2010年10月23日

オヤジを越えて進もう -『土と平和の祭典2010』

 

良い酒は悪酔いしない。

それは個人差と飲む量による、とまあもっともな反論はあろうが、

それでも、多少の無理を押して断言しておきたい。 良い酒は悪酔いしない!

それに良い酒は、人を、またその場を、幸福にする。

酒呑みの自己弁護と言われれば、その通り、と答えるしかないけど。

 

10月17日(日)、純米大吟醸の余韻も冷めやらぬ朝の6時に喜多方を発ち、

シアワセに爆睡して、気がつけば郡山、そして東京。

フラフラと日比谷公園にたどり着けば、今日も楽しいお祭りである。

大地に感謝する収穫祭、

種まき大作戦 ~土と平和の祭典2010~

 

e10102306.JPG

 

先代の会長、故藤本敏夫さんの遺志を受け継いで、

娘の八恵(歌手名:Yae ) ちゃんが実行委員長を務める

次代の食と農を開拓する者たちの祭典。 

食や環境問題に携わるたくさんの市民団体やお店、生産団体、ミュージシャンたちが

手弁当で集まって祭りをつくり上げる。

 

e10102304.JPG

 

僕は二日酔いだからということではなくて、

昨年、野菜をたたき売って顰蹙(ひんしゅく) を買った反省から

売り子に立つのは自粛させられて、

小音楽堂でのトーク・セッションの司会というおつとめを仰せつかったのだった。

 

e10102308.JPG 

 


「土と平和の有機農業セミナー」 と銘打ってのセッション。

開始前に簡単な打ち合わせをして、ぶっつけ本番。

 

実行委員長・八恵ちゃんの開会の挨拶に続いて、

  " 有機農業のカリスマ "  埼玉県小川町・霜里農場、金子美登(よしのり) さんの

基調講演が行なわれる。

金子さんはNPO全国有機農業推進協議会の理事長でもある。

 

e10102303.JPG 

 

有機農業を始めて40年になる。

30軒の消費者を探すのに数年かかり、30年経って村も動くようになった。

今では行政の支援で地元の学校給食に使われるだけでなく、

加工も含めた食の地域循環を進める  " 有機農業の里 "  として、

小川町は全国に知られるまでになっている。

研修生を受け入れるようになって31年。

育てた100数十人の研修生の9割が非農家というのも、霜里農場の特徴である。

 

e10102302.JPG

 

農民が元気になったら、美しいムラになる

と金子さんは語る。

食の自給だけでなく、タネの自給、エネルギーの自給、

そこから見えてきた平和で安定した社会・・・

40年の実践を経て到達した金子さんの世界は深く、重みがある。

 「いのちが見えない文明に未来はない

この国の農をつくり直す起爆剤は、非農家かもしれない。

 

--と基調をつくってもらって、北海道から九州まで7人の若者たちが登壇。

 

北海道瀬棚町から参加してくれた元ミュージシャンの富樫一仁さん。

ギターを鍬に持ち替えて10年。 農業に転身した理由は、自身の重いアトピーから。

" 自然の摂理に従った農業 "  をモットーに、20haの農地でコメや大豆などを栽培する。

食べ物で健康を保てることの喜びを一人でも多くの人に伝えたいと語る。

 

秋田県大潟村から、入植2世の武田泰斗さん。 有機稲作をベースに80頭の肉牛を飼う。

こちらも就農して10年。 悩みは家畜の世話で休みが取れないことと草取りの人材確保。

親と対立することもしばしばあり、正直やめたいと思うときもある、とこぼす。

でも親と対立するのは自信がついてきた証拠だし、経営に悩みを持つのは

それだけ真剣に生きているってことだよ。 発展途上の33歳である。

 

山形県鶴岡市、庄内協同ファームの小野寺紀允(のりまさ) さん。

横浜でサラリーマンをやっていたが、

「やっぱり山形が好きだから」 1年前に帰って就農した。

父の農業、母が経営する農家レストランを手伝いながら、

食の都・庄内を農業で活性化させたいと夢を膨らませている。

 

神奈川県愛川町に新規就農して1年という千葉康伸さん。

8年間東京のど真ん中でサラリーマン生活を続けるも、

「都会に飼われている」 と感じて、都市を見切って転進を決意した。

高知の土佐自然塾・山下一穂さんのもとで 「お金を払って」 勉強して、

ようやく販路も見つかってきて、今はまだ 「どうにか食べていける」 状態だけど、

自分の足で立っている、生きている実感があると言う。

就農を希望する人へのアドバイスは - 「行動すること」。

 

千葉県匝瑳市,佐藤真吾、29歳。 就農して7年。

米は有機でやれるようになったが、ピーマンなど施設(ハウス)での野菜栽培は

特別栽培レベル。 もう新規就農者というより落ち着いた農業者の姿を醸し出しつつある。

 

