2013年3月23日

〔地球大学〕 日本の食のサステナビリティ

 

一週間が矢のように過ぎてゆく。

このまんま " 気がつけばジ・エンド "  ってことはまさかないだろうけど、

どうもなんかに追われている感が拭えない。

何を焦っているのか。。。

 

今週の活動から振り返りをひとつ。

3月18日(月) の夜、丸の内・エコッツェリア協会で開かれた

「地球大学アドバンス 〔食の大学〕 シリーズ」 に参加した。

今年度の最終回ともなった第6回は、

『日本の食のサステナビリティ』 をテーマに、

3名のゲストからのプレゼンを中心に展開された。

 

写真右から、

グラフィックデザイナー・佐藤卓さん、予防医療コンサルタント・細川モモさん、

そして一番左が農林水産省大臣官房政策課課長・大澤誠さん。

e13032301.JPG

 

まずは佐藤卓さん。

佐藤さんとは地球大学で何度もご一緒しているが、本ブログで紹介したのは

5年前の 『 Water 〔水:mizu〕 展 』 だけだったか。

昨年の10月には、北海道の銘柄米 「ゆめぴりか」 の新米発表会で

一日限定の 「米の道」展 というのを手掛けている。

食や環境をデザインの視点から見つめ直し、いつも

私たちに新しい発見を与えてくれる、僕には宇宙人にしか見えない方。

 


すべてのモノには設計とデザインがある、デザインが関わらないものはない、

と佐藤さんは語る。

目の前にある当たり前のモノ、自明なものをデザインし直して見ることで、

そのモノの真実が捉えられることがある。

 

たとえば水田は、水との関係、水とたたかいコントロールしてきた関係を

デザインした究極のものだと佐藤さんは捉える。

地球大学のモデレーターである竹村真一さんと佐藤さんは今、

「米 展」 の来年開催に向けて準備を始めている。

「当然、手伝ってくれるよね」 と言われているのだが、この人たちに関わると

とんでもないリクエストが舞い込んできそうで、コワい。

 

続いて細川モモさん。

現代の日本人の食の現実は、恐ろしい未来を映し出している。

子どもたちの間で成人病(予備軍も含め) が急激に増えている。

妊娠前の女性では、必要エネルギーを満たしてない、

極めてアンバランスなパターンが目立ってきている。

摂取カロリーは何と、終戦直後より低くなっている。

最大の要因は、朝食の欠食である、と細川さんは指摘する。

その影響は、低体重児の増加となって現われてきているが、

一方で最新の学説として注目を集めているのが

「成人病胎児発生説」(胎児期での飢餓が将来の成人病の原因となる) である。

 

男はメタボ、女は難民状態。

見えてくる日本の未来は、世界一の不妊大国であり、

生活習慣病増加が最も懸念されるハイリスク国家である。

人間としてのサステナビリティ(持続可能性) が壊れつつある、

それが今の日本の姿である。

 

3番目は、農水省・大澤誠さん。

食を文化としてとらえる社会を目指したいと語る。

農水省では3年前に 「食に関する将来ビジョン」 を策定し、

健康と食と医の連携という新分野への展開を模索している。

そして今月、「和食」(日本食文化) をユネスコ無形文化遺産に登録させるべく

申請を出したばかりである。

 

e13032302.JPG

 

外国人観光客が日本に来て期待する第1位は、日本食体験である。

和食の神髄は自然の美しさの表現にあり、

新鮮な食材は多様性に富み、素材の味を楽しむ特徴を持つ。

その土地の年中行事などともつながっていたりする。

これは文化そのものである。

またかつての米国・マクガバン報告を持ち出すまでもなく、

日本食はバランスのとれた健康的食生活のモデルとして

長く世界から評価されてきたものだ。

 

これからももっと日本食の大切さを普及する活動を展開していきたいと

抱負をけっこう熱く語る大澤さんは、実は

僕も参加させていただいた 「地域食文化活用マニュアル検討会」 の

仕掛け人でもある。

 

食は将来の子どもたちの、ひいてはこの国の生命に関わる重大事である。

ただ絶望している場合ではない。

何を、どう食べるのか。 日本食という OS を、どうデザインし直すか。

屋台骨が崩れ始めた日本人を、どう鍛え直すか。

いろんな立場の人を総動員して、

あの手この手で 「食の再生」 に向かう必要がある。

 

ということで、次はワールドカフェ方式によるセッション。 

各テーブルごとで感想や知恵を出し合い、最後に

「これからの日本の食」 についてのキャッチフレーズを考えてください、

というお題に挑戦する。

 

e13032303.JPG

 

ここで、普段から何気なく思っていたことを口にしてみた。 

「味噌汁が、けっこう決め手になるような気がしてるんですけど。」

朝、忙しくても 「味噌汁一杯」 なら実行できないか。 

晩ごはんの際に翌朝分も一緒につくっておいて、朝はさっと温めるだけでいい。

具は日によって変えてみる。 とうふにワカメ、しじみ、ネギ、大根・・・

味噌という醗酵食は体にもいい。 出汁も隠れた栄養である。

味噌汁はそして、必然的に和食を求める。

 

予想外にウケて、味噌から大豆の話、醗酵食、菌の話、

はては味噌汁全国大会の開催・・・ と展開された。

辿りついたキャッチフレーズは、これ。

e13032304.JPG

 

みそ汁で世界を救う! 

- 言った以上、実行しなくちゃね。 いえ、してますよ、これでも。

 

竹村さんが最後に締める。

「食」 は人を育てる根幹である。

いろんな食材をどうインターフェイスさせていくか。

持ち方・運び方・噛み方、そして誰と食べるか、

食べ方のデザインを考え直したい。

そして次世代の舌を育てるための 「食の大学」 を、この街に出現させたい。

 

いま、フランスで 「OBENTO」 という言葉が流行り始めているそうだ。

栄養バランスと彩りに配慮され、調和的に配置された一食分のパッケージ。

地球食の新たなデザインを発信する力が、まだ日本にはある。

いや、あるうちに、自分たち自身が、食の力をちゃんと理解し直すための

運動が必要なように思う。

 



大地を守る会のホームページへ
とくたろうさんブログへ