2011年5月11日

脱原発に向かうしかないです -福島行脚その④

 

今日の朝日新聞朝刊トップの見出し。

「夏の電力 全国で切迫 -原発54基、42基停止も-」

 

震災で止まった青森の東通から茨城・東海までの原発に加え、

これから浜岡原発が止まり、

さらに定期検査を終了しても運転再開を見合わしている原発と

夏までに検査に入る原発が、地元住民との合意が得られずに再開できない場合、

国内の商用原子炉54基のうち42基が止まる事態となる。

国内全電源の2割に相当するらしい。

この夏の電力不足は必至、ということのようだ。

 

電力不足をこれ見よがしに主張して、あるいは計画停電も実施して、

  " だからやっぱり原子力を "  と世論を誘導するねらいだと分析する人もいる。

真偽のほどは知らないが、ならば、こう言うしかない。

 

この夏を、健全に突破しようではないか。

 

楽しく省エネ(節電)、そして再生可能エネルギーに大胆にシフトさせよう。

(大地を守る会では、節電アイデアを募集中 です。)

 

自然エネルギーへの完全シフト -それは充分可能である。

いや可能どころか、今世紀の中頃 (我が子の時代、目の前の話である) には

石油もウランも枯渇すると予測されるなかで、

21世紀のイノベーション(技術革命) は太陽エネルギーの効率的捕捉による

" 低炭素化社会 "  づくりにかかっているといっても過言ではない。

この分野でリーダーシップを発揮することこそ、平和を愛する技術立国の使命である。

 

80年代からの畏友である同時代人の旗手、

竹村真一さん(京都造形芸術大教授) の言葉を借りれば、

「 太陽が提供してくれているエネルギーの、100万分の1でも捕獲して

 利用していくことができれば、この星にはエネルギー問題など存在しなくなる」

(著書 『地球の目線』 や 『環東京湾構想』 から)  のだ。

原子力エネルギーに利権を求めているうちに、

この国は完全にそのレースから遅れをとってしまっている。

 

福島の方々の苦悩と涙への答えは、それしかない。

・・・・・と気合いは入れてみるものの、

なかなか終わらない 「福島行脚」-その④ はつらい報告になる。

以下、続けたい。

 

5月5日の朝、「堰さらい隊」 とともに山都を立った僕は、

会津若松駅で降ろしてもらって、電車で福島へと向かった。

福島県内で野菜の作付契約をしている4つの生産団体に集まってもらって、

異例の合同会議を設定したのだった。

場所は福島市内にある 「福島わかば会」 の事務所。

集まってもらったのは、福島わかば会の他、

二本松有機農業研究会、NPO東和ふるさとづくり協議会、福島有機倶楽部。

 


ログハウスの二階に全部で50人くらいだったろうか、

ぎゅうぎゅうに詰め込んで行なった会議のねらいを要約すれば、

こういうことである。

 

原発事故以降、福島県産の野菜の販売は、正直言って大苦戦の中にある。

大地を守る会では、「福島&北関東の農家がんばろうセット」 などを企画して

販売に努めているが、皆さんと交わした作付契約量を消化 (販売) し切ることは、

現実的には無理な事態に立ち至っている。 事情をご了解いただくとともに、

この損失はきっちり計算して、東京電力に賠償請求するしかない。

そのための協力は惜しまない。 全力でバックアップする所存です。

 

やったってさぁ、取れる保証はないべ?

-たしかに、僕らの力で保証できるわけではありません。

  しかし、原発事故が招いた被害と影響の大きさと社会的損失は、

  皆さんがどれだけ苦しい思いをしたかも含めて、社会的に示す必要があると思う。

 

具体的に品目ごとに、これからの作付と販売のすり合わせを行ないながら、

「いや、もうそれは (作るのを) やめようと思う」

「予定通り行きたい」

といった意向を、淡々とうかがっていく。 辛い時間が経過していく。

 

