA米での回答と同様。
ということは、国内産の事故米についても疑惑が残る。)
★カドミウム検査で基準を超えたものはどのように処理されているか?
-ゴミ処分場で出た焼却灰といっしょに固めて人工骨材になるものと、
合板用の糊の増量剤として使われている。
米は粉砕し、(転用されないよう) 着色した上で、
国が直接、合板用糊の加工業者に販売するので、トレースもできている。
(カドミウム米と事故米を処理する部署は同じ 「総合食料局」 内にあるのだが、
連携はもちろん、情報交換もまったくされていない。 我々には理解不能。)
★非食用とした米の入札に、なぜその用途先の専門業者に限定せず、
穀物業者を参加させていたのか?
-そういった加工用の販売先を持っている業者なので・・・・・
★そもそも業者に対してどんな検査をしていたのか? 96回も行って、なぜ見抜けなかったのか?
-検査はしていた。 していたが見抜けなかったということ。
(具体的にどんな検査方法をとっていたのかは結局不明のまま。
これでは 「ただお茶飲んで出された饅頭でも食ってたのか」 と罵られても仕方ない。)
★汚染米を工業用糊に回したというが、具体的に何に使われたか?
使ったメーカーまで確認しているか?
-糊といっても普通の一般的に使われている糊ではなく、合板用の接着剤である。
販売先については、現在調査中である。
(絶句! 調査中なのに何故用途先が明言できるのか。
そもそも最初の発表からもう20日も経ってしまっている・・・イライラが募る。)
調査の結果はお渡しする (ことをしぶしぶ約束)。
★汚染米はトレース可能な処理方法が必要だ。農水省の対応策を明らかにされたい。
-これまではちゃんとした検査のマニュアルがなかったので、早急にマニュアルを
作成するとともに、検査にも専門知識を持った者をあてるなどの対策をとりたい。
!!! ついに怒り爆発。 ぶち切れ状態で質問する。
それはいったいどんな専門知識のことを言っているのか?
では過去96回も出向いた職員は、なんの知識を持って出かけていたのか?
そもそもこの問題は、特別な専門知識やマニュアルを必要とするレベルではない。
売った先を確かめ、そこでの処理と内容を作業記録等で確認しながら
末端まで辿ってゆく、という真面目な人なら誰でもできる作業である。
それをしていたのではなかったのか。
私の団体は、農水省から監査を受ける立場にある有機農産物の認定事業者であるが、
もうやってられない!
ここでようやく 「申し訳なく思っています」 の発言を引き出す。
目の前の個人を責めているのではないのだが、あまりにも情けない公僕の姿ではないか。
トレサビリティの問題ではなく、国民に対する責任感の問題である。
リスク・コミュニケーションの問題ではなく、正直であろうとする姿勢の問題である。
誇り高き和菓子職人が頭を抱え、
事故米の食品転用に手を染めてしまった仲介業者の経営者が自殺し、
数多くの食品会社が経営の危機に瀕するような事態を、誰がつくってしまったのか。
そこで働く従業員やその家族らがどんな思いで日々を過ごしているのか、
思うことはないのだろうか。
これは 「事業者か、消費者か」 というような二者択一の問題では決してない。
食のサプライチェーンをしっかり見ることで、
事業者と食べる人の間に信頼を確保し、ともに守ること、それが国の責任だろう。
出口が見えない。