2012年7月28日

連続講座第3回 -測定を市民の手に(Ⅲ)

 

連続講座・第3回の後半1時間は、

コーディネーター・津田大介さんの進行で質問をさばいてもらった。

たくさんの質問がペーパーで上がってきたが、

そこはさすが津田さんである。

内容を読み、仕分けし、

パソコンに入ってくるツイッターからの質問や意見もチェックしながら、

テンポよく早野さんに投げていく。

 

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ベクレル(Bq) からシーベルト(Sv) への変換には様々な意見があって、

リスクを小さく見せようとしているのではないか。

- 放射線によるリスクを考える際、人によって様々な流儀があって、

  シーベルトは使わないという学者もいる。

  誰でも一致する目安としては、誰の体にもカリウム40という核種が1㎏あたり

  50~60Bqくらい存在していて、それより多いかどうかで見ればよいのではないかと、

  自分は考えている。

 

1Bq=1秒(余命が短縮される) という平均化に意味があるのか。

- たしかに、ガンになった人には 「1秒」 という数字は意味がない。

  安全性については 「しきい値はない」 というのが定説であるが、

  1ベクレル以下の水準までリスクを考えることが適切とは思えない。

  ビートルズ世代が受けた内部被ばくの線量を示した際に、

  日本人にガンが増えたのは放射能のせいだと理解されたことがあった。

  しかし実際に、放射能によってガンになったと特定することは不可能であって、

  たくさんの人の死亡年齢と被ばく線量から平均化させたらこうなったという、

  あくまでもリスク度を考える際の一つのモノサシとして紹介したものである。

 


食事の丸ごと検査では薄まってしまって、原因が突き止められないのでは。

- 1Bq くらいのレベルでは由来の特定は不可能だろう。

  当初はもっと高いレベルを想定していて、学校給食なら

  食材が一定期間保存されるので追跡できると考えた。 

  積算してどれくらい食べたかのリスクを判断する材料にはなる。

 

5日間丸ごとより、一日ごとのほうが特定しやすいのでは。

- 測定費用が5倍かかる、という現実的な問題が大きい。

  微量な数値で残っているとすれば、まとめて測る方が出やすい。

 

魚が不安だが。

- 魚は難しい問題だ。 淡水魚や底魚は出やすいとかのデータは出ているが、

  まだまだ継続的な測定が必要である。

  福島で漁業が再開され始めているが、測って結果を公表して出荷することで

  判断材料は得られる。

  詳しくは次回、勝川先生に聞いてください。

 

チェルノブイリと福島の違いはどこからくるのか。

- 流通と食生活の多様性が大きい。

  生産者も実はスーパーなどでいろいろ買って食べている。

  チェルノブイリでは地域の生産物への依存度が高かった。

  また日本では牛乳や牛肉から出るとすぐに餌まで替えるなど、

  生産現場の対応も早かった。

 

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結局は、大地を守る会以外のものも大丈夫ということか。

- データからはどれもかなり低いレベルになっている、とは言える。

  ただし油断は禁物。 引き続きたくさんの、いろんな食材を測り続けてほしい。

  その結果をちゃんと確かめられるところが大地を守る会のメリットではないか。

 

産地偽装がコワい。

- 偽装があったとしても、

  (こと放射能に関しては) そんなに高いものが出回ることはないと思う。 

 

今も放射能は放出されているのでは。

- 原発由来で濃度が上がっているというデータは、今のところない。

  ただし降下物が風で舞うということはあるので気をつけたい。

 

子どものほうがセシウムの排出が早い、ということだが。

- 留まらないからリスクが低い、というワケではない。

  食べた分量が同じなら、子どものほうが Sv は高くなる。

 

生活習慣で気をつけた方がいいことは何か。

- それは専門外。 ただ被災地でメタボや糖尿病が増えている、と言われている。

  リスクは放射能だけではない。

  適度に屋外で運動するとかも大事なことではないか。

  (食生活のバランスが壊れていることも原因の一つではないか、と思う。)

  

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活性酸素が悪さをする、ということで水素水が良いと聞いたが。

- 分かりません。 ガンの原因は活性酸素だけではない。

 

生産地の信頼回復にはどれくらいの時間がかかるのだろうか。

- 相当な時間がかかるとしか言えない。 正しく測って、数値を出し続けることだ。

 

身近で安く測定できる体制をつくるには。

- 今は米の全袋検査など消費量の多いものから測定できる体制に進んでいる。

  メーカーも努力しているので、市民レベルでも測定できる

  低価格のものがつくられてくるだろうが、精度的には限界がある。

 

話を聞いて少し安心したが、

それでもネガティブな情報を耳にするとドキドキしてしまう。

- ネガティブな情報を流したがるマスコミに問題がある。

  良いニュースをもっと報道してほしい。

 

この1年で早野さんが一番学んだことは。

- 還暦になっても人生は変えられる、ということかな。

  学び合いながら成長できる環境をつくっていきましょう。

 

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「これでほぼ、頂いた質問にはお応えできたでしょうか」 - スゴイ!

早野さん、津田さん、有り難うございました。

 

以上3回にわたってのレポートは、僕のメモと記憶に基づいた整理なので、

文責はすべてエビスダニであることを付記しておきたい。

詳細をお知りになりたい方は、アーカイブで。

http://www.daichi-m.co.jp/cp/renzokukouza/

 

それにしても、 「~は大丈夫か」 的な質問が多いのは、仕方のないことなのだろうか。 

・〇〇区では給食の検査をやってないが、大丈夫か?

・外食を避けてきたが、そこまで心配しなくてよいか?

・ホームセンターの土や肥料は大丈夫か?

・家庭菜園を続けても大丈夫か?

・お茶は? 水は? ・・・

 

早野さんの答えは、「要は (自身の) 納得の問題である」。

心配なら測るしかない、あるいは測定結果を公開するところを選ぶ。

そして結果を見て判断する。

学校や自治体に測定を求める。 あるいはカンパを集めて測ってみる。

3カ月に1回でもいい。 そういう行動をもって安心をつかんでいくしかない。

 

(大地を守る会の) 福島のトマトや米は、本当に大丈夫か? 

という質問は、僕が答えるしかない。

「 大丈夫、というセリフは、公的な場では出せません。

  ND(検出限界値以下) である、という事実をお伝えするしかないです。」

 

こと放射能に関しては、(あなたにとって) 「大丈夫」 とか 「安心」 の判断は、

専門家とてできるものではない。

そういう答えばかりを求められると、

「大丈夫、大丈夫、笑って暮らしなさい」 と言ってバッシングを受けた

お医者さんの気持ちが、少しばかり分かってきたりするのだった。

 

一緒に強くなりましょう。

 

津田さんがツイッターからの声を拾った中に、こんなのがあった。

「早野なんかを呼んで、もう大地の野菜は食べない。」

僕からの答え。

「6回シリーズのラインナップから、意図を読み取ってもらうしかないです。」

私たちがいま獲得しなければならないのは、

できるだけ冷静な判断力であり、ロバスト(強靭) な精神力であり、

柔軟なバランス感覚ではないだろうか、というのが今回の企画意図です。

立場や見解の違いでもって排除することは簡単だけど、

その知見を正確に理解した上で、「判断」 したい。

右でもなく、左でもなく、僕は前に進みたいのです。

できれば皆さんと一緒に。

 

少なくとも、自腹を切ってまで

学校や保育園の給食を検査してきた早野さんを、

僕は偉いと思っています。

 

連続講座・第3回のレポート、これにて終わり。

 



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