2012年5月アーカイブ

2012年5月31日

社会資本としてのスローフード

 

5月28日(月) 18時半。

月に一回、勤め帰りの男女が丸の内に集まって

様々な視点から地球環境問題を学び合う、

丸の内地球環境倶楽部主催による 「地球大学アドバンス」。

先般報告 したように、今年度のテーマは 「食」。

「 丸の内 『食の大学』 」 と銘うって今期プログラムが開校した。

 

第1回は、「ソーシャルキャピタル(社会資本) としてのスローフード」。

ゲストに呼ばれたのが、スローフードジャパン 副会長・石田雅芳さん、と私。

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1986年、ファーストフードが世界を席巻する流れに対抗して、

イタリアで生まれた食の運動。

50人でスタートした運動が世界中に広がり、今では132ヶ国10万人の会員を有する。

日本では全国に10ブロック・45の支部があり、会員数は1,600人。

 

「 この運動は、世界じゅうの生物多様性を守る人たちによって支えられています。

 この運動に参加する生産者は、" 生物多様性のヒーロー "  たちと位置づけられます」

と語る、石田雅芳さん。

 


スローフードは、地域の伝統文化を尊重しながら、生活の質の向上を目指す世界運動。

そのキーワードは、

ひとつに 「おいしい (good)」 -地域で守られてきた味。

ふたつに 「きれい (clean)」 -環境を破壊しない、人間の健康を傷つけない食。

みっつに 「ただしい (fair)」 -生産者に対しての公正な評価。

つまり、環境によく、持続性のある生産方式で経営が成り立ち、

しかも美味しくなければならない、ということ。

 

私たちは美味しいものを食べる権利がある。

食べ物がまずくなった理由は、スピードが速まったから。

お皿の上には、世界の事象がつまっている。。。

 

石田さんの話を受けて、司会・進行役の竹村真一さんが整理する。

地球のサスティナビリティ(持続可能性) を考える際に、

「食」 は大きなキーワードになる。

地球の肺といわれるアマゾンの60%が2030年までに消失すると言われ、

その背景に現在の 「食」 の姿がある。

食べ物は誰が作っていて、どういうふうに運ばれていて、どう捨てられているか。

この  " 見えなくなった "  生産から消費へと至る関係を修復し、

リデザイン(再設計) する必要がある。

「スローフード」 はその意味でソーシャルキャピタル(社会資本) 創生の戦略である。

 

次に指名を受けた大地を守る会の戎谷氏は、少々縮こまりながら

大丸有エリアで開始した 「つながる食プロジェクト」 実験のコンセプトとねらいを

語らせていただく。

設定した4つの価値(基準) -「地産地消」 「安全で安心な食」 

「地域環境に配慮した取り組みがある」 「伝統文化・地域文化を大切にする食べ物」、

これらははからずもスローフードのコンセプトでもあったわけだ。

この価値で生産と消費をつなぎ、この街に拡げる。

そのためにシェフたちがつながって、その食材の個性を引き出し、表現していただく。

流通もシェアしながら、低炭素物流を目指す。

さて、どこまで成果を  " 見える化 "  できるか --現実の課題はなかなかに厳しく、

まだまだ何かが足りないという模索にあります、という調子で。

 

ゲストによるプレゼンに続いて用意されたのは、

ワールドカフェ方式による参加者同士の対話。

立場の異なる人たちが小さな輪に分かれ、カフェにいるような気分で

共通のテーマについて話し合い、アイデアをまとめていくという手法。

 

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テーブルの真ん中には白い模造紙と何色かのペン。

メンバーは自由に語りながら、大切だと思った言葉やキーワードを書き出してゆく。 

 

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ラウンド1では、今日の話から学んだこと、大切だと思ったことなどを話し合い、

ラウンド2では、スローフードを阻害するものを探り、

ラウンド3では、「ではこれからどう実践するか」 を、キャッチフレーズでまとめる。

ラウンドごとにメンバーチェンジしながら、短時間で具体的提案に昇華させてゆく。 

 

皆さん、積極的に会話が進んでいる。 スゴイね。

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最後に発表。 

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自分で作って、自分で食べて・・・

意識すること・・・

知識と体験。 ギャップを埋めるコーディネーターを育てる・・・

食べ物を愛してあげる・・・

といった感じで発表が繰り広げられる。

 

最後に講評を求められた。

僕の感想は、「食べものに含まれる外部経済にアプローチしてほしい」 である。

食べ物は安くなったが、別な形で負担(出費) させられていること。

家計に占める食費は下がったが医療費は上がっている、というように。

お米を食べることで生物多様性を育む環境が守られることの意味、など。

米を外国産に変えたら、守る装置である 「田んぼ」 が失われる。

米(食べ物) は輸入できても、田んぼ(環境) は輸入できない。

スローフード運動の言う  " ただしい食 "  が支持されたなら、

その食べ物の値段は高い・安いではなく、" まっとうな値段 "  になるはず。

生産に対してまっとうな値段が払われることで、環境は守られる。

 

竹村さんのまとめが、にくい。

私たちの手で『真の価値.ドットコム』 をスタートさせませんか。

 

こんな殺し文句でまた一年、

タダ(正確には持ち出し) で付き合うことになるのだ。

 



2012年5月30日

お詫び-「連続講座」 第1回、予約満杯です。

 

今日は急ぎで、お詫びの二連発。

 

3月28日付日記 「世界一優秀な農民になろう」 に、

" ゆめ "  さんから質問のコメントが寄せられていたのに、

お返事ができていませんでした。 

遅ればせながら、しかも簡単なコメントで申し訳ないですが、

アップしましたので、ご確認ください。

合わせて、てん さん、まさママ さんにもコメントへの御礼を申し上げます。

コメントへの返事は三日以内にせよ、というのが

ブログを始めた時の管理人からのお達しだったのですが、

日記そのものが数日後にようやくアップできている始末でして、

なかなか反応できてません。 申し訳ないです。

てん さん始め皆様からのコメントにはいつも励まされております。

改めて感謝申し上げます。

 

二つ目のお詫び。

3月から準備してきた 「大地を守る会の 放射能連続講座」 の件。

第1回の参加申し込みにつき、締め切り後も若干の追加までお受けしましたが、

すっかりパンク状態 (席数160) となり、今はお断りしている状況です。

会場に椅子の増設をお願いしましたが、

消防法との関係で、規定席数以上の準備はできないとの事です。

 

昨日は弊社スタッフがたじたじとなる参加のご要望も受けたようです。

申し訳ありませんが、事情ご了解願うとともに、

USTREAM での中継でご参加いただければ質問も受けられますので、

何とぞご容赦のほどお願い申し上げる次第です。

 

