2009年1月26日

東北から、「農を変えたい!」

 

書く時間がなくて・・・という言い訳の前に、書くことも忘れてしまっていた日々。

気がつけば、もう10日も更新していない。

その間に、パレスチナの惨劇は新しいアメリカ大統領の就任に合わせるかのように

一時停戦となり ( この影響はいつまで尾を引くことだろう )、

そのアメリカは新大統領のパフォーマンスとケネディばりの演説に熱狂して、

いっぽう国内といえば元気が出るような話題に乏しく、

そんな世情を横目に、僕はただひたすら宿題に埋没させられていたのでした。

こう見えても、来期の事業計画や予算など真面目に考えたりしてるんです。

 

1月から2月初旬は、産地での新年会が各地で開かれる時節でもあって、

そこには行ける限り顔を出す。 みんな手ぐすね引いて待っている。

僕らはそれを  " 死のロード " と呼んだりしている。

もちろんただ飲むだけでなく、農業の未来や野菜の品質のことなども語り合うわけで、

日々ネタは尽きないのに書けないという

情けないドロドロ状態にはまってゆく、そんな期間でもある。

 

いろいろあったけど、しょうがないので途中はぶっ飛ばして、

直近の話題で再開させていただくと-

22日(木) に泊りがけで福島わかば会の新年会があり、

23日に帰ってきて仕事して、

24日(土) には再び福島に行って、

『 農を変えたい!東北集会 in ふくしま 』

という集まりに顔を出す。

「農を変えたい」 運動は、有機農業推進法を成立させたパワーを土台として、

有機農業の発展だけでなく、環境保全・地域の活性化までを視野に入れた全国的な運動

となって展開されている。 

 " 農 "  のありかたそのものを考え直そうという思いも込められている。

 

行けばそこには大地を守る会の生産者もいっぱい参加していて、

一人ではけっこうしんどい。

夜の懇親会で出たお酒が、大和川酒造に仁井田本家 (金寶) とくれば、

必然的にボルテージも上がって深夜まで。 結局は自業自得、身から出た錆・・・・

 

とりあえず、脳を変えたい、じゃなくて、「農」 を変えたい!集会の写真で

ごまかしておきたい。

いやいやどうして、すごい集まりになったんです。

会場は福島大学。 大学で一番大きな教室に人が溢れたんですから。

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東北全県を中心に全国各地から、約450名の参加。 いやもっと多かったか。

 


今回の集会実行委員長は、旧熱塩加納村 (現喜多方市) の有機農業指導者、

小林芳正さん。

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有機農業運動、地域自給運動の世界ではつとに知られたカリスマの一人。

熱塩加納村を有機米の一大産地に育て上げ、

補助金を蹴ってまで村の米や野菜を地元の学校給食に導入した。

「食べものとは  " いのち "  である」 

こんなセリフが似合う人は、実はそうはいない。

大地を守る会が最初に開発したオリジナル純米酒 「種蒔人」 (当時の名は 「夢醸」 ) の

誕生を支えてくれた大恩人でもある。

大病もあって心配した時期もあったけど、

コバヤシ・ホウセイ完全復活!を宣言したかのような力強い実行委員長挨拶だった。

 

そして次世代のリーダーとして登場したのが、

このブログでも何度か紹介した、山都町 (こちらも現喜多方市) の浅見彰宏さん。

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もう紹介は省きたい。

大和川酒造で出会い、棚田を守る水路の補修手伝いから、若者たちの野菜セット企画

へと、僕らの関係は年々深まってきている。

 

次世代リーダーのリレー・トークでは、

山形県高畠町・おきたま耕農舎の小林温(ゆたか) さんも登壇。

耕農舎代表・小林亮さんの農業を継いだ和香子ちゃんの旦那、つまり婿どの。

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大学の哲学科を中退して、自分探しの旅を経て、農の世界に行き着いた。

「まあ、彼女が有機農業をやっていた人だったってことなんですけど・・・」

なんて照れながら、今の様子と将来の希望を語る。

 

「ホントはやる気なかったんだけど、じいちゃんがずっと守っていた田んぼを

 荒らしちゃいけないと思って帰ってきた」 なんていう若者の発言もあったりして、

なかなか当代の若者も捨てたもんでもないなあ、とか思わせる。

 

自由交流会では、新規就農相談コーナーも設けられた。

相談に乗る小川光さん (喜多方市山都町・チャルジョウ農場)。

積極的に研修生を受け入れ、育ててくれている。

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・・・・右の君、ちょっと態度悪いよ。

 

こちらは宮城の石井稔さん (無農薬生産組合)。

米の栽培技術では名人といわれる生産者の一人。 大地ではニラも頂いている。

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相談員は他にも、山形・庄内協同ファームの志藤正一さんや、

秋田県大潟村の相馬喜久雄さん、今野克久さんなど、

大地でおなじみの生産者が顔を揃えていた。 

 

夜の懇親会で、実行委員会を代表して挨拶する渡部よしのさん。

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「山都の若者たちの野菜セット」 企画では、

チャルジョウ農場の研修生たちの野菜で賄えなかった分を補ってくれた。

渡部さんからは、それとは別に米も頂いている。

 

大学の生協食堂を借りて行なわれた懇親会も人で溢れていた。

食材は、磐梯はやま温泉 「ヴィライナワシロ」 総料理長・山際博美氏による

徹底的に地元産にこだわったメニューで並べられた。

とにかく予想外の賑わいで、写真も撮れず (料理を取るほうに精一杯で・・・)。

 

二日目は、5つの教室に分かれて分科会が行なわれた。

テーマは-

○ 学校給食・地域内自給

○ 耕作放棄地・ムラの再生

○ 農産物マーケティング

○ 有機農業(技術)と生物多様性

○ 農産加工・地域産業再生

 

ここでの注目は、「マーケティング」 という観点での分科会が用意されたことだ。

それだけこの世界が拡がってきたことを物語っている。

パネラーの一人に、伊藤俊彦さん(福島県須賀川市) の名前がある。

大地を守る会の 「備蓄米」 や 「稲田米」 の生産者だが、

生産集団の組織化から米の集荷・精米、さらには農産物の販売会社の運営まで

事業規模を発展させてきた起業家でもある。

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変化を洞察し、変化に挑戦し、変化を創造する -(伊藤さんのレジュメから)

カッコ良すぎ、です。 

 

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有機農業は第Ⅱ世紀に入り、ほんとうに点から面へと進んできたと実感する。

個と個のつながりから、地域を変えてゆくための連携へと進む、

その道筋がリアリティをもって語られるようになってきた。

僕もまた、彼らとともに未来開拓者の一人でありたい。

欲望の交易手段としてでなく、人と人のネットワークという流通の大義をかけて。

 



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