2010年7月 3日アーカイブ

2010年7月 3日

食文化の伝道師と若者たち

 

6月24日の米生産者会議(新潟) から福島・猪苗代での日本有機農業学会に流れ、

帰ってきた翌28日 には、一泊二日で関西の取引先生協さんを回る。

こちらの二日間は提携に関する商談である (単純に卸しの営業とも言うが) 。

30日は、午後いっぱい大地を守る会理事会。

7月1日は大地を守る会の会員活動 (だいちサークル) 主催での懇談会に出席。

『 「大地を守る会」を知ろう! シリーズ ~農産グループ編~ 』 in 横浜。

 

一週間出ずっぱりとなってしまった。

こんなに出歩いてていいのか? と自問自答しながら悶々とする。

ブログ・ネタも溜まったが、それ以上に宿題の山が積まれていて、

どう転んでも書けそうにない。

何とか猪苗代での会議の後篇だけでも書き終えて、

遅れの帳尻を合わせることにしたい。

 

 

「日本有機農業学会 公開フォーラム」 の会場になったのは、

猪苗代湖を眼下に一望できる高台にある 「ヴィライナワシロ」 というホテル。

実践報告の最後は、このホテルの総料理長、山際博美さんが登場する。

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フランス料理界最高栄誉の一つ (私は無知、念のため)

「ディジブル・オーギュスト・エスコフィエ」

というスゴ過ぎて覚えられない称号を持つ方だが、

もう一つの顔は、農水省認定 「地産地消の仕事人」。

今回はこちらでお願いする。

 

このホテルの総料理長になって22年。

最初はフランス料理の巨匠らしく、伊勢エビやカニや肉などを使った

 " 華 " のある料理を披露されていたのだが、

福島県内の産地を訪ね歩くうちに、メニューより素材を中心に考えるようになった。

有機食材と初めて出会ったのは、二本松市の有機農業グループだとか。

その会の名前を聞いて、当会生産者の名前も浮かんだが確かめられなかった。

 

食文化を伝えるとは、地域の文化の魅力を伝えることだと、山際さんは明言する。

山の中の温泉でマグロの刺身などを出す旅館が今でもある。

しかし周囲の山菜を使って感動させることによってこそ、

地域の風土や文化や心を伝えることができ、旅の記憶に残るものとなる。

それが 「料理」 による地のおもてなしだと。

 


現に、山際ディジブル・・・・の腕で磨き上げられた会津郷土料理によって、

ヴィライナワシロには、会津の食を求めて来る人が絶えないという。

 

山際さんはとうとう宴会場の舞台をつぶして、

大勢の人の前で調理するキッチンスタジアムにつくり変えた。

料理を見せるだけでなく、キッチンからもお客様の顔が見え、

たとえば家族の反応や様子によって出す時間をずらしたり、

調理に変化を持たせたりするのだという。

また最新の厨房設備を使っての親子料理教室や地産地消の料理講習会を開く。

さらにはインターネットを使って会津料理の調理法を伝える映像の配信も始めた。

昨年には 「体験農場」 も開設した。

宿泊者は、昼間は農作業を楽しみ、料理の技を学び、

夜は自分で収穫した野菜を食べ、磐梯猪苗代の名湯で身も心も癒して、帰る。 

そんなコースを楽しむ人が増えている。

 

生産者の思いや地場作物の物語を  「食」 を通じて伝えるなかで、

地域全体の食文化意識も高まっているとのこと。

「食」 が地域を元気にする、見事な実践モデルだ。

ここで食べた食材がすべて感動モノであったことは言うまでもない。

気になった方はぜひ、猪苗代はやま温泉 「ヴィライナワシロ」 にどうぞ。 

 

さて、実践報告のあと、新規就農研修生たちのリレートークが行なわれた。

板橋 大(ゆたか) くん。 

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大和川酒造での交流会に参加された方には見覚えのある顔でしょう。

酒蔵で働きながら、山都に畑と田んぼを借りた。

今年から 「会津耕人会たべらんしょ」 の一員になって、来年より本格就農を目指す。

 

チャルジョウ農場で去年の春から研修を続けている豊浦由希子さん。 

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前は製薬会社にいて、今とは真逆の仕事をしていたとか。。。

2年目になって農作業にも慣れてきて、ほんとに楽しそうだ。

 

チャルジョウ農場からもう一人。

写真の学校を出たが、長野の祖父母が守ってきた畑を残したいと、

有機の修行にやってきたという牛山沙織さん。

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「小川さんは、植物の力を信じている。 人はその環境を整えてやるのだといいます。

 小川さんの考えからいっぱい学んで、長野に帰って有機でセロリを作りたいです。」

彼女たちには、農業への偏見がない。

牛山さんは、お爺ちゃん・お婆ちゃんが一所懸命畑を耕していた姿に、

美しい被写体を見ている。

要は生き方だよなあ、と感じさせる。

 (オイラの背中は、だらしなく崩れてないだろうか・・・)

これから農業を本気でやるとなると、ただの希望ではすまなくなるけど、

それでもこの経験はゼッタイに損になることはない。

 

こんな彼らがつくった 「会津・山都の若者たちの野菜セット」 が

もうすぐ届けられる。 精一杯の気を込めて、送ってほしい。

この箱が、君たちが後輩につなげるたびに大きくなっていくことが、僕らの喜びだから。

途中で折れることなく、大事にしてほしい。

 

実践報告でも、若者たちのリレートークでも、

実際に少しでも貢献できているという実感を持てることは嬉しい。

素直に誇りたい。

 

次は二日目の現地視察。

山都の堰にチャルジョウ農場、そして熱塩小学校となるのだが、

このまま話を続けると、終わんなくなる可能性がある。

すみません、明日に回します。

 



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