2回目以降の、現時点での確定情報はこちらにて。

会場もすべて決定し、データを更新しました。

⇒ http://www.daichi-m.co.jp/cp/renzokukouza/

2回目、3回目の申し込みも承っております。

 

お詫びだけでは何なので、おまけ情報。 

3月に フランスからの取材を受けた話 をしたけど、

取材陣の中心メンバーの一人だった女性の科学・環境ジャーナリスト、

カミーユさんから、しばらく前に記事をアップした、との連絡。

http://www.actu-environnement.com/ae/news/mesure-contamination-nourriture-japon-fukushima-radioactivite-15630.php4

 

フランス語なので、ワタクシにはチンプンカンプンでやんすが

(英語的に読んで多少想像する程度)、

" Daichi Wo Mamoru Kai "  と T・Ebisudan の文字が散見されていて、

さて、あちらではどんな反応だったのだろうか。

読める方、感想聞かせてください。

 

それから、4月に遡りますが、

ネットで配信されている 「現代ビジネス」 というサイトで、

取材を受けた記事もアップされてます。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32201

 

以上、参考まで。

 



2012年5月24日

「つながる食プロジェクト」 試食会

 

今日は、丸の内・永楽ビルの 「Daichi & keats」 で、

「大丸有つながる食プロジェクト」 の試食会というのが開かれた。

プロジェクトの概要は先月 (4月5日) 報告したので省かせていただくとして、

今回は、関心を寄せていただいたレストランの方々をお招きして、

実際に大地を守る会の野菜を食べていただきながら意見交換をしようという

初の試みである。

午後の、お客様の少ない時間帯(15:30~17:00) を使わせてもらった。

 

今回参加されたのは4つのレストランの方々。

加えて、永楽ビルに4月にオープンした保育と託児施設の栄養士さんが

参加してくれた。

 


冒頭の挨拶は、三菱地所・エコッツェリア協会の平本真樹さん(写真左端)。 

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続いて戎谷より、実験的にスタートした共同調達のコンセプトや思い、

野菜の特徴などについて説明させていただく。

そして実際に試食していただきながら忌憚ない意見を伺う、という流れ。

 

説明するエビ(右端)。

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(これより下の写真はすべて、「Daichi & keats」 統括マネージャー・町田正英撮影。)

 

野菜はできるだけシンプルな調理で、素材の味を確かめてもらう。

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物流で提携する 「(株)まつの」 さんのスタッフの方が絶賛したのが、

スティック野菜のなかに放り込んだ愛知・天恵グループのベビー・コーン。

「これは美味い!」としきりに褒めてくれた。 

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この時期のおススメ、熊本・肥後あゆみの会さんの 「塩トマト」。 

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参加者からは、葉物を届いた状態で見たい、生のままで齧ってみたい

といった要望から、システムの問題点・課題などについて指摘いただく。

 

「キッズスクウェア」 という保育と託児施設の栄養士さんからは、

決めた献立と実際のメニュー(注文書) の野菜にどうしてもズレが発生すること

の悩みを打ち明けられる。

「でも、大地さんは放射能をきちっと測ってくれているので、

 全部大地さんのでやり切ろうとするんですけど、そこが大変で・・・」

う~ん、、、なかなか厳しい。

 

このシステムによるメリットは価格ではない。

物流の共同化により低炭素(CO削減)+コストダウンを目指すものではあるが、

" 安い "  ではなく  " 安心・安全 "  には相応のコストがかかることは

ご理解願わなければならない。

それをしっかりみんなで支えられる仕組みをつくり上げるためには、

それぞれのポジションで少しの知恵と工夫をお願いすることも、

求めなければならなくなる。

しかし日々追いまくられる  " 現場 "  にとって新たな苦労や面倒を背負うことは、

そう簡単に頷けるものではない。

それぞれに抱える事情というものもある。

 

少しでも意義を感じ取ってもらえるお店を増やしながら、

実際の利用 (=お客様への提案) へと結びつけていくために、

「個別事情を理解する」 ことと 「合理的システムの追求」 という

難問が目の前に立ちはだかっている。

 

できないことはできないんだけど、「できない」 と匙を投げず、

どうしたらどこまでできるか、考えてみよう。

楽しくも試練の 「試食会」 は、これからも続けられる。

 



2012年5月22日

「農水省からの通知」 てん末

 

2012年5月21日(月)、月暦 四月一日。

草木が青々と繁り天地に生気が満ちてくる 「小満(しょうまん)」 の日。

午前7時36分、

関東では173年ぶりという 金環日食 を拝む。 

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こんなふうに撮ったヤツもいる。 

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こちらの撮影は、農産チーム・市川泰仙くん。

 

世間では、この瞬間に人生をかけた勝負に出た人もいるようだ。

ま、問題はプロポーズから先の長い人生だからね、

とか野暮なことを言うのはやめて、どうぞ、おシアワセに。

 

ものぐさ人間は、少々のことでは 「見る」 という目的のためだけに

無理して遠方まで足を運ぶ、という行動はとらないので、

間違いなく一生に一度の 「体験」 のはずなのだが、

あっさりと見終えて会社に向かう。

もっと世界が暗くなって、ざわざわと不気味な風が吹いてきたりする

のかと思い込んでいたワタシ。。。  小学生以下?

 

こんな特別な日に、千葉・幕張の事務所までやって来られたのは、

農林水産省の方2名。

食品流通業界を回っているのだと言う。 正確には、

「食品での放射性物質の基準値を独自に設定し、自社測定を実施している団体」

を回っているようだ。

 

用向きは2点。

1.4月からの新基準は、十分な科学的根拠をもって設定したものなので、

  その旨ご理解いただきたい。

2.自主検査に当たっては、信頼できる分析に努めていただきたいこと。

 


これは4月20日付で、農林水産省産業局長から

「食品産業団体の長」 宛てに出された通知に基づいたもので、

これによれば、以下の2点が強調されている。

 

1.食品産業事業者の中には、食品中の放射性物質に係る自主検査を実施している

  事業者も見られるが、科学的に信頼できる分析結果を得るためには、別添の

  「信頼できる分析の要件」に沿った取り組みを行なっていることが必要である。

2.食品衛生法に基づく基準値は、コーデックス委員会の指標である

  年間1ミリシーベルトに合わせる一方、算定の際の一般食品の汚染割合を50%として、

  コーデックス委員会ガイドラインより厳しい前提が置かれ、

  さらに特別な配慮が必要な飲料水や乳児用食品等を区分して、

  長期的な観点から設定されたものですので、

  過剰な規制と消費段階での混乱を避けるため、自主検査においても

  食品衛生法の基準値(一般食品:100ベクレル、等) に基づいて判断するよう

  周知をお願いします。

 

