2012年12月アーカイブ

2012年12月29日

「土」 に感謝して、一年を終えたい。

 

周りが短い休暇に入って行くのを横目に見ながら、

宿題が終わらず居残りさせられている少年、じゃなかった中年。

開き直って諦めよう。 もはやここまで。。。

 

この一年を振り返りながら、

お前が飲む酒は美味いかと自問自答してみる。

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まあまあ・・・ だったとも言えそうだけど、後悔もいろいろある。

もっとバットを振っておけばよかった・・・ アニキ金本の言葉が胸に突き刺さってくる。

アニキ、お疲れさまでした。 感動を有り難う。

それから松井くんも。 君の縦じまのユニフォームが見たかったのに、残念。

最高のパフォーマンスが見せられない、と引き際を鮮やかにする者。

かたやボロボロになりながらもたたかい続けた男。

どちらも美しい。

 

今年は、2月の朝日新聞シンポジウムを皮きりに

けっこう外に呼ばれた一年だった。 

雑誌で  " 論戦 "  を頼まれたこともあった。

短い寄稿だけど、「共著」 と言ってもよいらしい本が2冊。

 - 『放射能に克つ 農の営み』(コモンズ)

 - 『脱原発の大義』(農文協)

6回シリーズの放射能連続講座は、自分なりに頑張ったつもりだが、

参加者の疑問を拾いきれなかったのが心残りで、

ま、これは次につなげていくことで何とかカバーしたい。

 

一番の喜びは、やっぱ、福島の生産者からいただいた感謝状かな。

今も会社の受付に飾らせていただいている。

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頑張った生産者には、必ず答えがついてくる。

そう確信させてくれた一年でもあった。

彼らが諦めない以上、僕ももっと働かなければならないと思う。

まだ震災前のオーダーには戻ってないけど、粘り強く連帯していくしかない。

そして、彼らの願いを受け止めるかのように応えてくれた

「 土 」 に、深く感謝したい。

脱原発社会に、有機農業は必須アイテムだ。 それは間違いないだろう。

 


それにしても原発社会とはなかなかに堅牢なものだ。

建設は継続、計画は(白紙を撤回して) 再検討、再稼働は是々非々、

自然エネルギーでは賄えないしコストが云々・・・と巻き返しにやっきである。

故郷を追われた万を超す人たち。

仮住まいの地で亡くなってゆく人たち。

今も激しく被ばくし続けている作業員。

悔しさをこらえながら必死で除染に取り組む農民たち。

彼らの苦悩は、はたして浮かばれるのだろうか。

 

加えて、もう原発事故は起きないと思っているフシがある。

安全対策はどう進んだんだろう。

残っている原発の半分以上は27年以上になっている。

廃炉の時代が目の前に来ている。

そもそも当初の予定通り30年で廃炉にしていたら、

福島第1原発の事故は起きなかった。

すでに16基が30年を越している。

反省はあるのか・・・

 

廃棄物の処分も決まらない・決められない技術に、

どう考えても現実性はないとしか思えない。

新しい場所への立地はほとんど困難だろうし

(その意味で、大間と上関は何としても通したいのかもしれない)、

今ある場所に増設を繰り返しては、リスクが高まるばかりである。

まして廃炉のコストは(電気代とは別に) 税金で補填する動きになりつつある。

これから想像もつかない年月、生み出されないエネルギーのために、

いや、いつ暴走するかもしれない恐怖を抑えるために、

子孫たちは負担を強いられ続ける。

どちらがハイ・コストなのか、火を見るより明らかではないか。

持続可能な社会に向かって、イノベーションに進むしかないだろう。

 

農民たちが諦めることなく土を耕すなら、

僕らもそれぞれの持ち場で、種をまき続けなければならない。

 

原発のことを考えると、どうしてもテンションあがっちゃうね。

ま、けっして枯れることなく、来年も走り続けたいと思うのであります。

 

皆様も、どうぞお体に気をつけて、

良いお年をお迎えください。

今年も拙いブログを読んでいただき、有り難うございました。

 

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荒川の支流・名栗川。

この川べりで暮らして26年 (といってもほとんど留守だったけど)。

この川とも、間もなくお別れになりそう。

帰った夜のせせらぎの音は格別だった。

キレイな水がある、それはとても幸せなことだと教えてくれた。

癒してくれてありがとう。 

どうか永遠に。

 

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2012年12月27日

NHK 「サラメシ」 に成清(なりきよ)海苔店 登場!

