2011年1月アーカイブ

2011年1月30日

リフレッシュ研修・・・

 

1月28日(金)、有機JAS等の認証機関であるアファス認証センターによる

リフレッシュ研修会というのが開かれた。

毎年この時期に開催され、有機JAS制度の最新情報や

有機農業全般についての動向・留意点等についての報告がある。

 

大地を守る会には有機認証を受けている生産者も数多くいて、

また本体の物流センターも有機の小分け事業所として認証を受けている。

そんな関係上、最新情報には常にアンテナを張っていなければならない。

生産者から使用する資材についての情報を求められたり相談を受けたりもするし。

 

我々は、かつて表示規制のために作られたという側面を持つ有機JAS制度には、

批判もしてきたものだ。

" 有機JASを乗り越えよう "  とも言ってきた。 その気持ちは今も変わらない。

しかし嘘のない有機農産物の証明として主体的に認証に取り組んだ生産者の

その努力については正当に評価したいと思っている。

したがって有機JASマーク付で入荷したものは、

ただしく分別・小分けして (これを有機性の保持という)

消費者あるいは店頭まで届ける義務がある。 小分け業務に瑕疵(かし) があってはならない。

制度の動向や変更点は正確に把握しておく責任がある。

 


ということで今回の研修会。 レクチャーの主なポイントは、以下のようである。

ひとつ。 有機JAS規格の改正検討が進んでいる。

すでに改正原案が作成されていて、今年の夏か秋には確定する見通しである。

細部の報告は割愛するが、

遺伝子組み換え技術を規制する項目が各所に散らばっていたのを一箇所にまとめるなど、

全体の構成が変更されるほか、いくつかの有機資材の判断(条件など) が

明確に、あるいは追加される予定である。

合わせて有機加工食品、有機畜産、有機飼料のJAS規格も改正されることになっている。

検討過程が気になる方は、農林水産消費安全技術センターの

下記HPを参照されたし。

 ⇒ http://www.famic.go.jp/event/kentouiinnkai/kekka.html

 

考えてみれば、GM(遺伝子組み換え) 技術の利用を明確に規制している法律は、

有機JAS規格だけである。 これはこれで大切にすべきものか。

 

次に、資材判定の共通基盤がつくられてきている。

世にはいろんな資材が出回っていて、有機栽培に使ってもよいものかどうか、

認証機関によって異なる判定が出されるケースがあった。

有機JAS制度がつくられてから、ずっと生産者を悩ましてきたものだ。

僕が3年前に委員として参加した 「有機JAS規格の格付方法に関する検討会」

でも議論された課題である。 

それがようやく 「有機JAS資材評価協議会」 の設立という形で実を結んできた。

有機JASの認証機関すべてが参加するわけではないようだが、

大きな一歩前進として評価したい。

わが農産グループ・有機農業推進室でも、

生産者に使用実績のある資材のデータを認証機関に提供したりして、

業界全体に文句も言いながら待っていたものだ。

これが 「有機生産にあたっての認定資材リスト」 として完成されれば、

また認証機関の間で判定が共有されるようになれば、

生産者の判断ミス (というより情報収集の限界による事故) も

かなり減らすことができるようになるだろう。

ただし、購入資材に頼りすぎた栽培方法は有機農業の基本技術ではない、

という有機農業の根本思想は忘れないようにしたい。 

 

他にもいろいろあったけど、こんなところにして、

研修終了後、残った生産者と懇親会を持つ。

毎年律義に参加される福島・やまろく米出荷協議会さん(福島県福島市)

と今年も席を一緒にさせていただく。

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写真右の方が、昨年も全国食味コンクールの有機米部門で金賞を取った岩井清さん。

「食味と収穫量をいかにバランスよく保てるか」 に長いこと格闘してきた。

 だんだんと技術にも確信を持てるようになってきた反面、

今後の気候変動が気になるところではある。

写真左は、やまろく米の生産者を束ねる 「やまろく商店」 の跡取り、佐藤康毅(こうき) さん。

お父さんに変わって、今年初参加。 元気っす。

 

嬉しかったのは、秋田・大潟村の阿部淳さん(下の写真左) とご一緒できたことだ。 

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「ライスロッジ大潟」 メ ンバーで、「秋田・ブナを植えるつどい」 を毎年開催する

「馬場目川上流部にブナを植える会」 の事務局長。

二人で勝手に盛り上がった話は、有機JASでも、米の値段でも、TPPでもなかった。

生産者も消費者も一緒になって、" 新しい経済の仕組みをつくらないか "  という

夢のような構想である。

いや、夢なんかじゃない。 地域通貨などで、現実に取り組まれてきた世界である。

みんなの  " 生産 "  あるいは  " サービスや知識 "  など

持っているものを納得し合う等価でひろくネットワークして、

協働の社会システムをつくりたいもんだね。

この輪に参加すれば飢えることがない、安心して暮らせる、格差(搾取) もない、

アーティストは米一年分で村のコンサートに来る、地域資源で家も立つ、

誰だって生きている間は何かの役に立てる、みんなで政治もする、 

そんな社会は、いや可能である。。。

阿部さんが 「物々交換の社会にしたいよ~」 と言ったことがきっかけで、

ついに社会革命の話にまでなっちゃった。 ストレス溜まってるね、お互い。

 

そういえば最近、地域通貨の話題をあまり耳にしなくなったけど、健在なんだろうか。

 

最後にこの方。

株式会社アファス認証センター社長、渡邊義明さん(左)。 

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(右は新潟の米生産者で、清水さんと仰った。)

 

