2011年5月29日アーカイブ

2011年5月29日

それでも種をまこう の会

 

予想外に遅くまで話がはずんだ 「月の会」 から一夜明け、

昨日(28日) はまた別の集まりで同様の話をする機会をもらった。

 

この集まり・・・ というのが少々説明しにくい集まりなのだが、

原発事故の影響が深刻さを増してゆく3月下旬、

この問題にこれからどう対処してゆくべきか、

有機農業に関わる有志で集まって考えないか、という声がかかってきた。

呼びかけたのは、「農業生物学研究室」 の明峯哲夫さんと、

出版社 「コモンズ」 の大江正章さん。

有機農業学会関係の研究者や生産者、ジャーナリストなどが集まって、

4月8日に1回目の会合が持たれ、今回が2回目となる。

 

そこで、震災や原発事故に対する、この間の大地を守る会の活動について、

報告する時間が与えられた。

 

振り返りながら、報告させていただく。 

広範囲にわたる生産者の安否や被害状況の確認から始まり、

ライフラインが大混乱する中での物流対策に追われつつ、

復興支援基金を創設したこと、

物資や炊き出しによる支援活動 (これは今も続いている)、

食べて応援プロジェクトや 「福島と北関東の農家がんばろうセット」 の企画、

「大地と海の復興プロジェクト」 では

水産生産者のネットワークを使って漁民に船を送る活動や、

避難された農民を農家で受け入れる情報提供を行なっていること、

そして慎重に検証した上での放射能測定結果の公表、、、。

刻々と変わる情勢に振り回されながらも、

とにかくやれることは全部やろうと思って進めてきた。

 

現在の課題は、

支援の継続はもとより、

損害賠償や現地での測定体制をどうバックアップできるか、

そして生産現場での放射能除去の取り組みをどう進めるか、である。

 


食品の放射能測定に対しては、

その結果で本当に実態をつかんだことになるのか、

という本質的な問題点が指摘された。

野菜ひとつとっても、畑によって差があったりする。 

キャベツなら外葉を数枚はがすだけで値は違ってくる。

大気なら地上からの距離によって違ってくる。

わずかのデータで 「安全」 や 「危険」 を判断しようとしていないか。

局地的に測れば測るほど全体が見えなくなる危険性を孕んでいないか。

安直な情報開示は風評被害の発信元になりかねないし、

本質を曇らせる恣意的なデータがかえってリスクを高めてしまう可能性もある。

 

論評されればそういう問題はあるだろう。

しかし日々生身の生産と消費をつなぐ立場にあっては、

数値によって現実の一端を知ることは、

「知らない」 ことによる不安を鎮める上での有効な手段ではある。

「測定」 という行為の検証力を僕らは持つ必要があり、

やってみなければその意味が分からない、という意味においても、

徹底して議論しつつ通過しなければならないプロセスなのではないだろうか。

 

放射能の除染への取り組みについても、

「ベスト・アンサー」 がない。

「たいして有効とは思えない」 ものでも、

「何でも試してみたい」 「一年でも早く (土壌を)キレイにしたい」

という生産者の思いを、僕は優先したいと思うものであるが、

放射能を拡散させるリスクは犯すべきではない。。。

 

統括された研究が必要なのは充分承知しているのだが、 

いま目の前の畑をどうするか、への答えは誰からも提示されない。

 「行動」 に出たい!

その一方で放射能という確証のない相手に皆が逡巡している。

明峯さんが語る。 「これは知性への試練」 だと。

その通りなのだが、カッコいい台詞で決められると、

焦っているわが身には少々腹も立ったりして。

 

会議ではさらに、他の発表者から様々な問題点が提出された。

正確な現状把握の困難さ。

方向の定まらない子供対策。

損害賠償の対象にならない山村自然 (=資源) の損失の大きさ。

新潟・山古志村の教訓が活かされない避難の状態。

" 復興 "  に名を借りてのTPP参加への懸念。

 

農漁民たちの損害賠償請求は必要なことだが、

売買の対象になったモノへの賠償だけではない、

失われた価値の総体を見える化し、問う行動が必要である。

 

そして私たちは、

(食べる行為をやめられない以上) それでも種をまく以外にない。

この集まりを、「それでも種をまこう の会」 とする。

 

「種をまく」 とは、具体的行為である。

知識人の議論で終わらせないよう、お願いしたい。

次回は 「種蒔人」 を持参させていただこうかと思う。

 



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