 

≪来年の予告編Ⅱ≫

NHKテレビで毎週月曜日の夜(22:55~) に放映されている

サラメシ」 という番組があります。

 

ランチをのぞけば、人生が見えてくる

働くオトナの昼ごはん それが「サラメシ」

 

が番組のキャッチフレーズ。

" サラリーマンの昼めし "  だからサラメシ。

中井貴一がやけに明るい声でナレーションをつとめていて、

いろんな職場を訪ねては、楽しいお昼ごはんの風景を紹介しています。 

堂々と弁当も覗いては、家族の愛を確かめたりして。

けっこう人気の番組だそうです。

 

その 「サラメシ」 に、何と!

「有明一番摘み」 でお馴染の 成清海苔店 さん(福岡県柳川市) が登場します。

放送は1月7日か14日とのこと。

 

取材のきっかけは、番組でおにぎり特集を組むことになって、

大地を守る会が食材提供や生産地紹介でお手伝いした

『おにぎり』(グラフィック社刊) という本を番組の方がご覧になって

問い合わせて来られ、成清さんを紹介させていただいた、といういきさつ。

 

↓ こちらが、その 『おにぎり』。

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47都道府県のおにぎりと米文化の話が散りばめられた、

懐かしさとともにやけにおにぎりを食べたくなってしまう本。

 

おにぎりといえば海苔。

そこで極上の有明海苔の生産現場を訪ねる。

酸処理をしない、環境に配慮した海苔。

見た目より味と風味にこだわった有明一番摘み海苔が紹介され、

忠さんのコメントで決められている。

「海苔は、米の恋人です。」

どっかで聞いたようなフレーズだけど、いいね。

 

『おにぎり』 では、成清さんの海苔だけでなく、

王隠堂農園(奈良) さんの梅干しや、

島根県弥栄町 「森の里工房生産組合」 のきれいな棚田と

竹田英雄さんの有機米も登場。

弥栄町のおにぎり名人、岩田千恵子おばあちゃんの

「朴葉(ほおば) の混ぜご飯おにぎり」 は、

自然の四季とともにある食の豊かさを伝えてくれます。

 

さてさて、「サラメシ」 では

成清海苔店のどんなお昼風景が映し出されることでしょう。

忠さん千賀さん夫妻のアツアツぶりも見せつけられるのでしょうか。

ウ~ン、ドキドキしますね。 お楽しみに。

 

< P.S. >

成清さんを紹介した日記はもうずいぶん前になっちゃったみたい。

『柳川掘割(やながわほりわり) 物語』 と一緒に書いたのが最後か。

 ⇒ http://www.daichi-m.co.jp/blog/ebichan/2010/01/12/

参考まで。

 



2012年12月26日

日本が住みにくく ・・・

 

ところで、来年の 「大地を守る会のオーガニックフェスタ」 でお呼びする

細川モモさんを紹介した6月27日の日記に、

今月に入ってこんなコメントが寄せられている。

投稿の主は、「せめて洋服を欧米並みサイズに」 さん。

 

女性にとっては 「ああ、この悩みを持つ人多いのよね」 かもしれないけど、

この世界にまったく無知 × 鈍感なるワタクシには、驚きの大発見!

みたいな話で、本編でも紹介させていただくことにしたい。

 ↓ (以下、コメント)

低体重児の割合が増加しているため、

長期的視点からみると日本人の身長は縮むと予測する学者もいるようです。

大きな問題は、アパレル産業のつくる女性の服が小さすぎることではないでしょうか。

私自身、日本製品は小さすぎて

来春からはアメリカ製を買うことにしようと決断しています。

しかし考えれば不便な生活で費用もかかります。。。。。

服のサイズの小さい日本を出られたらどんなにいいことでしょう。

服がより取り見取りのアメリカ、北欧は本当に素晴らしい。。。。

 

よく食べて運動しているとこういう不自由な思いをするのです。

ですので、便利にすごすためには

他人と同様にミニチュアサイズになることが必要なのです。

スポーツ選手、楽器演奏者は日本が住みにくく我先に脱出しているのです。

その理由の一つに、日本の社会にいると

良い食事指導やトレーニングが受けられない、

一般人の体格や文化的土壌が貧弱であり、

周囲のライバルに後れを取ってしまうという環境的な要因があります。

日本では文化的に華奢な体型が好まれるとしても、

せめて売る側の服飾産業は消費者のためにも

女性の服のサイズを大きく作ってくれないものでしょうか。

 
 

う~む・・・・・

と鈍感オヤジが思案したところで何も出てきやしないけれども、

「文化的土壌の貧しさ」 には考えさせられる。

しかも、我々の鈍感さ、あるいは価値観が

不幸な社会形成にひと役買っているとしたら、

「縮み指向の日本人」 とか批評している場合でなく、

また 「もっとサイズを増やせばいいのに」 という

単純なニーズやマーケティング議論でもない気がしてくる。

 