質疑のなかで、耐え切れなくなったか、一人の生産者が声を荒げた。

「 避難した子が差別されてるって聞いてるけど、

 俺たち東京電力の電気さ使ってるわけでもねえし、いわば防波堤になってんだよ。

  いったい東京の人は、なに考えてんだよ! 」

 

逃げられないので、東京都民の代理人になって応えるしかない。

「 そういう報道がされていることは知ってます。 でもね、それはごく一部の人です。

 一部の人の心ない言動に胸を痛めている都民のほうが圧倒的に多いはずです。

 十把ひとからげにして非難したり敵意を抱いたりせず、

 支援してくれる人たちへの感謝をもって行動することが今は大切です。

 何をもって応えるかを、考えましょうよ。」

 

・・・そんなことは彼も重々知っているのだ。

言わないでいられない悔しさは、受け止めるしかない。 僕でよければ。

 

とにかく、生産と消費を対立させてはならない。

山都で訴えたことを、ここでも伝える。

子どもを守りたいと思う気持ちを  " 風評被害 "  と一緒にしないように。

それがたとえ拡大解釈によるものだとしても、です。

 

こんな発言もあった。

「 大地さんからいただいた義援金で放射能測定器を買わせてもらおうかと思ってます。

 作る者の責任として。」

---なんてつらいコメントなんだろう。 これが支援の結果? でいいのか。。。

 

大地を守る会に入社して26年。 こんな経験をするとは思ってもいなかった。

 

脱原発に向かうしかないです。

とにかく皆さんの営農を維持するために、できることはすべてやるから、

一緒に前に進んでほしい。

まとめはこれしかない。

 

別れ際、生産者の奥さんが声をかけてくれた。

「春になったのにね、何にもする気力が涌いてこなくてね。

 でも今日皆さんに会えて、やることやらなきゃって思いました。 有り難うございました。」

 

福島担当の佐々木克哉が、

「がんばろうセット」 に入れるリーフレット用に、記念写真を撮りましょうと言う。

福島がんばろう! でいきましょう。

 

e11051101.JPG

 

少し笑顔も取り戻してくれたか。

 

決意するところがある。

夏に、「脱原発を宣言する大地を守る会の生産者会議」 を開きたいと思う。

 

福島駅前の一番安いビジネスホテルに潜り込んで、

居酒屋を探す気力もなく、地酒を一本買って部屋で物思いにふける。

駅で流れていた甲子園賛歌 「栄冠は君に輝く」 などを口ずさんでみる。

 

  雲は涌き 光溢れて 天高く 純白の球 今日ぞ飛ぶ

  若人よ いざ まなじりは 歓呼にこたえ

  いさぎよし 微笑む希望

  ああ 栄冠は 君に輝く

 

泣けてくるね。

ついでに3番の一節も。

 

  空を切る 球の力に かようもの 美しく におえる健康

  若人よ いざ 緑濃き しゅろの葉かざす 感激を 目蓋にえがけ

 

未来を守らなければならない。 それは僕らの義務だ。

 


Comment:

できることを、少しずつでも、長く、ずっと。一緒にずっと。負けないで、めげないで。


高木様

有り難うございます。肝に銘じます。

from "戎谷徹也Author Profile Page" at 2011年6月 2日 23:44

タイトルがあまりに正直だったのに引かれてブログを初めて読みました。脱原発しかないと思います、ほんとうに。なんとかして、大地に降り注いだ放射性物質を除染して、きれいにしないといけないですよね。取り除かない限り、ずっとそこにあるのですよね。自治体にも東電にも、農地の除染を要請していくしかきれいな大地と水を取り戻す方法はないと思います。えびちゃん、お疲れさまです。福島の生産者の皆さん、どうぞ希望を捨てずにみんなで考えましょう。

from "めじこ" at 2011年6月 8日 11:57

めじこ様

コメントありがとうございます。一日も早くきれいな土を取り戻したいと、生産者ともども必死で知恵を絞っています。この取り組みを皆さんに早くお伝えできるよう、頑張ります。どうかご支援くださいますよう。

from "戎谷徹也" at 2011年6月10日 19:41

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