2008年12月27日

庄内から -最後の「雪の大地」と、蓮の花

 

秋田県大潟村の黒瀬正さん (ライスロッヂ大潟代表) から新聞記事が送られてきた。

12月20日付の朝日新聞山形版に掲載された 『旬』 というコラム。

タイトルは-

 

  純米吟醸 「雪の大地」

   面影揺れる 「最後の酒」

 

執筆されたのは清水弟 (てい) さん。 朝日の記者さんで、

僕も、有機農業関係の会合で何度かお会いしたことがある。

じんとくる一文なので、清水さんの了解のもと、ここで紹介させていただきたい。

 


  悲報は、秋田県大潟村の知人から電話で届いた。

  6月18日、鶴岡市羽黒町のS.Kさんがなくなった。 病院に駆けつけると、

  救急外来の廊下で仲間たちが青い顔をしていた。

  減反を拒み続け、減農薬無化学肥料の稲作にこだわった。

  笑顔の似合う、心熱き百姓は58歳だった。

  あれから半年、「純米吟醸酒・雪の大地」 に出会った。

  口に含むと、清冽にして深い味わいが広がる。

  雪と大地に連なる汗と涙と悲しみと大きな喜びとが腹に染みる。

  S.Kさんが 「自分が作った米で酒を造ろう」 と酒米・美山錦を作付けし、

  銘酒 「くどき上手」 の亀の井酒造を口説き落として造らせた酒だという。

  「でも今年が最後。 もう造れんからのう」 と聞かされ、うまさが切ない。

  「最後」 は別格である。

  かの北大路魯山人は、客人に土産を持たせ、うまさに感激した客が店名を尋ねても、

  「店はつぶれました。あの菓子が最後です」 などと答えたという。

  もう味わえぬと知れば、記憶はいつまでも残る。

  優れた料理人は、「言葉のごちそう」 にも心を配った。

  「雪の大地」 は720ミリリットルで1995円。 庄内協同ファームから3本求めて飲んだ。

  懐かしい笑顔が浮かんで消えた。

 

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S.Kさん - 斉藤健一さんの葬儀で飲んだ 「雪の大地」 は、哀しい涙酒だった。 

原料米の生産者を失って、このお酒の販売も3月をもって 「終了」 となる。

斉藤健一を知る方々には、どうか精一杯飲んでやってほしい。

彼の記憶とともに。

 

さて、庄内からは、ほのぼのとした話題も届いている。

みずほ有機生産者グループの荒生秀紀さんから。

 

夏に田んぼのビオトープに咲いた蓮の花を使って、造花作りをしています。

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山形は長い冬ですが、近所の友達と一緒にコタツを囲み、

世間話に花を咲かせながら楽しんでいます。 

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思い思いの布を使って、自分好みの造花をつくっています。

家の中が少しだけ賑わいを感じさせます。 

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夏の暑い時期、田んぼでお米と一緒に育った蓮の花を思い出します。

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荒生くんからのメールでは、今年の山形の冬は雪がない、とのことである。

でも今頃は大雪になっているのでは。

 

蓮の花で飾られたコタツを囲んで、あったかい正月になりますよう。

 


Comment:

雪の大地、本当においしいお酒でした。
このお酒が飲めなくなるというのは、とても残念です。
えびちゃんのブログを見て、3本買い込みました。
でも、あとこれだけしかないのかと思うと、なかなか手をつけられず、冷蔵庫の野菜室で並んでいます。
いろんな想いを背負ったお酒だからこんなにおいしいのかな、と思いました。
だからこそ、続いて欲しかったけど。
あと2本、味わって飲みますね。

from "てん" at 2009年4月 5日 22:33

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