2010年10月 8日
「備蓄米」 が生んだ新しい価値の扉
ああ、なんでこんなしんどいブログを続けているんだろう・・・・
とため息つきながら、でもまだやめるワケにいかないなぁ、と思い直す。
「あんしんはしんどい」--それは僕だけのものではなくて、
グァンバッちゃってくれている生産者と、
食べるという命がけの行為(ですよね) に意思を持ってくれた消費者の顔が見えると、
" 流通者は安心のネットワーカーでなければならない " を標榜する自分としては、
まだまだ書き続けなければならない、と自らに試練を課すのである。
これは僕の修行のようなものだ。
・・・・・と何度思ったことだろうか。
たとえば備蓄米の収穫祭のように。
「大地を守る会の備蓄米」 がつなぐ " 安心 " とは、人と人をつなぐだけでなく、
未来に " 安心 " を運ぶ時間軸を持っている。
食べものは安くなければならない、という今の時代にあって、
そう安くないお米に一口25㎏の年間予約&先払いという制度が16年続いたことは、
奇跡じゃないかと時に思ったりするのだが、それが奇跡じゃないところに希望がある。
それだけの 「価値」 をつくった人と認めた人がいた、というさりげない実力。
誰からの補助もなく持続する " 食の信頼の輪 " 。
ここにこそ本質的な意味があって、しかもこれはイベントではない。
そんな骨太なコンセプトで続けてきた 「備蓄米」 の、年に一回の " ハレの日 " が収穫祭だ。
間が空いちゃったけど、報告の続きをしたい。
稲田はすっかり稲刈りシーズンに突入していて、
この日もたくさんの米がライスセンターに運び込まれてくる。
時あたかも 「平成の大冷害」 と呼ばれた1993年に完成した、
実に因縁深い太陽熱乾燥施設。
時代を先取りしたこの設備で水分調節がされ、しかもモミの状態で保管される。
この設備は、何度来ても見てもらわなければならない。
そして、
集荷-品質チェック-乾燥-保管-精米-袋詰めまで一貫した流れを見てもらった次に、
3年越しの取り組みとなった野菜・果物のオリジナル低温乾燥製品を見ていただく。
このコースに来ると、みんな一瞬米のことを忘れて別な世界に入る。
見よ! この試作の数々を、である。
大地を守る会内で部署横断的に結成されたプロジェクト・チームと、
生産者がつくった会社-(株)ジェイラップとで進めてきた 「はたまる プロジェクト」。
正式名称は、「畑丸ごと、実から種まで乾燥プロジェクト」 という。
僕としては 「皮から茎から実から種から~」 とか、くどいくらいに表現したいところだったが、
若い人にはヘタなジョークとしか聞こえないようで。。。
コンセプトの解説は8月に実施した試食会の日記を読んでいただければ- としたい。
パウダーにスライス、細かく刻んだ状態で乾燥したもの、
などなどが所狭しと並ばれている。
栄えある商品化第1号に選ばれたのは-
生姜パウダー、原料は高知県 「大地と自然の恵み」 から。
伊豆の清流で育った本山葵(わさび) のパウダー。
福島わかば会のトマトを使った乾燥トマト (スライス)、の3品。
すべて規格外品と言われたものたちによる 「価値」 の主張である。
しかし、いざ本格製造となって苦労したのは、
規格外品あるいは余剰といわれるものたちは、決められた量と納期通りに集まってくれない、
資本主義社会においては極めて生産性の悪い半端者であるということだ。
結果的に、どうしても試食会で会員から示された価格帯には収まりきれなかった。
でもね。
この世の平衡は半端者がいるから成り立っているのよ、と声を大にして叫びたい。
生物多様性を支える重要な一員なのです。
蘇らせることで、自給力アップにも、環境保全にも貢献する力を持っているのです。
しかも、台所では 「意外と重宝、好きっ!」 と言わせる自信があります。
食べてほしい。 使ってみてほしい。
モテないハンパ者を代表して、切にお願いする次第であります。
会員の皆様には、11月1日から配布の 「ツチオーネ」 にて登場します。
ここは偉そうに、乞うご期待! と言っておこう。
銀座三越(B3:大地を守る会青果物コーナー) にも出るぞ!
・・・宣言しちゃいましたので、ヨロシク!
ひと通り見学した後は、お待ちかね、乾杯の儀式。
例年のことながら、出された食材の素晴らしいこと。
おにぎり、お餅、豚汁、果物、お漬物・・・・
そして圧巻だったのが、米粉と野菜パウダーを使ったケーキやお菓子類の登場。
「今日のために、寝ずにつくりました」
と少しテレながら一品一品を紹介する伊藤祐子さん (名前が間違っていたらゴメンなさい)。
僕のイチオシはこれ!
そういえばカフェ・ツチオーネでの試食会でも、
だだ茶豆のパウダーをすぐにも欲しいと言われた会員さんがいたな。
来年の秋ですね。
いつも感謝の、ジェイラップの女性陣たち。
男どもが偉そうにハッタリかませられるのは、この人たちのお陰。
そして、「これを食べてもらわないと」。
ネギのパウダーを使った、ネギうどん。
生姜うどんもあわせて試食する。
「うまい!」 「イケますね」 の声に満足。
収穫祭には欠かせない、餅つき大会。
厳しかった今年の米づくりの苦労を脇において、
ひと時の交流を楽しむ。
君たちの未来は今の大人の所為にかかっている、その思いは持っているから。
「備蓄米」 の地から 「はたまる」 の誕生。
-この扉が僕らの前に然るべく用意されたのなら、敢然と前に進むしかない。