この通知による波紋は、農水省担当部局にとってまったく想定外だったようで、

翌21日からマスコミはこぞって、国が流通サイドの 「自主基準」 を潰しにかかった、

といった調子で書き立てた。

大地を守る会にも各社から問い合わせがあり、

僕が対応せざるを得ない羽目に陥ったのだが、

そもそもこちらは21日の新聞記事で知ったばかりなので、

間の抜けた対応にならざるを得ない。

こんな感じ。

「大地さん、農水から来ましたか?」

「いえ、何にも。 通知はHPで見てますけど、ウチには届いてないので、

 対象外なんじゃないですか?」

「あれぇ、おかしいですね。 なんで大地さんに送られてないんですかね?」

「さあ、私に聞かれても・・・」

「大地さんに行ったら、騒ぎが大きくなるからですかね?」(どうゆう意味じゃ)

「さあ、どうでしょうかね」

「来たら、どうします? やっぱ返り討ち、ですよね?」(嬉しそうに言うな)

「さあ、どうでしょうかね」

「そもそもこの通知、どう思います?」

・・・と突っ込まれて、吐いたコメントがあちこちに掲載されてしまった。

 

 自主基準を槍玉に挙げられた民間側の怒りは収まらない。

 厳格な独自基準を設ける生鮮宅配大手の大地を守る会で放射能対策特命担当を

 務める戎谷徹也氏は 「国の検査体制に、消費者が相当な不信感を持っているから

 自主基準を設ける流れになった。 自主基準を控えろ言うなら、

 信頼されるものを作ってほしい」 と憤る。 - 『日経ビジネス』 5月7日号-

 

 新基準施行後すぐに 「勝手なものさしで測るな」 と 「指導」 されたことに

 反発は続出した。

 「国に押しつけられる筋合いのことなのか。 ~中略~

 指導の前にやるべきことがあるのではないか」 (大地を守る会、戎谷徹也) 

  - 朝日新聞 「AERA」 5月14日号-

 

などなど。 こんなにきつく言った覚えはないのだが (だいたい通知も貰ってないし)、

いろんな人から 「気合い入ってますねえ」 と冷やかされる始末。

 

ちょっと本気になったのはマスコミ取材がひと通り終わった数日後、

農水省から電話をもらってからだ。

いきなり 「文書が届いているかと思いますが・・・」 ときた。

「いや、何も受け取っておりませんが・・・」

「あれえ、、、〇〇〇〇(ライバル会社) さんには送ったんですけどね」

カチン!!!!

スイッチ入っちゃったよ、もう。

「どうせ、うちは弱小団体ですから」 とスネオ調から始める。

 

とまあ、そんな経過があって、来訪となったのだが、

いざ合えば、僕も紳士である。

・放射性物質には安全のしきい値がなく、流通サイドとしては消費者の健康に配慮して

 予防原則の観点を捨てるわけにはいかないこと。

・生産者サイドでも、できるだけ低減させる努力を必死でやっているワケで、

 その努力が報われるよう、信頼を得られるための水準を示していくのは当然のこと。 

・こういった自主基準の設定で消費が混乱しているという事実はない。

・消費の混乱を招いたのは、むしろ国の対応によるところが大きい。

 我々は消費者の期待を一身に受けて、検査体制を構築し、情報公開に踏み切り、

 生産者の除染対策を支援し、ここまで来たものである。

といった主旨でお話しをさせていただいた。

 

農水省の方も、けっして (報道されているような) 自主基準をどうこうしろと言うつもりは

まったくない、との説明。

「なら、なんでこんな報道先行になっちゃったんですかね」

「出し方もよくなかったかと反省しているところです」

 

この通知と報道は、

この一年で全国各地に設置された市民測定所の方々にまで動揺を与えた

こともお伝えした。

提示された 「要件」 は、ひとことで言って 「市民測定所潰し」 に見えましたよ。

「いや、そんなつもりは全くない。 あくまでも商売としてやっている方々へのお願いです」

という答えだった。

 

国はもっと民間を信用して、生産現場での対策や測定などで

連携することも考えるべきだ、と付け加えた。

規制するばかりと思われているから、こういうことになるんじゃないだろうか。

「私たちもそういう方向で考えていきたい」

とは言ってくれたが、さてどうだろうか。

 

説明に来られた方は実に物腰の柔らかい方で、

終始穏やかに話し合えたのだが、結局のところ、

今回の動きの背景と本音はこうである。

- 「検出されたものは販売しない」 と宣言している小売店があるが、

  あの表示は優良誤認を招いていると思われる。 指導されたし。

という要望がどこからか出されたのだろう。

農水省としても動かざるを得なかったということか。

だったら、いろいろ歩き回るより、直球勝負でやってもらいたい。

そのほうがずっと業界にインパクトを与えるというものです。

 

今日も新聞社の記者がやってきた。

ひと通り説明したけど、本件はもうあんまり報道価値はないように思う。

僕の怒りは、むしろ先日書いた 菅野正寿さんの訴え である。

こういう問題をこそ取材してもらいたい、と切に願う。

 



2012年5月20日

『フード・インク』 監督が語る、食の危機と希望

 

5月4日の山都での堰さらい。

作業終了後のお疲れさん会での  " 乾杯の雄姿をぜひ! "  と

社員の中島俊寛くんが写真を送ってくれたので、貼り付けてみる。

 

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「ベトコン体験」 でずぶ濡れになって、

合羽以外は、上から下まで下着まで、地元・遠藤金美さんからの借り物

(パンツはもらうことにした。 すっかり同志になった気分)。

下のズボンは、いわゆるモンペだが、地元の人はハカマと呼ぶ。

男はハカマ、女はモンペ、なんだとか。

「ハカマ、似合ってるよ!」 と言われてご機嫌、の一枚でした。

なんか疲れてる感じ。 えびす(蛭子) さんみたいだね。

 

さて、昨日(19日) は渋谷・表参道に出かけた。

「東京ウィメンズホール」 で開かれた 「生物多様性の日 記念イベント」。

 

 『フード・インク』 の監督が語るアメリカの食と農の現状

    ~今日のごはん選びが必ず変わります!~    

 

「フード・インク」 -食品株式会社といった意味。

食べ物が工業製品になってしまったことを表している。

" 安くて美味しい "  ファーストフードの秘密、生産の実態を裏側まで描いた衝撃的作品。

2008年、アメリカで公開され、

アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にもノミネートされた。

その監督、ロバート・ケナー氏を招いての上映と講演会。

主催は、食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク(食農市民ネット)。

 

「生物多様性の日」 とは、

1992年5月22日に 「生物の多様性に関する条約」(CBD) が採択されたことを記念して、

国際連合が制定した記念日、国際デーである。

毎年この日の前後に、世界中で植樹など色んな催しが行なわれている。

 