「日本が住みにくい・・・」

 - これって、アブナい話じゃないか。

 

多様性が認められる社会は、発想が豊かになり、

イノベーション(技術や組織の革新) も生まれやすくなる。

結果的に  " 人に優しい "  ロバスト(強健) な社会になると、僕は思う者である。

例えば、前にも書いたような気がするが、

放射線の被ばくにとてもセンシティブになっている人を排除したりシカトしたりせず、

そういう人たちを受け入れ、暮らしやすい地域社会を育てた方が、

自分にとっても、子どもの将来にとっても安心度は増すし、

この町に住みたいと思う人が増えるほど、

町のクオリティもバリューも上がるはずだ。

逆にはたらくと才能は流出し、発想は硬直化し、差別も生まれやすくなる。

つまり貧しさと危険度が増してゆく社会になる。

 

洋服だけの話なら、「ユニクロさん、お願いしますよ」 ですむかもしれないが、

これも社会を映している鏡なのか・・・と思った次第。

 

「せめて洋服を欧米並みサイズに」 さん。

モモさんは欧米事情にも詳しいでしょうから、

ぜひ 「オーガニックフェスタ」 にお越しいただき、

思いをぶつけてみてはいかがでしょうか。

 

日本は住みやすい国じゃない、か。 悲しいね。

 


 



2012年12月25日

《予告》 「オーガニックフェスタ2013」で企画2連発!

 

ノロウィルスが猛威を奮ってますね。

しかも新たな変異株が発見され、全国的に拡がっている様子。

ウィルスも進化(?) しながら対応能力を強化してゆき、

人間の衛生対策や免疫とのイタチごっこは永遠に続きます。

しかも都市というのは極めて繁殖・拡散しやすい環境にあります。

我々はもっと野生を取り戻さなければアカンのかもしれません。

とか言いながら、食品を扱う業界は、神経研がらせた年末商戦です。

皆様には、お変わりございませんでしょうか。  

 

さて、今年もあと一週間を切り、年明けの予告をいくつかお知らせします。 

 

まずは、2月24日(日)、年に一度の大交流会

「大地を守る会のオーガニックフェスタ2013」 にて、

二つの企画を用意しました。

これは10月に終えた放射能連続講座で、最後にお約束した宿題でもありました。

 

ひとつは、NPO法人市民科学研究室代表の上田昌文さんを再度お招きして、

放射能講座を開催します。

忌わしい原発事故から2年近く経って、今の汚染状況はどうなっているのか。

何がどこまで分かり、何がまだ分かってないのか。

何が大丈夫で、何に気をつけるべきなのか。

被ばくと健康リスクの関係についても未だ意見が分かれる中、

私たちはどう理解して対処すべきなのか。。。

この難題に対して、これまでの厖大な測定データをもとに、

可能な限り整理してもらいます。

明日からの暮らしに役立てていただけたら幸いであります。

 

もうひとつは、連続講座で示された大切な視座

- 「栄養バランスの取れた食生活で免疫力を強化すること」 について。

お呼びするのは、プロのアスリートやミス・ユニバースへの栄養指導に携わってこられた

予防医療コンサルタント、細川モモ さん。

株式会社タニタさんと提携しての食事指導ですっかり有名になって、

チョー忙しい身でありながら、「大地を守る会でお話しできるなんて光栄です!」

と快くお引き受けいただきました。

 

先週の17日、丸の内の新丸ビル・エコッツェリアのスペースをお借りして

講演の打合せを行なった際も、年内に発行される予定の新刊

Luvtelli  Baby  Book』 の校了を終えたばかりだと、

息をはずませながら登場されたモモさん。

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(左手前は、弊社広報課・栗本遼)

 

講演の打合せというよりも、

いかに人間の体や健康と食が密接につながっているか、

最新の栄養学で分かってきたことなど、矢継ぎ早にレクチャーを受けたっていう感じ。

しかしオッサンにはもはや手遅れの感もなくはなく、途中から

「くりもとクン! よ~く聞いておくように」。

 


ちなみに 「モモ」 さんという名前は本名。

ミヒャエル・エンデの小説 『モモ』 からとったもの。

生前は大地を守る会の会員で 「とにかく食の大切さを刷り込まれた」 という

お母さんの思いが偲ばれます。

 

講演では、健康のためのバランスのとれた食事のポイント、

醗酵食をはじめとする日本食のすごさ、妊娠前に知っておきたいこと、

などなど縦横に語っていただきます。

「放射能」 なんていう無粋な言葉は出ないかもしれません。

でも、これも間違いなく 「放射能に対する適切な防護」 の答えだと思うワケです。

 

