2009年5月13日

三番瀬をラムサール登録へ -署名10万人突破!

 

「三番瀬のラムサール条約登録を実現する集い」

という集まりが開かれたので、出席する。 

三番瀬の保全活動に取り組む団体や千葉県野鳥の会などの自然保護団体が

中心になって、三番瀬をラムサール条約の登録湿地にしようという署名運動が

昨年の12月から進められていて、

その署名筆数が10万人を超えたのを記念して開かれた。

 

場所は千葉県船橋市・船橋フェイスビル-きららホール。

19時開会。 オープニングで披露されたのが、" 船橋手拍子音頭 "  。

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チーム三番瀬と呼ばれる地元のご婦人たちによる踊り。

地元の祭りなどでも活躍しているんだな、きっと。

 

   舟の船橋世界へかけて 国と国との橋渡し

   今日もやるぞと はりきる町の

   意気を伝える あの汽笛

   (ソレ!) しゃんと船橋 しゃんと船橋 手拍子音頭

   うてば笑顔の花が咲く

 

港町、浴衣、花火、太鼓に鉦の音、走る子どもたち

 ・・・そんな風景が浮かんでくるね。

 

プログラムでは、新しく知事になられた森田健作氏が来賓として来られる

ことになっていたのだが、代理の方の簡単な挨拶があったのみ。

「いろいろと立て込んでおりまして・・・」

三番瀬保全を公約に掲げていた堂本暁子前知事のあと、

さて新知事の方針やいかに、と思ったのだが、残念。

「できるだけたくさんの方の声を聞き、よい方向に進めるべく・・・」

要するに、まだ何も考えてないようだ。

 

そんな中で、大きな動きを見せたのが船橋市漁業協同組合である。

昨年3月の臨時総会で、「三番瀬のラムサール登録を進める」 決議が採択された。

組合長はご存知、大野一敏さん。

「東京湾アオサ・プロジェクト」 を一緒に運営するBPA (ベイプラン・アソシエイツ)

の代表でもある。

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大野さんが壇上に立つと、場が締まるというか、やっぱ華がある。


   オレは船橋のネイティブだ。

   ここは昔は船橋村と呼ばれ、家康が江戸幕府を開いた際には

   食料自給の重要な拠点とされ、栄えてきた。

   巨大な胃袋を持つ東京に近く、運ぶのにエネルギー消費も低くすむ。

   今は地産地消がもてはやされるが、環境が壊れては何にもならない。

   三番瀬をラムサール条約に登録させ、環境を守っていきたい。

 

記念講演は、東京大学大学院総合文化研究科助教授の清野(せいの) 聡子さん。

堂本前知事が三番瀬保全を進めるために設置した

「三番瀬再生計画検討会議」(通称、円卓会議) と、それに続く 「三番瀬再生会議」

の委員を務めてきた方である。

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清野さんの専門は、海岸・沿岸・河川の環境保全学。

その立場から、ただ干潟だけを眺めるのでなく、海の底まで留意が必要と語る。 

 

これが戦後間もない1948年の三番瀬の様子。

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それが1950年(昭和25年)の港湾法により、干潟を 「港」 にすることが決まった。

そして、今の様子。

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色が濃くなっている箇所が、海底が掘られたところ。

ここに海水が溜まり、時に青潮の原因となる。

残った干潟の意味は大きい。

「ここは未来を守る共有財産だ」 と清野さんは訴える。

 

第二部は、大野一敏さん、清野聡子さん、田久保晴孝さん(署名ネットワークの代表、

三番瀬を守る会会長、千葉の干潟を守る会会長、千葉野鳥の会副代表など)による、

トーク・セッション。

 

大野さんによる、漁をしながら歌う  " 木遣(や) り "  唄が披露される。

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声もいいけど、体もごつい。 海のダンディズムは古希を過ぎても衰えてない。

 

 

 セッションでは、三番瀬の自然や生き物たちの写真を見ながら、

 干潟の豊かさを感じ取る。

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ここでは砂浜の役割が大きい。

ひと粒ひと粒に微生物がくっついている。 砂粒が小さいほど多くの生き物がいることになる。

それが水を浄化し、また小動物たちの餌となる。

小動物は水鳥たちの餌となる。 鳥の糞は砂 (の微生物) が処理する。

プランクトンが増えれば、魚が集まってくる。

 

東京湾の素晴らしさを語る大野さん。 

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会場から、「三番瀬のラムサール条約登録を進めるのに何が障害となっているのか?」

という質問が挙がった。

田久保さんは行政の問題を挙げ、大野さんは損得勘定があると指摘する。

漁業者たちの間での利害関係があるということだ。

そういう意味でも、船橋漁協の決議は大きな力になったと言える。

清野さんは、

「政治家も経済人も、未来の財産を守る度量があるかどうかが量られている」

と手厳しい。

 

大野さんのまとめ-

身近なものを食べること。 海や自然と親しみ、憩い癒される場所が近場にある。

この暮らしを守るのかどうか。 決定権は皆さんの手の中にある。

 

その通りだ。

 

≪注釈:ラムサール条約≫

正式名称を 「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」 と訳され、

湿地の保全と適正な利用を国際協力の下で促進していくことを目的とする条約。

1971年にイランのラムサールで採択されたことから 「ラムサール条約」 と呼ばれる。

当初は国境を越えて移動する渡り鳥の生息地としての湿地保全が中心だったが、

近年では、湿地生態系の持つ様々な機能が人間も含めた動植物の営みを支えている

ことが認識され、湿地生態系そのものの価値が評価されるようになってきている。

現在、日本では33ヵ所が登録されている。

2005年11月には宮城県・蕪栗沼とその周辺水田が登録され、

田んぼが生物にとって貴重な湿地であることが初めて認められたことで話題を呼んだ。

 



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