2012年7月24日
連続講座第3回 -測定を市民の手に(Ⅰ)
『大地を守る会の 放射能連続講座
~ 食品と放射能:毎日の安心のために ~ 』 第3回
7月21日(土) 13:30~16:00,
千代田区立日比谷図書文化館 「コンベンションホール」 にて開催。
今回のテーマは、
「測定を市民のために ~陰膳法から学ぶ~」 。
講師は、東京大学大学院教授・早野龍五さん。
ナビゲーターは、ジャーナリストの津田大介さん。
ツイッター界(?) では名の知れた大物二人を招いての贅沢な講座となった。
(いやホント、この6回シリーズはかなりゼイタクだと自分でも思っている。)
(今回の写真はすべて、(株)大地を守る会・企画編集チーム 高橋玲子撮影)
お二人は、とても素晴らしいテンポで、しかも分かりやすく、進めてくれた。
まずは早野さんの講演から-
早野さんはまず、昨年3.11以前の自分がどうだったかを明かした上で、
3.11後の変化を語り始める。
原発事故に関する最初のツィートは、3月12日14時22分。
放射能の検出から " 何かが起きている " ことを暗示した。
以後、発表された事実やデータを解析しながら、状況を伝え続ける。
それまで2500人くらいだったフォロワーが15万人に膨れ上がった。
ちょうど一年前の今くらいに、これは何とかしなければ
と思ったのが内部被ばくの問題だった。
そして文科省に 「陰膳法」 と呼ばれる給食丸ごと検査を提言したのが9月。
南相馬市にも提案したが、費用は自分が持つからと説得して、
ようやく今年の1月から実施できるようになった。
(この辺の経過は、朝日新聞で連載されている 「プロメテウスの罠」 でも紹介された。)
また南相馬市や平田村の病院から相談を受け、
ホールボディカウンター(WBC) を使っての住民の健康調査にも
協力するようになった。
こういった経過を、年表に表しながら話を進める。
昨年10月21日のニコニコ生放送で早野・津田・戎谷が出会ったこと、
そして最後の行が今年7月21日-「津田・戎谷との再会」 と、
年表に記されているところが、ニクイ。
早野さんは、参加者に 〇 X カードを配り、クイズをはさみながら
基本的な知識や今の状況を確認していく。
・今も私たちは (ウラニウム等による) アルファ線からの内部被ばくを受けている ⇒ 〇
自然界や建築物等からも放射線は飛んできている。
ウラニウムはアルファ線を出して崩壊しラドンに変わる。
ラドンは肺に入り、肺ガンのリスクをもたらす。
米国環境保護局(EPA) は、それにより年間2万人以上が肺ガンで死んでいる、
と見積もっている。
・外部被ばくも内部被ばくもリスクは同じ ⇒ 〇
外部も内部も、体を傷つける最後のプロセスは同じである。
Sv (シーベルト) という単位は、両者を同じ土俵で比べられるように作られたものだが、
設定された計算方法には異論もあり、この単位は使わないという学者もいる。
・現在でも水や食品にヨウ素131が含まれている危険性はあるか ⇒ ×
今では食品からヨウ素131が検出されることはなくなっている。
・ホールボディカウンターと食品検査の原理は同じである ⇒ 〇
・・・・・といった具合に解説つきで進められる。
昨年9月に文科省に給食検査を提言した際には、
文科省からは 「やりたくない」 と言われたそうだ。 出たらどうするんだ? と。
行政の思考回路をよく表わしているエピソードだ。
結果的に今年の4月から文科省予算で実施されるようになったが、
文科省管轄でない保育園には助成されない。
しょうがないから保育園ぶんは、寄付を募りながら今も自費で測っている。
ちなみにその費用は、1件1万5千円。
一週間(5日=5食) 分の給食を丸ごとミキサーにかけて測定する。
給食丸ごと検査は、ゲルマニウム半導体検出器でやるべき、
と早野さんは主張した。
そこでゲルマと NaI シンチレーション型検出器の精度の違い
についての解説が入る。
さて、ここで1Bq(ベクレル) という測定結果が出たとする。
では同じ検体をもう一回測ったら、同じ結果になるか ⇒ ×
放射線の放出は一定ではない。 これが放射線測定の厄介なところである。
測定して出てくるスペクトルの形は毎回変わる。
したがって測定には時間がかかる。
給食丸ごと検査の問題点は、結果が食べた後に出てくる、ということ。
この方法がはたして市民に受け入れられるだろうか、
早野さんは心配してネットでアンケートを実施した。
2日で7千件の回答が寄せられ、
90%が 「後からでも事実を知りたい」 という声だった。
この声が、文科省への進言へと早野さんの背中を押したのだった。
疲れたので続く。。。