2011年3月 8日

異常気象で生産者が消えていく・・・

 

東京集会のレポートは2回でいいかと思っていたが、

そろそろ整理しようと思って手に取った記録メモを見直してみて、

やっぱ生産者が語った大事な話だけでも残しておきたいと、改めて思うのである。 

実行委員会から写真もゲットしたし。

 

お祭りのように賑やかで楽しい交流集会のなかで、

唯一といってもいい、重苦しい話題でのステージ30分一本勝負。

" 生産者が語る 「異常気象レポート」 " 。

 

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私へのイメージが暗いものに固まるのがこわくて、

スタッフ・エプロンを羽織ってもみたのだが、ぜんぜん似合ってないじゃんよ。

写真も暗いしィ 。。。

解説もこんな感じで・・・

 

「異常気象」 という言葉には、もう聞き飽きた感も持たれることかと思うが、

この言葉にも定義があって、

けっして不安を煽るために都合よく使われているわけではない。

気象庁によれば、それは

「統計的に、30年に1回以下の出現率で発生した気象現象」

ということになっている。

この言葉がひんぱんに登場するほどに、

気候変動は日増しに激しくなってきていることを意味している。

 

例えば昨年夏の高温・猛暑は、気象庁が統計を取り始めた1898年からの、

過去112年間での最高記録である。 

つまり100年に一回かどうかも分からない記録というわけだ。

世界全体で見ても、統計上2番目の高さだった。

しかもベスト5はこの10年ちょっとの間に集中している。

 

冬になれば、日本海側ではこれまた記録的な豪雪となった。

日本の観測地点37ヶ所で最大積雪記録が更新されたのが、この冬である。

「集中豪雪」 なる言葉まで生まれた年として残ることになる。

背景として指摘される 「ラニーニャ現象」 は、

世界気象機関 (WMO) が 「100年の中でも最強クラス」 と呼んだほどだ。

 

そして自然災害の規模は、年々大きくなっている。

 


2月24日の日記で示した2010年の世界の異常気象MAP (気象庁データ)

を見てもお分かりのように、世界のあちこちで異常気象が観測され、

それらが相互に関連し合い、かつ至る所で災害をもたらしている。

しかも今後の気候変動はより不確実性を高め、激変する可能性を帯びてきている。

温暖化とは年々少しずつ気温が上がるということでなく、

乱高下の変動幅がどんどん激しくなることだと理解しなければならない。

 

IPCC(気候変動に関する政府間パネル) 第4次報告によれば、

20世紀後半の気温上昇・温暖化は、もはや自然要因だけでは説明できない。

明らかに人為的な要因が加わっている、と指摘されている。

気候変動がもたらす社会的影響は、

時限爆弾ともいえる人為的ウィルスを抱えながら進んでいると言える。

 

同時に地球規模で進んでいるのが、

人口の増加と耕作面積の減少 (地力の短期的収奪・砂漠化も含めて)

という自己破滅的な動向の加速化である。

温暖化は水収支も悪化させていて、世界は水資源の奪い合いを激しくさせている。

前世紀の経済発展のエンジンとなった石油は供給力ピークを越えた。

投機マネーはいよいよ穀物市場を荒らし始め、

外国の耕地を買い漁る 「ランド・ラッシュ」 という言葉まで生まれた。

買われた土地の下には水脈がある。

 

昨年から今年にかけては、

ソ連やオーストラリアの干ばつによる不作や輸出禁止政策が穀物の高騰を誘引し、

それがアラブ諸国や北アフリカの政情にも影響を与えている。

世界は前代未聞の資源戦争の世紀に突入した。

 

かたや日本では、山 (=水源) は荒れて外国資本に買われはじめ、

耕作放棄地は平地にまで及び、

持続性がどこにあるのかよく分からない輸出市場に期待をかけて

関税撤廃 (これは農産物だけの話ではない) に乗せられようとしている。

基盤が脆弱化しつつあるなかで、防壁のない戦を始めようとしている気がするのは

僕だけだろうか。

 