どうもこの方とは肌が合わない。

どっちも素直に謝らない、言われたらやり返さないと気がすまない。

去年も一戦やっちゃったし、

" ああ言えば こうゆう関係 "  とでも言おうか。

歳が離れているのだから、僕が敬意を表しなければならないことくらいは

重々分かっているんだけれども、どうも抵抗したくなっちゃうんだよね。

すみません、いつも生意気で。

 

ま、資材協議会のたち上げまで行ったことで、

今回は素直に拍手を送らせていただくこととします。 敬意をもって。

 

最後は、大潟村・花咲農園の戸澤藤彦に力づくで引きずられ、 

寒風に身を刺されながら、どっかの酒場の片隅に流れる。

リフレッシュ研修 ・・・ な一日のはずだったのだが ・・・爽やかには終われず。

なんでこうなるんだろう、いつもいつも。

 



2011年1月27日

「寒試し」 を肴に自然の変化を語り合う

 

産地新年会も折り返しを過ぎ、

昨夜(26日) は宮城県下の生産者合同新年会が、鳴子温泉で催された。

 

いやとにかく、今年は雪が多い。

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昨年の夏が記録的猛暑かと思えば、

昨年末からの寒波の波状攻撃も凄まじいものがある。

温暖化とは、ただ気温が上昇していくという単純なものではなくて、

気候変動の振幅が激しくなっていくことを意味するらしい。

集中豪雨とか記録的寒波とか、異常気象が頻発するようになる。

それらは地球気候のバランスを整えるための所作だとも言われるが、

とにかく災害のリスクはますます高まっていくわけで、

生態系への影響 (かく乱と動植物の対応変化) とも相まって、

食料生産は情け容赦なく振り回されることになる。

オイラのしんどいなんて、屁のツッパリにもならない。

 

そんな地球の懊悩を肌で感じながら (本当かよ。カッコつけてるね)、

新年会と称して産地を回る。

前にも書いたとおり、これはただの飲み会ではない。

ちゃんと真面目な時間も用意されているので、

それだけは強調しておきたい (言い訳がくどいね。やましいところでもあるのか・・・ )。

僕は出られなかったけど、19日の千葉合同新年会では、

埼玉県農林業総合研究センターの根本久さんを招いて、

天敵の有効利用について勉強会が開かれている。

 

20日の茨城新年会では、あえてゲストは呼ばず、

藤田会長から、今後の大地を守る会の目指す方向をしっかり聞かせてもらおう、

という趣向になった。

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そして宮城では、

古くから農村で伝承されている気象予測を農作業に生かしてきた

山形県村山市の農民・門脇栄悦さんによる講演が企画された。

元農事気象学界副会長。 大地を守る会の生産者会員でもある。

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門脇さんが行なっている気象予測は、「寒試し」 といわれる。

二十四節気の 「寒の入り」(小寒。1月6日、旧暦12月3日) から

「立春」(2月4日、旧暦1月2日) までを一年に見立て、気温変化や降水量を予測する。

高僧・空海の伝とされるが、門脇さんはさらに詳細な気象情報を収集して

精度を上げた予測を立てるまでになった。

今や山形県村山地域の天気予測の当たる確立は8割とのことで、

農業関係者やメディアからの取材も年々増えているようだ。

 

予測の詳細は省かせていただくが、

配布された農事気象学会の今年の予測はと言うと-

12~1月-暖冬の予測だが、時に強烈な乾燥した冷風が吹く。

       降雪地帯の雪は、時に吹雪型となるやも。平地はドカ雪に注意。

       12月 【一白水星】、1月 【九紫火星】 で気象は激変型。又社会情勢も混迷が危惧。

 2~3月-乾寒風吹き、悪性の風邪流行るかも。立春の前後に大雪降る。

 4月   -寒暖の差が激しく凍霜害に留意の事。稲、野菜苗生育不良病害注意。

 5月   -日中の気温は高いが夜間冷える。寒暖の差激しく晩霜・雹害の恐れあり。

 6月   -梅雨入は早く空梅雨型。梅雨明けの土用前後に大雨豪雨注意。低気圧多発。

 7月   -台風の発生は早く数も平年より多い。大型台風が上陸して被害の出る予測。

 8月   -東日本はヤマセ現象で低温。西日本は高温傾向で高温障害の恐れあり。

 9月   -降雹・雷雨・強風・突風などの発生が予測される気象激変型となる。

10月   -台風の発生多く、強烈な風台風の上陸の恐れあり。特に風害に要注意。

  ~ と続く。

実は同じ資料を、埼玉新年会で瀬山明さんからももらった。

月や惑星の動きにも注意を払っていて、民間の気象予測もなかなかに奥が深い。 

 

当たるか当たらないかは僕にはなんとも言えないが

(僕は人災による変動要因のほうが気になっているのでなおさら)、

自然の動きや鼓動に対して姿勢が謙虚になる、というのは大事なことだと思った。

門脇さんは全国各地の寒試しの事例を尋ねて回っていて、

みんな自然を敬う人たちである、と言う。

そして、こんなことも感じているのだそうだ。

「理想とする姿のイメージを思い浮かべている人は、良いものをつくる。」

含蓄があるね。

 

門脇さんはまた、 「種蒔きは満月、移植は新月に」 といった月のリズムを大切にしている。

これはオカルトではない。

和洋を問わず世界のあちこちで、今も農業の世界では生きている話である。

とくたろうさん」 担当の秋元はシュタイナー派なので、すっかりご満悦の様子。

 

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ま、こんな感じで、あとは飲んで語り合おう、となる。

 