当日はタニタの方も参加され、パネルトークを行なう他、

展示や体組成計を使った健康チェックも実施すべく準備に入っています。

しかし、なんと悔しいことに、むさくるしいオヤジが司会じゃまずいよね、ヘンよヘン、

というのが 「誰もが認める客観的判断」 だそうで、

進行は若者にゆずることになります。

 

昨年度 (今年の3月3-4日) のフェスタの様子を眺めながら、

「すごく楽しみになってきました」 と喜んでくれるモモさんでした。 

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「大地を守る会のオーガニックフェスタ」 はどなたでもご来場いただけます。

講演や映画、生産者のブースに試食コーナーなど、

盛りだくさんの企画でお待ちします。

もちろん無料。

会場は例年と同じ、大田区蒲田の 「大田区産業会館 Pio」。

年が明けたら 大地を守る会の HP でも告知されますので、

どうぞお楽しみに。

 

そして連続講座でお約束した3つ目。

水産資源学の勝川俊雄さん(三重大学准教授) の

「本業の話をちゃんと聞きたい」 の件。

こちらは専門委員会 「おさかな喰楽部」 が受けてくれて、

1月12日(土)、『おさかな喰楽部の新年勉強会』 として開催します。

 

豊かなはずの日本の海。

しかしこのままでは私たちの食卓から魚が消えるかもしれない・・・

水産資源をどう回復させるか、漁業再生の道筋を勝川さんが語ります。

 

時間は、13:30~16:30。

場所は、築地市場厚生会館。

参加費無料 (非会員の方は500円)。

まだ席に多少の余裕があるようです。

お問い合わせは、おさかな喰楽部メール・アドレス

 ⇒ Osakana@daichi.or.jp  まで、お気軽にどうぞ。

 

「オーガニックフェスタ」 では

次の連続講座(第Ⅱクール) 開催の予告ができるよう、準備を進めています。

「正しい理解、適切な対策、健全な食生活」 をベースに据えて、

「人と社会の健康を取り戻す」 ために、目下講師交渉中。

正直言ってちょっと苦戦してますが、

前回より前に進んだ講座にはしてみせたいと思ってますので、

乞うご期待ということで。

 



2012年12月18日

有機農業学会・第13回大会

 

昨日、 「僕の一票は死に票になったかもしれないけど・・・」

と書いてしまった自分を、少し恥じている。

大地を守る会代表・藤田がツイッター でつぶやいた言葉に諭された。

「 私が投票した人は当選しないかもしれない。

 しかし~ これは種まきなのだ。 私は結果に失望することはない。」

 

そうだよね。 希望を語りたかったんだから、

「この一票は断じて死んではいない!」 と言い切るべきだったか。

今日の報道では、自民党の得票数自体はけっして伸びてないとか。

バランスを欠いているのは制度であって、人心に失望してはいけない。

 

投票に行かなかった息子に向かって、

「オレはお前たちの明日のために投票してるんだ!」

と叱ったオヤジの話を聞いた。 「情けねぇ」 と。

しかし、怒るだけでなく、大事なものをどのように伝えるか、

もっと自分たちを鍛えなければならないということだ。

歩みを止めず、しっかり前に向かって進んでゆきたい。

 

さてと・・・積もる話がいろいろとあるんだけど、とりあえずここから。

選挙を一週間後に控えた12月8日(土) と 9日(日)、

東京・府中にある東京農工大学で開かれた 「日本有機農業学会」 の大会に参加した。

研究者でもないのに、僕はこの学会の設立(2000年) 当初からの会員である。

 

有機農業は、農薬や化学肥料に依存した近代農業に対する

批判や反省をもとに広がってきたものだが、

栽培技術においては実に多様な考え方や理論(あるいは世界観)

によって営まれ、進化してきた。 今もそうだ。

しかしその多様性ゆえに、

また微生物を含めた生態系との相関関係が複雑極まりない世界であるがゆえに、

この世界はまだまだ科学的に未解明な部分が多い。

 

有機農業を、高付加価値農業とか、特殊な生産様式に終わらせることなく、

社会のスタンダードにするためには、

もっともっと総合科学的な研究が必要である。

そんなものは不要だ、という方もいるが、

有機農業をあたり前のものにしたいと願う者としては、

やっぱり一定の普遍性は必須だと思うのである。

生産と消費を 「健康」 でしっかりつなげるためにも。

ここで 「有機農業学」 を進化させてくれる研究者の集まりができたのなら

会費くらいは払って応援しよう、 

いつまで続くか分からない貧しい学会のようだし・・・ 

そんな思いで参加してきた。

 

