2012年10月 7日
低線量内部被曝を考える -放射能連続講座・最終回
6月から開始した 「大地を守る会の放射能連続講座」 も
昨日で最終回を終えることができた。
安堵して気が抜けたような感じと、いくつかの反省点、
そして残された課題に対する焦りのような思いで、複雑な状態の日曜日だ。
昨日の話は、なかなか厳しかった。
講師は独立行政法人 国立病院機構・北海道がんセンター院長の西尾正道さん。
放射線治療の最前線で臨床ひと筋、
日本で最も多くのガン患者さんの治療にあたった医師の一人と言われる。
しかも 「市民のためのがん治療の会」 の協力医として
市民サイドに立った医療活動も実践され、また
低線量内部被ばくの問題にも真摯に向き合ってこられた貴重な現役医師。
少々無礼な依頼の仕方で、しかも安い講演料にもかかわらず、
この大地を守る会の講座のためだけに、札幌から日帰りで上京していただいた。
深く感謝する次第である。
西尾先生は語る。
放射線に関する研究の歴史はまだ100年ちょっとしかない。
人類が生物としてさほども進化しない間に、科学技術だけがどんどん発達して、
生命倫理や哲学が置き去りにされてきた。
学生時代からマルクスや吉本隆明などを読み漁り、
" 社会における医学とは " という問題意識を持って生きてきた。
やっとこさ医者になってからは、徹底してガン医療の臨床現場に身を置いてきた。
ガラスバッヂをつけて、最も放射線を浴びた医者だと任じている。
死生観や医学行政がおろそかにされてきた国で、
医者の前半20年はやたら切りたがる外科医とのたたかい、
後半20年は抗がん剤を投与したがる内科医とのたたかい、
言わば " 医療ムラ " とのたたかいだった。
今の放射線の知識はすべてICRP (国際放射線防護委員会) の理論に準拠している。
3.11後、国や専門機関がちゃんと動いてくれるものと思っていたら、
まったく機能しなかったことに強い憤りを覚え、自力で調べ語り始めた。
気合の入ったイントロから始まり、
放射線の基礎部分の解説、内部被ばくの仕組み、ガンとはどういう病気か、
放射線による人体への影響について、
そして現在の 「定説」 の問題点へと、話は展開されていく。
講演内容は大地を守る会のHPでアップしているので、
ぜひご視聴いただきたい。
⇒ http://www.daichi-m.co.jp/cp/renzokukouza/
西尾先生からは、
「ネットで記録を残すとなると、" ここだけの話 " ができないんだよね」
と言われてしまった。
たしかに、、、せっかくこのために来たんだから本音トークをやりたい
という気持ちは、主催者にとってはとても有り難いことであるし、
会場まで足を運んだからこそ聞ける、と思ってもらうことが
実は演者の本望でもある。
たまに講演に呼ばれることがある自分の経験から鑑みても、
自分のお喋りがそのまま公開されるとなると、やはり慎重に言葉を選ばざるを得なくなる。
ちょっとした言葉の選択ミスが批判の的になるのがネット社会だから、
どうしても原稿を読むような話になってしまうのは避けられない。
肥田舜太郎さんのように気合いで語る方だと、
スタッフの方が慎重になることも充分に理解できることだ。
たくさんの人に伝えたいと、今回は動画アップを前提に企画を組んだのだが、
それはそれで限界があることをご理解願いたいところであり、
アップを了解いただいた講師の方々には本当に感謝しなければならない。
第3回の早野龍五さんの 「本邦初公開の数字」 なんていうのも、
この連続講座を評価してくれたからこその冒険だったのかもしれない、と
改めて思ったりするのである。
アンケートでも、「西尾先生の本音トークをぜひ」 という声が複数寄せられた。
講師陣に恵まれた連続講座を組めたことを、とりあえず喜びとしたい。
自分の思いを挿入してしまったですね。 すみません。
明日に続けます。