参加者皆さんを紹介したいところだが、紙面(?) の都合で割愛させていただく。

話題の人としては、、、

昨年NHKの番組 「プロフェショナル」 で紹介された石井稔さん。

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この人も天候を先取りするタイプである。 

テレビ放映されてから、周りがうるさくなって、問い合わせも増えて大変らしい。

石井さんの米はもうプレミアの世界で、我々が扱う世界を飛びぬけてしまったが、

むしろ僕が自慢したいのは、番組でも紹介されていた、

この人が苦悩していた時代を支えた奥さんのニラを扱ってきたことだ。

宮城の 「無農薬生産組合のニラ」 を今後ともどうぞよろしくお願いします。

 

宮城新年会には水産や畜産の生産者も参加してくれる。

今年は開催が水曜日となったこともあって参加者は少なかったが、

この方を代表としてアップさせていただきましょう。

遠藤蒲鉾店を支える女将、遠藤由美さん。 

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いつもキリッとして、かつ快活な笑顔に、みんな励まされている。

 

今回の幹事を務めてくれた、蕪栗米生産組合のお三方。

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左から遊佐恭一さん、中鉢隆弘さん、そして千葉孝志さん。

なんと翌日(今日) に同じ場所で総会を設定して、

藤田会長を記念講演者に仕立てて、足止めにさせた。

去年12月の視察の時といい、油断もスキもない。

 

二次会は宿にあったカラオケ・スナックに流れたのだが、

門脇さんを囲んでの天候論議が終わらない。

自然相手の仕事をしている人たちには、興味の尽きないテーマなのである。

 

茨城では、宿の部屋で二次会となった。

八郷の 阿部豊 さんと、久しぶりにフォークソングを歌いまくる。 

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 阿部ちゃんが吉田拓郎の高校の後輩だったというのも初めて聞いた。

こういう夜も、嫌いじゃない。

 

お天道様への敬意を忘れない人たちは、

どこか大らかな諦念を持ち合わせつつ、しかも粘り強い。

みんな腹の中に暦があって、その狂いが大きくなっていることで、

自然の変化を感じ取っている。

 

僕もせめて月の満ち欠けなど意識しながら過ごしてみようかしら。

何か見えてくることがあるだろうか。

・・・なんて呑気な事を言ってる場合じゃないか。

 

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2011年1月25日

食べることで、この国がきれいになる!

 

 " 買う責任 "  と  " 作る責任 "  のコラボ。

伊藤俊彦は、大地を守る会の備蓄米のコンセプトを、ひと言でそう語る。

 

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備蓄米を育ててくれたのは、ただ淡々と買う責任を果たしてくれた消費者の存在だった。

その人たちのためにやるべきことをやろう、オレたちの誇りをかけて。 

世界一美味いと言ってもらえるような米をつくろう!

 

こんな感覚はJAの職員時代には得られなかった。

「うちの米がほしい、と言ってくれる人に売りたい。売らせてくれ。」

「バカヤロー! 100年早い。」

そんなふうに若い頃の伊藤さんは組織の壁に阻まれ続けた。

農協という巨大組織の系統にしたがって働いていればいい。

自分たちの個性を主張することは許されなかった。

そんな時に大地を守る会と出合った。 伊藤俊彦31歳のときだった。

 

僕らも若かったね。

伊藤をして 「法を怖れぬやつら」 と言わしめた仕掛けもやった。

別に法を破ったわけではない。 ただ大義を主張しただけである。

税金など要らない。 オレたちの手で民間備蓄を始めます。

食糧事務所さんには何ら迷惑をかけるものではありません、と

面と向かって胸を張っただけだ。

挿入したハッタリ (ヒ・ミ・ツ です) が少々荒っぽかったけど。

 

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場当たり的な農政からは得られなかった喜びと確信が生まれた。

価格の下落は、やる気が喪失していくだけでなく、手抜きを生む。

しかしあらかじめ価格が決まっていて、収穫前から先行予約が入るとなると、

構えが違ってくる。 生産に集中することもできるようになる。

買う責任を全うしようとしてくれる人に、何をもって返すか。

基準が明確ななか、安全性と食味の両立にもがいてきた。

それが我々を進化させたのだと、伊藤さんは振り返る。

 

失敗もあったね。

ミイラ化したカエルが入っていた、という事件があった。

食味を優先するあまり、水分を高めにして保管したらカビが発生したこともあった。

大地内部でも、このまま続けていいのかという論議が起きたが、ひるまなかった。

それでも買い続けてくれる消費者の存在に、

責任を果たそう、という気概を示さないと終わるわけにはいかなかったのだ。

徹底してラインを見直し、設備を強化し、我々の備蓄米は精神を含めて進化した。

 


備蓄米を始めた1994年は、100年に一度と言われた大冷害の翌年だった。

米価が高騰するなかで、約束した価格で売る、という伊藤さんの立場は苦しいものだった。

100年に一度の儲けを取るか、99年の信用を取るか-

そんな啖呵をきれる人物とつるむ以上、彼を孤立させるわけにいかなかった。

僕らの支援は、売ることである。

しかし・・・・

備蓄米がメディアで紹介されたりすればするほど彼の立場は難しいものになっていって、

結局左遷されてしまう。 

その後、稲作研究会の生産者の後押しもあって、JAを辞め、

仲間とともに自立の道を歩むことになる。

こうなると一蓮托生の世界である。

米が余る時代が続くなか、意地でも備蓄米を続けてきた。

いろんなノウハウが蓄積され、

 「はたまる」 企画を生んだりする関係へと発展してきたことを、

改めて誇りに思う。

 