米どころ新潟からは、農業生産法人 「いなほ新潟」 の社員として働く関徹さん。

実家は米農家だが、ストレートに家には入らず、他流試合で学ぼうとしている。

腹の中で実家の田んぼを気にしながら。

「子どもの頃から田舎の風景が好きだった。 耕作放棄の田畑を見ると胸が痛みます。」

田んぼを残したいと語る27歳。 僕らはこういう人に近未来の食を依存することになる。

 

最後に長崎有機農業研究会の松尾康憲さん。

親が有機農業の世界に入り、自分も当然と思って就農したが、

今ではとにかく親父と対立する日々だと言う。

 

どうしたらオヤジを乗り越えられるか・・・

会場からも質問が出たが、答えは簡単なことだ。

納得させられる結果を残すこと、それしかない。

そのためには、オレの (やりたいようにやれる) 畑を持たせてもらうことも必要だけど。

否定される理由にはその上を行く理論武装も必要だ。

「分かってくれない」 だけでは子供のまんまとしか思われないからね。

 

7名の若者たちを眺めながら思ったことは、みんなカッコいい! イケメン揃いだということだ。 

顔立ちだけじゃなく、爽やかな感じがとてもイイ。 内面の強さや誇りも顔に出ていて、

すべてを前向きにとらえている。 語る言葉は甘いが、捨てたもんじゃない。

司会をやってたもんで、写真をお見せできないのが悔しい。

 

最後は金子さんと、歌手の加藤登紀子さんにも上がっていただき、まとめをお願いする。

お登紀さんが、司会を無視して仕切り始める。

「ここにこそ希望がある」 でまとめさせていただくことにする。

 

与えられた仕事が終わった途端に、気が抜けた。

大地を守る会のブースでは、さんぶ野菜ネットワークのお母ちゃんたちが

人参ジュースの販売に精を出してくれている。

埼玉から助っ人に駆けつけてくれたのは、志木の三枝さん。

e10102313.JPG 

 

川越の吉沢重造さん。

e10102307.JPG 

 ダブルの上着にシャレた帽子。

ゼッタイにウケをねらってきたとしか思えない。

でも男なら、似合っていようがいまいが、死ぬまでダンディズムを枯らせてはいけないのだ。

それが藤本さんの教えだったしね。

 

出店でご協力いただいた生産者の皆さん。有り難うございました。

このイベントの総括は、もう僕の守備範囲を超えているので、割愛させていただきます。

 

e10102312.JPG

e10102309.JPG

 

e10102305.JPG 

 


Comment:

2年ほど前からブログを読ませていただいています。菅政権の突然のTTP参加表明を聞き、自分は農業従事者ではないですが、日本の農業を大変心配しております。確かに、日本の農業はある程度の外圧や競争が必要だと思っていますし、安全、環境保全などの面で高い付加価値が付けられ、輸出にも勢いがつくと思います。しかし、関税を無くす前にヨーロッパ並みの所得補償をしなければ、競争力のない農家はもちろん、ある農家もつぶれてしまうと思います。ぜひ、このブログを読んでいる方に中途半端な政策に対する意見を言って欲しいですし、発信力にある方がその声を大きくしてほしいと思います。韓国ではアメリカ牛肉輸入で大規模なデモが行われたのに、日本の農家はどうしてデモすらしないのか、不思議でなりません。マスコミは報道しませんが、小沢氏の強制起訴の不当とマスコミの偏向報道を訴えて、一般の人々が集まりデモを行いました。組織や動員がない、こういうデモはめずらしいそうです。日本はもうデモぐらいやらないと小さな声が届かない状況だと思います。どうか、ブログで農家の方、消費者の方への意識喚起をお願いしたいです。

from "Anonymous" at 2010年11月 1日 11:16

「オヤジを越えて進もう」

いい響きですね。

これから大豆の収穫、麦の播種とバタバタします。しかし、この天気どうにもなりませんね〜(/_;)

from "農民たかはし" at 2010年11月 3日 10:04

昨年のエコクラスの講義とても印象に残っています、お世話になりました!

初めて今年土と平和の祭典を体験しました。
良い酒は悪酔いしないに共感!
会場にいたみなさんのおかげもありましたが、寺田のお酒でとても楽しく過ごすことが出来、実感しました。
エビさんのファンもいますので、またお会い出来ればと思っております。ブログまた楽しみにしています〜

from "sakurada" at 2010年11月21日 23:55

皆さま
コメント有り難うございます。返事が遅れまして申し訳ありません。

Anonymous様。TPPはいずれきっちりと、とは思っているのですが、なかなか手が回りません。普段の日記の中で少しでも自分の思いを伝えていければ、と思っています。呼んでいただけると嬉しいです。
農民たかはし様。厳しい年でしたね。大豆の今後について、一度じっくり話をしましょうか。
sakuradaさん。有り難うございます。またいずれどっかで。

from "戎谷徹也" at 2010年11月29日 01:21

コメントを投稿



大地を守る会のホームページへ
とくたろうさんブログへ