2012年7月 8日

ただしい食事こそ最大の防護

 

来週は行かなくちゃ・・・と言いながら、

結局仕事が終わらず、6日(金)の首相官邸前も行かずじまい。

7時半頃、大学時代の仲間からのコールがケータイに入る。

「久しぶりに会えるかと思って電話したのに・・・」

帰りに東京駅あたりで一杯やろうか、というお誘いである。

残念。

6日のデモの数は、主催者発表15万人。 前週より5万人減った。

逆に警察発表は2万1千人。 4千人増えている。

不思議だ。。。

 

で、昨日は 「大地を守る会の 放射能連続講座」 第2回。 

『ただしい食事こそ最大の防護』 と題して、

元放射線医学総合研究所 緊急被ばく医療研究センター・内部被ばく評価室長、

白石久二雄さんの講演。

 

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運営責任者となると、なかなか講演に集中できない。

ここは白石さんが用意してくれたペーパーをもとに、

ポイントと思われる点を抽出しておきたい。

 

まずは3.11前の、つまり原発事故以前のデータを押えておきたい。

日本人は一人当たり平均、年間 3.75mSv(ミリシーベルト) の被ばくを受けている

(正確には、「受けていた」)。

大きいのが医療被ばくで2.25mSv。 次いで自然放射線からの被ばくが1.48。

他にフォールアウト(降下物) による被ばくや航空機利用によるもの、

職業被ばくなどがあるが、上記の二つでほぼ100%(3.73mSv) である。

 

自然放射線からの被ばく(1.48mSv) は、外部被ばくと内部被ばくの総計であり、

ここで問題とする食事による内部被ばく(経口摂取量) は 0.41mSv である。

これをベクレル(Bq) に換算し直すと、135Bq になる。

その内訳はカリウム-40が半分を占めていて、以下、炭素-14、トリチウム、

ルビジウム、ポロニウム、鉛・・・と続く。

人工放射性核種で 0.1Bq を超えるものはなかった。

 

これに事故後、人工放射性核種による内部被ばくが追加されたことになる。

(比較して語る人がいるが、ここは足し算で考えなければならない。)

それはできるだけ避けるべきものである。

どうしても避けられない場合は、" できるだけ "  影響を低減化させたい。

最近の日常食調査を見ると、実際に口にする放射性セシウムは、

被災地周辺で1日あたり1桁のベクレル数 (食材により一部の人は2桁) であり、

1960年代の核実験に伴うフォールアウトの多かった時と同等レベルである。

ただし調査件数はまだ少ない。 調査数と頻度を高める必要がある。

 

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内部被ばくには、呼吸と食事による経口摂取がある。

呼吸については、高レベルの付近に近づかない (できるだけ遠ざかる)、

マスクをするなどで体内への取り込みを防止する。

食物摂取に関しては、栄養学と放射線防護学に基づく基本原則から、

以下の5項目を心がけることが大切である。

 

1.可能な限り放射性物質の含有量の低いものを摂取する。

2.調理、食品加工法により食事中の放射性物質を減らす。

3.生体内での放射性物質の吸収と蓄積を制限する。

4.生体内から放射性物質の排泄を促進する。

5.被ばくに対する生体の抵抗力(免疫力)を強化する。

 

そこで、家庭での除去法、洗浄や料理方法の工夫、となる。

水洗い、皮をむく、浸す・茹でる・煮る、塩や酢の利用、

表面積を広くする(細かく切る)、

前処理なしでの油いためや天ぷらは避ける(中に閉じ込めてしまう)、など。

これらによって10~80%の除去が可能である。

白石さんによれば、これは1960年代、

核実験が頻繁に行なわれていた時代に調査研究されたことだと言う。

 

ヨウ素131 など半減期の短い核種対策では、加工保存も有効である。

また大部分の放射性核種は水溶性である。

牛乳であれば、乳清と脂肪分を分離して

バター、チーズにして食べればほとんど防ぐことができる。

汚染牛だと言って、せっかく搾乳した生乳を捨てる必要はなかったのではないか。

 

放射性物質の体内での吸収をできるだけ下げるために、

ヨウ素(I)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)などのミネラル類と

食物繊維の摂取が推奨される。

放射性セシウムの吸収阻害、排泄促進にはカリウムとペクチンが有効。

放射性ストロンチウムには、カルシウムや

海草類に含まれる食物繊維の1種、アルギン酸塩が良い。

ただしこれらの食品群には放出されたセシウムやストロンチウム等の放射性物質も

同時に濃縮されやすいので食材の選択には注意が必要である。

(測定して確認できたものを摂る、ということ。)

 

平素からバランスのとれた食事を摂り、体の免疫力を高めることが重要である。

海草類や発酵食品を主とした伝統食である  " 和食 "  の見直しを提案したい。

詳しくは拙著 (『福島原発事故 放射能と栄養』 等) を参考にされたし。

 

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放射線防護の専門家の一人として、次の3点を特に提案したい。

1.定期的な陰膳法の実施。

2.全品検査の早期体制整備と商品のベクレル表示。

3.被災住民の健康診断の継続的実施。

 

一般の人々には、日頃から放射能の知識を蓄えることが必要である。

安全神話によって教育現場での放射能の指導は皆無に近い。

また一見、食生活には関係ないように見える

" アメーバ汚染 "  と  " 都市濃縮 "  が国内で進行している。

廃材、煤煙、焼却灰、建築材料など人の経済活動によっての汚染拡大は

最小限にとどめるべきである。

 

白石さんの講演後、コーディネーターの鈴木菜央さんの進行によって、

「簡単なワークショップをやりながら進めましょう」 となる。

すみません。 後半は後日。

 


Comment:

今回の事故が人災だ、と位置づけていますが全くその通りだと思います。
こういう知識をあらかじめ周知しておけば、混乱もパニックも防げただろうし、不安をあおることもなかったでしょうし、風評被害も今より少なかったことでしょう。
逃げるにしたって、風向きやきちんとした情報があったなら、後悔も被爆もいまよりずっと少なくて済んだことでしょう。
国はその辺の反省は全くなしに、また原発を「とりあえず」といいつつ動かしています。
動かさないと国が滅ぶといわんばかりに。
政府が目指す『国』と私たちが住んでいる国はどうやら別の国のことのようです。

from "てん" at 2012年7月16日 16:30

見ている「国」が違うと、守るべき対象も違ってきますね。「国民」ではなくて「経済」、国民の「健康」より「お金」が回ること、のようです。これは民主主義ではありません。
経済にしたって、「未来への投資」ではなく、既存の利益構造を守ることに執着しています。これでは国際競争でも置いてかれてしまいそうです。
子どもたちの心身も荒れてきそうで、心配でなりません。

from "戎谷徹也" at 2012年7月28日 17:33

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