そんな状況を背景に、昨年各地から届いた写真を見ていただく。

例えばこんな写真。 

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これは茨城県筑西(ちくせい) 市、大和田忠さんの人参畑。

7月中旬~8月いっぱい、ほとんど雨が降らない大干ばつに見舞われた。

7月下旬に播種(はしゅ) した人参が発芽したのは9月になってから。

灌水設備がない畑のため、大和田さんは、タンクで水を汲んできては撒く、

汲んできては撒く、を繰り返したが、10月の冷え込みもあって、

この畑の人参はついに大きくならなかった。

 

東北地方を襲った 虫の異常発生と北上 は以前にもレポートした通りである。

奇形果が大量に出たトマト、日焼けで白くなった柑橘・・・

農業歴ウン十年の生産者でも、これまで経験したことがないという

現象があちこちで発生した。

 

発言をお願いした北海道中富良野町、「どらごんふらい」 のメンバー、

石山耕太さんが解説してくれた人参畑。

 

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8月の断続的ゲリラ豪雨によって畑は水浸しになり、根の先端から腐っていった。

玉ねぎ畑は先日の日記で見てもらった通りである。

 

それでも石山さんは、しっかりと前を向いて語ってくれたのだ。

 

我々にできることは何か?

異常気象が当たり前という前提で、高温、低温、多雨、少雨を問わずに対応可能な

心と、体と、手段を持ちたい。 

簡単にあきらめないこと。

あきらめざるを得ない時は、すばやく次の戦略を練ること。 

そして、作物の生命力を信じたい。

 

夏の次は冬。

日本有数の漁港、鳥取県境港で漁船を持つ(株)福栄専務取締役、岩田健二郎さん。

大地を守る会には、イカやカニ製品を出していただいている。

 

昨年末から正月にかけての記録的集中豪雪で、

たくさんの小型漁船がやられた。

 

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小型漁船の主は、60歳以上の方が多い。

船舶の保険料は高く、こういうことがあると、「もうやめるわ」 という人が現われる。

災害のたびに漁業者がいなくなっていくのだという。

 

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突発的な災害だけでなく、温暖化は海水温の変化ももたらしていて、

岩田さんは魚種が減っていることも不安であると語る。

境港は多様な魚が揚がる、つまり海の豊かさを誇っていたものだが、

魚種が減るということは、確実に漁業資源の枯渇にもつながってゆく。

そこに災害が襲うと・・・ 一次産業者には耐える力も衰えてきているのです。

国に何とかしてほしいと思ったりもするんですが・・・ 

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先日、世界銀行の総裁が、

「世界の食料価格は、極めて危険な水準まで上昇している」 と警告を発した。

私たちは、これからさらにひんぱんに異常気象を経験することになる。

食料の奪い合い、資源争奪戦が激しくなる中で、

自由市場に出れば出るほど、

食べものが一部の人たちの力で左右されるリスクが増すことになる。 

 

ここ2ヶ月ほどの新聞を見ても、かなりヤバイ記事が増えている。

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食糧危機は、来るべき不安ではなく、現在進行中の事態なのである。

僕らはすでに

ゆで蛙 (だんだんと温度が上がっていく中で、知らずに茹で上がってゆく)

と同じ状態に陥ってないだろうか。

世界中で格差が拡大していっているのは、無関係ではない。

 

私たちは、食べものと水を永続的に供給し続けてくれるこの豊かな国土を

しっかりと守る必要がある。

食と健康と、それを支える環境(=暮らしの土台) を守ることによって、未来は安定する。

できることなら、地球資源をもっとも調和的に維持させているモデル国として

イニシアチブを取るくらいの国になりたい、とすら思う。

 

そのために私たちが日々取るべき行動とは、究極のところ、

誰とつながり、何を食べるのか、食も水もお金も含めた資源をどんな循環でまわすのか、

という点に集約されていくのではないだろうか。

頑張って作り、食べる。 その輪を強化したい。

その輪に選ばれる組織でありたい。

けっして嘘をつくことなく。

 

私たちの交流は前に進んだか。

 



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