2012年9月30日

見よ 月が後を追う

 

今日は月歴八月十五日(十五夜)、仲秋の名月なのに、

台風17号のせいでお月見どころではない。

各地の被害状況を報道で確認しながら、産地へと思いを馳せる。

必死で耐える果樹、収穫最盛期に入った東北の田んぼ、

雨に撃たれ泥水が流れ出す畑、揺れまくる雨除けハウス・・・

 

未明にかけて激しさを増してくる風雨に誘発されたか、

月と言えば、、、と孤高の作家・丸山健二の毒に満ちた散文詩小説

『見よ 月が後を追う』 を久しぶりに取り出してしまう。 19年も前の作品。

 


  稼働してまもない、とかく風評のある、元凶の典型となったそいつ、

  人命など物の数ではないといわんばかりに、一意専心事に当たるそいつ、

  桁外れの破壊力を秘めながら、普段は目立たない汚染を延々と繰り返すそいつ。

 

  そいつは暗々のうちに練られた計画に従って、高過ぎる利益を生み出している、

  そいつは進取的な素振りを見せながら、旧弊家どもの手先として働いている、

  そいつは昼夜を問わず制御棒をぶちのめす機会を虎視眈々と狙っている。

 

3人目の主人に拾われ、ポンコツから蘇った

「私は理知によって世界を知ることができる、誇り高いオートバイ」 が、

「動くものとなれ」 と挑発する。

 

舞台はどうも福島原発のあたり。

かなりヤバそうな犯罪に手を貸し現ナマを手に入れて帰ってきた娘と、

余計な野心を持たない腹のすわった青年を背に跨らせ、

都会に向かって突っ走りながら、「見よ、月が後を追う」 と歓呼する。

ゲンパツとそれがもたらした退廃に毒づきながら。。。

 

  この海岸線一帯には、濃縮ウランの思い上がりや財界の内幕の汚臭が漂っている、

  浅見を恥じない人間にはちょっと無理かもしれないが、私にはそれがよくわかる。

 

  これが人畜はむろん草本植物にも影響はないとされている危険の量だというのか、

  邪知に富む御用学者が強引に弾き出したペテンの数値、

  嗜虐趣味の風と波とが、その数値を絶え間なく変化させている、

  ごうごうたる非難を巧みにかわすための常套手段がそこかしこに見受けられる。

 

  原子力発電はすでに、活殺自在の力を持つ、破格の昇進を遂げているのだ。

 

これ以上引用するのはやめよう。

純米吟醸酒まで毒に変わってきそうだ。

日曜日の夜にこんなクセのある古い小説を手に取らせたのは、

実は月でも台風の力でもなく、メディアから流れてくる欺瞞のせいかもしれない。

 

原発ゼロ%を目指すと宣言しながら、財界やアメリカのほうを向いては

真逆の態度を示す。 そして、大間原発は建設するという。

誇りだけはやけに高い骨董品のオートバイが20年前に見抜いたとおりの世界が、

いま目の前で展開されている。

 

「動くものとなれ」

この物語の青年とバイクのように破滅的に飛翔することなく、

未来に向かって動くものに。

そのビジョンはすでにあちこちから明示されてきているのだから、

動くとは、「やればできる」 を出現させることだろう。

 

月(チャンドラ) よ 離れずに見てろ。

 



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