2012年12月18日

有機農業学会・第13回大会

 

昨日、 「僕の一票は死に票になったかもしれないけど・・・」

と書いてしまった自分を、少し恥じている。

大地を守る会代表・藤田がツイッター でつぶやいた言葉に諭された。

「 私が投票した人は当選しないかもしれない。

 しかし~ これは種まきなのだ。 私は結果に失望することはない。」

 

そうだよね。 希望を語りたかったんだから、

「この一票は断じて死んではいない!」 と言い切るべきだったか。

今日の報道では、自民党の得票数自体はけっして伸びてないとか。

バランスを欠いているのは制度であって、人心に失望してはいけない。

 

投票に行かなかった息子に向かって、

「オレはお前たちの明日のために投票してるんだ!」

と叱ったオヤジの話を聞いた。 「情けねぇ」 と。

しかし、怒るだけでなく、大事なものをどのように伝えるか、

もっと自分たちを鍛えなければならないということだ。

歩みを止めず、しっかり前に向かって進んでゆきたい。

 

さてと・・・積もる話がいろいろとあるんだけど、とりあえずここから。

選挙を一週間後に控えた12月8日(土) と 9日(日)、

東京・府中にある東京農工大学で開かれた 「日本有機農業学会」 の大会に参加した。

研究者でもないのに、僕はこの学会の設立(2000年) 当初からの会員である。

 

有機農業は、農薬や化学肥料に依存した近代農業に対する

批判や反省をもとに広がってきたものだが、

栽培技術においては実に多様な考え方や理論(あるいは世界観)

によって営まれ、進化してきた。 今もそうだ。

しかしその多様性ゆえに、

また微生物を含めた生態系との相関関係が複雑極まりない世界であるがゆえに、

この世界はまだまだ科学的に未解明な部分が多い。

 

有機農業を、高付加価値農業とか、特殊な生産様式に終わらせることなく、

社会のスタンダードにするためには、

もっともっと総合科学的な研究が必要である。

そんなものは不要だ、という方もいるが、

有機農業をあたり前のものにしたいと願う者としては、

やっぱり一定の普遍性は必須だと思うのである。

生産と消費を 「健康」 でしっかりつなげるためにも。

ここで 「有機農業学」 を進化させてくれる研究者の集まりができたのなら

会費くらいは払って応援しよう、 

いつまで続くか分からない貧しい学会のようだし・・・ 

そんな思いで参加してきた。

 

去年 は北海道大学で開催され、

場違いながら放射能対策についての発表をさせられたのだが、

今年は気楽な見物客気分で、国立大学の門をくぐる。

 

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( 創設者は大久保利通。

 東京帝国大学から独立した際のいわくもあるらしい、歴史ある大学。) 

 


今回の全体セッションは3構成。

全体セッション1 : 有機農業推進法成立からの6年を振り返る

全体セッション2 : 有機農業現場における新技術利用の可能性

                          - 農業現場と研究機関のコラボレーション -

全体セッション3 : 耕す市民を育てる現場から

 

1 はどうも学者というより運動家の論を聞かされているような気分だったが、

2 では、有機農業の現場としっかり組んで技術的な発展に貢献しよう

という姿勢が汲み取れた。

 

一番面白かったのは、東京農工大大学院・藤井義晴教授が発表した

「アレロパシーを利用した有機農業、特にヘアリーベッチの利用について」。

ヘアリーベッチはマメ科の牧草で、

そのアレロパシー(多感作用、他の植物の生長や動物の侵入を防いだりする効果)

の物質はシアナミドであることをつきとめた。

シアナミドとは化学肥料である石灰窒素の有効成分であるが、

天然の植物が合成してくれるということは、

これで雑草や病害虫の発生を抑制し、かつ地力も上げることができる。

初夏に咲く花はミツバチの蜜源にもなる。

自然に枯れて敷きワラ状になることでカバークロップとしても利用できる。

「これは現場で使えそうだ。 生産者にも伝えよう」

と思えるような研究発表に出会えることが、楽しい。

 

3  は東京での開催を意識してのセッション。

都市住民に農への関心を呼び覚ますために様々な仕掛けをしている

都市農家やレストランの若い経営者が登場して、思いを語り合う。

 

その他に個別調査や研究報告が24。 

会場も分かれるので聴けたのは半分弱だったが、

まだまだ調査・研究の途上らしきものが多く、

先輩先生からの問題点の指摘やアドバイスを後ろから聞いたりしながら

その研究意義などを理解させていただく。

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原発事故以降、あちこちで出会い、親しくさせていただくことになった

新潟大学・野中昌法さんも、二本松での調査経過を報告。

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1mおきに測定データを取っていくという相当に詳密な線量マップを作り、

生産者と対策を話し合ってきた。

この1年半で見えたことは、土の力と、

手を打ったところには成果がついてくる、ということだ。

 

個別発表の紹介は割愛するが、

こうやって有機の力や課題が 「見える化」 され、

新しい発見が現場で活かされ、成果が蓄積されてゆくことで、

有機農業の世界が豊かになっていくことを信じたい。

 

こんなことも考える。

たとえば、福島の生産者たちが必死で取り組んできた放射能対策は、

今や400を超える原発が存在してしまっているこの地球で、

人々を救う技術として、ちゃんと残しておくべき 「成果」 だろう。

これは研究者たちのバックアップがないとできないことだ。

(使うことがあってはならないものだけど、原発事故はいつ・どこで起きるか

 分からないものだから、備えはなければならない。)

いざという時に、しっかりと応援できる国でありたいし、

同様の意味で、日本は廃炉技術の先進国にならなければならない、今すぐから。

 

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二日目の朝には、学会の総会があって、

こちらは運営に関する会議なので自分には関係ないと思っていたのだが、

なんと前日の夕方に、議長を頼まれてしまった。

いつも厳しいご批判を頂戴する沢登早苗会長(恵泉女学園大学教授) から

頭を下げられたのは、初めての経験。

ま、つつがなく運営はできたと思うけど、

去年と言い、今年と言い、この学会には調子よく使われている感がある。

 

ま、ワタクシなんぞでよければ、それくらいはお手伝いしましょう。

諸君らには、しっかり有機農業の発展に尽くしてもらいたい!

なんたって、この国の、いや世界の未来がかかっているんだから。

 



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