2011年12月11日

有機農業で希望のシナリオを-

 

北国の冬はホンマに天気の変化が激しい。

夕べから降り出した雪が朝になってさらに激しくなったかと思えば、

お昼前には青空が見え始めた。

灰色の世界に、一気に光が射してくる。

これが夕方にはまた灰色の空に変わっているのだ。

 

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雪に翻弄される暮らしが4~5ヵ月も続いて、

春になれば南国人の感覚だと3か月分相当の花が一斉に咲き乱れ始める。

気候風土はきっとそれぞれの色で人々の精神性を育て、

その土地の文化を形成するのだろう。

この島国の人たちは包容力と忍耐をもって自然に対応し、

何というかマンダラ的な調和をはかる感性があるように思う。

善良かつ気まじめに異文化を受容しながら、作り変えてゆくしたたかさも秘めて。

 

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クラークさんの前をおばちゃんが通り過ぎてる・・・

僕はやっぱりこの国が好きだな。

 

地域や仲間を守る際の自治意識とまとまりの強さは世界が認めるところだ。

この国の統治は、中央集権に見せかけながら

しなやかに地域の知恵や主体性を活用するのがいいんじゃないか。

3.11以降、その思いはますます強くなった気がする。

 

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学園の樹々に鳥たちが平和に巣をつくっている。

その下を忙しなく歩き回る人々。 なぜか微笑んでしまう。

 

校舎に入れば、二日目は個別の研究発表会。

ふたつの教室に分かれて、各種の調査・研究報告が20分間隔で組まれている。

5分刻みで鈴が鳴り、みんな時間をきっちりと守ってプレゼンが展開されてゆく。

院生に発表させるケースも多くあった。 教授が生徒の側に座って聞いていたりする。

学会とはトレーニングの場でもあるんだね。

 


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発表された調査・研究成果の数は27。

「合鴨農法における野生鳥獣害の現状」 とか、

「植物共生微生物相の解析による有機栽培作物の特性評価の試み」、

「不耕起・草生栽培における物質循環・養分動態の解明」

といった具合に、20分刻みで発表が進められる。

 

僕が注目していた発表のひとつが、

「原発事故による放射性汚染農地対策にゼオライトは有効か?」。

発表者は東京農業大学応用生物科学部の女子学生。

師匠は、大地を守る会の生産者会議に何度かお呼びした後藤逸男教授。

僕も研究室に一度お邪魔したことがある。

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さすがに学者なので、結論は軽々に出さないが、

ゼオライトには 「可能性がある」 との明確なメッセージが出されていた。 

火山の多い日本に潤沢に存在する鉱物資源であることも有り難い。

 

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別な教室では、ポスターによる発表が12例、掲示されていた。

 

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やや雑駁というか、まだ手探りだね、という内容のものもあったが、

こういう積み重ねが有機農業の奥行きを深めていってくれるはずだ。

有機農業の研究に予算がつくようになって、

いろんな視点での研究が広がってきている。 

ひとつひとつ、生産現場で実証されてゆく日が来ることを願う。

 

さて、一日目の報告をひとつ追加しておきたい。

全体セッションの 2 は 『北海道における有機農業の多様な展開』

と題して行なわれた。 

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発表者に、石狩市(旧厚田村) の長良幸さん(写真右から二人目)、

当麻町・当麻グリーンライフの瀬川守さん(左から二人目)、

北海道有機農業協同組合代表の小路健男さん(左端)と、

大地を守る会の生産者の方々が顔を並べていた。

それぞれに辿ってきた道のりと現在の課題を語る。

コーディネーター(右端)は、農業活性化研究所・菊地治己さん。

7月に旭川で開催した 米の生産者会議 で講演をお願いした方だ。

 

「今年はどうだったですか?」

「今年も、ダメ、ダメ!」 と長さん。 

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そう言いながらも、しっかり息子も継いだようだし、

有機農業塾も始めて地産地消の拠点づくりに頑張っている。 

 

全体セッション 3 - 『日本国内における有機畜産の可能性と課題』 がまた

大変に面白かったのだが、いずれ機会があれば報告したい。

 

中島紀一さん(茨城大学) が語っていた。

地域経済の循環は、農の営みを継続することによって取り戻すことができる。

耕作の努力によって、その地域で安心して暮らせる体制の再構築も可能となる。

地球的破滅の方向でなく、未来に向かって希望のシナリオを描くこと、

それが有機農業の役割だ。

 

生産者を支え、励まし、希望と勇気を与えてくれる学問であってほしい。

お願いします。

 



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