2012年5月31日

社会資本としてのスローフード

 

5月28日(月) 18時半。

月に一回、勤め帰りの男女が丸の内に集まって

様々な視点から地球環境問題を学び合う、

丸の内地球環境倶楽部主催による 「地球大学アドバンス」。

先般報告 したように、今年度のテーマは 「食」。

「 丸の内 『食の大学』 」 と銘うって今期プログラムが開校した。

 

第1回は、「ソーシャルキャピタル(社会資本) としてのスローフード」。

ゲストに呼ばれたのが、スローフードジャパン 副会長・石田雅芳さん、と私。

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1986年、ファーストフードが世界を席巻する流れに対抗して、

イタリアで生まれた食の運動。

50人でスタートした運動が世界中に広がり、今では132ヶ国10万人の会員を有する。

日本では全国に10ブロック・45の支部があり、会員数は1,600人。

 

「 この運動は、世界じゅうの生物多様性を守る人たちによって支えられています。

 この運動に参加する生産者は、" 生物多様性のヒーロー "  たちと位置づけられます」

と語る、石田雅芳さん。

 


スローフードは、地域の伝統文化を尊重しながら、生活の質の向上を目指す世界運動。

そのキーワードは、

ひとつに 「おいしい (good)」 -地域で守られてきた味。

ふたつに 「きれい (clean)」 -環境を破壊しない、人間の健康を傷つけない食。

みっつに 「ただしい (fair)」 -生産者に対しての公正な評価。

つまり、環境によく、持続性のある生産方式で経営が成り立ち、

しかも美味しくなければならない、ということ。

 

私たちは美味しいものを食べる権利がある。

食べ物がまずくなった理由は、スピードが速まったから。

お皿の上には、世界の事象がつまっている。。。

 

石田さんの話を受けて、司会・進行役の竹村真一さんが整理する。

地球のサスティナビリティ(持続可能性) を考える際に、

「食」 は大きなキーワードになる。

地球の肺といわれるアマゾンの60%が2030年までに消失すると言われ、

その背景に現在の 「食」 の姿がある。

食べ物は誰が作っていて、どういうふうに運ばれていて、どう捨てられているか。

この  " 見えなくなった "  生産から消費へと至る関係を修復し、

リデザイン(再設計) する必要がある。

「スローフード」 はその意味でソーシャルキャピタル(社会資本) 創生の戦略である。

 

次に指名を受けた大地を守る会の戎谷氏は、少々縮こまりながら

大丸有エリアで開始した 「つながる食プロジェクト」 実験のコンセプトとねらいを

語らせていただく。

設定した4つの価値(基準) -「地産地消」 「安全で安心な食」 

「地域環境に配慮した取り組みがある」 「伝統文化・地域文化を大切にする食べ物」、

これらははからずもスローフードのコンセプトでもあったわけだ。

この価値で生産と消費をつなぎ、この街に拡げる。

そのためにシェフたちがつながって、その食材の個性を引き出し、表現していただく。

流通もシェアしながら、低炭素物流を目指す。

さて、どこまで成果を  " 見える化 "  できるか --現実の課題はなかなかに厳しく、

まだまだ何かが足りないという模索にあります、という調子で。

 

ゲストによるプレゼンに続いて用意されたのは、

ワールドカフェ方式による参加者同士の対話。

立場の異なる人たちが小さな輪に分かれ、カフェにいるような気分で

共通のテーマについて話し合い、アイデアをまとめていくという手法。

 

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テーブルの真ん中には白い模造紙と何色かのペン。

メンバーは自由に語りながら、大切だと思った言葉やキーワードを書き出してゆく。 

 

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ラウンド1では、今日の話から学んだこと、大切だと思ったことなどを話し合い、

ラウンド2では、スローフードを阻害するものを探り、

ラウンド3では、「ではこれからどう実践するか」 を、キャッチフレーズでまとめる。

ラウンドごとにメンバーチェンジしながら、短時間で具体的提案に昇華させてゆく。 

 

皆さん、積極的に会話が進んでいる。 スゴイね。

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最後に発表。 

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自分で作って、自分で食べて・・・

意識すること・・・

知識と体験。 ギャップを埋めるコーディネーターを育てる・・・

食べ物を愛してあげる・・・

といった感じで発表が繰り広げられる。

 

最後に講評を求められた。

僕の感想は、「食べものに含まれる外部経済にアプローチしてほしい」 である。

食べ物は安くなったが、別な形で負担(出費) させられていること。

家計に占める食費は下がったが医療費は上がっている、というように。

お米を食べることで生物多様性を育む環境が守られることの意味、など。

米を外国産に変えたら、守る装置である 「田んぼ」 が失われる。

米(食べ物) は輸入できても、田んぼ(環境) は輸入できない。

スローフード運動の言う  " ただしい食 "  が支持されたなら、

その食べ物の値段は高い・安いではなく、" まっとうな値段 "  になるはず。

生産に対してまっとうな値段が払われることで、環境は守られる。

 

竹村さんのまとめが、にくい。

私たちの手で『真の価値.ドットコム』 をスタートさせませんか。

 

こんな殺し文句でまた一年、

タダ(正確には持ち出し) で付き合うことになるのだ。

 



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