映画の解説は省く。

とにかく見るに耐えない家畜の飼育状況と、生産効率を追い続ける結果が、

人々の未来に何をもたらすのかを示唆している。

ブロッコリィよりも安いハンバーグによって、貧しい人ほど肥満と糖尿病に冒される。

抗生物質と耐性菌のいたちごっこでは、人が勝利することはない。

遺伝子組み換え作物は生物多様性を貧しくさせ、生存の安定性を衰えさせる。

耐性をもったスーパー雑草に対抗して組み込まれようとしているのは、

ベトナムの枯葉作戦で用いられた除草剤 2,4-D の成分である。

すべてはお金と企業の独占のためだ。

まだご覧になってない方は、「フードインク」公式サイトを是非。

 ⇒ http://www.cinemacafe.net/official/foodinc/

 

上映後、ロバート・ケナー監督の講演。

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この映画を撮るのに100社以上に取材を申し込んだが、ことごとく断られた

とロバート監督は語る。

食べ物の生産現場がすっかり企業秘密になってしまったわけだ。

世界のフードシステムがひと握りの多国籍企業によって支配されてきている。 

わずか4、50年で、1万年間続いてきた農業システムが根本から変容した。

 

このシステムを支えるのは画一化と単一化である。

アメリカの耕地の半分に大豆とトウモロコシが栽培され、

その大半が遺伝子組み換えされた種に替わってきている。

大量の除草剤が撒かれ、それも特定の除草剤(モンサント社のグリホサート剤、

商品名「ラウンドアップ」) であるがために、抵抗性を持ったスーパー雑草が生まれた。 

現在それに対抗しようとして新しい薬剤が開発されようとしている。

 

この世界は抗生物質も同様である。

抗生物質の80%が家畜に使われ、耐性菌が生まれ、結果として、

私たちの病気を治すことができなくなっている。

そのために2000億ドルという医療費が費やされている。

家畜だけでなく人の命までも犠牲にして、安い食肉生産が維持されている。

安い食品には、見えないコストがある。

実は高くついていることを知らなければならない。

(別なコストを食べる人たちが払わされている。)

 

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先月、アメリカで狂牛病が発生した。

アメリカでの検査はわずか1%なのに、そのなかで発生したのである。

日本が厳しい検査を要求することは、米国でたたかっている人々にとって力になる。

 

アメリカの食品の70%が、遺伝子組み換えされた大豆やコーンによって作られている。

(日本でも知らず知らず食べさせられている。)

しかし表示はされていない。

表示を要求する100万人の署名が集まり、

各地の州で住民のイニシアチブによって法案が提出されているが、

米政府は動かない。 多国籍企業の食糧戦略が勝っている。

遺伝子組み換え食品は、問題がないところに解決策を持ち込んだようなものだ。

日本の表示制度も心許ないが、表示義務を守り要求するることは、

日本のためにも世界のためにも重要なことである。

 

いま、多くの人が声を上げ始めている。

一人の力ではどうにもならないと私たちは思いがちだが、

思っている以上に力がある。

私たちは一日に3回、投票していることを忘れてはいけない。

オーガニック市場が拡大している事実には、企業も気がついている。

 

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映画 「フード・インク」 からのメッセージ。 

[食の安全のために私たちができること] 

 - 労働者や動物に優しい、環境を大事にする企業から買う。

 - スーパーに行ったら旬のものを買う。

 - 有機食品を買う。

 - ラベルを読んで成分を知る。

 - 地産食品を買う。

 - 農家の直販で買う。

 - 家庭菜園を楽しむ(たとえ小さくても)。

 - 家族みんなで料理を作り、家族そろって食べる。

 - 直販店でフードスタンプが使えるか確かめる。

 - 健康な給食を教育委員会に要求する。

 - 食品安全基準の強化を議会に求める。

 

システムを変えるチャンスが1日に3回ある

世界は変えられる ひと口ずつ

変革を心から求めよう

 

「フード・インク」 は、6月3日(日)、

渋谷・アップリンクで開催される 『TPP映画祭』 のなかでも上映されます。

上映後、戎谷がトークを担当します。

「フード・インク」 と 「TPP」 について・・・・・

宿題を指示するのは簡単だけどね。 いや、気が重い。

千葉・山武の田んぼで草取りをやってから、渋谷に走ることになっちゃった。

 

よろしかったら、お越しください。

案内はこちらから ⇒ http://www.uplink.co.jp:80/factory/log/004430.php

 



2012年5月17日

放射能連続講座(続報)・・・こわい予感

 

「大地を守る会の 放射能連続講座

第2回(7月7日) の会場が決定しました。

江戸川区船堀(ふなぼり) にある 「タワーホール船堀」 。

都営新宿線「船堀」駅下車、徒歩1分。

新宿からだと直通で約30分(快速21分)。

東京からは、JR総武線「馬喰町」(東京から5分)で

新宿線「馬喰横山」 に乗り換え、約15分(快速10分)。

展望台もあり、面白そうな場所です (行ったことないけど)。

 

第2回のテーマは、「正しい食事こそ最大の防護」。

講師は、元放射線医学総合研究所・内部被ばく評価室長、白石久二雄さん。

日本で、食品による内部被ばくを公的に研究した唯一の研究者。

高松(香川県) から駆けつけてくれます。

時間は、午後1時半~4時

 

第2回のコーディネーターは、鈴木奈央さんにお願いしました。

鈴木奈央さん。 元 「月刊 ソトコト」 編集者。

現在、NPO法人グリーンズ代表、株式会社ピオピオ代表。

あなたの暮らしと世界を変えるグッドアイディア・Webマガジン 「greennz.jp」 を発行。

ちなみに、男性です。

 

どうぞお早めにお申し込みください。

 

連続講座の概要は、大地を守る会HPでも逐次更新してまいります。

http://www.daichi-m.co.jp/cp/renzokukouza/

 

さて14日に、第1回の質疑応答タイムのコーディネーターをお願いした

" やまけん "  こと 山本謙治 さんと打ち合わせを行なったところ、

ヤマケンさん、けっこうノリノリで、

「オレも一消費者として、いっぱい聞きたいことあるんだよなあ。

 質疑の時間、もうちょっと取ったほうがいいと思うなあ」

ときた。

おかげで講師の上田昌文さん(NPO法人市民科学研究室 代表) に、

講演90分のところを80分で、とお願いする羽目に。

 

「大地に対する質問も、しちゃうかもね。

 エビちゃんも前に座っててもらおうかな」 と勝手に段取るヤマケン。

 

USTREAM中継で視聴者からの質問受付、

質疑応答では出過ぎの司会者  ・・・どうなっちゃうのでしょうか。

どうもおさまりそうにない、恐ろしい予感が涌いてきたのでした。

 

