2009年10月 4日

今年も開催 -大地を守る会の「備蓄米」収穫祭

e09100405.JPG

10月3日(土)。 福島県須賀川市。

福島の中通りに位置し、良食味産地として高い評価を受けている地帯である。

ここで、大地を守る会の 「備蓄米-大地恵穂(だいちけいすい)」 の収穫を祝っての

交流会が、今年も開催された。  

 

当初は、1年おきの開催として考えていたものだが、

厳しい天候の中、しっかりと良い品質で収穫まで漕ぎつけようと頑張ってくれた

生産者の成果を消費者の方々に見せたいと思ったのと、

予定より1カ月も早く予約口数の目標に到達した勢いが、

2年続けての開催へとつながった。

e09100401.JPG

生産者集団 「でんでん倶楽部稲作研究会」 (旧 「稲田稲作研究会」 を改名)

の事務局機能を担っている(株)ジェイラップの施設に集合した参加者一同。

前日までの雨で田んぼには入れず、

楽しみにしていたコンバインに乗っての稲刈り体験は中止。

「エーッ、残念~!」 の声が上がる (これは意外と興奮する体験なのです)。

この日の空模様も、今年の天候を象徴しているかのような曇天である。

 

それでも 「稲田のコシヒカリ」 の収穫は本番を迎え、

研究会自慢の太陽熱乾燥施設もいよいよフル稼働してきている。

e09100402.JPG

太陽光の中で最も波長の長い 「遠赤外線」 効果による低温乾燥。

火力乾燥が当たり前の時代にあって、15年前 (1994年) に導入した先駆的な施設である。

 


収穫された米が入荷して、検査が行なわれ、

太陽熱乾燥を経て、モミ貯蔵される。 さらに精米・袋詰めそして出荷までの

一連の流れを辿っていく。

e09100403.JPG 

写真左にある貯蔵タンクはアメリカ製。

モミで150トン収容できるタンクが3基、総量450トンの収容力がある。

今年、大地を守る会の備蓄米用に約束した量は、玄米で165トン(2,750俵)。

モミに換算すると、約200トン強。 このタンク1基と3分の1ぶんを、

来年のための備蓄用として消費者が前払いで担保したことになる。

1993年の大冷害の翌年から、豊作で米が余った年も、米価が下がっても、

変わらず続けてきた。

このゆるぎない継続こそが、生産者の意欲と責任感、そして創造性を育てたのだ。

 

こちらが精米工場。

e09100404.JPG

米の品質を守るために、様々に改良を加えてきた。

ここで説明するのも面倒なくらい、

ジェイラップ自ら  " 複雑怪奇 "  というほどのオリジナル工程になっている。

 

ひと通りの工程を見学した後、田んぼに向かう。

 

e09100416.JPG

 

黄金色に輝く田園。 なぜこんなに美しく感じるのだろうね。

 

e09100417.JPG 

 

今年の経過を説明する稲作研究会前会長・岩崎隆さん。 

「一反歩 (10アール) にして1俵 (玄米60kg) か半俵少ない感じですが、

品質は良いはずです」 と胸を張る。

気温や日照の具合を見ながら、きめ細かい管理をやってきた自負がにじみ出ている。

息子さんも農業を継いで孫もでき、たしか今も5世帯同居の大家族だ。

ジェイラップ代表の伊藤俊彦さんとともに、稲作研究会70名のメンバーを引っ張ってきた。

彼らは有機JASの認証も取っているが、それは無農薬無化学肥料栽培の技術獲得の

プロセスであり、自己証明の管理体制づくりの一環であって、ブランドではない。

ブランドはあくまで、「俺たちの米」 である。

 

田んぼに入れなかったので、これまた恒例となってきた 「イナゴ取り大会」 も中止。

「今年はイナゴのほうが大豊作なんで、いっぱい獲ってもらおうと思ってたんですけど」

と、消費者よりも生産者のほうが残念そうな口ぶりである。 

たしかに、畦に立つだけでビンビン飛んでくる。

e09100407.JPG

残念でしたね。

来年はいっぱい獲ろう! (え? 来年?・・・なんか、来ると毎年やりたくなっちゃうよね)

