2012年7月26日

連続講座第3回 -測定を市民の手に(Ⅱ)

 

早野さんが心配して、私費を投入してまで取り組んだ

食品による内部被ばくの実相の解明。 

いろんなデータから見えてきたことは、

「食品由来の内部被ばくのリスクは、当初想定していたよりは、かなり低い」

ということだった。 

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南相馬でのWBC(ホールボディカウンター) 検査結果は、

フクシマとチェルノブイリでは内部被ばくの時間的変化が異なることを示している。

チェルノブイリでは影響が長く続いたが、

南相馬では、わりと短期間のうちに急激に低下した。

「南相馬の方々は注意して食べている」

「福島県民は今、ほとんどセシウムを食べていない」

と早野さんは評価する。

 


ただし油断は禁物である。

実態をちゃんと把握して、精神的不安を少なくし、現実に対応していくためにも、

検査・測定は継続させる必要がある。

たとえば目の前に 2000Bq/body という人が現われたときに、

それが下がりつつある途中なのか、上昇傾向にあるのか、あるいは変わらないのか、

どのシナリオによるのかを掴まなければならない。

下がってきているのなら、このまま続けよう。

上がっているなら、あるいは横ばいなら、汚染源を突き止めなければならない。

とにかく、1回では分からない。

測定を継続することによって実相が見えてくる。

 

尿検査も有効である。

ただしセシウムが体内を回る速さは年齢によって違う。

子どもは早く排出される。

(5歳児の生物学的半減期は30日と言われている。)

したがって食事の影響を正確に突き止めるには、親子で測るほうがよい。

 

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現在、リスクが高いと思われるもののひとつは、未検査の農産物。

検査対象に乗っからない自家保有米(縁故米) や家庭菜園などだ。

できれば一度測っておくことを、早野さんは勧める。

また主食として摂取量の多い米は、基準値未満でも比較的高い濃度のものが

出回っている可能性がある。

産地が分かる、測定結果が分かるところから入手した方が無難ではある。

 

また食品で検出されてないといっても、土が汚染されてないワケではない。

イノシシの肉からは高い値が検出されている。

「イノシシと同じような食生活をしてはいけません。」

 

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実は原発事故以前でも、私たちはセシウムを摂取していた。

このことは、知っておいたほうがいい。

1960年代の核実験による影響で、その頃の日本人は1日平均 4Bq (年間1500Bq)

程度の内部被ばくを受けていた。 これは陰膳検査によるデータである。

3.11の直前では、0.1Bq程度だが、ゼロではなかった。

 

それら過去のデータから、福井県立大学の岡先生という方が、

内部被ばく量と余命短縮時間との関連を計算している。

 1Bq(ベクレル)=1秒 

あくまでも統計上の平均値で、リスクを考える参考程度のものだと、

早野さんは慎重に補足するのだが、

こういう数値はインパクトが強く、誤解を招きやすい。

みんなが等しく寿命が縮まるものではなくて、

子どものうちに影響が現われる子もいれば、天寿を全うする大人もいる、

そんななかで私たちはすべて個々のケースを生きているワケだから、

こういう時の平均値とはマジックのようなものだ。

まあ雑学程度に留めておこう。

しかし、どうやって計算したんだろう・・・

 

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さて、大地を守る会がモニターを募って実施した陰膳検査

『放射能測定 おうちごはん』 についても、

早野さんはチェックしてくれていて、以下のようなコメントとなった。

 

  結果はすべてND。 ほぼ予想通りである。

  残念だったのは、福島産の食材を食べている人のデータがなかったこと。

  ぜひ 「福島&北関東の農家がんばろうセット」 を毎週食べている人の

  サンプルが欲しかった。

  食材データを見ると、九州のものが多く、外国産が続いている、という傾向。

  産地に気を使っていることが見てとれる。

   (モニターに手を上げる人たちなので、特にそうなったものと思われる。

    ちなみにモニターは大地を守る会の会員とは限らない。)

 

  日本人は、特に都会の人は、実にいろんなものを食べている。

  その地域のものを毎日食べている、という人はほとんどいない。

  それがチェルノブイリのデータと違ってくる要因でもある。

  これは不幸中の幸いかも。

 

内部被ばくのリスクは、当初思っていたより低い。

そういうデータがそろいつつある。

普通の消費者が、どんどん内部被ばくしているという状況ではない。

しかし油断は禁物である。

WBCや食品検査は継続してやらなければならない。

(大地を守る会の陰膳検査も、継続データが欲しい。)

 

食品による内部被ばくが意外と低い結果が出てきている要因には、

様々な幸運があった。

牛乳や牛肉の汚染に対して取った規制は一定の効果があったし、

土の力にも救われている。

そして何より、生産者が実によく勉強し、努力されていたことである。

引き続き、頑張りましょう。

 

第2部の津田大介さんとのセッションは、次に。

続く。

 


Comment:

よかった!と素直に喜びたい。
本当に皆さん苦労されていると思います。
先生のおっしゃるとおり、福島の皆さんの食生活がまだ気になるところですが、思ったよりは食べ物からの被爆は少ない(チェルノブイリとは耕作地の条件が大きく違ったことがプラスに働いたんですね!)
のだろうと思っていました。
そうはいっても、まだまだ線量の高い地域もあって、気は抜けませんが、一緒に頑張って生きたいです!

from "てん" at 2012年7月29日 20:50

てんさん

有り難うございます。引き続き、粘り強く、ですね。
陰膳検査を続けるのも、それはそれで業務の負荷を誰かに負わせなければなりません。けっこう苦慮しています。でも…データはまだしばらく積み上げていきたい。悩ましいところです。

from "戎谷徹也" at 2012年7月31日 19:35

なんでも試してみるのが好きなので、震災以後、比嘉照夫先生のEM菌や飯山一郎さんの乳酸菌を試しています。御陰様で風邪をひきにくくなりましたし、咳き込まなくなりました。放射能対策としても微生物はとても良いそうです。

from "ななし" at 2012年8月 3日 11:20

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