「去年の夏は、稲も肩で息していました。。」

そんな猛暑にあって、味方してくれたのが、

猪苗代湖から先人が引いてくれた安積疏水の豊富な水だったと言う。

国の礎は単純な経済の数字ではないのだ。

もっと大きなネットワークで私たちの暮らしは支えられている。

わずかな数の儲ける農民だけで営まれる農業になっていいのだろうか。

 

新幹線のトラブルというハプニングで充分な時間を取れなかったけど、

いくつか大切なことは伝えられたのではないかと思う。

佐久の松永さんや飯尾醸造・秋山さん、そして奥野さんの臨機応変なご協力にも感謝して、

米プロジェクト21主催による新年の講演会をお開きとする。

 

終了後、急いで次の企画-「山藤で わしわしご飯を食べる会」 へと流れる。

山藤・西麻布店だけでは入りきれない申し込みがあり、

急きょ広尾店も開放してもらって、二手に分かれての食事会となる。

この場を借りて、山藤に感謝です。

 

西麻布には、伊藤さんと奥野さんと松永さん。

広尾には、午後の部のために駆けつけてくれたジェイラップの

関根政一さんと伊藤大輔さん、と秋山さん。

と分かれてもらって、ご飯をメインとした食事会を楽しんでもらう。

 

こちら西麻布店の様子。

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挨拶しているのは料理長の青木剛三さん。

ご飯をわしわし食べる  -に引かれてやってきた方々とあって、

その食べっぷりは、すがすがしいくらいに豪快だった。

 

ご飯は稲田米。

ダッチ・オーブン(鉄鍋) で炊いたのと、土鍋で炊いたご飯を賞味していただく。

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土鍋の炊き上がりの香りにしっかりした歯ごたえと甘さ。

どんどんお替りが進む。

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                  (店長の後藤美千代さん)

 

ご飯を思いっきり食べる -に合うおかずを料理長にお願いする。 

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ぜんまい白和え、法連草胡麻和え、まぐろ山かけ、卵焼き、じゃが芋土佐煮、

牛蒡蓮根人参の金平、焼き魚、仙台黒豚の西京焼き、、、

煮物はぶり大根。 椀物は小松菜とうす揚げの煮浸し。

先付けには、聖護院大根の千枚漬けといくら正油漬け、イカの塩辛もあった。

そして味噌汁にお漬物。

あたり前のようなライン・アップがとても贅沢に感じるから不思議だ。

ご飯をわしわし、食べる。

成清さんの海苔が出て、それだけでまたご飯をもう一膳。

種蒔人もいこう・・・となれば、もうご機嫌で。

 

「今日締め切りの原稿を抱えているので」-すぐにおいとまするはずだった奥野さんが

最後まで嬉しそうに食べ尽くしてくれている。

 

食べるって、未来への投資でもあるんじゃないか。

本日の結論。

「食べることで、この国がきれいになる!」

 

いただきました、星みっつ!

ご馳走様でした。

 

米プロ諸君も、お疲れ様でした。

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2011年1月23日

"食べる約束" に "作る責任" を果たす

 

しっかり食べる人がいてくれることで、

作る人たちも責任感と誇りが育ち、強くなれる。

それによって食べる人の健康を支える世界が安定する。

これが僕らが築き上げようとしてきたシンプルな循環の世界である。

そのためには愛が必要だとも書いてしまった。

信頼を支える思想として。

互いへの敬意と信頼が育つことでこそ、

食の循環は安心・安全というレベルを越えて未来を拓く、と僕は信じている。

 

その確かなモデルが、ここにある。

「大地を守る会の備蓄米」 という無骨な一本の企画。

平成の米騒動と呼ばれた93年の翌年にスタートして、

米価が下がり続ける中でも17年にわたって確実な予約注文を維持してきた。

生産と消費が信頼を預け合わないと成立できない実験だった。

価格や安全性という物差しだけでは、ここまで継続することもなかっただろう。

米の流通の隙間に咲いたあだ花かのように言う人もいるが、

むしろ希望という言葉こそふさわしい。 

戸別所得補償や環太平洋パートナーシップ協定(TPP) といった

喧しい論争を越えるヒントと資源は、目の前にあるんだと思う。

「地元学」 が唱えるところの  " ないものねだり より あるもの探しを "  のように。

 

そんな思いで、新春の講演会を開催した。

 (企画してくれたのは 「米プロジェクト21」 のスタッフ・西田和弘である。)

 

『 それでも、世界一うまい米をつくる

  -危機に備える俺たちの食料安保- 』

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1月15日(日)、会場は東京・広尾にある日本赤十字看護大学の教室をお借りした。

むさくるしいオヤジでも入れるのか、と聞いたワタシは何を考えていたのだろう

 - なんてことはどうでもいいとして、

受付で 「エビちゃんブログを見て-」 と言ってくれた方が一名いたとか。

感激(涙目)!です。 有り難うございました。

 

ところがところが、まったく想定外の事態となってしまった。

朝からの東北新幹線の連続トラブルのお陰で、

講師にお願いしていた伊藤俊彦さんが到着しないのだ。 

 

さて、どうしたものか。。。

ゲストの奥野修司さん(上記の著者) と掛け合いながら引っ張ろうかとも思ったが、

日頃の行ないが良いと救世主が現われるもので、

なんと生産者がお二人、顔を見せてくれたのだ。 

しかも遠方から、それぞれに有機農業の歴史を背負った方だ。

使わない手はない (いや、失礼)。 

 