去年 は北海道大学で開催され、

場違いながら放射能対策についての発表をさせられたのだが、

今年は気楽な見物客気分で、国立大学の門をくぐる。

 

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( 創設者は大久保利通。

 東京帝国大学から独立した際のいわくもあるらしい、歴史ある大学。) 

 


今回の全体セッションは3構成。

全体セッション1 : 有機農業推進法成立からの6年を振り返る

全体セッション2 : 有機農業現場における新技術利用の可能性

                          - 農業現場と研究機関のコラボレーション -

全体セッション3 : 耕す市民を育てる現場から

 

1 はどうも学者というより運動家の論を聞かされているような気分だったが、

2 では、有機農業の現場としっかり組んで技術的な発展に貢献しよう

という姿勢が汲み取れた。

 

一番面白かったのは、東京農工大大学院・藤井義晴教授が発表した

「アレロパシーを利用した有機農業、特にヘアリーベッチの利用について」。

ヘアリーベッチはマメ科の牧草で、

そのアレロパシー(多感作用、他の植物の生長や動物の侵入を防いだりする効果)

の物質はシアナミドであることをつきとめた。

シアナミドとは化学肥料である石灰窒素の有効成分であるが、

天然の植物が合成してくれるということは、

これで雑草や病害虫の発生を抑制し、かつ地力も上げることができる。

初夏に咲く花はミツバチの蜜源にもなる。

自然に枯れて敷きワラ状になることでカバークロップとしても利用できる。

「これは現場で使えそうだ。 生産者にも伝えよう」

と思えるような研究発表に出会えることが、楽しい。

 

3  は東京での開催を意識してのセッション。

都市住民に農への関心を呼び覚ますために様々な仕掛けをしている

都市農家やレストランの若い経営者が登場して、思いを語り合う。

 

その他に個別調査や研究報告が24。 

会場も分かれるので聴けたのは半分弱だったが、

まだまだ調査・研究の途上らしきものが多く、

先輩先生からの問題点の指摘やアドバイスを後ろから聞いたりしながら

その研究意義などを理解させていただく。

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原発事故以降、あちこちで出会い、親しくさせていただくことになった

新潟大学・野中昌法さんも、二本松での調査経過を報告。

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1mおきに測定データを取っていくという相当に詳密な線量マップを作り、

生産者と対策を話し合ってきた。

この1年半で見えたことは、土の力と、

手を打ったところには成果がついてくる、ということだ。

 

個別発表の紹介は割愛するが、

こうやって有機の力や課題が 「見える化」 され、

新しい発見が現場で活かされ、成果が蓄積されてゆくことで、

有機農業の世界が豊かになっていくことを信じたい。

 

こんなことも考える。

たとえば、福島の生産者たちが必死で取り組んできた放射能対策は、

今や400を超える原発が存在してしまっているこの地球で、

人々を救う技術として、ちゃんと残しておくべき 「成果」 だろう。

これは研究者たちのバックアップがないとできないことだ。

(使うことがあってはならないものだけど、原発事故はいつ・どこで起きるか

 分からないものだから、備えはなければならない。)

いざという時に、しっかりと応援できる国でありたいし、

同様の意味で、日本は廃炉技術の先進国にならなければならない、今すぐから。

 

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二日目の朝には、学会の総会があって、

こちらは運営に関する会議なので自分には関係ないと思っていたのだが、

なんと前日の夕方に、議長を頼まれてしまった。

いつも厳しいご批判を頂戴する沢登早苗会長(恵泉女学園大学教授) から

頭を下げられたのは、初めての経験。

ま、つつがなく運営はできたと思うけど、

去年と言い、今年と言い、この学会には調子よく使われている感がある。

 

ま、ワタクシなんぞでよければ、それくらいはお手伝いしましょう。

諸君らには、しっかり有機農業の発展に尽くしてもらいたい!

なんたって、この国の、いや世界の未来がかかっているんだから。

 



2012年12月17日

危険なオセロゲーム

 

あれやこれや終わりの見えない課題のプレッシャーに耐えながら、

どうしてもひとつ年内中に仕上げたい仕事があって、焦る日々。

12月はまたこれが逃げるように早くて、先週は書く余裕もなく過ごしてしまった。

 

いやあ・・・ それにしても、

オセロゲームのように丸ごとひっくり返ってゆく光景・・・

小選挙区制というのは、つくづくアブナイ制度だと思うのであります。

しかもこの10年、回が進むにつれ振り子幅が大きくなっていってるような。。。

とても危険な臭いを感じるのは僕の鼻だけじゃないですよね。

 

野田さんは党内の議員たちが第3極に流れ出していく動きに恐怖を感じて、

一気に解散に打って出たのかもしれないけど、

第3極に態勢づくりの時間を与えなかった以上に、

自らの崩壊を招いてしまった、ということなのでしょうか。

結果的に国民が支持してしまった方向は、

増税、社会保障の削減、格差社会の拡大(それは自己責任)、

復興は公共投資優先、憲法改正、国防軍、目くらまし戦法でのTPP参加、

そして原発再稼動。

選挙用にいったん羽織ったモラトリアム的  " 先送り "  の上着も、もう必要ない?

