2009年6月 4日

トマトを究めよう。

 

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第3回全国施設園芸生産者会議 を開催する。

 

謹啓。

若草色の幼葉が透き通った風に吹かれるたびに色を変えていくように見えます。

毎年春は駆け足で過ぎてゆくように感じられます。

生産者の皆様にはいかがお過ごしでしょうか。

金融資本主義と新自由主義がもたらした世界的不況は、

底を打ったまま新たな展望を見いだせず閉塞感の漂う時代状況が続いています。

この状況を打破する道は、従来の価値観から脱皮した新たなベクトルで

経済の枠組みを構築する必要があると思います。

そのなかで小さな希望の光を見い出しているのは第一次産業への視線です。

・・・・・

 

生産者会議の案内文は、大地を守る会理事・長谷川満が書く。

広報上がりの僕は、つい赤を入れたくなったりした時期もあったのだけど、

今はもう、彼の文調こそがいいのだと思うようになった。

長谷川さんの最初の2行は、いつも温かくて、気を込めようとする意思を感じさせる。

やっぱり大先輩なのである。

 

しかし今回は、そんな前置きとは裏腹に、けっこう厳しい。

「施設園芸」 と銘打ってはいるが、臨んだテーマはトマト一本である。

もっと美味しくて安全なトマトを作ろう。

講師は、例によって西出隆一さん。

彼の理論で土を蘇らせた生産者からは、師と呼ばれているカリスマ。

理論 (科学) である以上、誰ともまっとうな会話ができなければならない。

それができるんだから、トコトン突き止めようではないか。

「西出さんが元気なうちに吸収し切ってほしい」

なんて、藤田会長まで本人の前で挨拶する。

 


会場は福島。 受け入れ団体は福島わかば会。

全国から約60名の生産者が集まった。

 

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事前に行なわれていた視察ほ場の土壌分析値を元に、

トマトの樹の状態を観察しながら、西出氏の分析とアドバイスが語られる。

「まだ分かっとらんな、こりゃ」 などと辛口批評は相変わらずである。 

 

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細かい説明は面倒なので省くが (と言って逃げる)、

とにかくすべては理に基づいていて、なぜ病気になるのか、なぜ虫が発生するのか、

それらは微妙な栄養バランスの問題なのである。

チッソの過不足で花粉の粘性まで変わり、蜂の働きにまで影響するとか聞かされると、

もうオイラはとても農家にはなれないと思う。

 

どの世界も、プロの道は厳しい。

自分は、彼らに相応しい仕事ができているか、自問自答の世界に陥る。

そうならないヤツは、己れのプロ意識そのものが怪しい、とすら思う。

 

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生産者の皆様。

詳細はわが部署から送らせていただく 『今月のお知らせ』 での報告をお読みください。

西出さんも推奨してくれた有機農業推進室作成の 『土壌分析のすすめ』 も、

お手元にない方にはお送りしますので、お申し出ください。

 

西出さんは、具体的な病害虫に対する処方箋もテキパキと答える。

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1936(昭和11) 年、金沢の米農家に生まれる。

中学時代から農業を目指し、東京大学農学部を卒業すると同時に、

実家に戻り農業に従事する。 1988年、能登半島の穴水町に入植して今日に至る。

トマトの施設園芸の他、露地栽培ではキャベツ、ブロッコリィ、カリフラワー、大根、

白菜などを栽培するが、本人曰く、「ワシの専門は稲や」 。

 

この口の悪い、しかし誰よりも勉強したという先達を、

一回呼んでみてみようか、という方がおられたなら、名乗り上げられよ。

 

自分のまったく与り知らない事由で消費が冷え込んでいく時代にあって、

もう一歩、まだ一歩、と研鑽を重ねてくれる生産者を、有り難いと思う。

トマトという作物。 美味かったり、味が乗ってなかったり、ホントに難しいと思う。

この人たちにどうタイアップできるのか。

毒舌の西出師からは、

「あんたらのトマトを買ってくれる大地っつうところは奇特な団体や」

とか言われてしまうが、

生産者が栽培をまだまだ究めたいと励んでくれるなら、

こっちはこっちで奇特の極みまで行ってみてやろうか、とか思うのだった。

 



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