事情をお詫びして、いきなりのご指名。

長野県佐久市から来てくれた松永哲男さん。

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JA佐久浅間臼田有機米部会所属。

昭和42(1967)年から無農薬での米づくりに邁進してきた。

「オレなんか、世界一うまいと言える自信はとてもねえが・・・」 と謙遜するが、

しかし休憩の合い間にも有機栽培の技術書を読む方である。 

 


松永さんが辿った道は、戦後日本の食と農業の歴史を映している。

ベトナム戦争、水俣病、その頃から除草剤や化学肥料がどんどん使われるようになって、

親父がガンで死んで、家に戻って米づくりを受け継いだ。

農薬を撒いたあとに体調をおかしくする人が周りに増えてきて、

佐久総合病院の院長さんが警鐘を鳴らした。

有機農業の歴史に燦然と名を残す若月俊一さんである。

「松永さん、このままじゃダメだって、お医者さんが言うんだよね。」

 

いま子供たちの米づくり体験にも田を解放しているが、

今の人たちが食べたり飲んだりしているものを見ると心配でならない。

テーピーピー(TPP)って問題もやっけぇなもんで、

このまま進んだら農業や食べものがどうなっちまうのか、

これは消費者の問題じゃねぇかと思ったりもするんだが、、、

ぜひ皆さんも考えてもらえるとありがてぇなって思う。

 

次は若手。

京都、といっても日本海側、

天の橋立のある宮津市から参加してくれた秋山俊朗(としひろ) さん。

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無農薬米づくりから始まって、純米酒をつくり、酢に仕上げる。

「富士酢」 の蔵元、飯尾醸造 の蔵人兼営業担当である。

さすが若者、ノート・パソコンを持ち歩いていて、「写真があるのでお見せしましょうか。」

教室に丹後山地の棚田の絵が登場した。

 

飯尾醸造さんは創業118年を誇るお酢屋さんで、

ニッポン一の酢をつくりたいという思いで 「富士酢」 と名づけた。 

松永さんが有機農業を始めたのとまさに同じ頃、

同じような危機感を抱いて、飯尾醸造さんも無農薬での原料米作りに取り組んだ。

 

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生産性という側面では条件の悪い棚田だが、

そこは生物多様性を育み、水を涵養する貴重な場所である。

きれいな水と日中の寒暖の差は美味しい米も育てる。

何とかこの美しい棚田を守っていきたいと、自社田にし、みんなで米づくりに励んでいる。

地元の農家からも、JAより3倍も高い値段で引き取っているが、

なかなか後継ぎは帰ってこない。

山もだんだんと荒れてきて、イノシシなどの獣害にも泣かされるようになってきた。

それでも、細々とでも維持していきたいと、秋山さんたちは頑張っている。

こだわりの酢の背中には、こんな田んぼと人の苦悩がある。

 

長野・佐久と京都・飯尾醸造。

奇しくも有機農業のパイオニア的存在の二つの場所から、

歴史を背負ってきた男と受け継ぐ者、そんな二人に助けられた格好になった。 

 

続いて、伊藤さんの講演の後に登場していただく予定だった

奥野j修司さんにも話をつないでもらう。

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雑誌 『文芸春秋』 の取材先として伊藤俊彦さんを紹介してから、

この人とのお付き合いも9年になった。

たった一回の雑誌記事に3ヶ月の取材時間を費やし、その後も7年にわたって、

伊藤俊彦を主人公とする稲田稲作研究会と彼らがつくったジェイラップという会社を

取材し続けた。

 

いやあ、最初に伊藤さんに会ったときには、この男を信用していいのか、

正直ヤバイやつだと思いましたね -という思い出話から始まる。

何たって、いきなり食糧危機を予言したり、

ハッタリのような話を次から次へと聞かされるんですから。

 

しかしそこは、奥野氏も相当にしつこいジャーナリストである。

伊藤の予言を確かめようと中国まで飛んだのだ。

上掲の書は、中国ルポから始まる。

それはこんにちの様相をほぼ予測した内容になっていて、

JA職員時代からの伊藤さんのたたかいや苦悩をなぞっただけでは生れなかった

深みとすごみと生命力を、この本に与えている。

 

奥野さんの中国取材は結局一回では終わらなかった。

その後起きた  " 毒入りギョウザ "  事件などを経て、

奥野さんの確信は伊藤さんの予言に重なってゆく。

世界を食い尽くす勢いの中国から、無頓着な日本の姿が見える。

 

実は奥野さんは自由化自体は問題ではないと思っている。

それよりも、自由化に負けない国づくりができていないことを憂う。

たとえば域内を自由化しながら自給率が下がらないEU各国。

イギリスが戦後、自給率を高めてきた根底には教育があった。

自国の農産物を食べることで国がきれいになる、ということを彼らは知っているのです。

EUで有機農業が支持されるのは、水が守られるからです。

 

いましがた映された棚田は、国土保全の役割を果たしている。

これを  " 食べることで守っていこう "  という消費者がいるならば、

まだこの国は捨てたもんじゃない、と思いますね。

 

これまた上手につないでくれるではないか。

最高の役者たちだ。

 

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3名の話を受ける形でしばしお喋りをして引っ張る。

有機農業の普及が自給率のアップにつながるというのは、どういうことか?

