2012年10月11日

ふるさとの 「食文化」 が誇りとなる道筋

 

岩手県九戸郡山形村。 現在は岩手県久慈市山形町。 

2006(平成18) 年3月、久慈市との合併で 「村」 は消滅した。

しかし、僕らにとってはやっぱり 「山形村」 は 「山形村」 だ。

その気持ちは 「村」 の人にとっても強いものがあって、

我らが山形村短角牛は、合併の翌年、思い切って商標登録を取得した。

村の名をこの牛に託したのだ。

したがって、『山形村短角牛』 は愛称や名残りで呼んでいるのではなく、

正しい名称であることを、ここに改めて宣言しておきたい。

 

その短角牛と白樺の里にやってきた。

何年ぶりだろう。 10年以上にはなるね。 

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以前(8月10日付9月20日付) お伝えした、

農水省他関係省庁によってつくられた 「地域食文化活用マニュアル検討会」 で、

久慈市山形町が事例調査の対象地域のひとつとして選ばれた。

今日はその調査にやってきたのである。

 

平庭高原にある、東北で唯一の闘牛場。

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大会は今度の日曜日(14日) だとかで、幟(のぼり) も立って準備万端相整い、

あとは牛の登場を待つばかり、という感じ。

ああ、それに合わせて来たかったのに、、、

いや、これは観光ではないのだと自分に言い聞かせる。

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実は昨日のうちに現地に入った僕は、

宿でひと足お先に山形村の食材を堪能させていただいた次第 (もちろん自腹)。

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ウグイの塩焼きにシメジの煮浸しに米ナス焼き・・・

そして、これが山形村の郷土食の代表選手とも言える 「まめぶ汁」。 

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胡桃と黒砂糖の入った小麦団子に焼き豆腐・野菜・きのこが入ったすまし汁。

正月・結婚式から葬式まで、地元では欠かせない行事食の一品。

各家庭ごとにその家の味があると言われる。

この山形村の伝統食が、今では久慈市全体の郷土食として語られるようになった。

嬉しいような、ちょっと寂しいような・・・

というのが山形村のお母ちゃんたちの心境のようだ。

 

こちらは 「ひっつみ」。 (写真が下手でスミマセン。)

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小麦粉をこね、薄く伸ばして手でちぎって (これを 「ひっつむ」 という)、

鶏肉や季節の野菜、きのこなどと一緒に煮込む。

 

これらのふるさと料理や昔から栽培されてきた雑穀など、

村の人にとっては当たり前すぎて  " 価値を見直す "  など考えもしなかった食材を、

「発見」 したのは都市の消費者との交流によってだった。

30年前の話である。

きっかけは、大地を守る会が、日本の風土に根ざした健康な牛肉として

山形村の 「日本短角種」 という品種の牛肉を販売したことによる。

 

Gパン姿の、金もない若者がやってきて、「短角牛」 を販売したいと言う。

こんな素性の知れん奴らに売って大丈夫なのか、

村はすったもんだの議論になったようだが、

不自然な霜降り肉が幅を利かす市場競争のなかで、

このまま短角牛を脱落させるわけにはいかない、少しこいつらに賭けてみるべか、

ということになったらしい。

牛のことはよく分かってなさそうだが、一所懸命な感じだし・・・

決断したのは、当時の陸中農協販売部長だった木藤古徳一郎さん。

現在の 「バッタリー村」(後述) 村長さんである。

 

1981年12月、3頭の出荷から 「大地を守る会」 との取引が始まった。

そして2年後、「山形村産地交流ツアー」 が開催される。

都会の消費者が山形村に足を踏み入れて感激したのは、

風土に根ざした食とそれを育む自然の姿だった。

 

いま大地を守る会国際局の顧問をしていただいている小松光一さんが、

こんなふうに書いている。

「 山形村には、日本各地では近代化によってつぶされてしまった暮らし方や文化が、

 いまだ 「未開」 のプリミティブなものとして残存していた。

 いわば、山形村は、農業近代化が充分に開花結実しえないままに、

 農業近代化をのりこえようとする団体、「大地を守る会」 に出会ってしまった・・・ 」

  - 小松光一・小笠原寛著 『山間地農村の産直革命』(農文協、1995年刊) より -

 

以来30年。

山形村と大地を守る会の交流は続き、

2005年には国産飼料100%の牛肉を実現した。

サシ(脂、霜降り) の入らない赤身肉として、

健康な香りのする旨み成分の高い牛肉として、

今や何人もの一流シェフから評価を頂くようになった 「山形村短角牛」。

この牛肉を柱として、気がつけば、

まめぶやひっつみも自慢の郷土食として堂々と振るまわれるようにもなった。

 

そして今日は、「食文化を地域活性化につなげるためのマニュアル作成」

にあたっての、事例調査となったわけである。

 

続く。

 



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