2010年6月 7日

守る会総会を終えて

 

6月5日(土)、2010年度の 「(NGO)大地を守る会」 総会を終え、

遅くまで職員たちと飲んでしまって、少々けだるい週の始まりである。

年に一回の最高議決機関を乗り切った安堵感も、多少手伝っているような。

役員の改選も紛糾することなく承認いただけたし。

 

前年度の活動報告に決算、今年度の活動方針に予算、

それぞれを審議いただき、承認を得る。

運動体としての 「NGO 大地を守る会」と、事業体としての 「株式会社 大地を守る会」 を、

車の両輪のように走らせながら運営してきたのが 「大地を守る会」 の特徴だが、

両者はけっして切り分けられるものではなく、

NGOの総会であっても、個々の質問はすべて両者にまたがっていて、

いつしか渾然一体となった議論になってしまう。

 


 

たとえば、ある活動部門で 「事務局員が足りない」 と指摘されれば、

受け手は 「そう簡単に社員は増やせないよ」 と考えながら回答していたりする。

 

たとえば、  " 有機農業を拡げる "  は会の基盤ともいえる運動理念であるが、

いろんな運動を展開しつつも、現実に生産者を増やし、

彼らの経営が安定していく力を与えられるのは事業部門のはたらきである。

つまるところ、運動の質や成果を議論する際には、

結果的に " 事業部門の今 " が問われるという形になり、

必然的に (株)大地を守る会に対して厳しい目が向けられる。

NGOで立派なことを言っても、やっていることは何よ! というわけだ。

 

この  " 運動と事業の両立 " という理念を成立させるためには、

生産と消費というやっかいな対立構造を、現実の流通 (売買) という場で

どう止揚していくかが常に問われるわけだけれど、農産物の場合、

生産者とは量も値段も契約したうえで、一方で消費者からは任意の注文制という形で

モノを動かしている以上、そのひずみは、常に余剰と欠品という現象となって現われる。

その悩みが時に集中的に表現されるのが、

「野菜セット・ベジタ」 (組み合わせお任せの野菜セット) といった

調整弁的な機能を持って設定されたアイテムである。

これがなければ 「好きな時に好きなものを」 注文できるというシステムの

根幹が揺るぐことになるのだが、これすらも消費者の支持がなければ持続できない。

 

都市生活者の需要(ニーズ) と地方の生産力をマッチングさせるには、

相応の市場機能的調整能力が必要になるところだが、我々の今の力では、

ただただ相当なストレスを消費者にも生産者にも与えてしまっていることになる。

 

しかもこれは量や値段といった問題だけではない。

当会の会員には、陰陽の考えにもとづく食養論を大切にするマクロビオティックの方もいれば、

食物アレルギーを持った方もいる。

あるいは環境負荷の視点で現実の矛盾が厳しく指摘される。

象徴的なのがトマトの旬の問題であったりして・・・。

圧倒的なトマトの需要と、冬場にトマトをセット野菜に入れてくれるなという

明確な思想的抗議を前に、僕らの説明は視点によってブレ続ける。

 

自給率を圧倒的に下げている勢力であるにも拘らず、

胃袋が集中する都市の要望 (圧力) は実に多様で、時にわがままである。

一方で、僕らが支援し育てるべき生産者は全国に点的に存在する人々である。

需給の規模や距離もアンバランスな中で、

この両者を上手につなげ、さばいていくことがまだできないでいる。

そういう意味で、この運動は常に成長の過渡期であり、

過渡期のストレスを乗り越えるには、知恵と工夫と、したたかな戦略が求められる。

大地を守る会が標榜する 「オーガニック革命」 に戦略はあるのか、

それは事業に反映されているのか、ということなんだろう。

 

総会では、ベジタの全面改定に向けた検討を開始していることを伝え、了解を願った。

一つの課題を乗り越える知恵と工夫に、「腹案はあります」 と言ったあとで、

縁起が悪いので撤回したが、ないわけではない。

 

こんなふうに35年、愚直に議論してきた団体である。

運動を語り合いながら、現実の流通を議論する。

生産と消費の圧力を受けながら、儲けると株主(=会員) に叱られる。

そんな組織って、他にあるだろうか。

実にしんどい。

 -といいながら28年になろうとしている。 そうとうM的人間になった気がする。

 


Comment:

「需給の規模や距離もアンバランス」これがきっと消費者と流通のかかえる意識の一番大きな違いが存在しているところなんでしょうね。

どのくらい、需給の規模の違いが有るのか、消費者は全くわかりません。だから、苦労しているんだろうなーとは思いますが、どのくらい大変なのはわかりません。

だから、時に「わがまま」と思えることも言っちゃうだろうし、意識のすれ違いから感情の行き違いまでに発展してしまうかもしれない。

でも、お互いそんなことは望んでないですよね。

頑張りましょう!
一緒に!!

from "てん" at 2010年6月13日 21:13

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