2013年3月28日

共同テーブル「提言」で、関係省庁と意見交換会

 

遅まきながら、大地を守る会の HP トップに

『大地を守る会の 放射能連続講座Ⅱ』 シリーズのバナーを

貼ってもらいましたので、お知らせいたします。

 ⇒ http://www.daichi-m.co.jp/cp/renzokukouza2/

 

ここから一般の方もお申し込みいただけますし、

過去のアーカイブもご確認いただけます。

第2回は、4月18日(木)18:30~ 日比谷図書文化館にて。

講師は東京大学アイソトープ総合センター長、児玉龍彦教授。

テーマは 『改めて内部被ばくの問題を考える』 です。

締め切りは4月5日(金) に設定していますが、

定員(200名) になるまで受け付けます。

児玉教授の話が生で聞ける機会は、1学期中でおそらくこの日だけかと。

どうぞ奮ってご参加ください。

 

さて、今週は 2回にわたって、中央官庁に出かけた。

「食品と放射能問題 検討共同テーブル」 で出した政府への 「提言」 に対して、

関係省庁との意見交換会が設定されたのだ。

3月26日(火) は内閣府食品安全委員会にて、

3月28日(木) は農林水産省に厚生労働省の方も来ていただき、

それぞれ意見交換をさせていただいた。

 


当方から出向いたのは、

パルシステム生協連合と大地を守る会の 2団体。

 

写真は26日、食品安全委員会事務局の方(2名) との意見交換風景。

e13032801.JPG

 

こちらは28日、農水省&厚労省の方々との一席。

e13032802.JPG

 (撮影はパルシステムの植田真仁さん。 いずれも左側の一番奥が戎谷。)

 

厚生労働省からは医薬食品局食品安全部から4名、

農林水産省からは、大臣官房環境政策課、生産局、食料産業局、

消費・安全局、農村振興局、農林水産技術会議の他、

水産庁および林野庁含め合計10名の方に出席いただいた。

この場を借りて感謝申し上げたい。

 

冒頭、戎谷より共同テーブルの結成主旨から

今回の 「提言」 提出に至った経過を説明させていただき、

続いてパルシステムの松本典丈さんが提言を読み上げながら内容を説明した。

 

意見交換で出された省庁の見解をまとめると、

概ね以下のようなものであった。

・ 生涯 100 mSv、年間 1 mSv (の食品による内部被ばく) を上限値とした

 新基準値は、他のリスクと比較しても低い方であり、妥当だと考える。

 基準を見直す考えは、今のところ、ない。

・ ただしリスクコミュニケーションの不足は認識している。

 科学的知見によって合理的に判断してもらえるよう努力してゆきたい。

・ 提言にある 「出荷制限の見直し」 や 「きめ細かな対応」 については、

 実施してきた部分もある。 「やっていない」 と思われるのは不本意である。

・ 出荷制限の範囲はできるだけ狭めたいが、現実的には

 全量管理が可能な単位(市町村) で考えざるを得ない。

 一方で 「部分解除」 というルールも設定してきているので、理解してほしい。

・ 原木しいたけについては現在、栽培ガイドラインの策定など、

 生産支援策を準備中である。

・ < 「ストロンチウムの継続的なモニタリングと結果の公表を求める

   という要望に対する、厚労省の回答 >

 出荷の判断基準としてではなく、調査として継続的に調査は行なっている。

 いずれまとまった段階で公表する予定である (時期は未定)。

 検査結果からは、セシウム比で数百から千分の1 程度と推定している。

・ < 3月19日に厚労省かから出された

   『食品中の放射性物質に関する 「検査計画、出荷制限等の品目・区域の

    設定・解除の考え方」 の改正について』(※)  において、

   検査対象品目が減少しているのは姿勢の後退ではないか、との意見に対して>

 検査の継続にも、コストや人手の問題等、限界がある。

 これまでの検査結果から、「まず問題ない」 と判断できるものは削除した。

 限られた条件の中で、これからは  " 選択と集中 "  に向かう判断も必要である。

 魚については、主要品目は継続する意向である。

・ ちゃんと対策をとり、検査して (安全性を)確認できたものは出荷可能にすべき、

 という提案は、生産者のモチベーションを上げる意味で、

 むしろ有り難い提案として受け止めている。

 対策に力を入れている生産者が報われるような運用を目指していきたい。

 

総じて、こちらの 「提言」 に対して真摯に対応いただいたことは評価したい。

施策の方向性で共通する点が少なからずあったことも確認できた。

努力されていることも窺えた。

しかし、基準値に対する考え方は埋まりようのない隔たりを感じさせた。

科学的知見を基に、というが、

国が拠り所とする ICRP(国際放射線防護委員会) ですら、

「合理的に達成可能な限り被ばく線量を低減する」 という原則 (ALARAの原則)

が示されている。

つまり、1 mSv 以下であればそれでよい、ということではないはずなのだが、

「これ以下のリスクは取るに足らない」 というのが、

「厚労省医薬食品局食品安全部基準審査課 放射性物質専門職」

という肩書を持つ方の発言であった。

 

どうも自分たちの枠の中で判断して、国民の不安を見つめていない。

研究室に籠っている方ならシカトもできるが、

国民の健康に責任を持つべき立場の者として、いかがか。

 

ひと言、言わせていただいた。

公的基準を国民が信じないという不幸な事態のなかで、

日々日々消費者と接する我々は、できるだけリスクを低減させる努力をしながら、

なおかつ冷静な判断力を持とうとコミュニケーションに努めてきた。

どれだけの経費をかけたことか。

その上で、積み重ねてきた測定結果を基に、基準を下げることができることを示し、

提言させていただいたものである。

国としても、消費者の暮らしに  " 安心 "  を回復させるために、

可能な限りリスクの低減に努めていくという姿勢を、持ってもらいたい。

 

また検査項目の  " 選択と集中 "  について言えば、

もっと限られた原資で行なっている民間ならまだしも

(我々も検討しているテーマであるが)、

国に率先して絞られると、それでいいのか、と叫びたくなる。

データがなくなることによる不安は、信用されてない状況では

不信を募らせる結果にしかつながらないように思う。

こうなるとリスク・コミュニケーションという手法でカバーできるものではない。

国が信用されてない状態というのは、

民間にとってコストを増やす要因にもなることが理解されていない。

 

彼らには 「国民(消費者)」 が見えてない、と言わざるを得ない。

リスク・コミュニケーションと言いながら、一方通行で終わっている。

それでもって、批判者を排除したがる。

本物のコミュニケーションを互いに目指すことができれば、

一歩ずつでも良くなっていくはずなのだが。

 

とまれ、こういう場に出てきていただいたのだ。

十把ひとからげに批判だけしては失礼というものだ。

「時間が足りませんよね。もっと話したい」 と言ってくれた方もおられた。

各部局に呼びかけてこれだけの人を集めててくれたのは、

農水省の消費・安全局の方だ。

こういった作業の積み重ねによって官と民の距離が縮まることができたなら、

あるいはいつでも渡れる橋が架けられたなら、

この二日間も無駄ではなかったと言えるのだろう。

歩み寄るのではなく、一緒にある目標に向かえたなら・・・

みんなストレスを抱えている。

 

(※) ⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xsm1.html

 



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