第1回は6月2日(土) 午後1時半~4時。

テーマは、「今後の影響をどう予測し、どう心構えをするか」。

会場は、杉並区立産業商工会館。

申し込み締め切りは18日という設定ですが、ねじ込めばOKかも。。。

念のため、お問い合わせください。

経営企画課広報担当 TEL:043-213-5860/メール:press@daichi.or.jp

 

それにしても、会場取りには かなり苦戦を強いられています。

都内 + 土曜の午後 + 150~200人の会場 + 少々の予算オーバーまで

 = だいたい 半年先まで ×

「原発とめよう会」 やCSR事務局にも手伝ってもらって、

第3回は、ようやく仮予約までこぎつけたところ。

 

先に会場を取ってから講師を探す、というケースがよくあるけど、

その事情もよく分かる、という今日この頃。

 



2012年5月14日

大地を守る会の 「稲作体験」、23回目の田植え

 

大地を守る会の連続イベントとしては、

もう長寿の仲間入りをしたと言っていい数字だね。

千葉県山武市での 「稲作体験」 が23回目の米づくりを迎えた。

 これを超えて更新中のイベントは、

「大地を守る東京集会」(36回)、岩手県山形村のべこツアー(今年で30周年)

しかない。

 

世の中の記録というのは、力で更新されるものだけではない。

持続させることで達成される記録というものがある。

こればっかりは、天才でも乗り越えられない。

誰でも意志があれば達成できる 「凡人たちの非凡なる記録」 である。

世代を継ぎながら、大地を守る会があり続ける限り、

「農」 に触れる入門編として進化しつつ続くことを願いたい。

なんたって水田稲作は、同じ場所で同じ作物を作り続けることができる

不滅の長寿(持続可能) 技術、文明の礎なんだから。

連綿と持続させてきたのは、凡にして非凡なる 「農」 の民たちである。

 

しかもこのイベントは、一日で終わるお祭りではない。

植えてしまったら収穫まで責任を持たなければならない。

素人のポイント体験とはいえ、半年間の 「生産活動」 でもあるのだ。

 

今年もまた同じ作業が始まった。 少しずつ人が入れ替わりながら。  

5月12日(土)、田植え前日、

スタッフたちは朝から現地に入って準備を進めてくれた。

僕が到着したのはお昼頃だったが、すでに

畑で植えた苗 (陸苗代-おかなわしろ-という) が抜かれて、

田んぼに移動されている。

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しっかりした、大きめの成苗(せいびょう) に育てるのがコツ。

多少バラつきもあるが、ま、これはしょうがない。

 

年々増える雑草対策が今年の課題である。

地主の佐藤秀雄さんは、

「今年は3度うなった(耕耘した) から、草は少ないはず」 と言ってくれる。

 

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田んぼは、子供も育ててくれる。

 


お昼を食べて午後、

紙マルチを田んぼの幅に合わせてカットする作業に入る。 

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終われば、この幅に合わせて田んぼに紐を張っておく。

これで準備完了。

 

明けて5月13日(日)。

天気に恵まれ、絶好の田植え日和となった。

今年もたくさんの親子が参加してくれた。 

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佐藤秀雄さんの挨拶から、「稲作体験2012」 のスタート。 

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右は、2年連続実行委員長の大熊俊之。

 

田植え指導は綿貫直樹さん。

30cm四方の線を引き、交差点に植える 「尺角植え」 で進める。

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いつも通り、畦に並んで一斉にスタート。

今年も始まったよ、という感慨が涌いてくる。

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真面目に植えてくれる子。

虫やカエル取りに夢中になる子。

泥におびえる子、3回目にしてやっと入れた子。

子どもにとっては、どれも貴重な  " 田んぼ体験 "  だ。 

 

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母も頑張ります。 

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紙マルチ区は、紙を敷きながら指で穴を空け、

後退しながら植えてゆく。 

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ここは植え直しがきかないので、慎重にやっていただく。

 

正午過ぎ、無事、13アールの田んぼに稲が植えられた。

さて、今年は何俵取れるだろうか。

去年は6俵半(玄米 390㎏) という成績。

草にやられたし、2回目の草取りの段階で出穂が始まっていたということは、

おそらく肥料切れだったのだと思われる。

「やっぱ、8俵は取りたいよね」 と、綿貫さんと肥料の相談をしたりする。

13アール=1反3畝(せ) - プロなら10俵は取るところだろうか。

 

田植え終了後の交流会。

いつも大人気でやめられなくなった 「陶(すえ) さんの、田んぼの生き物講座」。

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こちらも年々少しずつ進化している。

 

今回の初登場は、ミニ太陽光パネル。

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太陽の光と熱は、この星のすべてのエネルギーの源。

地球に降り注がれる太陽エネルギーの1万分の1を捕獲できれば、

地球上からエネルギー危機はなくなる、とまで言われる。

節約だけでなく、少しずつでも自給力を高める工夫も必要だ。

 

帰り間際、家族で記念の一枚。

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次は6月3日。

草取りも来てね、大事な作業なんだから。

 

解散前に、今年の実行委員会スタッフ集合。 

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秋の収穫まで漕ぎ着け、米を参加者に頒布して、地主に謝礼を払って、

気持ちよく終わるまで足抜けはできないので、ヨロシク、です。

 



2012年5月11日

菅野正寿、満身に怒りを込めて

 

里山交流会で、二本松市から招かれた菅野正寿(すげの・せいじ) さんは、

各地からやってきたボランティアたちに向かって、

いま福島の生産現場で進んでいる事態を、訴えるように語った。

 

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食品中の放射性物質に関する国の新基準値 (米は100Bq/㎏) が施行される

4月1日の2日前、3月29日付で農林水産省から1枚の通知が出された。

通知の書名は 「100Bq/㎏を超える23年産米の特別隔離対策について」。

 

そこにはこう書かれていた。 

「食品中の放射性物質の新基準値の水準(100Bq/㎏) を考慮し、

 暫定規制値(500Bq/㎏) を超える放射性セシウムの検出により

 出荷が制限された23年産米だけでなく、100Bq/㎏を超える23年産米についても、

 市場流通から隔離することとする。」

 

しかも、暫定規制値(500Bq) を超えた米だけでなく、

本調査と緊急調査で新基準値(100Bq) を超えた米(=暫定規制値未満)

が発生した地域の、すべての米が 「隔離対象」 とされたのである。

なんら説明もなく、3月末の一枚の通知によって。

これによって、菅野さんたちが必死の対策努力をもって生産し、

測定を行ない、ND(検出限界値以下) を確認した上で、

その旨表示して販売していたコメまでが、

自慢の直売所 「道の駅 ふくしま東和」 から一方的に撤去された。

 

「ND なのに、それまでも ・・・」

これでは 「安全な米作り」 に賭けてきた生産者が浮かばれない。

菅野さんの怒りは収まらない。

 

