2011年1月25日

食べることで、この国がきれいになる!

 

 " 買う責任 "  と  " 作る責任 "  のコラボ。

伊藤俊彦は、大地を守る会の備蓄米のコンセプトを、ひと言でそう語る。

 

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備蓄米を育ててくれたのは、ただ淡々と買う責任を果たしてくれた消費者の存在だった。

その人たちのためにやるべきことをやろう、オレたちの誇りをかけて。 

世界一美味いと言ってもらえるような米をつくろう!

 

こんな感覚はJAの職員時代には得られなかった。

「うちの米がほしい、と言ってくれる人に売りたい。売らせてくれ。」

「バカヤロー! 100年早い。」

そんなふうに若い頃の伊藤さんは組織の壁に阻まれ続けた。

農協という巨大組織の系統にしたがって働いていればいい。

自分たちの個性を主張することは許されなかった。

そんな時に大地を守る会と出合った。 伊藤俊彦31歳のときだった。

 

僕らも若かったね。

伊藤をして 「法を怖れぬやつら」 と言わしめた仕掛けもやった。

別に法を破ったわけではない。 ただ大義を主張しただけである。

税金など要らない。 オレたちの手で民間備蓄を始めます。

食糧事務所さんには何ら迷惑をかけるものではありません、と

面と向かって胸を張っただけだ。

挿入したハッタリ (ヒ・ミ・ツ です) が少々荒っぽかったけど。

 

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場当たり的な農政からは得られなかった喜びと確信が生まれた。

価格の下落は、やる気が喪失していくだけでなく、手抜きを生む。

しかしあらかじめ価格が決まっていて、収穫前から先行予約が入るとなると、

構えが違ってくる。 生産に集中することもできるようになる。

買う責任を全うしようとしてくれる人に、何をもって返すか。

基準が明確ななか、安全性と食味の両立にもがいてきた。

それが我々を進化させたのだと、伊藤さんは振り返る。

 

失敗もあったね。

ミイラ化したカエルが入っていた、という事件があった。

食味を優先するあまり、水分を高めにして保管したらカビが発生したこともあった。

大地内部でも、このまま続けていいのかという論議が起きたが、ひるまなかった。

それでも買い続けてくれる消費者の存在に、

責任を果たそう、という気概を示さないと終わるわけにはいかなかったのだ。

徹底してラインを見直し、設備を強化し、我々の備蓄米は精神を含めて進化した。

 


備蓄米を始めた1994年は、100年に一度と言われた大冷害の翌年だった。

米価が高騰するなかで、約束した価格で売る、という伊藤さんの立場は苦しいものだった。

100年に一度の儲けを取るか、99年の信用を取るか-

そんな啖呵をきれる人物とつるむ以上、彼を孤立させるわけにいかなかった。

僕らの支援は、売ることである。

しかし・・・・

備蓄米がメディアで紹介されたりすればするほど彼の立場は難しいものになっていって、

結局左遷されてしまう。 

その後、稲作研究会の生産者の後押しもあって、JAを辞め、

仲間とともに自立の道を歩むことになる。

こうなると一蓮托生の世界である。

米が余る時代が続くなか、意地でも備蓄米を続けてきた。

いろんなノウハウが蓄積され、

 「はたまる」 企画を生んだりする関係へと発展してきたことを、

改めて誇りに思う。

 

「去年の夏は、稲も肩で息していました。。」

そんな猛暑にあって、味方してくれたのが、

猪苗代湖から先人が引いてくれた安積疏水の豊富な水だったと言う。

国の礎は単純な経済の数字ではないのだ。

もっと大きなネットワークで私たちの暮らしは支えられている。

わずかな数の儲ける農民だけで営まれる農業になっていいのだろうか。

 

新幹線のトラブルというハプニングで充分な時間を取れなかったけど、

いくつか大切なことは伝えられたのではないかと思う。

佐久の松永さんや飯尾醸造・秋山さん、そして奥野さんの臨機応変なご協力にも感謝して、

米プロジェクト21主催による新年の講演会をお開きとする。

 

終了後、急いで次の企画-「山藤で わしわしご飯を食べる会」 へと流れる。

山藤・西麻布店だけでは入りきれない申し込みがあり、

急きょ広尾店も開放してもらって、二手に分かれての食事会となる。

この場を借りて、山藤に感謝です。

 

西麻布には、伊藤さんと奥野さんと松永さん。

広尾には、午後の部のために駆けつけてくれたジェイラップの

関根政一さんと伊藤大輔さん、と秋山さん。

と分かれてもらって、ご飯をメインとした食事会を楽しんでもらう。

 

こちら西麻布店の様子。

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挨拶しているのは料理長の青木剛三さん。

ご飯をわしわし食べる  -に引かれてやってきた方々とあって、

その食べっぷりは、すがすがしいくらいに豪快だった。

 

ご飯は稲田米。

ダッチ・オーブン(鉄鍋) で炊いたのと、土鍋で炊いたご飯を賞味していただく。

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土鍋の炊き上がりの香りにしっかりした歯ごたえと甘さ。

どんどんお替りが進む。

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                  (店長の後藤美千代さん)

 

ご飯を思いっきり食べる -に合うおかずを料理長にお願いする。 

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ぜんまい白和え、法連草胡麻和え、まぐろ山かけ、卵焼き、じゃが芋土佐煮、

牛蒡蓮根人参の金平、焼き魚、仙台黒豚の西京焼き、、、

煮物はぶり大根。 椀物は小松菜とうす揚げの煮浸し。

先付けには、聖護院大根の千枚漬けといくら正油漬け、イカの塩辛もあった。

そして味噌汁にお漬物。

あたり前のようなライン・アップがとても贅沢に感じるから不思議だ。

ご飯をわしわし、食べる。

成清さんの海苔が出て、それだけでまたご飯をもう一膳。

種蒔人もいこう・・・となれば、もうご機嫌で。

 

「今日締め切りの原稿を抱えているので」-すぐにおいとまするはずだった奥野さんが

最後まで嬉しそうに食べ尽くしてくれている。

 

食べるって、未来への投資でもあるんじゃないか。

本日の結論。

「食べることで、この国がきれいになる!」

 

いただきました、星みっつ!

ご馳走様でした。

 

米プロ諸君も、お疲れ様でした。

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