といった質問に応えながら。

 

講演会の予定は12時までだったところ、

11時45分になって、ようやく伊藤さんの到着。

あの野太い神経の持ち主が汗をかいている。

さすがの伊藤俊彦も新幹線の車両を飛ばすことはできなかったようだ。

会場を借りた時間のギリギリまで延長することにして、

伊藤俊彦・新春講演会をお願いする。

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続きは、明日かあさってに- すみません。

 



2011年1月21日

天候は 「関係」 を考える素材なんだけど-

 

ふ~、しんどい。

 ( 「しんどい」 はどうも昔からの口癖で、苦しい時も大したことない時も使ってしまう。

     さだまさしの歌にある 「ため息つけば それですむ」 みたいなものか。)

 

それにしても、まったく書けなかった。

何もなかったわけではなく、毎夜飲んだくれていたわけでもないのに、

新年早々からなんか急き立てられ、余裕を失っていた。

どんな感じだったかというと-

 

東京有機、埼玉大地と新年会が続いたあと、

13日(木) は群馬での新年会をパスして、(株)NTTデータだいち さんと打ち合わせ。

栃木・那須に開いた農場 の今後の新しい展開について当方からの提案を持参する。

詳細はまだお伝えできる段階でないので省かせていただく。

14日(金) はアファス認証センターによる監査を受ける。

当会独自の農産物監査システムで、

自分たちの情報管理や産地監査の適正さを審査していただくものだ。

3つほど改善の指摘を頂戴する。 

無事に、と言ってはいけないが、まあ想定範囲内で終了。

 

14日午後は丸の内に出かける。

丸の内地球環境倶楽部-「都市の食WG (ワーキンググループ)」 での

「 『都市の食ビジョン』 具体化に向けたまちづくり検討会」 に出席。

丸の内地区の食堂を東京野菜やこだわり食材で結ぶ新しい物流構築に向けての、

ロードマップというのか、プロセス・イメージを提出する。

いよいよ正念場に突入。

 

15日(土) は、専門委員会 「米プロジェクト21」 主催による講演会と食事会企画を実施。

ところが新幹線のトラブルで講師の到着が大幅に遅れるという事態に見舞われ、

綱渡りの運営で何とかしのいだ。

この報告は次回に。

 

18日(火) は大地を守る会理事会。

NGOと株式会社の合併についての具体的論議が本格化してきた。

19日(水) は、千葉県内産地合同での新年会をパスして、

他団体の生産者の集まりに参加する。

ウチの生産者との交流をないがしろにしたわけではけっしてなく、

組織としての代表派遣のお勤めだとご理解いただきたい。

そして昨日から泊りがけでの茨城県合同新年会に出席。

深夜3時過ぎまで生産者と語らい、そして歌った。

今日は頭が重い。

 

その合い間にも (どっちが合い間なのか曖昧なまま)、

この時期は管理者としてプレッシャーがかかってくる季節である。

来期の事業計画の策定、予算の検討、偉そうに部下の評価、などが迫ってくる。

内部で進めてきた検討事項もいくつかあって、年度末に向かって仕上げの議論へと進める。

 

それやこれやに忙殺されながら、内心気を揉んでいたのは天候である。

本当はこういうことを伝えなければならない、と思ってもいるのだ。

 


今季は比較的穏やかな冬のスタートで、

猛暑の影響を挽回するかのように野菜が押し寄せてきたかと思っていたら、

年末からやってきた寒波はまた出荷を不安定にした。

特に南のほうから 「寒い、寒い。野菜が伸びない」 の連絡。

こういう時にこそ情報が大事だと思うのだが、

はたして的確な情報提供が出来ただろうかと気になる。

 

僕らの農産物流通の最大のネックは、

生産者とは契約で、つまり 「約束」 をしているのに対して、消費者とは注文制であるということ。

特定の生産者と契約するということは、その地での天候の影響、畑の状況が

ストレートに反映されることを意味する。

スーパーマーケットなどで買い物をしていると分からないことが 「見えてしまう」 のだ。

一般市場流通では途中ではじかれてしまうようなものも入ってくる。

しかもこちらから生産者に発注する数量は消費者・取引先からのオーダーに基づくため、

「調整」 という作業がつきまとう。

計画出荷と言えば聞こえは良いが、今日はここまで、ちょっと待って、

ということが常時のやり取りになっている。

ひっきょう、やや伸びた葉物なども届いてしまったりするのだが、

生産者だけを責めるわけにもいかない。 

誰だってベストな時に出したいのに我慢してもらったりしているのだ。

だから習志野センターに入荷した農産物を検品する職員から

「こんなのを出す生産者はいかがなものか」 とか言われると、

仕入担当は逆切れしたりする。 

「良いものを寄こせ」 と平気で言える一般市場のバイヤーさんとは違うのだ。

 

天候不順とは、こんなふうに部署間のコミュニケーションまでギスギスしたものにさせる。

信頼関係はとても傷つきやすく、だからこそ上流からの情報が大切になるのだが、

これがなかなか・・・で、プロでありたいと念じつつ、

「だからと言って、これでは」 とか言われると口ごもってしまう。

安全・安心の保証とは生産者としっかり付き合うことで生まれるのに。

悔しい日々の繰り返しではあるが、

生産と消費の相互理解とは、僕らがよく口にする 「顔の見える関係」 とは、

システムではなく、日々の努力で築かれることを、忘れないようにしたい。

愛だよ、愛! 愛を持とう。

 

日々会員さんからのクレームを受ける会員サポート・センターでは毎朝、

今日の留意事項などを確認する朝会(朝礼のようなもの) というのが行なわれていて、

農産チーム(農産物の仕入部署) の職員も、去年の秋から週に一回出るようになった。

今年は一発目の11日に自ら名乗り出て、そんな話をしようとしてみたのだが、

時間が2分と限られていて、またお姉様方のキリッとした視線にも緊張させられて、

上手に話せなかった。

この場を借りて、お詫びとともに、釈明とさせていただきたい。

いつも丁寧なコミュニケーションにご努力いただき、感謝申し上げます。

 