検査して合格した米までが、地区でひと括りにされて 「隔離」 された。

法律上のことで言えば、米については新基準後も経過措置が取られていて、

今年の10月までは暫定規制値が適用されることになっている。

今回の一方的措置は、経過措置を無視していることと、

基準内(しかもND) であることが確かめられているものまで販売を禁止するという、

二重の意味で国の方針に離反しているのではないだろうか。

生産者や販売者の自主的な考えに基づくものではない。

国からの指示、である。

菅野さんの憤りが伝播してきて、僕の腸(はらわた) も煮えてくる。


菅野さんの訴えは、これに留まらない。 

 

菅野さんの地域は 100~500Bq の間の米が検出された地区で、

国は条件つきで作付を認めていたものだが (「事前出荷制限区域」 と言われる)、

その指示がまた現場を無視した一方的通告なのである。 

 

国から当該区域の農家に指示されていたことは、

ア) 可能な範囲で反転耕や深耕等を行なうほか、

イ) 水田の土壌条件等に応じたカリ肥料や土壌改良資材の投入、

等により、

農地の除染や放射性物質の吸収抑制対策を講じていることを確認すること。

- ということだったのだが、それが県 - 市町村と降りてきた段階で、

ゼオライトを300㎏、ケイ酸カリ20㎏、ケイカリン50㎏(ともに10アール当たり)

投入せよ、という指示になった。

 

「ゼオライト300㎏なんて、科学的に実証されてない」 と菅野さんは言う。

いや、かなり多過ぎる、というのが僕の感想。

それに 「ゼオライト」 とひと言でいっても、実は数百種類あって、

セシウムの吸着能力も千差万別だと言われている。

その辺のデータは明らかにせず (業者への利益誘導になる、という言い分らしい)、

ただ300㎏撒け、とは乱暴すぎる。

カリ肥料についても、「投入適期がまったく考慮されてない」。

加えて、その作業記録を一筆(田んぼ1枚) ごとに台帳管理しろというお達し。

試験栽培も認められないという。

 

これらの指示が4月に入って押し付けられてきたものだから、

高齢者を中心に、今年の稲作を断念する人が増えているそうである。

「出荷段階で全袋検査する方針なんだから、

 事前から強制的に、しかも地域一括で制限をかけるとは、

 農家の主体性を奪う以外の何物でもない!」

菅野さんの怒りは、もっともだと思う。

 

思うに、国にとって、農家の主体性や自立は厄介なことなのだ。

恐れているのではないか、とすら思える。

そして、民間の力を活用するとか連携するという発想に乏しい。

ジェイラップが須賀川で取り組んだ対策事例などは、

民間力を活用すれば、食の安全に対する信頼回復が

もっと効果的かつ効率的に進むことを示唆している、

と思うのだけれど。

 

信用してないのかな、国民を。

それとも自己保身なのだろうか。

手続きひとつとっても、福島農家の意欲を逆なでするような手法では、

生産者の経営安定も消費者の信頼も得られない、とだけは言っておきたい。

 

先だって紹介した 『放射能に克つ、農の営み』(コモンズ刊) に続いて、

菅野さんが執筆されている本(17人による共著、戎谷も執筆)

が出版された。 

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『脱原発の大義 -地域破壊の歴史に終止符を-』

(農文協ブックレット、800円+税)

 

「有機農業がつくる、ふくしま再生への道」

というタイトルで、菅野さんはここでも熱く語っている。

 

   私たちはあらためて日本型食生活の大切さを教えられた。

   母なる大地と太陽の力を活かす、有機農業による生命力ある農畜産物が

   健康な体と健康な人間関係をつくると思うのだ。

 

「放射性物質を土中に埋葬して 農の営みを続ける」

菅野正寿、心魂を込めた宣言である。

 



2012年5月 9日

光(ひかる)さん と 未明(みはる)くん

 

想定外にしんどかった特命堰さらい体験と里山交流会が明けた翌5月4日、

会員さんもお誘いして、帰る前にチャルジョウ農場に立ち寄る。

 

農場主の 小川光さん は、地元の方々から耕作を依頼された西会津の農場に

主体を移していて、こちらは息子の未明(みはる) さんが仕切っている。

 

覗けば、オリジナル品種のトマト 「紅涙(こうるい)」 の定植に入っていた。  

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ここは標高400メートル。 まだ朝夕は肌寒い山間部。

水も引けない場所で、光さんは無潅水での有機栽培技術を確立させた。

冷涼な気候は病害虫が少なく有機栽培に向いている、と光さんは言う。

ただし生産性は低い、はずなのだが、そこからが光さんのスゴイところである。

徹底した省エネ・低コストと環境共生で 「ちゃんと食える」 農業を実践してきた。

 

ヨモギなどの野草を生やし、害虫の天敵を共生させる。

有機質肥料もあえて生で使い、作物の根が伸びてゆく先に施す(溝施肥)。

ハウスの資材はすべてリサイクル。 パイプも農家から譲り受けては修理して使う。

わき芽や側枝をあえて取らない多本仕立のトマト、メロン栽培。

光さんが編み出した技術は本にもなり ( 『トマト、メロンの自然流栽培』 )、

08年には農水省の 「現場創造型技術 『匠の技』」 の認定を受けた。

 

息子の未明さんも、負けてない。 

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一昨年、NPOふるさと回帰支援センターが実施している

「農村六起」 プロジェクトの第1回ビジネスコンペで見事受賞し、

「ふるさと起業家」 7名に選ばれた。

 

「農村六起」 とは、六次産業 (1次・2次・3次産業をミックスさせた事業) 化の

ビジネス・プランを持って地域活性化を目指そう、という意味。

未明さんは、会津在来種の雑穀や豆類を遊休地で栽培し、

加工・販売するプランを構想している。

しかも都会から若者たちを呼び込み、地域活性にもつなげたいと、

親父に負けず、立派な農村起業家として頭角を現してきている。

 

ちなみに未明(みはる) という名は、

童話作家・小川未明(みめい) から頂いたものである。

相当に影響を受けたようだ。

僕も小学生の時、誕生日に母親から童話集を買ってもらったことがある。

赤いろうそくと人魚、牛女(うしおんな)、野ばら、港についた黒んぼ、といった

ヒューマニズム溢れる作品群が強く心の底に残っている。

でも、、、名前にまでつけられるとちょっと、しんどいかも。。。

 

研修生に、ロシアから来た若者が加わっていた。

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有機農場での研修や農作業先を提供する (農場は宿と食事を提供する)

国際的ネットワーク組織 「ウーフ(WWOOF)」 の紹介でやってきた。

「次はヨルダンに行く計画」 だと言う。 

こういう若者が増えている。

昔なら、こんな生き方してると、ヒッピーと言われて親は泣いたものだが。。。 

ま、頑張ってくれたまえ。

いや、" 頑張る "  という言葉も、彼らには適切ではないのかもしれない。

 

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好きにすれば・・・・・て感じ? 

