2009年3月21日

三番瀬漁場再生とアオサ対策

 

ここは千葉・船橋港の内港。

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南側に 「ららぽうと」 を望む奥まった位置に、船橋漁協がある。

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3月18日、ここの会議室で、

千葉県による 「三番瀬漁場再生検討委員会」 が開かれ、

傍聴してきたので、遅ればせながらその一報を。

お彼岸に入って気持ちのいい陽気。 この冬も暖冬だったか。

 

千葉県の浦安から船橋にかけて残る干潟地帯・三番瀬 (さんばんぜ)。

そこは海と陸をつなぎ、水を浄化させ、生物相を豊かにする場所であり、

渡り鳥はじめ野鳥を支えるえさ場になると同時に、

アサリや海苔の貴重な漁場ともなっている。

自然保護の観点だけでなく、食料生産のための大事な 「漁場」 なのである。

そこに湧く海藻・アオサを回収し、資源に変える取り組みの検討が続いている。

 


三番瀬漁場再生検討委員会 (委員長 : 工藤盛徳・東海大学名誉教授)

での審議は15回目となり、今回は今年度の漁場再生事業の結果についての報告と、

来年度の実施計画について審議された。 

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そこでは、青潮対策や藻場の減少など、アサリと海苔の生産にとっての諸課題が

ずっと検討されているのだが、中でも 「アオサ対策」 は緊急的課題として挙がっていて、

これまで県は、「自走式潜水吸引トラクター」 なる回収船を建造したりして、

アオサの回収と資源化の試験や検討を進めてきた。

しかしその大がかりな回収装置を駆使しても、結局、

回収したアオサは税金を使って焼却処分とせざるを得ず、活用の道は開かれてこなかった。

 

そこで委員の一人でもある大野一敏さん (船橋漁協組合長、東京湾アオサ・プロジェクト代表)

の提案により、2月26日、

我々「東京湾アオサ・プロジェクト」 (注) が、埼玉の養鶏農家・本田孝夫さん

 (THAT'S国産卵の生産者) と一緒に取り組んできた

養鶏飼料としての活用の現場視察が行われたのだった。

今回は、その報告も合わせて行われた。

 

これまでの調査や実験では、

まず重金属やダイオキシン、農薬の残留試験がされ、その無害性が実証された。 

その上で、裁断-洗浄-乾燥-粉砕-異物除去、という工程を経て、

食用 「乾燥アオサ」 としての有用性が確かめられた。

これがその粉末アオサ。 

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じゅうぶん青海苔の代用として使えそうだ。

しかし問題はその実用化 (販売によるコスト回収) への道筋が見えないことである。

そこで 「手間をかけないで活用できている事例があるんだよ」

という大野提案となる。

 

視察報告では、アオサが米ぬかと混ぜて発酵させる工程が紹介され、

そこでは塩分や貝殻等も飼料成分になるので粉砕や洗浄などの下処理が不要であること、

醗酵させれば長期保存が可能であること、

漁業者が回収したアオサを持ち込んでさえくれればOKで、

持ち込み量が多いことが事前にわかれば、

大地を守る会から作業ボランティアを派遣することも可能であること、などが報告され、

近隣の養鶏仲間も含めれば150トンは可能、との数字がはじき出された。

 

合わせて、以下の説明もあった。

 -消費者が気にする黄身の色は餌に由来し、トウモロコシや緑色野菜や青草を与えると

   黄身の色が濃くなるが、平飼いで国産飼料にこだわった養鶏に取り組んでおり、

   輸入トウモロコシの代わりに緑色野菜や青草に与えている。

   アオサは、これらが不足する冬季に代用品として活用できる。

 

今後は、提供されたアオサ飼料をサンプルとして、

畜産総合研究センターと水産総合研究センターで、成分や飼料としての評価を行なう

ことが承認され、来期の事業計画に持ち越されることになった。

このデータがそろえば、我々としても有り難い。

 

漁場の再生は環境保全と一体であり、それを支えるのが循環である。

もっとも効率よく (税金をかけないで) それを実現する道筋は、

一次産業のつながりである。

「海が有機農業を支え、有機農業が海を守る」

アオサ・プロジェクトを立ち上げた時のスローガンは伊達じゃない。

私たちが取り組んできたアオサ回収に、県のまなざしも変わってきたようだ。

 

昨年の5月、船橋市内の高校生たちも手伝ってくれたアオサ回収の風景。 

後ろで立っている右から二人目が大野一敏さん。

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みんなの力が何かを動かすかもしれないよ。

 

三番瀬保全の進め方に対する市民団体の意見は多種多様にあって、

検討委員会に対する評価もまた分かれているようだが、

ぼくらはアオサの資源活用一本に絞って三番瀬を歩き続けてきた。

上流と下流の生産者ネットワークが海を守る、というシンプルで具体的な取り組みに、

誰も異論ははさめないだろう。

 

この作業が、いつか財産になる、と思ってやってきた。

県の取り組みがどう発展するかは分からないけど、大切なヒントにはなったはずだ。

なんだかんだ言って、地道に続けることは、大切なことだと思う。 

 

(注) 「東京湾アオサ・プロジェクト」

   大野一敏さんが代表を務めるNPO法人 「ベイプラン・アソシエイツ」 と大地を守る会が

   共同で運営するアオサの資源化プロジェクトで、2000年にスタートした。

   大地を守る会の生産者の協力を得て、回収したアオサを堆肥の原料や養鶏の飼料

    に活用する実験を続けてきた。

 



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