2012年1月 6日

菅谷昭・松本市長を訪ねる

 

年を越してしまったけど、

長野県松本市の菅谷昭(すげのや・あきら) 市長を訪ねた報告をしておきたい。

 

昨年12月22日(木)、

我々 「食品と放射能問題検討共同テーブル」 一行 4名

(カタログハウス、生活クラブ生協、パルシステム生協、大地を守る会) は、

朝7時新宿発の 「特急スーパーあずさ1号」 に乗りこみ、松本に向かった。

5分ほど遅れて9時45分、松本駅到着。

面会は10時の約束なので、タクシーに乗り合わせ松本市役所に走る。

市役所で、福島・須賀川から車で突っ走ってきた伊藤俊彦さんと合流。

 

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市長のスケジュールで見つけたのか、

地元のケーブルテレビが待ち構えていた。

 

菅谷昭さん。

甲状腺疾患の治療を専門とする医師で、

1996年から5年半にわたってベラルーシ共和国に住み、

小児甲状腺ガンの医療活動を続けられた方である。

帰国後、長野県衛生部長を経て、2004年に松本市長に就任。

昨年は内閣府の食品安全委員会に招致された専門委員の一人として

内部被曝の重大さを指摘された。

福島県からの避難者の受け入れも積極的に行なっている。

 

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今回のヒアリングでは、内部被曝のとらえ方や今後の影響予測、

有効な食品対策への考え方などについて話をうかがった。

 


菅谷さんはまず、我々にことわりの言葉を述べた。

「自分は放射線の研究者でもなければ、食品の専門家でもない。

 一人の医師であり、今は自治体の首長でもある。

 理想を言うのは簡単だが、厳しい現実のなかで生産者も市民も守らなければならない

 立場にあることを、どうかご理解いただきたい。」

 

了解です。 そういう方の話を聞きたくて来たのです。

 

菅谷さんは、福島第1原発事故による影響を軽く見てはいけないと警告する。

チェルノブイリ原発事故と比較しても、線量の高い地域はある。

そういうところに子どもや妊婦が住んでいる。

除染といってもそう簡単なことではない。

いたずらに安心させようとせず、危険なところには 「住んではいけない」 ということも

政府は明確に言う必要があるのではないか、と。

 

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<以下、菅谷さんの談> 

長期にわたる低線量の内部被曝によって何が起こるか、ということは

実はまだよく分かっていないんです。

だからといって想定する被害を軽く考えてはいけない。

体内に入った放射性物質は代謝によって排出されてゆくが、

一方で、軽度でも被曝し続ければ蓄積されていくことになります。

その影響が科学的に解明されてない以上、我々はチェルノブイリから学ぶしかない。

チェルノブイリは私たちの25年先を進んでいるのです。

  

子どもの甲状腺ガンはチェルノブイリの事故後から徐々に増え始め、

5年後から突然増加し、10年後にピークに達しています。

被害を防ぐには症状から分析するしかなく、

だからこそ長期的な観察体制が必要であり、

放射線量の高い地域であれば一定期間線量の低い地域への移動も考えるべきでしょう。

 

長期の低線量被曝の影響はガンだけではありません。

ベラルーシの医師からの報告では、免疫機能の低下による症状が増加しています。

風邪を引きやすい、しかも長引いたりぶり返したりする。

造血力の低下で貧血を起こしやすくなったり、

異常に疲れやすくなったり (長崎で発生したぶらぶら病のような症状か・・・)、

消化器系の疾患や先天性障害も増えてます。

 

ただ2~3倍増えただけでは、因果関係を証明したことにならない。

25年経っても結論が出ない、チェルノブイリは今も 「進行形」 なんです。

 

子どもを放射能の被害から守るために提唱していることは、

「規則正しい生活」 と、

ビタミン、ミネラル(鉄分など) をちゃんと摂る 「栄養バランスのとれた食事」 です。

食物繊維とペクチンは排出を促進する上で有効です。  

 (寒天とリンゴがよい。 でもペクチンは過剰に摂ると他の栄養素も排出してしまう。)

私は皆さんに、「ガンより、それ以外の病気を心配してください」 と言ってます。

 

このような悲しい事故が発生した以上、

放射能対策は理想論だけではいかなくなってしまいました。

現実的な対策として、ある期間までは15歳で区切って、

15歳未満の子どもについてはリスクのある食品の摂取をできるだけ避ける。

子どもを出産する可能性がある女性も同様。

しかし、大人には 「基準値未満なら食べてください」 とお願いしています。

現実には食べるしかありませんから。

<談、以上>

 

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松本市では、 学校給食で使用する食材の放射能検査を独自に実施している。

サーベイメーターなので限界はあるようだが、それでも数値を公開することで

市民の安心感にはつながっているようだ。

以前より地産地消を基本としてきたことで、卸し業者も理解して気を使ってくれるらしい。

やはり普段の関係性は大切である。

 

最後に、暫定規制値の見直し案に対する見解を尋ねた。 

やはり 「食品は専門ではないので・・・」 とことわりつつ、

これが現実的にしょうがないレベルか、という印象を持っているようであった。

4分類については何とも言えないが、

乳幼児の数値を設定できたことは良かった、と評価されていた。

 

子どもたちの治療にあたってきたお医者さんということもあって、

物腰の柔らかい誠実な姿勢が伝わってくる方だった。

今の時代に、市民の健康に気を配り、予防原則も忘れない首長の存在は、

市民にとってはとても安心感を抱かせることであるだろうと思った。

 

我々の専門家行脚は、まだ続く。

 


Comment:

菅谷昭さんのお話し大変参考になりました。
松本まで取材に行ってくださった事に感謝です。
実は、都内に住んでいる娘が春に出産をいたします。
とにかく食べ物にも注意させ、出る時は必ずマスクをするように言ってます。
今は無事に生まれてくることだけを祈ってますがf、将来の事を考えると…
孫子の世代が安心して暮らせる世の中を残してあげたいとひたすら願ってきたのに無念です。

from "加藤利江" at 2012年1月10日 21:31

菅谷松本市長さんの立場は充分理解できます。
ですが、実際の問題として、子供だけ特別の食事をさせるのは難しいです。
家庭内なら対応できますが、外食もするので、大人と同じ物を食べる事になります。
結局は、経済優先、生産者の生活守る事を貫く限り、子供や若い女性の被曝は日常になると思います。
それに、大人なら被曝しても良いのかどうか。
私自身、低線量被ばくと思われる複数の症状に悩まされました。
体中に赤い斑点が現れ、指先が痛いほど痺れ、病院に行ってもしばらく様子を見て下さいと言った感じで、症状が治まるのに4か月ほどかかりました。
肘をぶつけてビーンと痺れた感じが、指先に四六時中ずっとするのです。
文字も上手く書けず、ボタンを留めるのにも苦労し、日常生活がとても不便でした。
それから、眩暈も頻繁におこり、駅の階段など歩くのが怖かったです。
今までになかった事が我が身に一度に起こると、とても汚染された物など口にしたくなくなります。
市長の仰る通り、癌よりも他の症状の方が恐ろしいです。

from "西東京" at 2012年1月21日 01:54

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