2010年10月19日

子どもたちを救え! 『味覚の一週間』 日本上陸!

 

さて、昨日の夜、新丸ビル 「エコッツェリア」 で開催された

地球大学アドバンス 第35回

 TOKYOから提案する新たな 「地球食」 のデザイン 』 。

ゲストは 「オテル・ドゥ・ミクニ」 オーナーシェフ・三国清三さんと、

金沢工業大学産学連携室コーディネーターで

「都市の食」 ビジョン・ガイドライン検討委員会の座長を務められた小松俊昭さん。

ナビゲーターは、いつもの竹村真一さん(京都造形芸術大学教授、ELP代表)。

竹村さんは、この日名古屋で開幕した

COP10 (生物多様性条約第10回締約国会議) の会場から駆けつけられた。

 

100年前に17億人だった地球の人口が、1970年に35億人になり、

まもなく70億人に到達しようとしている現在(いま) 。

穀物の生産量は頭打ちになり、表土の劣化が進み、

多様性の喪失が重要な地球的課題となって、まさに今日から国際会議が始まっている。

 

「 私たちは20世紀的な 「豊かさ」 の概念を超えて、

 宇宙船地球号の食のあり方=「地球食」 の リデザインを

 根本から行なうべきギリギリの地点に立っています。 」

 

そんな問題意識のもと、 

 " 日々地球を食べる "  巨大な胃袋=日本の首都・TOKYOで示すべき

新たな 「地球食」 のモデルとは・・・・・

そこでゲストのお二人から、「都市の食」 ビジョンの構想や、

丸の内シェフズクラブで取り組む食育活動がプレゼンされる。

 - というのが事前にインフォメーションされた内容だったのだが、

ここで三国さんはご自身の話の前に、超ビッグなゲストを登場させたのだった。

 

親子三代にわたって三ツ星シェフを獲得という栄光を持つ、

フランス料理界が世界に誇る アン=ソフィー・ピック シェフ。

 

フランスで、1990年から毎年10月に開催されてきた

ラ・スメーヌ・ドゥ・グ (「味覚の一週間」) 』 という国民的イベントを、

日本でも来年から本格的にやろうということになって、

その日本展開 「大使」 として来日された。

ピックさんの日本での活動にはテレビ局が帯同し、この会場にもカメラが入った。

お陰で、参加者は写真撮影禁止! (ということで今回は画像はなし)

「味覚の一週間」 日本展開も、19日午前11時の公式発表まで

「公的な場やネット上でのおしゃべりなどは控えていただきたい」 と。

 

味覚の一週間 -とは何か?

 ( ↑ ピックさんのお姿は、ここからご覧になれます。) 

 


(以下、パンフレットより引用しつつ構成)

美食の国フランスで20年以上続いてきた、国民的な食のイベント。

次代を担う子どもたちにフランスの食文化をきちんと伝えたい、

という思いにかられた一人のジャーナリストとパリのシェフたちが集まって開いた

「味覚の一日」 というイベントに端を発する。

今や全国民がフランス料理という国家遺産の素晴らしさを再発見、再学習する場として、

一週間にわたって様々な催しが企画されているのだという。

フランスの、国を挙げた 「食育」 というわけである。

始まった90年当時、フランスですら、子供たちを取り巻く食の乱れが

深刻な問題になっていたというから、食の簡便化というか商品経済の力というのは

いずこにおいても魔力なのかと思ったりする。

(ちょっと安心したりする自分を感じるのが恥ずかしいけど。)

 

「味覚の一週間」 では、三つの柱で企画が展開される。

まずは 「味覚の授業」。

料理のプロがボランティアで小学校に出向き、味覚が発達する大切な時期である

子どもたちに、味の基本を教える授業を展開する。

「しょっぱい」 「酸っぱい」 「にがい」 「甘い」 の4つの味を五感を使って学び、

食べることの楽しさを体験する。

味覚の違いを覚えれば、その違いを話すことができ、それを伝えることができるようになる。

また子どもだけでなく、教員や給食・食堂の責任者に対しても同様の授業が行われる。

学校は 「味わう」 感性を目覚めさせる役割を果たし、

子どもたちは文化としての 「食」 の継承者となり、また良質の作物を作る助けとなる。

今ではフランス首都圏の98%の教育機関が 「味覚の授業」 を支持しているという。

 

次に 「味覚の食卓」。

料理人たちは、期間中に特別なメニューを発表する。

料理人の技量、創造性、旬の食材の利用法、前例のない食材の組み合わせなどを競って

コース料理を用意するのだ。

素晴らしい! と思ったのは、そのオリジナル・メニューを普段の価格で出すだけでなく、

学生には30%の割引価格で提供していることだ。

学生証を見せるだけで、学生には縁遠い一流レストランの食を味わうことができる。

そこでシェフの料理に対する思いを学生たちも知ることになる。

" 我がフランスの食 "  に対する誇りもいや増すというものだろう。 ニクイ手だ。

これはシェフズクラブの方々も、すぐにでも取り入れてほしいと切に願う。

 

三つめが 「味覚のアトリエ」。

期間中、様々な味覚体験のイベントがフランス各地で繰り広げられる。

シンポジウム、農園体験、フードマーケット、食の屋台イベント、

青少年対象の料理教室、味覚ワークショップなどなどが、

市役所や市民団体、商工会議所、学校、協賛企業などによって実施される。

 

そしてついに、この素晴らしい食育イベントが日本でも始まろうとしている。

昨日、日仏のシェフ (ピックさんと三国さん) による、

日本で初めての 「味覚の授業」 が、目黒区の小学校で実施されたのだ。

 

ピックさんは20歳のときに来日して、日本文化にカルチャーショックを受け、

日本人の繊細さ、慎み深さが好きになったという。

そんな彼女の授業の感想が、嬉しい。

「子どもたちの反応は、フランスの子どもたちとまったく一緒でした!」

 

三国さんは 「食育とは、子どもたちの味覚を守ることだ」 と言う。

子どもたちを救わなければならない! と熱く語る。

味覚を覚えるとは、「よく生きる」 ことにつながっている。

食とは、栄養を摂るだけでなく、頭、精神を活性化させるものだから。

味を知る、楽しむ、味わう喜びを知って大人になってほしい。

そのためにも、味蕾(みらい) が形成される12歳までに伝えなければならないのだと。

 

三国さんは、こうも語る。

自然の食材は薄味だから、味蕾を増やして感じ取ろうとする。

味が濃いと  " 感じ取ろうとする努力 "  をしなくなり、鈍感になる。

また 「噛む」 ことの退化は、味覚の刺激による喜びを感じなくさせてしまう。

「食べる」 ことの意味を考えなくなり、

多様で個性のある地域の文化や宝物を見失わせてしまう。。。

 

文明の根幹は 「食」 (とどうつながるか) にある。

「食」 をしっかりと リデザインすることで、地球の文明を立て直そう。

大袈裟な話ではあるが、

世界とのつながりを築き直すための、私的で具体的なアクションのひとつ

であることは間違いない。

 

「味覚の一週間」

 - 日本をしびれさせるようなイベントに育てたいと思う。

   曲がった背筋を伸ばしつつ・・・・

 



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