2009年7月 3日
有機農業は進化する -米の生産者会議から(Ⅱ)
すぐに続きが書けなくて、間に一本挟ませていただいて、
遅ればせながら米の生産者会議の話、続編を。
福島県農業総合センターの実験ほ場を見学する一行。
「福島型有機栽培技術実証ほ」 を見る ( 「ほ」 というのは 「圃場」、田畑のこと)。
「福島型」 といっても特別に新しい技術を開発しているわけでなく、
様々な技術や理論を組み合わせながら、この地域に最も合った有機栽培技術を
確立させたいという、公僕たる研究者たちの実直な意欲が表現されたものである。
彼らなりに県の有機農業のレベル向上に貢献し、誇れる 「福島」 にしたいんだ。
前回も書いたけど、時代はようやく
研究者たちがこぞって 「有機栽培技術の実証」 を競うステージに入ったのである。
上の写真は、大豆との輪作を試みているほ場。
こちらは同じ条件下で、肥料を変えてみたほ場。
他にも、小さく区切りながら色んな組み合わせを試験している。
温暖化対策という位置づけで、メタンの発生を抑制する試験ほ場なんてのもあった。
まあしかし、法律ができただけで有機農業が先端産業になったかのように
研究が盛んになるってのも、どうよ、と言いたいところもあるよね。
本当にやりたかったんだったら、もっと早くから取り組めよ、と
へそ曲がりの私は言いたい。
しかし農民は、そんな僕なんかよりはるかに現実派である。
研究ほ場は 「ふんふん」 という感じで、隣の人と喋くり合っているかと思えば、
興味を持ったものには、我先にと飛びつく。
試験場をあとにして、実際の " 現場 " (やまろく米出荷協議会の生産者の田んぼ)
に入るや、またたく間にみんなで取り囲んだモノがあった。
いま、有機稲作でホットな話題となっている民間技術、チェーン除草機があったのだ。
「まあ、ちょっと私らなりに工夫して作ってみたんだけども・・・」 と、
ちょっと自慢したいげの佐藤正夫・やまろく社長。
生産者の手づくりである。
これを人力で引っ張って進み、雑草を浮かせる。
こんなふうに。
「やって見せて」 という声が挙がって、実演してくれたのは山形の方。
「じゃあ、俺がちょっと見せっぺ」 と言う間もなく、裸足になって田んぼに入った。
実演してみる、じゃなくて、自分の体でこっちの性能を確かめたかったのではないか、
と我々は推測するのだった。
面白いねぇ・・・・・みんなの目の色が変わる民間技術での競い合い。
研究者は、まだまだ当分、後追い実証に追われることだろう。
けっして研究を揶揄しているワケではない。
これから続々と出てくるであろう研究成果は相当な力になるに違いない。
でもやっぱね、やっぱりホンモノの田んぼのほうが面白いのだ。
しんどい、しんどい、と言いながら意地で有機に取り組んできた、岩井清さん。
昨年は、全国食味コンクールで金賞を受賞して、
いよいよ 「有機で美味い米をつくる」 自信がみなぎってきた感がある。
やり続けてきた甲斐があったね。
岩井さんの田んぼに掲げられている看板。 もう10年経った。
みんなも負けてはいない。 内心は 「俺こそが一番」 と思っている。
笑顔で語り合う中にも、百姓の矜持 (きょうじ) はぶつかり合い、
腹ん中で火花を散らせ、「よし、早く帰らねば (愛する田んぼが待っている) 」
と思うのだ。
ということで、公園の木陰で解散式。
研究者にも期待はするけど、
現場で日々新しい工夫に挑戦し続ける彼らによって、有機農業は進化する。
明日の暮らしの土台を、弛 (たゆ) まず耕し続けてくれる人々である。