2011年12月10日アーカイブ

2011年12月10日

日本有機農業学会・大会-「有機農業と原発は共存できない」

 

Boys,be ambitious! 

少年よ、大地を、じゃなかった、大志を抱け!

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北海道に来ています。

夕べのうちに札幌に入り、今日は朝から北海道大学に。

子どもの頃、大志を抱かないといけないんだ~、という脅迫観念を抱かせてくれた恩師、

ウィリアム・スミス・クラーク博士にいちおう仁義を切って、

敷居の高い場所に足を踏み入れる。

「すみません。 ワタクシの大志は、今も迷いのなかにあります。」

 

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北海道大学農学部。

ここで 「第12回 日本有機農業学会 大会」 が二日間にわたって開催され、

参加することになった。

 

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なんでエビが 「学会」 なんてお堅い場に?

そうなのよね。 およそそんな世界には無縁だったのだけど、

この大会の全体セッションの一つで発表を求められたのである。

放射能のせいで。

 

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集まったのは、全国の大学や研究機関から、

各分野で有機農業を研究対象とする先生や学生たち、150人くらいだろうか。

道内の生産者の顔もチラホラ見られた。

 


開会の挨拶などがあった後、

全体セッション1。

テーマは 『 東日本大震災・原発災害に有機農業は何を提起できるか 』。

 

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コーディネーターは、谷口吉光さん(秋田県立大学) と古沢広祐さん(國學院大學)。

このお二人とも古い付き合いになった。

古沢さんから4つの論点が示される。

第1に、有機農業の視点から原発をどうとらえるか。

第2に、食品における 「放射能リスク」 にどう対応するべきなのか。

第3に、放射能低減という課題に、どう貢献してゆくか。

第4に、地域と農業の復興をどう進めるか。

 

発表者は4名。

日本大学生物資源科学部・高橋巌さんは、原発事故を国家的犯罪と断罪する。

どうあがいても人間は自然の摂理と 「循環」 から逃れて生きることはできない。

その 「循環」 の中に放射能が入ってしまったわけだが、だからこそ

「有機農業ならではの脱原発」 の方向性を検討しなくてはならない、と強く訴える。

 

新潟大学農学部・野中昌法さんは、1960年代に行なわれた核実験による

「死の灰」 の農業に対する影響を調べた膨大なデータをもとに、

4月の段階で重要な提言を発表した方だ。

 -土壌の汚染は表層約 5cm に留まっている。

 -汚染の程度は地形・気候条件・栽培方法・施肥管理で異なってくる。

 -したがってきめ細かな土壌汚染地図と、程度に応じた対策が必要である。

 -国は責任をもって事故以前の優良な農地に戻し、農産物の安全性を保証しなければならない。

 -風評被害を防ぐための農業再生の工程表を作成して、国民への理解を求めよ。

 -平成24年度の作付に向けた汚染程度に応じた農業復興計画の提示を。

どれも適切な指摘である。

しかし3番目からの提言は、

適切に実行されたとは言い難い (その結果が、今の福島米の混乱である)。

 

実行したのは、営農の継続を決意した生産者たちだった。

二本松市 「ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会」 と、

彼らの支援にあたった野中先生と茨城大学のグループ。

そして須賀川市・ジェイラップと大地を守る会&カタログハウス。

フォローしてくれたのは四日市大学の河田昌東さん(チェルノブイリ救援・中部理事) だ。

データから明らかになってくる汚染の実態、そして対策。

見えてきた世界は、土の力であり、

植物とともに浄化に向かうのが王道であり近道であろう、ということだった。

「有機農業による耕作が被害の拡大を防ぐ (可能性が見えてきた)」

 

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高橋さんも過激だが、野中さんもなかなか熱い方だ。

福島の有機農家の、こんな言葉を紹介している。

「 一生懸命春の太陽光で生育した春野菜が土壌汚染を防いでくれた。

 したがって鋤き込まないで、一本一本、ありがとうという言葉をかけて、手で取り、

 影響のない場所に穴を掘り、埋めた。」

 

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「本来の農学」 を追究する研究者がいてくれること。

これが今、たたかう陣形に欠かせない、必須の兵站部隊なのだ。

依頼を受けて一介の流通者でしかない僕がわざわざ北海道まで出向いたのは、

この一点の思いに尽きる。

 

続いてエビスダニ氏。 学会で流通者が発言する。

持ち時間は15分。 冬の苦手な男がこのために北海道までやってきた。

原発事故からの対応を辿りながら、僕なりに思いを凝縮させたつもりだった。

早口に、とちりながら、、、5分のオーバーを、谷口さんが許してくれた。

 

話すと長くなるので、提出した 「発言要旨」 をここに記したい。

少しでも行間を読み取っていただけると嬉しい。

①福島第一原発事故後の対応から

 - 風評被害(?) と生産者対応から

 - 測定体制の強化・構築と情報公開の意味

 - 消費者の声と流通団体の対応軌跡

 - 生産者の除染対策支援

②食品における放射性物質の規制値(基準) について

 - 国の暫定基準値はなぜ信頼されなかったのか

 - 基準乱立から、市民の手による共通指針(基準) づくりへ

    ~ 我々は 「暫定基準」 を超えられるか・・・

③ゼロリスク議論から思うこと

 - " ゼロリスクを求める "  を否定せず、本能と受け止めたい。

   ⇒ しかし " 選ぶ・探す " 行動だけでは排除と分断につながる。 誰も救えない。

 - " ゼロリスクを目指す " ための思想と戦略(政策) の再構築こそ求められている。

   > 放射能に向かい合うための 「食の総合力」 を提案したい。

     放射能対策は総合力。 それを提示できるのが  " 有機農業 "  ではないか。

      『 有機農業運動が創出するイノベーション 』 に向かって進む。

     その戦略(政策) に 「脱原発社会の実現」 を明確に組み込む。

④生産者・国土を見捨てない思想の獲得へ

 - 生産者の除染対策支援から見えた世界

   " たたかう生産者 "  の姿勢を見せ続ける!

 - 生産と消費の対立を超える思想を掴みとる、その最大の機会ではないだろうか。

 - 流通が果たす役割とは

  > 「食へのリテラシー」 を育てるのが流通の役割

  > 新しい文化を創り出す、価値創造の競い合いをしたい!

   ⇒ その一歩としての 『共同テーブル』 でありたい。

 

いっぱい補足したいし、その後のセッションも紹介したいのだが、、、

夜の懇親会に、さらに大学前の居酒屋で関係者と一杯やってしまって、

もうここまで。

" (放射能に対して) ゼロ・リスクを求めるのは (利己主義でもあるが) 本能である " 

それを認め合うところから、たたかいの戦略を組み立てたい。

ここで 「脱原発」 は共通の前提となる。

このたたかいは、生産と消費がつながってこそ、勝利する。

流通者として立てた、必死の戦略論である。

幸いたくさんの方から評価をいただけたようなので、今日は良しとしたい。

 



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