2012年10月26日

アーバン・オーガニックラボ

 

今日は、クリエイティブ・ディレクターのマエキタミヤコさん (「サステナ」代表)

から依頼があって、「アーバン・オーガニックラボ」 なる集まりに参加した。

大地を守る会の話をしろという。

 

場所は赤坂にある 「日本文化デザインフォーラム」(JIDF) の会議室。

JIDFは30年の歴史があり、もとは任意団体として発足した組織だが、

震災後、より社会に貢献するために、一般社団法人として組織替えした。

アート、デザイン、建築、科学、哲学、都市計画・・・・・・ などなど、

多彩な分野で活躍されている専門家約120名が集まっていて、

それぞれの専門ジャンルの枠を超えて、会員相互で交流、啓発し合うことで、

これまでにない発想を生み出し、多角的な視点から

日本及び世界の 「文化をデザイン」 することを目指している (HP より)。

理事長はソーシャル・プロデューサーの水野誠一さんという方で、

副理事長にアーティストの日比野克彦さん、

顧問には何と哲学者の梅原猛さんという大御所が名を連ねている。

 

そこで会員自身が呼びかけて、そのテーマに興味あるメンバーが集まり、

意見交換し合うという場が 「ラボ」 と呼ばれているようで、

今回呼ばれたのは、水野さんが座長(ラボ・マスター) を務める

「アーバン・オーガニックラボ」 という研究会。

 

都市に、仕事や企業という枠にはまらない文化コンテンツを付加させながら、

オーガニック(有機的) な魅力を持った空間に高めていく。

有機的な人と人のつながり、人と仕事のつながり、人と暮らしのつながりのある

オーガニックな都市づくりについて、外部ゲストを交えて考える。

う~ん、、、美しいイメージだが、

「仕事そのものをどう創るか」 に日々明け暮れてきた模索者としては、

多少の違和感も抱いてしまうのである。

いやむしろ、「枠にはまらない」 と言いつつも、実は

仕事の質や関係のありようがいろんな場面で問われている、

そんな時代に入っていることを映し出しているということかもしれない。

とにかく僕は、大地を守る会の話しかできないし、と開き直ってドアを叩く。

 


夕方5時前くらいから、メンバーが順次集まってくる。

全部で20数名。

今回のゲスト・スピーカーは、僕も含めて4名。

どうやら大地を守る会には以前から藤田代表に依頼がされていたようで、

日が合わずに延び延びになっていたところ、逃げられないと観念したか、

「戎谷なら出せる」 ということになって追加で設定されたようだ。

何だか僕が一番の暇人みたいだけど、

こっちだって 「社長命令!」 によって急きょ予定を変更したのであって、

どうも  " ハメられた "  感が拭えない。

 

しかし、とは言え、異業種交流は嫌いではない。

今まで知らなかった世界や仕事に出会い、新しい発想を学ぶこともある、

ラッキーで美味しい仕事だと、内心は思っている。

 

さて、ゲストの方々のお話を解説し始めると相当長いものになってしまいそうなので、

それぞれのHPを紹介することでご勘弁願うこととしたい。

 

まずは、「オアゾ」 という会社の代表をされている松田龍太郎さん。

「オアゾ」 といっても丸の内のビルのことではない。

oiseau - フランス語で 「鳥」 を意味する言葉で、

" さまざまな種類の鳥たちが、木から木へ、土地から土地へ、飛び回り、

 新しい実を運び、新しい巣を作っては、心地よい歌声を披露し、

 新しい生命(いのち)を、その土地で育みます。"

そんな鳥のように、華麗に、そして繊細でしっかりとした 「ものづくり」 に励む

女性たちによって、企画・制作・運営を行なう。 

すべてがデザインに関わる女性たちで構成され、

企画やプロジェクト単位でチームを編成する仕組みらしい。

青森県十和田では、人・モノ・コト を 「bank」 (積み上げる?) という発想で

集め、束ね、新しい価値を産み出そうとしている。

男性は代表の松田さんのみだと。 僕にはできない、ゼッタイに。

 

次は 「リアルゲイト」 という不動産会社の岩本裕さん。

バブルがはじけて行き詰まりかけたビルをリメイクさせて、

起業家やアーティストたちのシェア・オフィスとして展開する。

普通の企業を相手にしていては見えなかった人々が現われ、

ビルをシェアし合い、つながりが生まれ、新しい価値が創造される。

そんな可能性を導くことができる、不動産業の新しい姿が語られた。

 

3番目は、「ギリークラブ」 や 「料理ボランティアの会」 を運営する、

渡辺幸裕さん。

人生の達人というのは、こういう人を言うのだろうと思わせるほどに、

楽しく人をつなげ、そのネットワークによってさらに活動の幅を広げていく、

実にエネルギッシュな方である。

「ギリークラブ」 とは、完全会員制かつ完全紹介制によって運営される、

カルチャー・センターのようなもの。

渡邊さんが 「ギリー」(案内人) となってアレンジした 「キーマン」 が、

毎回特定のテーマに沿ってミニ・セミナーを実施する。

その内容に関心を持った会員が参加し、ゲストと自由に意見交換する。

テーマはまったくフリーのようだ。

ワイン講座や生産地訪問など食関連が一番多いようだが、

歌舞伎セミナーや観劇といったエンタメあり、広告・マーケティング関連あり、

企業探訪あり、国の研究あり。

正会員は500名ほどで、年間150回ほど開催されている。

 

「料理ボランティアの会」 では、一流シェフによるボランティアを組織して、

" 食による被災地支援 "  を展開している。

有名ホテルの料理長はじめ、名だたるシェフが集められていて、

被災地を訪ねては現地で料理の腕をふるい、食べてもらう。

逆にホテルに招くこともある。

すごいネットワーク力と行動力である。 感服。

 

さてさて、僕の話はというと、いつもの調子。

大地を守る会の設立背景 (=食の時代状況) から始まり、

生産と消費をつなぎながら、一から仕事を作ってきたこと。

今の事業や社会的活動の概要、今直面している課題と夢について。

 

質疑では、放射能の問題やTPPなど、やはりこういうメンバーならではの

社会的な質問が多かった。

そしてお一人から、こういう感想を頂戴した。

「食が環境とつながっている。 食べることで環境を守る。

 この視点は、今まで考えもしなかった、新鮮な発見です。」

一人でも、そう言ってくれた方がいたことで、今回は良しとしたい。

 

食は社会の土台だと思っている。

したがって、どんな仕事とも、本当はつながることができる。

もっともっと、いろんな人とつながりたい、

そんな思いを強くして帰ってきたのだった。

 



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