2012年2月 5日アーカイブ

2012年2月 5日

点から面へ進もう -福島会議(Ⅱ)

 

寒い寒いと言っているうちに、暦は立春に入っていた。

春に向けて、急がなければならない。

2月1日、福島県生産者会議のレポートを続けます。

 

ジェイラップ(稲田稲作研究会、福島県須賀川市) の報告。 

この日、伊藤俊彦代表は農水省に呼ばれて欠席となり、

報告するのは常松義彰さん。

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ジェイラップの取り組みについてはこれまで何度か書いてきたが

(直近では昨年 12月25日 の日記参照)、

改めて 「田んぼ341枚のデータベース」 の価値を実感させられる。

 

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全ほ場にわたって、土と米との相関関係を測定したことによって、 

地形や水系との関係、耕作放棄地との関係なども見えてきて、

地域全体の対策の方向性まで示唆するものになった。

須賀川市、いや福島県にとっても貴重な先駆的データになるはずだ。

水田内での放射性物質の動態も調べ、今年の対策もほぼ固めた。

すでに土の反転耕起の作業に入っている。

 

ジェイラップの取り組みをずっとフォローしてくれたのが、河田昌東(まさはる) さん。

元名古屋大学教授で、現在 「チェルノブイリ救援・中部」理事。

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河田さんは、ジェイラップをサポートしただけでなく、相馬でも詳細なデータを取ってきた。

それらの結果から、地勢をよく見て対策を取る必要があることを説いた。

民間の力で進めてきたデータ蓄積と対策の共有が、大きな力になることを

期待を込めて語ってくれた。

 

佐藤守さん、野中昌法さん、河田昌東さんを助言者として、

参加された生産者グループごとに取り組み報告を行ない、

また疑問点などを提出してもらう。

 

福島わかば会は畑を12区に分け、

薬師(モンモリロナイト系の土壌改良材、有機JAS適合資材)、コフナ、ぼかし肥料、

地枸有機エキス(麦焼酎のもろみ副産物、有機JAS適合資材)、

硫酸カリなどの各種組み合わせによる試験を実施した。

結果は間もなく見えてくる。

 

二本松有機農業研究会、大内信一さん。

                                     (以下、写真撮影=市川泰仙)

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こちらには法政大学のグループがデータ取りで協力している。

 

やまろく米出荷協議会からは、佐藤正夫さん。

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佐藤さんが採用したのはソフトシリカ (これもモンモリロナイト系の粘土鉱物)。

これを水田の水口に置くよう指導したところ、施した田んぼはセシウム濃度が低く出た。

今年はさらに徹底してより安全性を高めていくことを総会で確認し合ったとのことである。

 

いわき市から参加された福島有機倶楽部の阿部拓(ひらく) さん。

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地震、津波、原発事故による放射能汚染・・・未曽有の災禍に見舞われ、

当地を去った仲間もいる。

しかし阿部さんは息子さんとともに 「農業を続ける」 意思を捨てない。

ハウス栽培で、野菜からの放射性物質の検出は殆どなかったのだが、

放射性物質が大地に降ったことには変わらない。

菌の利用や除染作物の活用など、阿部さんの試行錯誤は続いている。

 

質問に応える佐藤さん、野中さん。

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質疑応答は、時間を大幅に超過して終了。

成果や課題をがっちりと共有して全体の対策を強化するには、

一回の会議では足りない感が残った。

情報のネットワークを強化して、" 点から面へ " と進まなければならない。

 

春から取り組んでいる 「福島&北関東の農家がんばろうセット」 には、

今も粘り強い支持が寄せられている。

これまで会員から寄せられた応援メッセージを冊子に綴じて、

生産者たちにお渡しした。

 

「地震が起きた日から3カ月が過ぎました。

 被災地におられる皆さんの心と体の疲れのことを考えると、とても胸が痛みます。

 少ししか手助けすることはできないのですが、" がんばろうセット "  を食べて

 心をつなげていきたいです。 少しずつ皆さんの置かれている状況が良くなりますよう

 願っています。 体調を崩さぬようご自愛ください。」

「この時期、私と夫はわかば会のきゅうりとトマトなしには過ごせません。

 暑い中ですが、よろしくお願いします。」

「いつも美味しい野菜を有り難うございます。

 皆さんがずっと農業を続けていけるよう、応援しながらおいしくいただいています。

 皆さんに支えられて、私たちの食生活は充実したものになってます。」

「新年おめでとうございます。

 今年は穏やかな年になりますよう祈っております。

 がんばろうセットがある限り続けてゆきますので、皆さんもお体大切に。」

・・・・・・・・・・

こんな言葉が続いている。

 

ゆっくりと読みながらページをめくっている生産者の姿は、

それだけで胸に迫ってくるものがあって、

この苦難が喜びに変わるまで負けるわけにはいかない、

何としても最短で走りたい、と思う。

希望の春を迎えるためにも。

 



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