 

未明さんを代表として、浅見彰宏さんや新規就農者・研修生たちで結成された

「あいづ耕人会たべらんしょ」も4年目に入った。

夏には 「会津の若者たちの野菜セット」 が組まれる他、

在来種 「庄右衛門いんげん」 が

とくたろうさん 』(地方品種・自家採種品種のファンクラブ) に入る予定です。

乞うご期待。

 

さて、残してしまった話題がある。

里山交流会で聞かされた、菅野正寿さんの重たい報告。 

すみません、気を締め直して・・・ 続く。

 



2012年5月 7日

未来に残したい財産は、ここにある

 

未来に残したい財産は、ここにある。

特段珍しくもないけど、

それでも美しい (と感じるのはそれぞれの個人史によるようだけど)、

資源の宝庫、ニッポンの里山。

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僕のゴールデンウィークは、ここ会津・喜多方市山都町での

" 堰さらい "  ボランティアが年中行事となった。

毎年5月4日に実施される、地元総出での水路の清掃作業。

6年連続6回目の出場、ということで秘かに自分を褒める。

この作業の説明はもういいですかね。

毎年書いているので、昨年のブログ を見ていただくことで省略したい。

 

今年のボランティアは、過去最高の49名を数えた。

大地を守る会からは職員・会員合わせて13名 + 将来のボランティア後継者1人。

ついに二ケタ到達! 一大勢力と言われるまでになった。

苦節6年、ウウッ(泣)。。。

 

前夜祭で盛り上がった後、二つの公民館に分泊したボランティアたち。

我々が泊まったのは本木(もとき) 集落組。

朝みんなで朝食をつくって、食べて、お昼用のおにぎりを握って、片付けて、

7時半集合。

堰守りから挨拶があり、班分けが読み上げられる。 

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「頑張りましょうね、皆さん」 と余裕をかましていたら・・・

今年の作業は、ちょっと、、、違った。

通常の堰の土砂さらいとは別に 「特別班」 なるチーム編成が行なわれ、

大地を守る会から僕と須佐(農産チーム職員) が指名された。

「何をやるかと言うとですね・・・・」 と

何やら意味深な 「堰と里山を守る会」事務局長・大友治さん。

「崩れたところとか、倒木の片づけとか、詰まっていそうなトンネルの箇所とか・・・」

状況が想像できるだけに、一瞬うろたえ、唾を飲む。

しかし、、、ここでひるむワケにはいかない。

腰に手をやって、にっこり笑って、覚悟を決める。

 


というわけで、僕と須佐は地元の二人に連れられて、

別働隊として堰に分け入ることになった。

 

今年の冬は雪が多く、春が遅かった。

なだれ的に崩れた箇所がある。 倒木もでかいのが落ちてきている。

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そして・・・

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この溝に潜って土砂を掻き出す・・・ わけですか?

そう、らしい。

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隊長の遠藤金美(えんどう・かねみ) さんが先に入り、

土砂をバケツに汲んでリレーする、と言う。

2番手は、大地を守る会のプライドをかけて、、、行くしかない。

四つん這いではない、文字通り、腹這いで。 

体を上げることも向きを変えることもできない。

天井の隙間から冷たい水がボタボタと落ちてくる。

あんまり想像してもらいたくないけど、

水というやつは、どんなに細かい隙間にもしみ込んでくるのである。

あっという間に全身ずぶ濡れ状態。

それでも、家庭菜園用のスコップで土砂を浚ってはバケツに汲み、

ヤモリのように水の中を這いながら、前進-後退を繰り返す。

 

中は当然暗い。

入口から懐中電灯を照らしてもらいながら作業を進める。

闇の先で金美さんの声がした。 「こりゃ、ベトコンだぁ!」

圧倒的戦力を誇るアメリカ軍に対し、地下トンネルを張り巡らせて

ゲリラ戦で対抗した 「南ベトナム解放戦線」。 米軍は彼らをベトコンと呼んで恐れた。

ベトコンと聞いて、アドレナリンが吹き出してきたか。 

負けるわけさ、いがね! ってなもんで。

しかし、体はどんどん冷えてきて、やがて震え始める。

 

間もなく、ここは作業ポイントではなかった、という落ちがつくのだが、

ま、それはともかく、

金美さんが気遣ってくれて、お昼前に中断して里に下り、

金美さん宅でシャワーを借り、

着替えを一式用意してもらって (パンツと股引はもらうことにした)、

お昼を食べて、午後再び山に入るという、

6年目にして戴いた、貴重な 「ベトコン体験」 であった。

 

やっぱりボランティアでは本当のご苦労は分からないですね、と聞けば、

「いやあ、オレも入ったの、初めてだあ」 と金美さんも笑ってくれる。

 

足手まといになったのか、力になれたのか、分からない。

でも、この堰にいっそうの愛着が涌いたのは確かだ。

水よ、巡ってくれ、この里に。

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作業終了後、例によって早稲谷の公民館前で打ち上げ。

気を使ってくれたのか、乾杯の音頭に指名された。

 

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風呂に入って、夜は 「里山交流会」。

今年の勉強会には、二本松市東和の菅野正寿さんが呼ばれていた。 

 

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菅野さんの話には意外な報告があって、

ちょっと重たいので次回に回すとして、

ここでまったく想定外の人に会ったので、触れておきたい。

 

人気長寿漫画 『美味しんぼ』 の原作者、雁屋哲さんだ。

 

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雁屋さん一行は今、

福島を取材して回っている。

 

実は昨年暮れ、雁屋さんから

知り合いの会津農家の米を売ってくれないかと依頼されたのだが、

僕らも契約農家の米を売るのに手一杯であることを伝えた経緯がある。

雁屋さん推薦の米ですら・・・ですか、と言いながら。

 

みんな苦労しながら、突破口を目指している。

僕らは近いうちに、ひとつの出口で出会うことになるだろう。

出会わなければならない。

頑張りましょう。

一緒に作業すればよかったのに- という台詞はさすがに抑えた。

 

すっかり地元のキーマンになった浅見彰宏さん。

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気がつけば、

チャルジョウ農場、小川光さんも登場。

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アコーディオンを奏で、女子に取り囲まれている。

息子の未明(みはる) さん、曰く。

「こういうところでのオヤジは、すごいんですよ。 かないません。」

 

「種蒔人基金」 で用意したお酒 「種蒔人」 24本は、完売で足りないくらい。

自腹で確保していた6本も供出して、里山交流会は熱く終了した。

 



2012年5月 6日

すべての原発が止まった「子どもの日」

 