最後は内輪話でスミマセン。

今年もこんなふうにドタバタと動き回ることになるのだろう。

ブログ・タイトルは実によく出来ていると自虐的に感心したりしながら・・・。

 



2011年1月 9日

食のネットワークを強化しよう -埼玉新年会

 

東京有機クラブに続いて翌7日(金)、

新年会第2弾 - 「埼玉大地」 の巻。

埼玉県は本庄市に埼玉県下の生産者23名が集う。

 

「埼玉大地」(瀬山明会長)。 法人ではない。

大地を守る会に出荷する埼玉県下の生産者で横のつながりを持って、

親睦を深めながら、技術を高めあい、大地を守る会を支えていこう。

そんな主旨で結成して25年になる。

メンバーで会費を出し合って、生産者会議の開催に役立てたり、

遠方の会議への参加に対して補助するなど、緩やかながら地道に活動を継続してきている。

昨年は沖縄で開催された 後継者会議

本庄市の瀬山公一さん(瀬山明さんの後継者) が参加する際に補助している。

 

新年会に先立って 「埼玉大地」 の総会が開かれ、

活動報告や計画が簡単に確認されたあと、有機資材の勉強会を行なう。

総会では特段の問題がない限り、我々(大地を守る会事務局) は口をはさまない。

 

前々会長・吉沢重造さん(左、川越市) と、

前会長・榎本文夫さん(右、さいたま市) が並ぶ。

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「このところ少し活動が鈍ってるな。 夏のちょっとした合い間にでも集まってよ、

 暑気払いも兼ねて勉強会でも開いたらよかんべ」 と吉沢さん。

後ろは日高市・福井忠雄さんの後継者、一洋さん。 「埼玉大地」 会計担当。

こんなふうにだんだんと若手に役割が移行している。

 

福井さんと瀬山さんは昨年、

大地を守る会職員の農作業研修を受け入れてくれた。

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ピンボケでスミマセン。

今年もよろしくお願いしますね。

他の埼玉大地の方々もぜひ、畑で職員を鍛えてやってください。 

 

さて、埼玉大地25周年となった今年の新年会は、

初めて県下の加工品メーカーにも声をかけさせていただいた。

参加してくれたのは、本庄中心に県北のメーカーさん8社。

これがまた、古くからつながりがある人たちなのである。

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見てくださ~い!

「これが私たちが共同で開発した、本庄がんもバーガー! で~す。」

味輝さん(上里町) の天然酵母パンに、もぎ豆腐店さんのがんも、

調味料で高橋ソースさん、松田マヨネーズさん、ヤマキさんがコラボして開発した。

野菜ももちろん地元産。

昨年5月の本庄総合公園春まつりにお目見えして人気を博した。

 

1次産業と2次産業と3次産業がつながって6次産業化が言われる昨今。

せっかくこれだけの仲間がいて、パワーもあるんだから、もっともっとつながって

埼玉を盛り上げましょう。 オーッ!

 


気をよくして、僕も挨拶で気勢を上げる。

 TPPで日本農業が崩壊すると農業団体は叫んでいるけれど、

 何があっても国産を、地域の食材を支持する、食文化を守る、

 そんな消費者を一人でも多く増やしていきたい。

 健全な一次産業や食の産業があることによって、生産と消費がつながることによって、

 健康や環境も守られることを、

 いろんな取り組みを通じて伝えていきましょう。 

 

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藤田会長の周りには、

昨年出版した著書にサインを求める生産者が集まっている。

昨年末に紹介した 『有機農業で世界を変える』(工作舎刊) に 

『畑と田んぼと母の漬物』(Bkc刊)。

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同時に2冊も刊行したところに、

35周年にかけた会長の意気込みが感じられる。

 

僕は久しぶりに、(株)ヤマキの木谷富雄社長(下の写真中央) と歓談。

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僕が入社して、初めて見学会を企画して会員さんをお連れした先が、

ヤマキさんの御用蔵だった。 もう27年になる。

今や農業生産法人も抱える ヤマキ御用蔵グループ に発展した。

木谷さんとは新しい取り組みの作戦会議を約束した。

 

写真手前は、(株)大地を守る会の長谷川満取締役。

「こいつは昔から顔(ツラ) がでかかった」 と木谷さんにからかわれている。

後ろは農業生産法人豆太郎の代表、須賀利治さん。

お父さんの一男さんは、有名な自然農法の生産者だ。

 

最後に一枚。

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元大地を守る会の社員、藤森利雄(左) と石井誠一(右)。

藤森くんは鴻巣で有機農業を (一人前というにはまだ少し・・・)、

石井くんは本庄で人気の天然酵母パンと洋菓子の店 「マリーレン」 の店長として、

ともに頑張っている。 

こういうかたちでOBと酒を酌み交わせるのは、最高に楽しい。

 

食のネットワークを強化しよう。

TPPは反対だけど、それ以上に豊かな自立を語り合いたい。

 



2011年1月 8日

産地新年会シリーズ、東京から。

 

年が明ければ産地の新年会が始まる。

今年は2月上旬まで9ヵ所での新年会が組まれていて、

僕はそのうち6ヵ所に参加する予定である。

以前この行脚を  " 死のロード "  などと書いてしまって、

あちこちの生産者から皮肉られてしまった。

戯れ言といえども、控えないとね。

可能な限り産地を回って新年の挨拶をし、互いの健在を喜び、一年の抱負を語り合うのだ。

なんたって社長自ら 「全部出る!」 と宣言しているくらいなんだから、 

我々が弱音を吐くわけにはいかない。

 