 

まあ事前の報道である程度想像はしていたものの、

なんと言ってもショックは戦後最低の投票率、でした。

とくに福島の低さが気になるところです。

これからの全体的な空気を象徴しているような、そんな不安を覚えました。

ふるさとを追われた方々がこの結果をどう受け止められたのか、知りたい。

 

僕の大事な一票は、

今回は死に票になったかもしれないけど (まあ大体いつもそうだけど)、

全体的な波はけっして消えてない。

私は私の希望に向かって、進むしかない。

 

この間キャッチしたいくつかの放射能関連での情報や

私の動きも報告したいのですが、

気持ちを切り替えるスイッチがほしくて、

今夜はこんな一文でお許しを。

 

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12月8日(土)、東京・府中にある東京農工大学のキャンパスにて。

合い間を縫っては情報収集に出かけるのですが、

僕の心に快晴の青空はまだやってきません。

 



2012年12月 7日

「会津電力」 で 独立運動!

 

「 脱原発ができるできないと、国は右往左往しているが、

 福島にはそんな暇はない」

こんな書き出しの新聞記事が目に飛び込んできた。

『 自然エネで  " 独立運動 "  』 と、過激な見出しが躍っている。

 

12月3日付・東京新聞、「こちら特報部」。

コメントの主は、大地を守る会オリジナル日本酒 「種蒔人」(たねまきびと) の蔵元、

「大和川酒造店」 9代目・佐藤弥右衛門(やえもん) さんである。

2面にわたって掲載されている。

 

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弥右衛門さんは近隣の仲間とともに研究会を結成し、

11月、エネルギーの地産地消を目指す 「会津電力」 構想をぶち上げた。

「独立運動さながらの熱意で全会津の結集を呼び掛ける」 と、

記者までがアドレナリンを噴出させているかのような書きっぷりだ。

 


弥右衛門さんは、すでに7月18日、

全国新酒鑑評会での金賞受賞を祝って池袋で開催された

郷酒(さとざけ) を楽しむ会」 の席でも、

「福島はエネルギー自給を達成してみせる!」 と気炎を上げていた。

その構想がいよいよ動き出したわけだ。

 

「 小水力でも太陽光でも、できるところから始めたい。

 いずれ東京電力が持っている猪苗代湖などの水利権も買い戻す」

と鼻息が荒い。

この決意の裏には、つねに東京に収奪されてきた歴史への反骨がある。

原発事故は、その会津DNAにさらに火を付けた。

「 福島の土地を汚した東電は責任を取ってもらなきゃならないが、

 われわれも会津の歴史や自然を次代に伝える責任がある。

 どんなに困難であっても自然エネルギーに転換するしかない。」

「 自分たちの電力は自分たちでつくってこそ、地方は自立できる。」

 

県も 「2040年には県内需要の100%を自然エネルギーで賄う」

という目標を掲げている。

洋上風力発電、温泉熱を利用した地熱発電、間伐材を使ってのバイオマス発電

などのプロジェクトも県内各地でスタートしている。

会津は何と言っても  " 森と水 "  であろう。

震災直後から一升瓶に水を詰めて飯館村や相馬に走った弥右衛門さんの、

これは人生を賭したたたかいになるのだろうか。

 

福島・中通りの須賀川では、ジェイラップ・伊藤俊彦が具体化に向けて動いている。

県内各地で狼煙(のろし) が上がっている。

具体的なアドバイスで奔走してくれているのは、

環境エネルギー政策研究所(飯田哲也代表) の研究員、浦井彰さんである。

 

血が騒ぐ。

「種蒔人」 を注ぐ手にも、つい力が入る。。。

 

さてそこで、

日頃より 「種蒔人」 をご愛飲いただいております会員の皆様。

来年の 「大和川酒造交流会」 は、例年にも増して熱い夜になることでしょう。

日程は2月9日(土)、宿はいつもの通り熱塩温泉(10日朝解散)。

この日に搾りを合わせて、これから醸造に入ります。

原料米生産者(稲田稲作研究会) ともども新酒完成を祝い、

未来を語り合いたく思います。

どうぞ奮ってご参集くださいますよう、お願い申し上げます。

( 会員の方には、年明け配布の 「NEWS大地を守る」1月号で募集します。

 非会員の方は、本ブログのコメントをご利用ください。

 その場合、アドレスをお忘れなく。 このコメントはアップされません。)

