2009年2月11日
地球の目線
大地を守る会とは古くからのお付き合いであり、
100万人のキャンドルナイトの企画・運営でもご一緒している
文化人類学者の竹村真一さんが本を出された。
このブログでも、大手町での 「地球大学」 などで何度か紹介させていただいた方。
本のタイトルは 『地球の目線 -環境文明の日本ビジョン-』 (PHP新書、760円)。
地球大学で展開されていた竹村さんの視野と構想が凝縮されたような内容である。
昨年末に頂いて、すぐに読んだのだが、
ちゃんと紹介したい思いがあだになってか、遅れてしまった。
地球温暖化対策が叫ばれて久しくもなりつつあるのに世界はまだ綱引きが続いていて、
一方で未曾有の世界同時不況が一気に襲ってきている時に、
混沌は希望への道筋と言わんばかりの、大らかな未来ビジョンが描かれている。
この時代に出るべくして出た、と言ってもいいだろう。
とにかく、いま私たちが持つべきセンスが開かれたという意味で、
この本の登場は世界にとってもシアワセなことではないかと、素直に思うのである。
たとえば、こんな書き出し。
水に祝福された惑星
アル・ゴアの 『不都合な真実』 は、地球環境の危機に注意を喚起することで、
逆にあたりまえすぎてだれも注意を向けなかったこの惑星の 「好都合な真実」 に
多くの人々が気づくきっかけを与えてくれた。
あるいは、こんなふうな語り。
-本来、地球という惑星に " エネルギー問題は存在しない " 。
-石油の枯渇や高騰などに振りまわされないおおらかな文明を子どもたちにプレゼントする
準備はすでにできているのだ。
- " 京都の失敗 " にこだわるより、中東の石油に過剰依存した現在の経済構造を
一刻も早くリセットして、石油・資源価格の乱高下から自由になるための道を
(地球の公益・共益として) プロデュースしてゆくという、
はるかに大きな政治・外交的な課題がいま目の前にある。
-地球はつねにダイナミックに変化している!
-宇宙に浮かぶ無数の球体のひとつに過ぎない地球、しかし同時にきわめてレアな
進化の実験を行う " ありがたい " 球 (Globe) としての自己認識 -こうした宇宙的な
Globalism に立脚して、新たな文明観と社会デザインを構築すべき時だろう。
そんな感性と知力をもって、エネルギー・資源問題や気候変動のとらえ方、
食と自給の問題 (日本の食糧自給化が地球を救う)、多様性の意味、
都市設計のビジョンからグローバル社会でのヒトとⅠTの関係性のデザインのありよう、
などなどが小気味よく、具体的事例も提出されながら語られてゆく。
いま目の前にある危機は、文明が進歩しすぎたからではなく、
私たちの社会デザインがまだ未熟であるゆえであって、私たちが進むプロセスは
「新たな人間の発見」 「 " 地球世代 " の新たなコモンセンス」
の獲得へとつながっている・・・・・
まったくこの、地球民の想像力を持った大胆な楽観主義者にかかれば、
日本の森は宝の山であり、危機は創造へのバネでしかないようだ。
そんな困難だけれどワクワクするような新たな地球デザイン、国家デザインの道
-人類が 「若年期」 の資源とマネーの暴飲暴食から、人間としてのクリエイティビティを
真に発揮しうるような成熟した段階へと移行するための 「自己変革」 の旅路が、
いよいよ始まろうとしている。
そのおおらかな希望には、ケチの一つもつけたくなる向きもあるかもしれない。
甘い分析だと笑うネクラの政治学者もいるかもしれない。
しかし、未来は人の知力を信じる者たちによって切り拓かれるのだ。
自分の感性に何がしかの新しいセンスが与えられたような、刺激的な本である。
まったく、学ぶことは喜びだ、と思える。
読んで損はない。 今年のおススメ第一号は、かなりイイはず。
ちなみに、大手町カフェでの連続セミナー 「地球大学」 は今、
東京駅前・新丸ビル10階、ECOZZERIA (エコッツェリア) というスペースで、
「丸の内地球環境倶楽部」 として発展してきています。
竹村さんが開発した 「触れる地球」 も体験できます。
東京駅で少しの時間ができた際には、ぜひ。
竹村さんの地球大学セミナーを紹介したアーカイブ、参考まで。