スタートは例によって東京からである。

1月6日(木)、「東京有機クラブ」 新年会。

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場所は府中のお蕎麦屋さん。

在所の農家とは古いお付き合いの由緒あるお店のようだ。

奥の間みたいな部屋に席を用意してくれた。

 

代表である小金井の 阪本吉五郎さん とのお付き合いはもう30余年になる。

誰も正確に覚えてない。

メンバーは他に、吉五郎さんの高校の同級生である府中の藤村和正さん、

そして吉五郎さんとは義理の兄弟にあたる小平の川里弘さん。

 

吉五郎さんは数年前に大病を患ったが見事に復活した。

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御年80歳。 口も減らず(失礼!)、意気軒昂である。

でも畑はだいたい息子の啓一さんに任せている。

「ハウスに何が植わってるか、もう見に行きもしねぇな。

 見ると小言言いたくなっちゃうし。」

 

川里弘さん(下の写真・左) もそんな感じ。

今は昨年生まれた孫 (穂高くん) が可愛くてしょうがない、と。

「大地はもう息子に任せた。

 オレはせいぜい 山藤 用の野菜づくりで楽しませてもらうから。」

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阪本啓一・川里賢太郎両名には、

丸の内での東京野菜展開への協力を頼む。

去年夏の ミクニマルノウチ、秋の パスタ饗宴、と付き合ってもらって、

これからのハードルの高さはお二人も感じておられるようだ。

「ま、出来ることはします。 出来ないことはできません、ってことで-」

  - ハイ、分かっております。

 

ここ(東京) に農業がある、その意味や大切さを、

一人でも多くの人に伝えたい。 その仕組みをどうつくるか。

お二人に仁義を切って、今年一年の作業の開始である。

 



2011年1月 4日

子どもたちの未来のために

 

千葉・幕張より

 - 皆さま、明けましておめでとうございます。

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本日より仕事を再開いたしました。 

ということで、ここは職務がら、生産者の方々向けに年頭のご挨拶を述べる形で

2011年の 「エビ・ブロ」 を開始したいと思います。 

 

生産者の皆様

新年明けましておめでとうございます。

昨年は例年にも増して天候不順に悩まされた一年となり、皆様には大変なご苦労の中、

当会への計画出荷にご尽力いただきましたこと、改めて感謝申し上げます。

 

気候変動は地球規模で進み、温暖化対策もままならず、

一方で農業政策は明るい展望が示されないまま、この国は

グローバリズムの渦にさらに深く呑み込まれようとしています。

今年が平穏な年になる保証はできませんが、

皆さまと農作物にとって良い一年になるよう願わずにはいられません。

 

大地を守る会としても、基本理念として掲げた

「一次産業を守り育てる」 「人々の生命と健康を守る」 「持続可能な社会を創造する」

という社会的使命をまっとうするために、精一杯邁進していく所存ですので、

本年もご支援のほど、切にお願い申し上げます。

 


昨年は大地を守る会にとって、これまでの運動と事業展開から、

さらに一歩大きな社会的挑戦へとウィングを広げた年となりました。

東京駅や三越銀座店への出店、WEBストアの強化など、

多層な消費者層への提案の場づくりに向け、積極的に販売チャンネルの開拓を進めました。

販売形態の多様化は、皆様にも新たなお願いを伴うことでもありますが、

目的はひとつ、

ライフスタイルの核を求める消費者に、暮らしを安定させる土台は

" 信頼できる食 " であることを訴えることに尽きます。

宅配カタログだけでなく、百貨店の店頭やインターネット等を通じて、

安全な食こそ生活の基盤であることを訴えていきます。

時には皆さんの  " 生きざま "  もヴィヴィッドに伝えたいと思っていますので、

どうかご協力ください。

 

また地球環境問題への関心はますます、否が応にも高まっていきます。

低炭素化社会に向けて、生物多様性の保全など、

これらはすべて健全な一次産業が存立してこそ可能であり、かつ安定します。

" 農の力 "  を社会に見せつけられるような一年にしたいものです。

 

いや、農の力って実は、食に対する総合的な民意度というか理解度というか、

いわば  " 国の食力 "  のような気もしていて、

そんな視点でも仕事を進めてみたいと、あれこれ悩んでいます。

 

有機農産物の市場も大きくなり、社会的影響力もずいぶんと増してきました。

これは一方で競争の激化ということでもあり、

それに伴って農産物の品質も問われることになります。

もちろん、わがままな品質要求はけっして良い関係にはつながりませんが、

かといっておろそかにすれば淘汰されるという情け容赦ない時代でもあります。

現実を無視した原理主義にはまることなく、またトレンドに流されて舵を誤ることなく、

皆さんの頑張りが消費者の信頼につながるよう、

より一層相互のコミュニケーションを豊かにし、また生産者会議なども

より有効な技術研鑽の場になるよう、工夫を重ねていきたいですね。

 

競争が奪い合いや他者への批判に陥ることなく、

社会のより良い形への変化と消費者の共感につながるような、

健全な競争に育てていくこと、これも大地を守る会のミッションだと自覚するところです。

課題は増える一方ですが、ひるむことなく前に進み、

この大転換の時代を切り開いてゆきたいと思います。

 

  もっと強く願っていいのだ

  わたしたちは朝日の射すあかるい台所が

  ほしいと

      (茨木のり子 「もっと強く」 - 詩集 『対話』 所収 - から)

 

子どもたちが、若者たちが、おおらかに希望を持てる社会にしたい。

そのためにできることを、ひとつずつ、成していきたい。

その決意を持って、新年のご挨拶とさせていただきます。

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                                 (埼玉県飯能市、武陽山 能仁寺にて) 

 

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 



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