昨夜、2012年5月5日午後11時3分、泊(3号機) が止まりました。 

日本で稼働していた原発すべてが停止した、記念すべき 「子どもの日」 。

にくい計らいですね。。。てことはないか。

 

このまま再稼働がなければ、

二度とフクシマのような大惨事は起きないですむ(だろう)、、、日本では。

これ以上悪くなることはない、と思いたい。

しかし厖大な核廃棄物の管理は未来永劫にわたって続くわけで、

そのコストは子々孫々に負わせ続けなければならない。

ただひたすら厳重に隔離させるためのコスト。

不条理なことだと思う。。。

仮に一部再稼働させても、将来へのツケは増すばかりである。

いったい誰のための再稼働なのだろうか。

 

「電力不足」 で危機を煽る方々には、

「節電で乗り越えられるならOKですか?」 と問い直したい。

「乗り越えられるならいいですけど」 と答えるなら、提案がある。

全国の自動販売機を停止してはどうだろうか。

特に煙草の自販機は不要である。

利用者だって、ないものと思えば、少々の工夫で何とかなるだろう。

何とかしようぜ! コンビニだってあるんだからさ。

みんなで知恵と工夫を出し合い、また企業なら

次代に向けての技術革新・市場創出のチャンスと捉えるべきだ。

 

とにかく、廃炉に向けての道のりは、これからである。

福島第1原発の廃炉完了には、

僕には確かめることすらあやうい時間 (30年以上) が必要とされている。

せめて 「持続可能な社会」 の夜明けを見とどけ、確信をもって眠りたいものだ。

頑張らないとね。

「子どもの日」 がいつも希望の笑顔で輝いていられるように。

 

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加藤登紀子さんが提唱した 「緑の鯉のぼり」。

僕の机にも女子がさりげなく立ててくれて、眺めては自らを励ます。

 

未来に残したい財産は、ここにある。 

どこにでもある(あった、と言うべきか)、しかも美しい、日本の里山風景。

資源の宝庫、でもある。

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・・・・・という流れで、会津・堰さらいの報告へと進みたいのだけど、

昨日遅くに帰ってきて、今日は一日遅れの 「子どもの日」 の感慨に

どっぷり浸かってしまった。

レポートは明日に回して、あちこち張った筋肉と腰をさすりながら

このまま思いにふけることを、お許し願いたい。

 


 



2012年5月 2日

地球大学 Ver.3 - テーマは 「食」

 

先日予告した

『 大地を守る会の 放射能連続講座

  ~食品と放射能:毎日の安心のために~ 』 

第6回目の講師が決定しました。

(独)国立病院機構・北海道がんセンター院長、西尾正道さん。

専門家の間でも決着できないテーマ、「低線量内部被曝」 の問題を

解析していただきます。

日程は10月6日(土)、午後1時半~4時。

場所はこれから探します(都内を予定)。

 

もう一つの予告を。

久しぶりに竹村真一さん(京都造形芸術大学教授、文化人類学) から、

丸の内地球環境倶楽部 「地球大学アドバンス」 へのお呼びがかかりました。

 

『地球大学アドバンス』

地球環境の様々な問題や解決法についてトータルに学び、

21世紀の新たな地球観を提示するセミナー。

竹村さんがモデレーターとなって、毎回多彩なゲストを招いて行なわれる。

2006年、大手町ビルにあった大手町カフェで 「地球大学」 がスタートして7年。

2008年に新丸ビル 「エコッツェリア」 に移って、

その間開催されたセミナーは50回に到達した。

僕は2009年の10月、

『 日本の 「食」 をどうするか? 』 というテーマを与えられ、

主に水田という機能が持っているたくさんの価値についてお話しさせていただいた。

『地球大学講義録 -3.11後のソーシャルデザイン』 という本に収録されています。)

 

そして今年度の地球大学のテーマは、改めて 「食」 に焦点を当てたい、

というのが竹村さんの狙いである。

「食」 の後ろ側にある地球環境問題や日本の課題について掘り下げ、

解決に結びつける具体的なアクションの創出につなげたい。

「地球大学」 は言わば新たなバージョン3 として、

これまでのお勉強から実践へと進化させるための構想を描くものにしたい、と。

 

そこで去る4月16日、

「地球大学」 2012年度開校にあたってのキックオフ・ミーティングが開かれ、

30名ほどの関係者が呼ばれたのだった。

 


竹村さんから、いろんな視点での 「食と環境」 の課題と方向性が示され、

丸の内をいかにグリーンな街にするか (しなければならない)、

という視点に立って 「食のリデザイン」 を構想していきたいと、

例によって竹村ワールドのプレゼンテーションが進む。

その1回目として、まずはいま大丸有エリアで進み始めている 

" 食の共同調達 "  実験、「大丸有つながる食プロジェクト」 構想を取り上げたい。

そこでいきなり僕の目を見て、「戎谷さん、よろしく」 ・・・・・ときた。

そうか、呼んだのはそういうわけだったのね、、、くそ! やられた。

他の方も同様で、もう皆で笑うしかない。

 

というわけで今年度第1回は、

5月28日(月) 18:30~ 「エコッツェリア」 にて開催となりました。

近々にも丸の内地球環境倶楽部の HP で告知されると思いますので、

興味ある方は是非。

 

会議終了後は、参加者同士の交流会がセッティングされた。

食材は、我が 「Daichi&keats (ダイチ&キーツ)」 から用意させていただいた。

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お店の台所事情はまだ一杯一杯の状態なのだが、

無理に頼みこんで、用意してもらった。

ま、やるとなったら、しっかり気合い入れて作ってくれたようで。

 

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用意してもらったメニューは、以下の通り。

★ D&K野菜デリ&サラダ盛り合わせ

★ 野菜と雑穀のサラダ

★ 雑穀入りチキンから揚、エコシュリンプフライ、新じゃがポテトフライ

★ 丹沢ハム工房の無添加ハムソーセージ盛り合わせ

★ 野菜サンド、雑穀おにぎり

 

どれも、生産者の顔が見える食材たちです。

オリジナルの人参ドレッシングもお試しください。

-と、慣れない料理紹介をして、食べていただく。

 

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どれも大好評で、残った料理はなんと 「エコッツェリア」 のスタッフたちの

翌日のお昼のともに供された、とのこと。

後日伺った際に 「それでも美味しかったんですよ、感激でした」 と言われた時は、

褒められるのに慣れてない僕は、ただ照れるのみで・・・(なぜお前が照れる?)

「Daichi & keats」 の皆さん、ありがとう。 お陰でメンツ立ちました。

 

「地球大学アドバンス」 2012年度は、

「食」 の理念からアクションへ。

僕たちは何を食べるのか

 - その向こうにある価値をどこまで共有することができるか。

実験を実験で終わらせないための、" つなげる力 " が問われる年になる。

 



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