2010年10月 5日

常識破りのせん定技術を学ぶ-柑橘生産者会議

 

先週は9月30日(金)-10月1日(土)にかけて、

広島県は因島(尾道市) から瀬戸田町(生口島・高根島) と巡りながら、

第5回柑橘生産者会議を開催した。

柑橘の生産者会議は9年ぶり。 

久しぶりの技術研修会に、

和歌山から鹿児島までの12グループ28名の生産者が参加された。

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今回の目的は、従来の常識を覆す独自のせん定技術をあみだし、

かつ無農薬・無施肥でレモンを栽培する

道法正徳 (どうほう・まさのり) さんの理論と技術を学ぼうというもの。

 

広島空港から山陽自動車道で尾道市に入り、尾道大橋を渡って因島に。 

そこでまずは、道法さんが技術指導をしているという万田発酵(株) の柑橘園を見る。 

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道法正徳さん。 

元広島県果実農業協同組合連合会の技師時代、

指導の基本とされた 「開心自然形」 と呼ばれる横に広げて陽を樹にまんべんなく当てる

つくり方ではなく、まったく逆の、徒長枝(立ち枝) を伸ばしていくやり方こそ

本来の仕立て方ではないかと考えるに至った。

それは 「切り上げせん定」 と呼ばれ、

彼はこれによって柑橘農家を悩ませる隔年結果 (豊作と不作が繰り返される) を防ぐ

ことができることを立証した。

 

しかし当然のごとくというか、ありがちな話として、

組織や専門家筋からは受け入れられず、

道法さんは自身の技術論を原稿にまとめ、

農業専門書の出版社である 「農文協(農山漁村文化協会)」 に送って、

川田健次というペンネームで出版にこぎつけることができた。

書名は 『高糖度・連産のミカンつくり ~切り上げせん定とナギナタガヤ草生栽培 』 という。

 

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おかげで左遷も経験したりしながら、5年前についに果実連を辞職。

今は堂々と道法正徳の本名で、全国各地に指導に出かけている。

 


徒長枝を残して上に成らす。

実が成れば枝は垂れ、横に広がる。 

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これは春には立っていた枝である。 最初から横枝をつくってはダメだと。

加えて・・・ 

道法さんのせん定技術は、どの枝を伐り、どういう樹形をつくるかだけでなく、

切り方にも特徴がある。

小型のチェーンソーを使って、素早く、えぐり取るように切る。 

 

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一般的な切り方だと、伐った枝の元が斜めに残るところ、

下からえぐるように切れば先端がなくなり、早くきれいにゆ合するのだと言う。

ゆ合ホルモンは枝の先端からおりてくるため、

このほうが切り口の回復が早くなるということのようだ。

 

チェーンソーを使って実際のせん定を実演する道法さん。 

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道法さんの技術はせん定だけではない。

どの花を残すか、摘果のポイントはどこにあるか。

糖度の乗ったミカンをつくり、隔年結果を防ぐためには、

ホルモンの関係も理解しなければならない。

 

園地見学のあとは、食事前に座学も用意する。 

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どんどん専門的な話になる。

これ以上は表面的な受け売りをしてもかえって底が知れるので控えるが、

道法ワールドはさらに無施肥(肥料をやらない)、そしてナギナタガヤを利用した

除草剤を使わない草生栽培へと広がる。

 

二日目も、朝から勉強会。

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この技術研修会を通じて、色々とお世話になったのが最初に見学した

万田発酵(株) の会長、松浦新吾郎さん。

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「万田酵素」 という植物発酵食品については、東ちづるさんのコマーシャルなんかで

ご覧になった方もおられるかと思う。

ここで製品をPRするわけにはいかないが、

50数種類の野菜・果物・海藻などを3年以上発酵させているとかで、

ここにも発酵という世界にとり憑かれた人がいたぞ、って感じ。

道法さんはここの果樹園の栽培指導をしていて、

松浦会長からの信頼も篤いようで、

会長はずっと我々の脇で道法理論の補足などをするのだった。

 

解散後、希望者はさらに呉市豊浜町まで足を延ばして、

実際の道法さんのレモン栽培を見せていただくこととした。

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道法さんは指導する相手に応じて農薬の使用も認めるが、

自らは無農薬・無施肥を実践している。

 

立派なレモンが成っている。

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NHK広島放送局の取材が入っていて、

感想を聞かれる愛媛県中島町のレモン農家、泉精一さん。

こちらも筋金入りの有機農家である。

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別れる前に一枚。

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それぞれに感じ取り、つかんだものを持ち帰っていただければ、と思う。

隔年結果対策、そして無農薬での美味いミカンづくりへと、

刺激になったなら幸いである。

 

穏やかな瀬戸内の二日間だった。

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Comment:

隔年結実対策と草生栽培と農薬がいらない栽培ができると、消費者としても嬉しい限りです。

他の作物にも活かせるといいですね。

やっぱり農薬を使っていないものの方が味はずっといいです。

大地の果物はアクが少ない気がします。
ブドウも、食べたときに、舌に残るあの感じでが少ないし、みかんも、変な苦味はありません。

皮も安心して使えます。

生産者の皆さん、大変なご苦労があるとは思いますが、これからもよろしくお願いします。

from "てん" at 2010年10月10日 16:36

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