 

みんなで飲んで、飲んで、

飲むたびにチビチビと貯めてきた 「種蒔人基金」 も

今こそ活用の時が来たのかもしれない。

しかし・・・ もっと飲んでおけばよかった。。。

 



2012年12月 4日

「備蓄米」 生産者からの手紙

 

大地を守る会 「備蓄米(大地恵穂)」 ご予約の皆様へ

 

・・・と題した手紙を、備蓄米生産者を代表して

ジェイラップ代表の伊藤俊彦さんがしたためてくれた。

しかしここに書かれた内容は、 「備蓄米」 申込者だけでなく、

福島で格闘してきた生産者の取り組みや思いとして、広く、

多くの方に伝えたいと思う。

ここに掲載させていただくことを、ご了承願います。 

 

 

"復興" から "自立" へ、感謝の心とともに歩んできました。

 

あの日(3.11)から2回目の稲刈りを終えて間もなく、

10月27日に開催しました "風土 in FOOD 自立祭" には

多数の会員の皆様に駆けつけていただき、

本当にありがとうございました。

 

おかげさまで、家族と連れだって参加した生産者たちも

心からの笑みに包まれ、心和むひと時を過ごさせていただきました。

心から感謝、感謝です。

 

昨年は、大震災と原子力災害からの "復興" を誓い合い、

今年は、本当の復興は "自立するところにある" ことを

確認し合いました。

 

稲田稲作研究会は、少しずつ自信を取り戻し、

少しずつ元気になっています。

 

 

家族・仲間を守るために、子ども目線で判定することを学びました。

 

家族や仲間を原子力災害の被害者にしないための学びと行動は、

私たちの農業にも活かされ、

家族や仲間を内部被曝から守り切る農産物を作ること、

測定によって子ども視点で安全性をジャッジすること、

などの対応策を定着させました。

 

家族や仲間のために行なってきたこの当たり前の姿勢を、

出荷する農産物にも適応させることで、

"子ども目線でジャッジした農産物の出荷" を貫き通すことができた

と確信しています。

 

逆境の中から得られた数々の知見や結果の集積は、

私たちが家族や仲間を想うところから生まれたものです。

その思いは学びと測定という科学的根拠に裏打ちされ、

皆さんにお届けする農産物も、

私たちの家族に向けた必死の思いや学びが

共有されたものであることを、何よりもお伝えしたく思います。

 

 

たゆまぬ "実践" から "希望" をつかみ、さらに前へと進みます。

 

昨年の稲作は、

学ぶこと、考えること、決断すること、行動すること、

全てが手探りの中から始まりました。

 

"対策" を思い立っても、思うだけでは何も得られない。

対策を施しても、収穫して見なければ結果は解らない。

長期戦を予感させる不安の中で、

一枚一枚の田んぼから土や稲のサンプルを採取し、

汚染の実態を見極めることから始まり、

得られた知見や仮説を片っ端から実践しました。

 

無我夢中の時を経て、得られた結果は

年間60kg食べても、安全基準(年間1mSv) の1,000分の1程度

というものでした。

弛まぬ自助努力は、今期の稲作に向けて希望の種を残しました。

 

希望の種は "やる気" に変わり、

さらに昨年を下回る結果が得られてきています。

そしていま稲作研究会では、もっと前へ!とばかりに、

来季に向け、収穫を終えたばかりの約150haの水田で、

さらなる減線作業の真っ最中です。

 

 

「今年も頑張りました」

と胸を張ってお届けできる喜びをかみしめながら、

「子どもたちの未来のために」

生産者としての責任を全うします。

 

今期も備蓄米をご予約いただきました皆様、

本当にありがとうございます。

 

皆様からの "予約" という力強いメッセージが、

私たちへの大きな励みとなり、

加えて "未来ある子どもたちの人生がかかっている" と、

生産者としての責任を強く自覚させてくれています。

 

昨年産の「大地恵穂」は、一度たりとも、

2ベクレルを超える玄米・白米はお届けしていないと認識しています。

精米を行う際に常に気を配ってきた

「品質の不公平を作らない」 という姿勢と技術が、

それを実現させる仕組みにもつながったものです

 

安全基準の1,000分の1以下という数値をどう判断されるかは

皆様に一任するしかありません。

私たちにできることは、ご購入いただいた皆様に対し、

安全で美味しいお米を "可能な限り品質の不公平を作ることなく"

