2010年4月18日

春のアオサ回収大作戦 -カキ礁まで歩く。

 

前日の記録的な寒波が去って、一転うららかな春の一日となった。

ふなばし三番瀬海浜公園は潮干狩りが解禁された最初の日曜日とあって、

人が押し寄せてきている。

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東京湾にわずかに残された干潟地帯は、

街に住む人々が海に触れられる手ごろな場所であり、

かつ憩いを与えてくれる貴重な自然である。

 

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ハマシギ、ユリカモメ、アオサギ、名前の分からない鳥たち・・・

野鳥の種類も多く、休日には必ずと言っていいくらい観察会のグループに出くわす。 

 

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干潟の豊かさは鳥の多さだけでなく、その餌を支える莫大な生命生産力があって、

皆さんの足の下にも、コメツキガニやたくさんの動物がいるんですけどね。。。

 

そしてこいつが、我々が陸(おか) に戻して資源として生かそうと

試みている海藻・アオサである。 

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春になっても低温が続いたせいで、思ったほど繁殖していない。

風がまだ北から吹いてくるので、沖に流されているということもあるようだ。

これが南からの風に変わって気温が上がると、一気に生育が進み、

また陸に打ち上げられてくる。

 

閉鎖系の東京湾に、たくさんの河川から窒素やリンなどの栄養分が流れてきて、

アオサはそれを吸収するかたちで過剰繁殖する。

" 海の厄介もの "  とか  " 海の雑草 "  と呼ばれて、漁民たちから忌み嫌われているが、

視点を変えれば、彼らこそ海の富栄養化を防いでいる調整係なのである。

「昔は  " 川菜とり "  といって、近隣の農家が持ってってくれていたんだよ」 

というのが、一緒にアオサ回収に取り組んでいるBPA(ベイプラン・アソシエイツ) 代表、

船橋漁協組合長・大野一敏さんの口癖である。

これを陸に戻し、肥料や飼料として資源の循環をはかる。 

それには農家の、しかも有機農業の技を持った農家の存在が欠かせない。 

アオサは、資源だけでなく、陸と海の人をつなぐ役割も果たしてくれている。

 


昨日までの悪天候もあってか、今日の参加者は20名強。

たくさんの潮干狩り客やバーベキュー連中を横目に集合。 

「しっかりアオサを回収して、浜をきれいにして帰りましょう。」

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東京湾アオサ・プロジェクトの代表も務めていただいている大野一敏さん。 

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海は陸の影響を受け、陸もまた海の結果を受けとることになります。

私たちはみんな、地球というこの星の一員、いわば運命共同体なのです。

このきれいな干潟を楽しみ、海を眺めながら、

そんなことも感じ取ってもらえると嬉しいです。

 

今回の生産者は、いつもの埼玉の養鶏家・本田孝夫さんではなく、

茨城から北浦シャモの生産者・下河辺昭二さんと、

JAやさとの鶏肉部会から2名の方(広瀬さん、木村さん) が参加してくれた。 

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養鶏の餌として、それに米(水田) で肥料試験をやってみたいとのこと。

こうやって生産者の受け皿が広がっていくのが、嬉しいね。

 

今日は回収というより 「アオサ拾い」 という感じ。

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潮干狩りに押し寄せた大群。 

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現代のニッポンは、飽食の一方で、何かに飢(かつ) えているのか。

コメツキガニも恐怖で深く潜ったに違いない。

 

本日の収穫量は、約200㎏。 

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試験用ということではちょうどよい量だったのでは。

 

回収後、記念撮影。

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第二部は、ここ数年で恒例となった、陶(すえ) ハカセによる 「干潟の生物観察会」。

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山から海までのつながりを見て、干潟の役割について知ってもらう。

次に、浜を歩きながら、一見ただの砂浜にもたくさんの生物が棲息していて、

循環しながら海を浄化していることを感じてもらう。

 

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そして今日は特別に、干潟の奥(沖) に広がってきているカキ礁まで歩く。

通常なら、大潮の日でもここまで見られないほど、カキ礁がはっきりと姿を現している。

陶さんもちょっと興奮気味で、

「今日はスゴイ! 今までで最高のタイミングです。」

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これがカキ礁。 

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ここ数十年で、異常なまでに三番瀬を侵食してきている。

カキの大繁殖を、それだけ豊かなのだと語る人もいるようだが、それは誤りである。

本来、三番瀬にカキ礁はなかったものだ (カキ自体は河口辺りにはいたのだろうが)。

それが埋め立てや浦安あたりでの高層建物の林立などによって風が変わり、

海の流れが弱くなって、カキが異常に繁殖するようになった。

気がつけばこの姿である。

 

カキ礁は、海面表面を覆うため砂がなくなりアサリが棲めなくなる。

海苔の養殖にも影響を与え、さらには減少している貴重なアマモ場を壊滅させる。

アマモは砂に根を張り、海中に酸素を供給し、魚の産卵場となる、

" 生物のゆりかご "  なのである。

 

干潟の価値を確かめながら、そこにもヒトのなりわいの結果を受けた自然の遷移という

" 脅威 "  が、日常的に進行していることを、僕らは目の当たりにさせられたのだった。

 

これはなんでしょう。 

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排水の汚れなんかではありません。

ケイソウ(珪藻) という名の藻類、植物プランクトンです。

光合成を行なうため、浅瀬や海面に繁殖したりします。

これを餌に魚が集まってきます。

干潟は生命を支えてくれているのです。

 

最後に、アサリの力を見ていただく。

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観察会を始める前に、アサリを入れた水槽とただの海水の水槽を並べ、

米のとぎ汁を入れる。

約1時間後、帰ってきたらこの通り。 

皆さんが普段流しているとぎ汁も、魚介類がきれいにしてくれています。

生物が豊かに生きられる世界があれば、暮らしは安定するのですね。

大事にしましょうね。

 

陶さん、ありがとう。

それにしても、カキ礁は少々ショックだった。

 



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