 

さて、今回実施したいと思ったのには、もう一つの理由がある。

これは何でしょうか。  

e09100409.JPG

乾燥野菜です。 

一昨年あたりから色々と試行錯誤して、試作品の完成まで漕ぎつけた。 

野菜が豊作で余った時、畑で捨ててきた規格外品、皮も含めて 「使い切る」 思想が

ここに凝縮される。

 

乾燥室の中の様子。

e09100410.JPG

きゅうり、トマトなどをスライスしたチップが、ステンレスの棚に並べられ、

こちらも米と同様、熱風でなく、ゆっくりと時間をかけた除湿工程によって乾きながら、

エキスが濃縮されてゆく。 

 

実に色んな野菜や果物が試作された。

e09100411.JPG

「毎日ごぼうを切り刻んだ時は、もうゴボウなんて食べたくないって思いましたァ。

 これをやっている時は、引きこもりですね。」 (福島弁で語尾が少し上がる)。

見かけによらず、繊細で凝り性な方である。

 

スライスやチップだけでなく、粉末も完成した。

長期保存ができ、いろんな料理に使える優れモノである。

今日は8種類の粉末が用意され、それが何なのかを当てるクイズ大会が行なわれた。

実はイナゴ取りができないことを考慮して、

前夜の打ち合わせで急きょ用意してもらったものだ。

 

その粉を使っての3種類 (人参、ゴボウ、よもぎ) のうどんも試食していただく。

e09100412.JPG

これがまた大好評で、嬉しい限りだ。

 

野菜や果物を使い切ることで、フードマイレージも下がり、ゴミの減量につながり、

自給率を上げる。

設備の配置や体制作りといった課題はいろいろあるけれど、

加工の受け皿として産地をネットワークできれば、これはゼッタイ秘密兵器になる。

何としても形にしたいと思う。

e09100413.JPG

そんな未来への意欲も語り合いながらの交流会となる。 

 

子どもたちは餅つきに興じる。

e09100414.JPG

結果は年によって違いはあるけれど、いつだって収穫は嬉しいものだ。

未来への種も蒔いているのだしね。 

 

清酒 「種蒔人」 の蔵元・大和川酒造店の佐藤芳伸社長も、

忙しい中、酒粕などを持って駆けつけてくれた。

e09100415.JPG

有り難うございます。

今年も楽しい収穫祭になりました。 

 

e09100408.JPG

備蓄米-大地恵穂、今年も無事収穫!!

これから来年まで、モミ殻に包まれ、しばしの眠りにつきます。

 

みんなで交わした笑顔が、明日を豊かにする。 間違いないよね。

 


Comment:

 収穫祭を楽しませてもらいました。ただ翌日晴れた以外は雨ばかりで とどめは台風が列島を直撃して 稲穂は元気に刈り取ることができているのでしょうか 心配です。毎年開催になるそうで 来年も参加できることを楽しみにしています。今年はうえの子が部活で参加できずそれだけが残念でした。

from "柳沢" at 2009年10月11日 11:20

柳沢様

コメント有り難うございます。台風の際はだいぶ風も吹いて、周りでは稲が倒れた田んぼもあったようですが、「俺たちの田んぼはこんなもんじゃ負けません」と力強い報告です。ひと安心ですね。ご心配おかけしました。
今年の開催では、柳沢さんの予定をだいぶ狂わせたみたいで、スミマセンでした。これで来年「今年はなし」とか言ったら、許されませんね。やるしかない、か。
お子さんも年々学校や友達関係の方が主になっていくのは仕方のないことです。一緒に来れる時はぜひご一緒に。またお待ちします。
お返事が遅れまして、こちらもスミマセンです。

from "戎谷徹也" at 2009年10月16日 18:27

コメントを投稿



大地を守る会のホームページへ
とくたろうさんブログへ