粛々とお届けさせていただくのみであります。

 

皆様に励まされながら、稲作研究会は学び続け、

生産活動を止めずに自立を目指せるまでになりました。

今年収穫された「大地恵穂」は、

昨年よりもさらに高い安全性が確保されています。

猛暑の影響によって若干の白濁が見られますが、

たんぱく値からして食味は申し分ない筈です。

 

ある意味、極めてあきらめの悪い農家が作ったお米です。

それはまた、私たちが一緒に暮らす子どもたちに、

それだけ手を抜くことなく頑張ってきたんだという誇りをもって、

普通に食べさせているお米でもあります。

そんなお米を皆様にお届けできる喜びを、今かみしめています。

 

来年の秋までの一年、

「備蓄米・大地恵穂(だいちけいすい)」が

皆様の食卓の安心や幸せな笑顔を支えられることを

心より願いながら、

万全の体制で保管させていただくことを、ここにお約束いたします。

 

収穫の秋を終え、深い深い感謝の念とともに-

 

2012年11月

稲田稲作研究会会長 渡辺良勝

(株)ジェイラップ代表 伊藤俊彦

 

以上です。

読んでいただき、有り難うございました。

 



2012年12月 2日

水とともに 「未来を拓く農業」

 

会津・喜多方市山都町 「堰(せき) と里山を守る会」 から

しばらく前に届いていたお米 - 「上堰米」(じょうせきまい) を食べる。

今年5月の堰さらいボランティア に参加したお礼として送られてきたものだ。

コシヒカリとヒトメボレが一袋ずつ。

堰さらいの写真が貼られている。

e12110001上堰米.JPG

 

下手な写真が腹立たしいのだけれど、

ピカピカと輝いていて、本当に美味しい米だった。

10月に行なわれた須賀川での 「備蓄米収穫祭」 でお土産にもらった新米も

美味しかった。 福島の米はやっぱ、ウマいと思う、掛け値なしで。

 

同封されていた 「上堰だより」 によれば、

越冬のために家に入ってくるカメムシの数はいつもより少なく、

カマキリの卵の位置は低めで、ソバの背丈も低かったそうで、

「今年の冬は積雪量が少ないかもしれません」 とある。

 

また、10月にインド・ハイデラバードで開かれた

国連生物多様性条約第11回締約国会議(COP11) の

サイド・イベントに参加された浅見彰宏さんの報告も記されている。

サイド・イベントとは、政府間で議論する本会議に対して、

NGOが企画する対抗イベントのこと。

「農業は土や水を通して生態系の保全と関係が深く、農業と原発は両立できない」

と英語で訴えてきたそうだ。

そして 「堰と里山を守る会」 の活動を、美しい風景とともに伝えることができたと。

すごいなあ。 浅見彰宏は国際人だ。

 


ここで、浅見さんが11月に出されたばかりの本を

紹介したい。 

ぼくが百姓になった理由.jpg

 

コモンズから、「有機農業選書」 のシリーズとして出版された。 1900円+税。

「 会津の山村へ移住して16年。

 有機農業で自立し、江戸時代から続く水路を守り、

 地域社会の担い手として活躍する、社会派農民の書き下ろし」 とある。

 

「ひぐらし農園」 と名づけた山村農園での四季の暮らしが綴られ、

有機農業の世界に飛び込んだ経緯やⅠターンゆえの苦労、

そして地域の人々との関わりや堰を守る活動から獲得してきた

農への思い、農の哲学が、実に読みやすいタッチで語られている。

放射能汚染とたたかってきた苦悩も、苦悩で終わらない、

有機農業の力と明日を信じる浅見さんの願いが伝わってくる。

 

最後のほうで思いがけず、大地を守る会とのつながりと

「会津の若者たちの野菜セット」 企画が実現したくだりも紹介されていて、

嬉しくなってしまった。

 

最後に掲げられた浅見彰宏の信条。

「 ひぐらし農園のめざす農業は 『未来を拓く農業』 でありたい。

 そのためには、社会性があり、永続的であり、科学的であり、誠実であること。

 そして、排他的であってはならない。」

 

イイね。

浅見さんが農から発信するなら、僕はこの地平から応えたい。

そしてつなげてゆきましょう、人と人を、価値と価値を。

未来開拓者は、いま、あらゆる分野から生まれ出なければならないのだ。

 

食べものと環境とのつながりを見つめ直し、

暮らしをどう設計するか、し直すか、

一人一人が立ち止まって考える時代にあって、

16年前に、農の世界に、しかも雪深い山村に飛び込んだフロンティア、

「社会派」 農民が描く未来のかたち。

ぜひたくさんの人たちに読んでほしいと思う。

 



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